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Achieve〜与えられた試練〜  作者: Tale Jack
★第一章 【第一の試練】
18/56

12.昼食

「それでは参りましょうか」

 

 なんだか知らないけど木野城くんは雪穂さんの背中に手を回し歩き出した。

 

「ええ」

 

 という返答と共に雪穂さんもそれにつられて前へと歩き出す。

 

 ボク置き去りですか?!

 

「あゆむさん、行きましょう」

 

 雪穂さんが振り向いてボクに微笑んで呼びかけた。

 

 やっぱり雪穂さん優しいよ・・・・・・、ちゃんとボクを忘れてない。

 

  ボクは急ぎ足で雪穂さんの後ろについて行く。

 

 そしてボクたち一行は高い建物、色々な特別教室があったりする1号館に入っていった。

 

 エレベーターで17階に行き着く。

 

 ピーンポーンと調子のいい音が鳴ってエレベーターの扉が左右に開いてゆく。

 

 徐々に目の前の光景が広がっていく。

 

 そこはとても建物の中とは思えないほどの場所だった。

 

 何処かの庭園かと思えるほど照葉樹林や観葉植物が植えられており地面一体は芝生が緑々と生い茂っていた。

 

 その伸び具合は丁度よくて毎日手入れをしているとうかがえた。

 

 そして白い丸テーブルやそれに調度の合った西洋風の白い椅子。

 

 そして右方はガラス張りで太陽が差し込んでくる。

 

 加えて何処からか鳥のさえずりが聞こえる。

 

 まさに清潔感漂う雰囲気だ。

 

「あそこにしましょうか」

 

 木野城君が空いているテーブルを指差して言った。

 

「でも椅子が一つ足りませんね・・・・・・」

 

 雪穂さんが残念そうな面持ちでそうもらした。

 

「・・・・・・、自分のモノは自分で持ってきたらどうかな?」

 

 木野城くんがボクに視線を送る。

 

 やっぱり性格良さそうだけどそれは外見上だけ!?

 

 教養ありそうだと思ったのに・・・・・・。

 

 周りを見渡してみる。

 

 どこも人が座っていたりしていて空いている椅子なんてありそうもない。

 

 雪穂さんは心配そうにボクの方を見る。

 

「・・・・・・ちょっと探してきます」

 

 ボクは後ろの方向に足を出してゆっくりと歩き出した。

 

「あゆむさん、待ってください」

 

 そこで雪穂さんが呼び止める。

 

 なんだろう・・・・・・。

 

「はい?」

 

「椅子が二つでもいいじゃないですか」

 

「えっ?」

 

 何を言ってるのか分からない。

 

 椅子が二つしかないんだから二人しか座れないじゃないか。

 

 というかこのまま立ち去るっていう選択肢もあったと思うけど折角雪穂さんに誘ってもらったし・・・・・・。

 

 ボクは訝しげな眼差しでに雪穂さんを見た。

 

「半分ずつにしませんか」

 

 半分ずつ?

 

 どういう事?

 

 椅子を真っ二つに切って座るって事??

 

 勿論違うと思うけど・・・・・・。

 

「私と半分ずつ椅子に座りませんか・・・・・・、駄目ですか??」

 

 ボクが雪穂さんと一つの椅子に座るって事。

 

 色々な座り方が考えられるけど流石に雪穂さんに抱っこパターンはないよね・・・・・・。

 

 それはいくらなんでも興奮してしまうよ・・・・・・。

 

「いえ、駄目じゃないですけど、雪穂さんに悪いですし・・・・・・」

 

 すると雪穂さんは片手を振って答えた。

 

「悪くなんてありませんよ。今までそんな経験ありませんでしたからやってみたいなって思いまして」

 

「ちょ、ちょっと待ってください!!」

 

 そこに木野城くんが割って入った。

 

 そして雪穂さんの目の前に立ちはだかった。

 

「ゆっ、ゆゆ雪穂さんっ?!私と一緒に座りましょう位置的に私と雪穂さんが一番椅子に近いですしっ」

 

