17.理事長室潜入
「詳しく教えてくれるかな」
木野城くんは顔をプイっとそらして、
「この学校を無理矢理、源グループの資金を使って買収したんだ。
まぁ、それに対抗するだけの力がこの学校にはなかった・・・・・・それは大部分の企業等も当てはまるが。
第一、君は源 雄司の息子なんだから自分で聞いてみたらいいじゃないか」
そう嫌味気に言った。
そうだ、ボク自身が聞いてみたらいいじゃないか。
こんな周りクドイ事なんてしないで。
ボクはすぐに理事長室に行く事を決意した。
お父さんの真意が知りたい。
なんで源グループの資金を使ってまで奏応学園を買収したのか・・・・・・。
ボクはその場から走って理事長室まで掛けてゆく。
「あゆむさん?」
雪穂さんが行き遅れた様子でボクの行動に疑問を呈す。
そして遅れを取り戻すべく
「晴紀さん、すみません。今日はお一人で先にお帰りください。
私は諸事がありますので。では失礼します・・・・・・」
雪穂さんはボクに遅れをとりながら、ついて来る。
「ちょっ、雪穂さ〜んっ!」
木野城くんは取り残された。
そして落ち込んだ様子でトボトボと昇降口に歩き始めた。
−−−−−−
理事長室の前にやっと着いた。
走ってきたので多少息切れしていた。
ここまで来るのに結構距離があった。
第一、階は変わっていないのに、なんでこんなにも距離があるのか。
改めてこの学園の規模に驚く。
遅れをとりながら、雪穂さんはボクの隣に追いついた。
「あゆむさん、走るの速いですね」
自分でも速いのかよく分からなかった。
しかし雪穂さんを見てみると、ここまで走ってきたわけではないのにこんなに追いつくのが早い。
小走りをしてきたのかな。
それにしては、雪穂さんから一息も息切れが生じていない。
雪穂さん・・・・・・凄い。
「っさ、入りましょうか」
雪穂さんがドアノブの方に手を差し向ける。
「はい」
ボクはそれに従って、トアノブに手を掛ける。
「っあ、そうだ」
こういう所に入る時はノックが必要な事忘れてた。
あまりに気持ちが逸ってしまって後先考えなかった。
(コンコン)
暫く経っても返事がない。
おかしい・・・・・・。
誰もいないのかな。
そう思いつつも中が気になる。
無意識の内にドアノブを捻る。
そして引いてみる。
ドアはゆっくりと手前に開けた。
空いてる!?
中を覗いてみるも、中は蛻の殻のように見える。
見回してみるも誰もいない。
これは入ってしまってもいいのかな。
「どうでしょうか」
雪穂さんが背後からそう声をボクに問いかける。
ボクは後ろを向く。
「誰もいませんね・・・・・・。いっ、いいんでしょうか、勝手に入ってしまっても・・・・・・」
ここは理性を働かせるべき場面なのかもしれない。
雪穂さんの性格から予測するに、やっぱり誰もいないのだから入らない方が良いのではという意見だろうね。
雪穂さんに聞いてみたけど、その可能性は低いためボクは覗き込むのをやめて、引き返そうとした。
「何処に行くんですか?」
雪穂さんがボクを引き止めた。
っえ、何故引き止める!?
雪穂さんの意見としては・・・・・・
「何処って誰もいないから帰りましょうっていう流れじゃないんですか」
久しぶりに空気を完璧に読むことが出来たと確信していた。
しかし、それはいとも簡単に覆されてしまうことになる。
「誰がそんな事言ったんですか?折角ここまで来たのですし、入るべきだと思います!」
雪穂さんが声を強めてそう言う。
久しぶりに空気を読んだと思ったのに・・・・・・。
雪穂さんって意外と・・・・・・。
「そ、そうですか、じゃあ入りましょうか」
ボクはもう一度ドアノブに手を掛けて今度は中に足を踏み入れた。
中は巨大な書棚が両端にあり、中央手前には黒革のソファーが各々対面して4つ置かれており、中央奥には重厚さが感じられる左右に広い執務卓。
極め付けには奥の両端にはそれぞれ観葉植物が置かれていた。
夕日が燦々と降り注げるほどの大きな窓。
大人が縦に二人並んでも尚、余裕がありそうだ。
それが左から右に所狭しと並んでいる。
そしてブラインドが開いた状態で上から垂れ下がっている。
さすが理事長室。
まず最初に気になったのはこの大きな書棚。
こんな大きな書棚に何が入ってるんだろう・・・・・・。
中を覗きこむ。
しかし・・・・・
「何もないっ」
そう、大きな書棚の中には何も入っていなかったのだ。
これは一体、
「多分、朱鷺等理事長が退任されたのでそれに関するモノは全て取り払われたのではないでしょうか」
雪穂さんが後付けした。
「確かにそうかもしれませんね」
ボクはそういいながら辺りを見回す。
そして執務卓の引き出しを悪びれを感じつつも覗くがやっぱり何もない。
ホントに蛻の殻だ。
「そういえばあゆむさんのお父様は明日からこちらの業務に就かれるのですよね。
という事は今日はもうお帰りになったのではないでしょうか?」
「あぁ、そんな事誰かが言ってましたっけ」
確か司会進行役の女の人だったっけ・・・・・・。
詳しく覚えてないけど。
(コンコン)
「ゆうじ〜??いますよねぇ、失礼しますよ〜」
誰かがドアの向こう側でノックしてきた。
誰だろう・・・・・。
しかもボクのお父さんの事名前で呼んでるし・・・・・。
お母さんじゃないしなぁ・・・・・。
もっ、もっ、ももしかして・・・・・・お父さんのあっ、あっ、ああいじん?ですか!?
そっ、それは息子的立場から困りますよ。
お母さんにもしもバレたら・・・・・阿修羅だよ・・・・・・修羅場だよ・・・・・・。
第一、ここ学校だよ。
公共の場に愛人呼んで来るなんてどんな神経してるのさっ!?
もう・・・・・。
ボクは固唾を飲んでドアの方を見つめる。
ドアはゆっくりと開かれる。
しかしドアを開けたのは・・・・・・。
こっ、この人がお父さんの愛人っ?!信じられない。
というか信じたくない・・・・・・。
いやいや、でも普段からこの人を見てるけど全然そんな事は感じられないんだけど・・・・・・。
雪穂さんの方を向く。
雪穂さんも非常に驚いているのか、目を大きくしていた。
ボクも驚くしかなかった。
後ろから差し込む夕日がボク背中に当たって、前方に等身大より少し大きい影が出来ていた。
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