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Achieve〜与えられた試練〜  作者: Tale Jack
★第一章 【第一の試練】
20/56

14.悪巧み

 階段で色々と思い耽ってしまっていつの間にか予鈴の授業ベルが鳴ってしまった。

 

 ボクは小走りで階段を昇ってゆき教室の中に入った。

 

 しかし途端に不審に思った。

 

 女子が一人も教室内にいない。

 

 これは一体どういう事?

 

 しかも男子はボクの席ら辺で屯ってるし。

 

 ボクはまぁあまり気に留めないで自分の席の方に歩き出した。

 

 迷惑な事にボクの椅子の方にまで取り巻きの人が侵食していた。

 

 仕方がないので机の正面に回って鞄を机の上に置く。

 

「あゆむ?!」

 

 と、取り巻きの中心から声を掛けられる。

 

 この声は・・・・・・

 

 ボクは取り巻きの中心部に目を向ける。

 

 すると取り巻きの中から手塚くんが出てきた。

 

「お、おはよう」

 

 朝から屯って何してるのさ?それが一番聞きたかった事だった。

 

 しかし今後の展開から言ってよろしくない方向の返答が返ってくると予測してその言葉を心に留めた。

 

「おはようさん。今日も目の下にくまが出来てるなぁ〜」

 

 またその事に触れるのですか。

 

 まぁ予想はしていたけどさ。

 

 流石に面倒くさくなってきたのだよ・・・・・・。

 

「うん、そうだねぇ」

 

「なんだよその面倒臭そうな返答は?!ちゃんと心配してるんだぞ」

 

 態度に出てしまった。やっぱり気持ちには逆らえないね。

 

 少しトーンを落として

 

「それはどうもありがとう」

 

 溜息混じりにそう言う。

 

 明らかに気持ちがこもってない。

 

「俺はあゆむがそんなに寝不足だといつか倒れてしまうんじゃないかって・・・・・・。

 

 あゆむに何かあったら俺は・・・・・・俺は・・・・・・」

 

 そう言いながら手塚くんは腕を目の前まで持ってきて悲しそうに言った。

 

 なんか悪いことしたかな。

 

「ごっ、ゴメンネ。ちょっと寝つきが良くないだけ!

 

 でも身体は大丈夫だからさ、心配しないでよっ」

 

 ボクは無理矢理テンションを上げた。

 

 そうだよね、心配してくれてる友達を無碍むげに扱っちゃダメだよね。

 

 これは反省すべきだよ。

 

 手塚くんは腕を若干目が見える程度に落として

 

「PCゲームがそんなに楽しいか?」

 

 ボクは即座に悪態をつく。

 

 もういいよ!

 

 さっきのボクの反省は一体何だったのさ。

 

 しかもボクの寝つきが良くないっていうのを無理矢理PCゲームに結び付けてさ。

 

 ボクの態度に手塚くんは慌てる。

 

「わっ、分かったよ。悪かったよ・・・・・・ところでさ」

 

 手塚くんは額を掻きながらそう言った。

 

 展開早っ!

 

 本当に悪いと思ってるのかな。

 

 それ以前にもうこんなやり取りしたくない。

 

 なんか朝からお疲れモードに突入しそうだし・・・・・・。

 

 どうしてくれるよ、手塚氏。

 

「何?」

 

 ボクはもう話が流れた事に機嫌を取り戻す。

 

 元々あまり怒ってはいないけど。

 

 ただ厄介なだけ・・・・・・。

 

「あゆむは女子が好きか?」

 

 唐突だった。

 

 しかもこれって何の質問さ。

 

 大体男子が男子を好きだってここで公言したら普通に怪しいでしょ!

 

「それはそうだよ!普通女の子が好きじゃない男の子なんていないでしょ」

 

「じゃあ決定だ!!オシっ、皆!」

 

 そう手塚くんが取り巻き達に声を投げ掛ける。

 

 その声に皆がバッと振り向いて手塚くんの方を見た。

 

「あゆむが承認してくれた。

 

 これからオーダーを発表するっ!」

 

「やったぞ!」

 

「キター!!!」

 

「一丁やるかっ」

 

「張り切っていきましょ〜」

 

「乗り込むか」

 

 周りの男達がいきなり調子付いた。

 

「ちょ、ちょ、待ってよ!」

 

 何が起こってるのか全然分からない。

 

 大体”承認”って何をボクは承認したの?!