 木野城くんはなんだか慌てた様子だった。

 

 そんなに彼はこんなシチュエーションが羨ましかったのか。

 

 でもちょっと残念だなぁ。

 

 雪穂さんと一緒に椅子を半分こずつにして座れたかもしれないのに・・・・・・惜しい事をしたかもしれないなぁ。

 

「すみません、それはできません」

 

 雪穂さんは深々と頭を下げた。

 

 断った!?なんで、ボクは目を見開いて雪穂さんを見つめていた。

 

「どういう事ですか?源グループの御曹司とは出来て私とは出来ないんですか!?」

 

 木野城くんはてのひらを上にして上下させた。

 

「あの・・・・・・、その・・・・・・」

 

「ええ!何かあるのならハッキリ言って戴きたいです」

 

「あっはい・・・・・・そこまで仰るのなら・・・・・・身体が大きいんです、あのっその・・・・・・晴紀さんの・・・・・・、

 

 ですから椅子の大きさから言って晴紀さんと二人で座ることは困難です、ゴメンなさいっ」

 

 再び雪穂さんは深々と頭を下げた。

 

 木野城くんは口をポカーンと空けて凝固していた。

 

 確かに身長165センチのボクの方が木野城くんより遙かに低い、加えて身体も大きくない。

 

 そして若干間が空きやっと木野城くんが口を開く。

 

「そっそそ、そうですよね。では雪穂さんは一人席の方に行って下さい。

 

 私は仕方なく、いえ是非、進んで自らあゆむ君と一緒に座りたいと思います、いえ座らせてください!!」

 

 はいっ!?

 

 流れ的に意味が分からないのですが一体どういう事??

 

 ボクがなんで木野城くんと一緒の席に半分こずつして座らなきゃいけないの!?

 

 ボクはBLじゃないからね。

 

 木野城くんの笑顔が引きつっている。

 

 木野城くんの方を見ていたら目が合った。

 

 確実にあの目はボクを威嚇いかくしてる目だよ。

 

「いいんですか」

 

 そう木野城くんに優しく問いかける。

 

「・・・・・・ええ」

 

 さらに木野城くんの口元が上に吊り上り、加えて眉間にしわを寄せている。

 

「ではお言葉に甘えまして」

 

 そう言って雪穂さんはゆっくり一人席に腰をかける。

 

 ボクは木野城くんの方を見る。

 

 木野城くんも視線をゆっくりと合わせる。

 

 ゴクリっ。

 

 これはやっぱり木野城くんと一緒に座るパターンなのっ!?

 

 ここは雪穂さんに気づかれないように囁き声で木野城くんに話そう。

 

「なんでボクと一緒に座るなんて言ったの!?」

 

「雪穂さんとキミが一緒に座っているところなんて見たくないからその回避術に決まってるだろうっ!!勘違いしないでくれっ」

 

 木野城くんも小声で返答する。

 

「どうしたんですか、お二人とも」

 

 雪穂さんが催促の声をボク達に投げかける。

 

 そして二人一緒に椅子の方を凝視くする。

 

 やっぱり何回見ても一つには変わりがない。 

 

 これは・・・・・・、ボクと木野城くんの額からは普通と違う汗が流れ出ていた。

 

 そして

 

「何とか座れましたね」

 

「ええ、お陰様で」

 

 木野城くんが笑顔で答える。

 

 それにしても木野城くんの背中とボクの背中は相対している。

 

 それぞれ別の方向を見ているのだ。

 

「さぁ、戴きましょうか」

 

 雪穂さんが桜の模様が散りばめられている風呂敷の結び目を解いてゆく。

 

 解くとスルスルっと勢いよく四方に布が落ちた。

 

 中身はやはり黒の漆を基調とした重箱。

 

 しかも結構重段が高い。

 

 ひぃ、ふぅ、みぃ、よぉ、5段!?

