プロローグ
某日、太陽が眩く光輝く晴天。私の町は焼野原に成り果てていた。
民家は焼け崩れ、ビルはドロドロに溶け落ち、町の至る所に人間だったものが真っ黒になって転がっている。全て上空の日光によるものだ。
周囲の皆はボロボロになりながらもなんとか立っている状態だ。その瞳には、自分が死んででもこの戦いに勝たなくてはならないと闘志を燃やす人が大勢いるのを感じた。
この場にいる誰もがすでに限界を超えている。いつ倒れてもおかしくない。この戦いに終わりはあるのかも分からない。それでも誰一人としてこの戦場から逃げ去るものはいない。
目の前の敵は、たった一人。こちらはまだ百人近く生き残っている。数ではこちらが勝っている。
でも私は仮に全員で一斉に攻撃したとしても、倒すことは不可能なんだと思っている。
敵の全身は私たちの猛攻によって傷だらけだ。傷の深さは皮膚の表面を擦ったようなものから骨まで抉り取ったようなものまで区々だ。
だが、敵はどれだけ傷を負っていても涼しい顔をしてこちらの様子を窺っている。
敵を見て私はあの時の師匠の言葉を思い出した。
『いいか萌芽、たとえ誰が相手でも自分の意志は絶対貫かなければならないんだ。だからちゃんと自分の意志を持っておくんだぞ?』
「――はい、師匠。今がその時なんですよね」
影杜萌芽は師匠の言葉を噛み締めながら両手の刀を強く握りしめると、こちらの様子を窺っている敵に向かって地面を踏み割るような勢いで駆け出していった。
彼女自身の信念を貫くために。