1話~はじまり~
誤字や日本語がおかしい所もあると思いますが、暖かく見守ってくださると嬉しいです!
皆さんは「あやかし」という存在を信じますか?
あやかし……別名「妖怪」や「物の怪」とも言われ、大昔から人間の理解を遥かに越える怪奇な現象を起こしてきたとされる、不可思議な力、容姿をもつ存在。
古来より、自然災害や病などは妖怪、物の怪の仕業とされている。または地域によって、神様として祀られることも多くある。
日本の昔話でも妖怪が登場するのは王道となっているし、慣用句やことわざなどの言葉にも妖怪の名が含まれている。
古代の書物にも妖怪が描かれている物も数多くあると思う。
しかし、実際に妖怪に会い、言葉を交わしたという人は私が知る範囲では誰1人としていない。
むしろ、妖怪よりも幽霊という存在の方が信憑性がある!という人がいるほど。興味を持つ人さえも少ないであろう。
それに加えて、昔は妖怪の仕業とされていたことも、今は科学の力で解明されている。
あやかし、妖怪、物の怪。
それらの言葉すらも曖昧となっている。
そんな非日常的で非科学的な存在を貴方は信じていますか?
「あっつ………暑いよぉ………」
夏の炎天下の中、地図を片手にバス停のベンチに腰を下ろしている私……天野原 咲はぐったりとしていた。
「こんな山奥に人なんて住んでるのかな~?周りを見る限り、コンビニもスーパーも、なんにも無いのに。」
私は今、自分が住む地域から数時間かけて父方の祖母の家に向かっているところだ。
夏休み真っ最中なので、帰省というやつだ。
もともとは両親と共に向かう予定だったが、父親の仕事の都合により、私だけ一足先に向かうことになった。
「高校に入って最初の夏休みをここで過ごすことになるのか…」
別に嫌という訳では無い。
8年ぶりに会うのだ、おばあちゃんに。
むしろ、嬉しいし楽しみだ。
でも何故、8年もの間会わなかったのか。ちゃんと理由がある。
主な理由は、両親の仕事の都合が大きいだろう。
父母、2人とも共働きで職業柄とても忙しいみたい。
休みもなかなか取れないことも昔から多くあった。
その度に私は母方の祖父母の家に行くことが多かった。
もう一つの理由は、父方の祖母の家がかなり遠いこと。
祖母は山奥の小さな村で生まれ育ち、結婚をし、今も暮らしている。
その村までの電車の乗り換え、計3回。バスの乗り換え、計4回。
かかる時間は計8時間と少し。
それぐらい大丈夫でしょ~という人もいるかもしれないが、山奥に入るにつれ、バスの乗り心地がお世辞にも良いとは言えない。
窓の外に広がる風景は、ビルや住宅街から田んぼと山に変わり、次第には山、森、山、森、林だけになり、どれだけ田舎なのかが思い知らされた。
決して、山や田舎を嫌ってる訳では無い。
でも、比較的都会で生まれ育った私にとっては、見慣れない光景で驚いているのだ。
とまぁ、これらの理由で8年もの間、会うことが出来なかった。
でも、祖母もかなりの高齢だと父が言っていた。
山奥にお年寄り1人で生活してることに、息子である父は心配になったのであろう。
「今年の夏休みは家族みんなでおふくろの家に行こう!」
となり、今に至る。
そして現在、祖母が住む村のバス停にやっとたどり着いたのだ。
「え……バス、1日に1本だけなの…!?」
バスの時刻表を見て、空いた口が塞がらなくなった。
「流石にこれは…私やっていけるかな…」
約1ヶ月ほど滞在する予定なのだか、今から先が思いやられる。
「ああもう!くよくよするな咲!!やっとおばあちゃんに会えるんだもん。前向きに行かなきゃ。」
ゲームセンターもデパートもコンビニすらもない山奥だけど、
なかなかお目にかかれない自然という存在が周りを囲んでいるのだ。
これはこれで楽しまなくては!
ミーーン、ミーーン
蝉の鳴き声が頭の中に響く。
「えっと…暑いけど、もうすぐで辿りつけるはず…だよね?」
非常に言いにくい事なんですが、ただ今私_____
迷っています。
「嘘でしょおおおおお!??ここどこ!??お父さんのバカ!!こんな手描きの地図なんかで分かるわけないでしょ!??」
お父さん特製の地図だけ(村の地図はネットには載っていませんでした)を頼りに、山の中を歩く。
「大丈夫でしょ!手描きの地図でもなんとかなるって!」とか調子よく言っていた昨日の私め…。
お父さん達と一緒にこれば良かったなー。
今から後悔しても遅いが。
「とりあえず村の人を見つけて、片っ端から聞いていくしかないね!」
そういう判断に至り、村の人を探し出す。
数分歩き続けていると、山の木の木陰に人影が見えた。
「え!村の人かな?」
私はその木に近づき、小陰をそっと覗く。
そこには、1人の黒髪の少年が木にもたれ掛かって目を閉じていた。
見た目からすると、私より一つか二つほど年上だろうか。
艶やかで首までのびた黒髪。
目を閉じているので長いまつ毛が特徴的だ。
白地のカッターシャツに紺色の長ズボンという、シンプルだがとても彼に似合っていた。
「寝ているのかな?」
しかし、やっと見つけた貴重な村人?だ。
彼には申し訳ないが、道を聞かせてね。
「あのぉ…すみません!!」
「………………ん?」
当たりに響く大きな声で声を掛けると、彼は目を覚ました。
「あ、起こしてしまいすみません!!申し訳ないんですけど、道を教えて貰えないですか?」
「あぁ………別に構わないけど。」
目を擦りながら彼は答えた。
良かった。怒ってはいないようだ。
「天野原さん家は、この道を真っ直ぐいって、一つ目の角を右に曲がればいいよ。」
「そうなんですか!?ありがとうございます!」
やったーー!道が判明しました。
「あ、ほんとうに起こしてしまってごめんなさい。」
「ううん、大丈夫。無事辿り着けるといいね。」
「大丈夫です!もう迷わないですよ!」
笑顔を浮かべて彼にペコリと礼をする。
すると、彼も微笑み返してくれた。
うぅ…笑顔が眩しいです。
美形ってこういう人のことをさすんだなぁ。
「じゃあ、さようなら!」
彼に手を振りながら、私は足を進めた。
数分歩いた所で、大切なことに気づいた。
「あ_________名前聞くの忘れてたああああ」
「あの子が天野原さんの例の子かな…。ふーーん。楽しみ。」
名も知らぬ彼がニヤリと微笑んだことを、私は知る由もない。