 

 そして雪穂さんはゆっくりとその重箱を解体してテーブルに並べてゆく。

 

 煮物、西京焼き、肉じゃがその他にも格段の重箱にはぎっしりと和食が詰まっていた。

 

 雪穂さんが両人差指を当てたり離したりしている。

 

 そして視線を落としながらボク達に若干上目遣いで言った。

 

「え、えっと、どうぞ、召し上がってください。

 

 お口に合うかどうか分かりませんが・・・・・・」

 

 ボクの胸を何かが締め付ける。

 

 なんかこういうシチュエーションいいかも・・・・・・。

 

 ゴクリっ。

 

 隣から唾を飲む音が聞こえる。

 

 木野城くんは目を見張ってお重一点を見つめている。

 

「じゃっ、じゃあいただきます!」

 

「ええ」

 

 そう自分のポケットから箸を取り出して玉子焼きに手をつけた。

 

 どっから持ってきたの、その箸?

 

 そして結構がっつくんだね、もう早々と6種類の料理に手をつけ始めているよ。

 

 木野城くんは口一杯に料理を詰め込んだせいか頬っぺたが膨らんでいた。

 

 とっても幸せそうな笑みを浮かべている。

 

「ゆきふぉさん、ふごくふぉいすぃです!どれもこれも、家のシェフなんか足元にも及ばない!!

 

 流石です、世界一です!」

 

 言葉の序盤、木野城くんは口の中をモグモグさせながら言った。

 

 なんかちょっと下品じゃない?

 

 これで食べ物が飛んで雪穂さんの顔に飛んででもしたら取り返しつかないよ。

 

 ともあれ、木野城くんがこれでもかというくらいに弁当を褒め称える。

 

 いわゆるベタ褒めだ。

 

「そうですか、そう言って戴けると嬉しいですっ」

 

 雪穂さんは優しく微笑んで木野城くんに言った。

 

 ふと雪穂さんはボクの方に視線を転換する。

 

「あゆむさんは召し上がらないんですか」

 

「え、えっと・・・・・・」

 

 どっかの人と違って箸がないんですよ。

 

 ボクは視線を真横に送る。

 

「すみませんっ!箸がありませんでしたね、どうぞ」

 

 慌ててそう言ってボクに箸を手渡す。

 

 雪穂さんの手って綺麗だなぁ。

 

 白く透き通ってて指も細いし・・・・・・。

 

 ボクは見とれていた。

 

「どうしたんですか」

 

「いっ、いえ、なんでもありません!」

 

 そう弁明して箸を受け取る。

 

 −−−−−−しかし

 

「イッテっ」

 

 箸はスルスルとボクの指をすり抜けていって地面の芝生に落ちた。

 

「どうしたんですか」

 

 雪穂さんが驚いて心配の面持ちでボクに尋ねた。

 

 さっきの拳がズキズキ痛む。

 

 ボクの手先に幾度か微衝撃が走る。

 

「手をさっき壁にぶつけちゃって・・・・・・」

 

 ボクは作り笑いをして雪穂さんに話した。

 

 でもこれじゃあ雪穂さんのお弁当食べられないよ。

 

 食べたかったのに・・・・・・。

 

 手を無意識の内にさすっていた。

 

 ボクは溜息を漏らした。

 

 そんなボクを見てなのか雪穂さんが椅子を引いてボクの方へやってきたかと思ったら、

 

 いきなりボクの手を取った。

 

「大丈夫ですか・・・・・・」

 

 そう言ってボクの裏拳辺りに目を近づける。

 

「え、えと気にしないで下さいっ、家に帰る頃には自然治癒しますから大丈夫ですよ」

 

 ボクは慌てて手を引っ込める。

 

 こんな手を取られただけなのに女の人ってだけなのにこんなに緊張するものなの!?

 

「あゆむさんっ、ダメですよっ!!そういうのを放っておくと後で後悔しても取り返しがつかない場合だってあるんですよ。

 

 ですから今回は私が食べさせてあげます!」

 

 はい!?

 

 今なんと仰いました?食べさせる?ボクにですか・・・・・・。

 

 そんなハズない。

 

 うん、絶対聞き間違いだよね!