 

 この状況把握の格差、どうよ。

 

「何かあるのか」

 

 不思議そうに手塚くんはボクの方に向き直る。

 

「おっ、大アリだよっ!!!一体何なの?

 

 ボクが承認するとかよく分からないんだけど!」

 

 両のてのひらを上に上げて、首を振った。

 

 やれやれといったところなのだろうか。

 

 本当に状況が掴めない。

 

「洞察力に欠けているな」

 

「いやっ」

 

「もっと勉強しろ」

 

「だからっ」

 

「無駄に生きるな」

 

「ちょっ」

 

「楽しめ」

 

 何を言ってるんだ。

 

 全く関連性のない言葉ばかり返してきて。

 

 知的レベルが・・・・・・いやいや、これは禁句だった。

 

「聞いてよ!」

 

「だからなんだ」

 

「何をしようとしてるの」

 

「これからパーティーだ」

 

「パーティー??」

 

 今は学校だしパーティーとか、学校サボる気?!

 

 遂に不良になってしまうの、皆?

 

 疑問の念がこみ上げてきて頭が混乱した。

 

 それを見たのか取り巻きの中の一人がボクに問いかけた。

 

「何故いつもこの時間には女子が来ているのに今はもぬけの殻だと思う?」

 

 よく響く声だった。

 

 その声でボクの頭の中に一つの疑問点だけが残った。

 

 そうだ、なんで今日は女子がいないんだろう。

 

 あまり気にしなかったけど、実はその事と今男子が考えていることに何か関連性があるのでは?

 

「なんでいないの?」

 

 ボクの問いかけにハッハッハと高らかに手塚くんは笑う。

 

「実は今日は女子の身体測定の日なんだ。

 

 ちなみに男子は来週。知っているか、もうすぐ独立機関である水泳委員会(Swimming Commissioner)が動く」

 

「まっまさか」

 

「もうすぐ2年に1度行われる水泳大会が行われるからそれに備えて身体測定を行い本来の目的である水着の新調だ・・・・・・二つのチャンスという訳だ・・・・・・」

 

「ってことは」

 

 前方の取り巻き達は朝にも関わらず大いにテンションが上がっていた。

 

 その中の誰かがオーッという雄叫びを上げた。

 

 その雄叫びが今度はサッカー・ワールドカップでよく聞こえてくるあのリズムの取れた応援歌調になる。

 

 それに合わせて皆は歌う。

 

「そうだ。身体測定開場に乗り込みだ!!!ではオーダーを発表するっ!」

 

 取り巻きたちは手塚くんの呼びかけにオォッ、オォッ、オォッっとそれを盛り立てた。

 

 手塚くんはなにやら自分の机の中に手を伸ばしてノートパソコンを取り出した。

 

 そしてパカッっと開いて起動させた。それが立ち上がったのを確認してから口を開いた。

 

「まず最初に本隊は俺が指揮する。本部はあゆむに統括してもらう。

 

 作戦内容は俺から各班のリーダーに配してある手元のトランシーバーを通して伝える。

 

 尚、全ての決定権、責務はあゆむが持つ。

 

 故にあゆむの指示は絶対だ!

 

 それを前提として各班の発表を行う。いいか?」

 

「勿論だ〜!!!」

 

「ちょっと待ってよ!ボクはそんなの承認しないよっ」

 

 その言葉で辺りはシーンとなった。

 

 皆は表情が暗くなり俯いた。

 

 手塚くんは溜息をつく。

 

 そしてボクの耳元に向かって囁いた。

 

「聞くところによると、あゆむは生徒会長に立候補するんだろう??」

 

「なっ、なんでそれを!?」

 

「俺の情報網をナメてくれるなっ」

 

「・・・・・・」

 

「選挙には票が必要なんだろう?これで確実に男子の票は信任の方に流れる。

 

 そうすると有利だろう、やり易いだろう?」

 

「いやっ、でもそんな方法で支持を得ても・・・・・・」

 

「あゆむはあんなに盛り上がっていた男子達をこんなにもモチベーションを下がらせた義務がある。

 

 それでも何か?!あゆむはこのまま義務を果たさなくて、こんなにも傷心の男子を放って置くようなそんな冷酷人間だったのか?」

 

「そんなことは・・・・・・ないけどさ・・・・・・でも」

 

「お許しが出たぞー」

 

 言葉は遮られた。

 

 その御達し的なもので皆はまたすぐにさっきまでのテンションに戻った。

 

 皆、とんだ芝居役者だっ!

