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Achieve〜与えられた試練〜  作者: Tale Jack
★第一章 【第一の試練】
19/56

13.水島の不在

 それはある6月後半の頃。

 

 朝、いつも通り学校に雪穂さんと一緒に登校してきた。

 

 

 

 最近のボクの悩みはグッスリ寝ること、いわゆる”グッスミン”出来ない事。

 

 不眠症とは若干異なる。

 

 レム睡眠とノンレム睡眠の振幅の変動の・・・・・・。

 

 そんなボクの悩み話を淡々と述べても誰も解決なんてしてくれないでしょうね。

 

 だから心の中で、色々ソリューション的思考に基づく提案を一人で寂しくディスカッションしていますよ。

 

 まぁこんな悩みのあるボクは当然この”グッスミン”出来ない事が身体の表面上に出てくるわけだ。

 

 例えば目の下のくまとかね。

 

 これを結構、手塚くんにイジられたよ。

 

「あゆむは何をそんなに頑張っているのさ。もしかして・・・・・・PCゲームとか?」

 

 ここでまず誤解を解いておく必要がある。

 

 手塚くんの言うPCゲームとはあの男性マニアが夜中にやってグヒヒとか笑っているイメージの強い、

 

 というかそういう先入観をもたれているアレである。

 

 勿論ボクはそんなモノを一つも持ってはいないし,やる気も毛頭おきない。

 

 否定するわけじゃないんだけどね。

 

 ただそんなモノは現役高校生がやるモノじゃないと思うから。

 

 だってボクたちって一応青春時代を生きているのだよ。

 

 プラズマ的に楽しまなきゃ。

 

 この事を手塚くんに言ってあげたい。

 

 でもその状況下の中では言う事が困難であった。

 

 ボクの立ち位置が被告人のポジションにあるからである。

 

 そこから逆に原告側、ましてや裁判官側に回ることは出来ないと言って恐らく過言ではない。

 

 しかしちゃんと誤解は解いておいた。

 

 まぁ、まだちゃんと受容されていないんだけどね。

 

 今日もいつも通り誤解を解いてゆく必要がある。

 

 毎日聞く理由性からそんなシチ面倒くさい事をしなきゃならない。

 

 おそらくコレはボクの顔のくまが取れるまで。

 

 

 

 学校までは他愛のない雑談などして、あっという間に学校の校門まで着いた。

 

 ボクと雪穂さんは昇降口で別れた。

 

 教室に向かう為、上履きに履き替えて階段を昇って行く。

 

 最近男女問わず、編入当時に比べて声を掛けられる頻度が高くなった事が嬉しい。

 

 新しい学校に溶け込んできたのかなぁとちょっと自信がつくからである。

 

 今日もまた声を掛けられるかなっと若干心が躍動やくどうしていた。

 

 案の定、結構挨拶される。

 

 それとは対照的方向、背後から

 

「あゆむ様」

 

 勿論振り向かずとも大体誰かは検討がつく。

 

 ボクの身の回りのヘルピングや屋敷と学校間の送迎をしてくれたりする人。

 

 あのいかついサングラスを掛けたあの男性ヤクザでしょ。

 

 でもアノ人は実はボクにとっての救世主メシアでもある。

 

 忘れ物を届けてくれたりしたしね。

 

 忘れ物と言っても教科書とかそんな面積の大きいものではなくて、例えば物理の記録テープとかね。

 

 しかも驚くことにそれはボクの部屋レンタルの机の引き出しの中に入ってたやつ。

 

 あれを渡された時は目が飛び出しそうになったくらいの気持ちだったよ。

 

 その日物理の加速度のレポート提出でその記録テープも出さなきゃいけなかった自分にとっては、

 

 ソレを忘れることは死活問題であるから本当に平賀さんが届けてくれて助かったんだ。

 

 一瞬、平賀さんがゼウスに見えてしまったものね。

 

 まぁ、信仰心はまだ薄いけどね。

 

 しかし平賀さんは屋敷のコック達の作った食事の味見をしたりして、ソレを指摘したりもしている。

 

 雪穂さんによると平賀さんは調理師免許を取得していて、洋・和・中全ての頂点とも囁かれる

 

 世界料理大会ワールドクッキングコンテストにおいて毎年優勝しているとか。

 

 雪穂さんの料理の腕も平賀さん仕込みらしい。

 

 だからこの前の雪穂さんの手作りのお弁当も元を辿れば平賀さんが原点に位置する。

 

 これはどちらを凄いと言っていいのか・・・・・・。

 

 まぁ、ここは二人とも凄いんでしょうね。

 

 つまり平賀さんは多面的用途性があるわけだ。

 

 すなわち執事というポストに一番最適な人物であろう。

 

 たとえ、サングラスによっていかつい顔に仕上げられたとしても・・・・・・。

 

 外見で人を判断しちゃダメだって事だね。

 

 そんな事を思いつつ後ろを振り返る。

 

 しかし、そこにいたのは自分の予想とは全く異なる人物がいた。

 

「おはようございます」

 

 スーツ姿に銀のフレームの眼鏡をかけている男性が立っていた。

 

 髪は金髪で後ろで束ねている。

 

 やけに黒のスーツ姿がこの人の顔にマッチングしている。

 

 男子のボクから見ても眼鏡がよく似合う美男子であった。

 