 

「もう一回言ってくれますか」

 

 ボクは疑いの余地満々で雪穂さんに尋ねた。

 

「ですから、今回は私があゆむさんにお弁当を食べさせてあげたいと思います!」

 

 そう真剣に言い放つ雪穂さん。

 

 やっぱり聞き間違いじゃなかった・・・・・・、隣から嫌なオーラ出してるような・・・・・・。

 

 ボクは隣を横目で見てみた。

 

 さっきまでみるみる内にお弁当をたいらげていっていた木野城くんの箸が止まってるよっ!

 

 そのせいで玉子焼きがポロッと箸から転げ落ちた。

 

 というか、またしても玉子焼きですか?もしかして好きなの??

 

 しかも悲壮感たっぷりに俯いてるし・・・・・・。

 

 そう横目で見ているボクにいきなり俯きかげんな姿勢をとっていた木野城くんがいきなり顔を上げてボクを凝視した。

 

 こっ、コワイ・・・・・・。

 

 最初に会った時はかなり良心的な人かなって思ったのに・・・・・・。

 

「いえ、いいですよ、雪穂さんに迷惑がかかりますし・・・・・・。

 

 折角お誘い戴いたのに申し訳ないですけど、今から保健室に行って湿布張ってきますから今日のお昼は遠慮させてもらいます」

 

 これ以上状況を悪化させたら木野城くんになにされるか分からないしここは一旦引くしかない。

 

「でしたらお気になさらないで下さい。

 

 私は他の方に食べさせて差し上げるのは苦ではありませんから、ただしやって差し上げた人は過去にいませんけど・・・・・・」

 

 そう言われると逃げ道がなくなっちゃったよ。

 

 どうしよう・・・・・・。

 

 あぁ、もうここは!

 

「じゃあすみませんが・・・・・・お願いします・・・・・・」

 

 ボクはこそばゆい感情で雪穂さんにお願いをした。

 

 雪穂さんはにっこり笑って返答する。

 

「ええ」

 

「ちょっ、ちょっと、待ってください!」

 

 そこでまたしても木野城くんが割って入ってきた。

 

 さっきよりも必死さがうかがえるほどの見幕だった。

 

「はい?」

 

 雪穂さんは首をかしげながら木野城くんの方を見る。

 

「ゆっ、雪穂さんにそんなご面倒な事はさせません」

 

「ですから、私は別に苦でもなければ面倒でもありません」

 

「しっ、しかし・・・・・・」

 

 木野城くんはポケットから白いハンカチを取り出して額の汗を拭った。

 

 そしてなにかひらめいた様に突然、

 

「わっ、わわ私があゆむくんに食べさせてあげましょう。で、ですから雪穂さんはそこで召し上がっていてください。

 

 雑務は私に任せてください!」

 

 雑務って・・・・・・傷つくよ。

 

 まぁ確かに他人からしたらそうだと思うけどさ、ハッキリ言わなくても・・・・・・。

 

 しかも待って!今なんか聞きなれない言葉言わなかった!?

 

 まさか・・・・・・

 

 ゆっくりと木野城くんと目を合わせる。

 

「わっ、私が食べさせてしんぜる!」

 

 ボクの額からは嫌な汗が流れていた。

 

 木野城くんからは目の下にも若干水滴が。

 

 ぼっボクは嫌だからね!

 

 そんな木野城くんに食べさせてもらうなんて、だってボクは・・・・・・

 

「ボクはBLの趣味ないんだってば!!」

 

 ボクは木野城くんに小声で若干切実にこう言い切った。

 

 すると木野城くんは首を幾度も横に振った。

 

「なな何を言ってるんだ!?かん、勘違いしてもらっちゃ困るっ!

 

 私だってそんな趣味はさらさらないさ。しかしこのままだと雪穂さんがキミに食べ物をア〜ンといった形の、

 

 なんとも目も当てられないような状況下に客席として私がいざなわれるような事になるじゃないか!!