 

「でも女子が許しはしないでしょ」

 

 ボクは問題点を浮き彫りにしようと核心且つ痛い所を衝く。

 

 なんとかやめさせたいという気持ちが大きかったからだ。

 

 だってハイリスクだし・・・・・・。

 

「バレなければいい。そうだよなぁ〜?!」

 

 手塚くんは首を後ろに倒して皆に投げ掛ける。

 

「「そうだーっ!!!」」

 

 国会演説の与野党じゃないんだからそんな後押しする事でもなかろうに・・・・・・。

 

 ボクの気持ちは複雑。

 

 それはボクだって男の子なんだからそりゃあ皆と同じ気持ちが少なからずある。

 

 でも・・・・・・。

 

 腕を組んだ手塚くんは皆の後押しを聞いて頷く。

 

「という訳だ。どうか皆の意向をもとい希望を踏みにじらないでくれ!

 

 その希望を実現し幸福へと代替するには溶媒としてあゆむという素晴らしい人間が必要なんだ。

 

 そうだよなぁ〜?!」

 

 再度首を後ろにして皆に投げ掛ける。

 

「「あゆむ様は希望の使徒だ〜!!」」

 

 それを受けて手塚くんは再び頷く。

 

 そして手塚くんが更に押してくる。

 

「あゆむは俺達にとってかけがえのないたった一人の親友なんだよ!」

 

「「そうだ〜!!」」

 

 なんか・・・・・・嬉しくなってきたよ。

 

 皆の目がキラキラ輝いている。

 

 中にはお祈りを捧げている人もいた。

 

「もしバレたらどうするの?」

 

 ちゃんと失敗した時の事を考えておかなきゃダメだ。

 

 というかまだ進んでやろうとは思わなかった。

 

 皆の意志はよく伝わったけど、かと言ってそれを肯定することは困色を示す。

 

「バレた時の事を考えていたらやっていけるはずがない。

 

 男なら突き進むしかないんだよ、あゆむ」

 

 ボクはじっと考え込んでいた。

 

 この状況をどうしようか・・・・・・。

 

 しかし状況の決定打は手塚くんのある一言で決まってしまう。

 

 手塚くんは再びボクの耳元まで近づいてきて囁いた。

 

「この前白木さんと仲良く話してただろう」

 

「あれはただ挨拶してただけだよ」

 

 そう弁明すると手塚くんは懐からある写真を取り出し、ボクに提示した。

 

 その写真には教員室の前で白木さんとボクが笑っている所が写っていた。

 

 ボクはギクりとした。

 

「こっ、ここ、これは……」

 

「これを白木さんのファンクラブに持って行ったらどう思うだろうな〜……。

 

 ちなみにファンクラブはこの学校の全学年を含め約3割。でもその数字をなめるなよ!

 

 この学校の生徒数の30%という意味……わかるな?」

 

 ボクの顔に焦りが見え始める。

 

 いつ撮ってたの!?しかもこの距離からのアングル・・・・・・。

 

 これを持って行かれたら・・・・・・、想像しただけで憚られる。

 

 額からは汗が流れ出る。


 恐るべし、手塚くん。

 

「分かったよ。じゃあこれからどうするの?」

 

「よし、それでこそ俺のいや、俺達のあゆむだ!では会議を始める」

 

 皆はその声を聞くなり前からの席に詰めてどんどん着いていく。

 

 手塚くんは起動したパソコンを持って前方に歩き出した・・・・・・。


お読み戴きましてありがとうございます。


今回から少し繋がりのあるストーリー展開(前篇・中篇・後篇のような感じですかね)を繰り広げて参ります。

楽しんで戴ければ至極の極みです。


尚、感想・評価・応援メッセージなど送って頂けると執筆活動が更に円滑になってゆき、更新スピードも早まるかと思うのでこの作品に好感を持たれている方はどうぞ宜しくお願い致します。


それではまた次のストーリーも読んで戴ければ幸いです。


※追記


11月に仕事が急遽入ってしまって12月初旬までピークを迎えそうです。

その為誠に勝手ながら更新が出来ない状態になりそうです。

皆様には本当にご迷惑をお掛けしますが何卒ご理解とご協力の程お願い致します。

加えて連載のストックも足りない状況となっていまして皆様のコメントやご評価で

期待の声が多ければ無理をしてでもこの一ヶ月間で1〜2話更新したい気持ちです。

しかしこれはあくまで意志ですのでそれが叶わない場合もあると思いますのでご了承戴きたいと思います。


執筆者 Tale Jack

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