無し
この薄ら寒く乾いた空の下、俺は自転車を漕いで家へ帰ろうとしている。
手にはスマホのタッチパネル対応のちょっといい手袋をつけ、首から口にかけて高◯クリニックよろしくネックウォーマーで覆っている。
そして耳にはやっすいイヤホン、少し縮れたイヤホンコードの先には胸ポケットにスマホをinさせてちょっと気取った感じに。
そういえば最近は、イヤホンを着けながら自転車に乗るのはお縄になるらしいが、別にポリスに見つからなければ何の問題も無いのである。
それにしても、寒い!
身を刺すようなこの寒さの中、唯一の救いはお天道様の光である。
幸い今日は雲ひとつないほどに良い天気故この日差しが隠れることはないだろう。
しかし風が強いな...
どうにもこうにも寒いことには変わりはない。
俺は立ち漕ぎスタイルにモード変更し、全速力で家に帰る事にした。
ううっ、ネックウォーマーから覗かせている鼻が寒い!
少しばかり手も悴んできやがった。
耳が冷えて頭も痛くなってきたぞ。
くそっ、帰ったらお風呂に直行して温かいシャワーを浴びまくる事にしよう...
「ただいまー」
歯をカチカチと鳴らしながら俺は二階の自分の部屋へなだれ込む。
スクールバッグを投げ捨て、制服を脱ぎ散らかし、階段を土砂崩れの如く転げ落ちながら恵みの雨が降る我が愛しのオアシス、風呂場へ!
...と、ちょっとその前にお便所。
・ ・ ・
よし、改めてユートピアへ突入しよう...
ーーーーーーーーー!
天国への扉を開こうとしたその瞬間だった。
俺に...俺に電撃が走った。
これは比喩表現などではなく、物理的に電撃が走ったのである。
静電気。
いや、この痛みは『静』電気という言葉で表すにはあまりにも役不足であろう。
騒電気。
そう、この電圧は電気が騒いでいるとでもいうだろうか。
悪魔にしっぺをされたような、そんな痛み。
このようなレベルの痛みを感じる電気を浴びた時は皆、『静電気』ではなく『騒電気』と言うようになるだろう。
...絶対流行んねぇなぁ、騒電気。面白味が無いしなぁ。
そんな事を考えながらも俺は改めて理想郷へと足を進めた。
ブォォォォォオオオオオ!!!
けたたましい轟音と共に熱風が髪を撫でる。
水蒸気で少し曇った鏡に向かい俺はじっと自分とにらめっこをしている。
うーむ、なかなかイカした面してるよなァ、俺。
そんな当然の事を思いながらそのまま髪を乾かす。
そういえば髪をちゃんと乾かさないとハゲるってお爺ちゃんによく言われたなぁ。
その時からか、俺がちゃんと髪を乾かすようになったのは。
昔は全く乾かしてなかったもんなぁ。
ハゲたくはないもんなぁ。
思い出に浸っていた俺だがハッと気づくと、髪はサラサラっと乾いていた。
ン〜、あいも変わらずツヤツヤな良い毛並みだぜ...
ごめんな、あんな身も凍えるような風の下に晒しちまって...
よし、用が済んだならこんな場所からはおさらばだ。
そのままパンツを履き風呂場を後にして、二階へ駆け上がる。
騒電気がこない事を祈りながら自室のドアを開ける。
そしてよっこらしょ、ベッドの上に座る。
「さて、これからだ。」
これからが俺が帰宅してからする物事の中で一番の盛り上がりを見せる、いわばメインディッシュとなる行事だ。
気分が高揚する。
心のボルテージが上がる。
この高揚感だ!俺は期待しているんだ!
「今日は誰か見てくれてるかねぇ」
俺は昂ぶる感情を抑えわざと冷めたようにそう呟くと、スマホを手に取りいつものようにSafariを起動した。
さあ、今日こそは...
今日こそは...!
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...いつものことである。
わかってんだよ、誰も評価くれないってのはよ!
この小説を投稿できるサイトではや3ヶ月、俺はしこしこと自作小説を世にばら撒いているのだが。
0、0、0!
なにもかも、いつも0!
何故だ!?何故、この俺の作品は評価されないのだ!?
ストーリーも、キャラクターも、物事の表現方法もわかりやすいように練りに練り潰した工夫を凝らしてるといるというのに!一体全体何がどう間違っているというのだ!
ああ神よ、我が作品は駄作なりや?
・ ・ ・ ・ ・
ぐぬぬぬ...嘆いていてもしょうがないか...
...友達に見てもらって感想貰ってみようかな。
やっぱやめておこう、反応を見るのが怖い。
あー、新しいネタ思いついてたのに、書く気失せたわー。
「もういいや、ゲームやろ。」
そうして俺は寝転ぶと、Safariを閉じて、今日もモンスターを引っ張りハンティングするゲームを始めたのであった。
耳が冷えると頭が痛くなるのは「機能性頭痛」って言うらしいですよ。
頭痛の他にも目眩や体の痺れといった症状出るかもしれないのでなるべく冷やさないようにしたほうがいいかも。