 少し外国人に見えなくもない。

 

 要は今で言う”イケメン”なのかもしれない。

 

 始めてみる顔・・・・・・。

 

 なんでボクの名前を知ってるんだろう。

 

「あっ、はい、おはようございます・・・・・・」

 

 戸惑い、言葉がたじろぐ。

 

 ボクが困った表情をしているのを見てかすぐにその美男子は

 

「申し遅れました。私は源家関東本部専属執事お側御用室室執務長、色部しきべ 愁作しゅうさくと申します」

 

 初対面な事に変わりはない。しかも日本人。

 

 聞いたことのない名前。

 

 大体ボクの家って一体どういう構成されてるのさ。

 

 しかもなんか名前の前に役職らしきものついてるし、なんか全国に部署がある的な匂わせ方もさせてるし・・・・・・。

 

「ええ・・・・・・こっ、こんにちは・・・・・・」

 

 更に戸惑いを隠せない。

 

「源家関東本部専属執事大御所執務室第一尉の水島みずしま 智法とものりの代行役として参上仕つかまつりました

 

 次第でございます。

 

 本日は、水島より言伝ことづてを預かっておりますのでそれをお伝え致します」

 

 色部さんは眼鏡をクイっと上にあげる。

 

 眼鏡の奥の瞳は真剣そのものだ。

 

「はい、なんでしょうか」

 

 一呼吸置いてから色部さんは口を開いた。

 

「もうすぐ生徒会選挙を行い下さい。

 

 御当主様は期限をあゆむ様に仰っていらっしゃらないかと存じますが、御意向と致しましては夏休み前までに行いたいとの事でした。

 

 あゆむ様は生徒会長に立候補されるのですよね」

 

「ええ、はいっ」

 

「そう致しましたらまず支持者を最低3名お集めくださいませ。

 

 その人数が集まり次第、学校長に申告してください。

 

 この学校には生徒会という組織は存在していたものの今となってはそこの中身がない状態なので生徒会選挙というのは

 

 ここ近年行われておりません。従って、こちからから申告をしなければ生徒会組織の骨組みができません。

 

 加えて、この学校の生徒会という集団の令というのがありまして、私も詳しくは存じ上げておりませんが、

 

 どうやら生徒会長以外の役職のポストは立候補制度を執っておらず、生徒会長による推薦によって決定するとの事です。

 

 故に、あゆむ様が前もって何方どなたかをその各々(おのおの)のポストに位置づけるのかをご自身で決定なさって、

 

 その方々に事前にアポイントメントを取っておく必要があるようです。

 

 ちなみに生徒会のポストの数はその年々(としどし)の生徒会長によって変動しています。

 

 故にどの仕事をどのカテゴリーの中に入れるかも考慮すべき点になって参ると思います」

 

 突然言われて上手く脳で処理できず、処理できるまで少し時間を要した。

 

 今まで忘れてた訳じゃないけどいつ選挙とかすればいいのかなって思ってた。

 

 そう思いつつも全然なにも行動を起こしてなかったんだけどね。

 

 そういえば白木さんが前に生徒会に何かあったみたいなこと言ってたな。

 

 なんか色々やることが多そうだよ・・・・・・。

 

 でも頑張らなきゃ!

 

「わざわざありがとうございます」

 

「では」

 

 そう言ってボクに向かってお辞儀をし、色部さんは方向転換し、階段を下り始めた。

 

「あのっ」

 

 ボクはその色部さんを引き止める。

 

 そうしたのはちょっと気になることがあったからだ。

 

「はいっ?」

 

「水島さんどうかしたんですか」

 

「娘さんの運動会だとかでそちらに行っております」

 

 あの人結婚してたんだ。

 

 いいパパだね。

 

 でもあの人って一体いくつなんだろう・・・・・・。

 

 ささやかな疑問だった。

 

「そうですか・・・・・・」

 

 若干、風邪でもひいたのかと心配してしまった。

 

「水島の家庭環境は以前は悪かったのです。

 

 水島は源家の執事、仕事ばかりに一生懸命になっていて家族の事などに目をあまり向けていなかったのです。

 

 ちなみにこの事は水島からケンカのあと相談に乗らされました。

 

 ケンカというのは夫婦間も含まれますが特に娘さんとの騒動は水島の心に大打撃を与えたようです。

 

 その事がきっかけで水島は自分のあり方を見つめ直して、現在は家族仲円満なようです。

 

 しかし今度は執事としての仕事がおろそかになってきています。

 

 休みを取りすぎなのです。

 

 まぁ、でも以前よりとても表情が豊かになった感じがします。

 

 さっきメールで『アンパン二人三脚親子競争で一位になった』というメールとその写真が送られてきました。

 

 家族全員満面の笑みで写っていました。

 

 家族とはいいものですね・・・・・・、っと、私はもう仕事に戻らなければ。

 

 それでは失礼致します」

 

 色部さんはお辞儀をしてそのまま何処かへ消えてしまった。

 

 水島さんにそんなことがあったんだね・・・・・・。

 

 ボクはその場でしばらく水島さんの顔を思い浮かべていた・・・・・・。

お読み戴きありがとうございました。

感想・評価等をして戴ければ至極の限りです。


また次のストーリーも見て戴ければ幸いです。

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