 

 それだけはなんとしても避けなければいけないっ。

 

 故になんとも屈辱的な事だがキミに弁当を食べさせてやる!っさ、口を開けるんだ!

 

 しかし、私に食べさせられて・・・・・・おっ、おお美味しいなんて微塵も感じるんじゃないぞっ。

 

 わわ、私もそんな趣味は一切ないんだからなっ!!!」

 

 木野城くんが必死に理由を説明し忠告する。

 

 要はあくまでボクを雪穂さんと接近させないようにしたいわけね。

 

 加えてボクも同じ事思ってたよ。

 

 ボクに食べさせることが快感だなんて微塵も思ってくれないでよ。

 

 気持ちが悪い事に拍車がかかるから。

 

 そして口が塞がってるボクに無理やり箸を使ってボクに薩摩芋の甘酢漬けをくっつける。

 

 これは拷問じゃない!?

 

 もしこれが他の人に見られたら・・・・・・。

 

「ほっほらっ、大人しく雪穂さんの手作りのありがたいお弁当を食べるんだ!

 

 口を開けろってっ!」

 

 ボクは尚を必死に抵抗した。

 

「見てくれが悪かったでしょうか?」

 

 そう雪穂さんが落ち込んだ表情でボクに問いかける。

 

「ふぃっ、ふぃえ、しょんなこと、んぶぐっ」

 

 雪穂さんの状態を見てか更に木野城くんの箸の加圧が激しくなってくる。

 

 決して嫌じゃないんだけど男の人に食べさせてもらうって言うのがホントに嫌、

 

「みなもと君??」

 

 背後から声がする。

 

 やはり聞いた事のある声だ。

 

 マズイっ、ここは!

 

 ボクは振り返る瞬間に木野城くんの箸に刺さっていた薩摩芋の甘酢漬けをパクッと口で箸から抜き取る。

 

 そこに居たのはこの前ノートを運ぶのを手伝ってあげた黒のロングショートの髪型の女の子。

 

 確か・・・・・・白木さんだっけ。

 

「こっ、こぉんにちぃわ」

 

 口に御芋が入ってるから言いづらい。

 

「みなもと君口の周りになんかベタベタしたものが付いてるよ。

 

 ちょっと待ってね」

 

 そう言ってポケットからピンクのハンカチを取り出して人差指を基盤としてそのハンカチをあてがって

 

 ボクの口の周りを拭いた。

 

 そっそんな、結構マズイ状況下に置かれてるのにそんなこと!

 

「はい、取れたよ!」

 

 隣からの視線を感じる。

 

 そしてボクの耳元に近づいてくる。

 

「キミは白木嬢にも手を出しているのか?

 

 アイドルという位置に君臨している彼女に心を奪われるなんて、君もそんな程度か。

 

 確かに君はオパールの原石を磨いているかもしれない。

 

 しかし私はダイヤモンドの原石を磨いて将来それを自分の左手薬指に・・・・・・ッフフ。

 

 フンっ、まぁいい。だったら雪穂さんは諦めてもらうぞ!

 

 私はキミとは違って雪穂さん一筋だから、っん!?」

 

 なにか起こったらしい、白木さんから視線をそむけ動作主の方へと首を動かす。

 

 そこには何人ものお弁当箱を持った女子生徒が立っていた。

 

 結構カワイイ部類の女の子が木野城くんを半囲いしていた。

 

 その子達が不安そうな面持ちで木野城くんを見ていた。

 

「なんだ、キミ達は?」

 

 木野城くんは周囲を見回しながらそう言った。

 

「今日私のお弁当を食べてくれるんじゃなかったんですか?」

 

「私のも食べて戴けるというお話じゃ・・・・・・」

 

「私だって約束しましたよっ!」

 

「あたしも約束したわっ」

 

「私も〜」

 

 皆が皆口を揃えてそんな事を言う。

 

 木野城くんって女ったらしだったんじゃないか!

 

 雪穂さん一筋なんて言ってさ。

 

「ままっ、待て待て!!わわ、私はそんな約束はしていないぞ!

