2話~再会~
更新不定期ですがよろしくお願いします!
親切な彼に教えてもらった道を歩くこと、数10分。
険しい山道がコンクリートの道路に変わり、歩きやすくなった。
1本道だった道路がだんだん開けてきて、車2つ分でも通れるくらいになった所で、1軒の民家を見つけた。
「ここが、おばあちゃんの家かな?
……って、大きくない!??」
予想以上の家の大きさに戸惑ってしまう。
8年前にも来ているはずだが、その時の記憶はうっすらとしか残っていない。
8年前ということは……7歳の頃かな。
黒色の艶やかな門を通って、敷地の中に足を踏み込む。
昔の武家屋敷を少し縮小したような大きさで、遠くからだが、池付きの庭園も見える。
瓦の屋根とか、縁側もあるし、庭園もかなり豪華な気が……。
建築に関して何も知識がない私でも分かる。
ここは一般人が住む家じゃない!!
何処かのお嬢さまやお坊ちゃんが住む屋敷だ!!!
「もしかして、おばあちゃんやお父さんは凄い家の出なんじゃ…」
2人がお嬢さま、お坊ちゃんだったら…………
「お父さんの現代離れをした言動にも納得がいくよね。」
1人でうんうんと納得していると、玄関の戸が開く音がした。
「あら!もしかして…咲ちゃん?」
「え、はい!って、おばあちゃん!?」
玄関をふと見ると、私と同じくらいの背丈のおばあちゃんが柔らかい笑みを浮かべていた。
「おばあちゃん!!!」
そう言って、おばあちゃんに抱きつく私。
「咲ちゃん、会いたかったわ~」
「私も会いたかったよ、おばあちゃん!」
私とおばあちゃんはギュッと抱き合って、再会を喜んだ。
おばあちゃんの家に上がり、掛け軸や生け花が飾られてる清楚な和室に入る。
この生け花はおばあちゃんが生けたものなのかな。
部屋の中を見回していると、おばあちゃんに声をかけられた。
「遠路はるばる来てくれてありがとう、咲ちゃん。山の中だしかなり大変だったでしょう?」
「まぁ、大変だったけど、おばあちゃんに会いたかったから頑張れたよ。」
「あら!嬉しいこと言ってくれるのね。私も咲ちゃんに会いたかったわ。今会えて本当に嬉しいの。出来るなら早く、信之と凜咲さんにも会いたいわ。」
信之はお父さんの名前で、凜咲はお母さんの名前。
「明明後日にはこっちに着くだろうって言ってたよ。」
「そう!待ち遠しいわ。おじいちゃんにも会わせてあげられたらいいのに…。」
そうぽつりと呟くおばあちゃん。
おじいちゃんは私が生まれる前に亡くなられたらしい。
だから、おじいちゃんの顔も知らない。
確か名前は、信久さんだったかな。
出来ることなら会ってみたいものだ。
もう叶わない事だが………。
それから、私とおばあちゃんはお互い沢山話をした。
私は高校のことや友達との面白い出来事、いつもの日常の話をした。
おばあちゃんはうんうんと頷きながら笑顔で聞いてくれた。
そして「大きくなったね。」と頭を撫でられたり。
おばあちゃんと過ごすこの時間が、私にとって最高のものとなった。
「そういえば咲ちゃん。明後日この村で行われる夏祭りに行きたい?」
夕食の準備の最中におばあちゃんは尋ねてきた。
なんと、夏祭りがあるんだ…!?
「へぇ~、行ってみたいな!私さ、夏祭りとかそういうイベント大好きなんだ~。」
「じゃあ、おばあちゃんと一緒に行こっか!」
「うん!!ありがとう!」
夏祭りは夏休み最大のイベントだもん。
この村はどんな夏祭りが開催されるのかな~?地域よって色々違うから、楽しみ!
「あ、でも咲ちゃん。一つだけ約束してほしいことがあるの。」
「約束……?」
「ええ。咲ちゃんは…………
…………あやかしという存在を信じる?」
唐突に聞かれたこの質問。
何て答えればいいのか分からなかった。
そもそも質問の意味さえもしっかりとは理解出来ていない。
約束っていうから、もっと「無駄遣いは駄目よ!」とか「何時までには帰ろうね。」とか、そういう約束事かと思っていた。
でもおばあちゃんは真剣な顔で、私の返答を待っている。
「えっと……あやかしって妖怪のこと…?」
「そうとも言うわね。」
「あ…………その……私はいると思うよ、あやかしは…。」
深くは考えなかった。
だって、この目で見たことないから。
テレビとかネットで『妖怪・心霊特集』みたいな記事や番組をちらっと見たことあるから、実際には何処かにいるんじゃないかな………………ぐらいにしか考えることが出来なかった。
おばあちゃんは返答に納得したのか、「そう。なら話ははやいわね。」と言って、私をさっきの和室に招く。
なんだろうか。
おばあちゃんが纏っている雰囲気が先程とはぜんぜん違っていて、不安になってしまう。
約束ってなんだろう……。
あやかしとやらがこの村に関わっているのだろうか。