 

 雪穂さん一筋のこの私がっ!!!」

 

「いいえ、先輩が吉永さんを通して話をしろって仰ったんで吉永さんにアポイントメントちゃんと取ったんです。

 

 OKという返事でした!だからこれから私と一緒に食べるんですっ!!」

 

 その中の代表格的女の子が言った後に皆が首を縦に振った。

 

「あたしとも食べるんだからっ!!!」

 

 そんな声が幾度も連呼された。

 

 吉永さん?あぁ・・・・・・あの運転手の人か、って事はこの人たちは皆吉永さんからOKもらえたって事!?

 

 気づけばどんどん木野城くんが女子の渦へと飲み込まれてゆく。

 

 なんとも可哀相だよ、そしておいたわしい。

 

「吉永ぁ〜ッ!!!」

 

 そう叫んだのを最後に木野城くんは女子達に引っ張られてどこかに消えてしまった。

 

 残ったのはボクと雪穂さんと白木さんだった・・・・・・。

 

 「この間はごめんね、季節があんな事言っちゃって・・・・・・。

 

 でも分かってあげて!季節も悪気があって言ったわけじゃないと思うの。

 

 私の事を心配してくれてみなもと君に強く言っちゃったの・・・・・・。

 

 悪いのは私なの!私がちゃんとあそこで事情を説明してれば」

 

 白木さんが落ち込んだような顔をして俯いた。

 

 そうだ・・・・・・、志倉さんに誤解をさせてたんだ。

 

 でももうボクは大丈夫、だって雪穂さんに導いてもらえたから!

 

 って別に雪穂さんがどこぞの教会のシスターじゃないんだけどね。

 

 「いや、白木さんのせいじゃないよ!

 

 ボクもそんな疑われるような余地があったから言われたんだし、気にしないでよ」

 

 ボクは笑顔をもって白木さんの状態を改善しようとした。

 

 「許してくれるの」

 

  白木さんは顔を上げて思案しながらボクの方を見つめる。

 

 「いや、許すもなにも白木さんは何も悪いことしてないって、というか誰も悪いことはしていないよ」

 

 「みなもと君って優しいんだね・・・・・・あらっ・・・・・・」

 

 白木さんの視線はボクの頬の横を向いていた。

 

 ボクは振り返る。

 

 その先には椅子を引いてお辞儀をしている雪穂さんが見えた。

 

 「詩条さん??」

 

 雪穂さんは頭を起こした。

 

 そういえばこの二人って一応知り合いだったっけ。

 

 「お元気そうですね、白木さん」

 

 「ありがとう詩条さんっ!今日はみなもとくんとお弁当?」

 

 「ええ」

 

 「お重に入ってるお弁当なんて初めて見たわ」

 

 「よろしければ召し上がりますか」

 

 「いいの?」

 

 「是非召し上がってみてください」

 

 白木さんは箸を取ってひじきの煮物を一口。

 

「おいしいっ!詩条さんってお料理上手なのね〜」

 

「いえそんなことは、ただ子供の時からお料理はやっていましたから慣れているだけです」

 

 そう言いながら手を左右に振る。

 

 「子供の時から・・・・・・か、みなもと君も幸せだね!こんなお弁当食べれるなんてっ」

 

 その時白木さんのスカートのポケット辺りからプルルという音が鳴る。

 

 白木さんは携帯を取り出した。

 

 「もしもし・・・・・・?分かったわ、うん、すぐ行くっ」

 

 そう言って携帯を再びポケットにしまった。

 

 「ちょっと社長に呼ばれたから行って来るね!詩条さん、お弁当ホントに美味しかったっ。

 

  ありがとね。またね!!」

 

 そう言って白木さんは立ち去ってしまった。

 

 その後午後の授業が迫っているというのでお弁当もそこまでで切り上げて雪穂さんとボクは


 各自のクラスへ戻った。


お読み戴きありがとうございました。

感想・評価等をして戴ければ至極の限りです。


また次のストーリーも見て戴ければ幸いです。

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