7(効いてる?)
話の環がだんだん狭まり、いよいよ本題って感じ。最初からそうすれば時間短縮出来たろうに、いわゆるこれが引き延ばし作戦です。
問い:どうしてこんなことしたの?
答え:それがいいと思ったから。
すると再び同じ問いがくる。だからあたしはこう答える。「さぁ」
「どうして?」
「分かんない」
「じゃぁ考えてみようか」
いや、もういいでしょ。すると先生は別のことを訊いてきた。「学校は好き?」
否定。
「嫌い?」
否定。
「クラスはどう?」
堂々巡り。こんな問答が延々と繰り返されるかと思って、うんざり。「特に何も」
先生は、お薬の説明してくれた。安定剤。「気持ちを落ち着けてくれるけれども、眠気がちょっと出るかも」
はぁ。
気持ちをこれ以上にフラットにするって平均値を下げるってことになるんじゃないかな。
「夜は良く眠れる?」
あたしは燃えて湿ったあの晩を思い、首を横に振った。
すると、「そう」先生は少し考え、「頼らないで済むならそのほうがいいかな」勝手に納得した。
先生は適当と云うほどではなかったけれども親身ってのもと違うと思った。まぁ、あたしはただの患者のひとりでしかないんだし、待合室にいたケータイ片手の落ち着きの無い変なお姉さんとか、頭を抱えて耳を塞いでるような変なお兄さんとか、もっと面倒くさそうなひとを日がな一日相手にしてるんだから、真剣になれって方が無理なんだと思う。
「二週間後、また来てね」
えー……。赤い目でにこやかに云われた。
お会計でお母さんがお金を払って、処方箋。薬局は病院を出て直ぐのところ。薬剤師さんからお薬の説明を訊いて、お母さんがお金を払って、名前入りの処方袋の入った白いビニール袋を受け取った。
二度目はひとりで病院に行った。午前中。学校はずっと行ってない。行ってもやることないし、まぁいいかな。
「お薬はどう? 効いてる?」
「たぶん」
試しに飲んだ一錠。正直、すごい! って思わなかった。帰って直ぐにパソコンで調べたよ。データベースで効果効能、副作用。
「変わったこととかある?」
さぁ。肩をすくめて。
「学校は?」
「行ってないです」
「そう」キーボード、カチャカチャ。「無理に行かなくていいのよ」
おやおや。お墨付きです不登校。「行っちゃダメですか?」
すると先生、「そうねぇ」びっくりしたのが分かった。「行きたい?」
試しに頷いてみた。
「もう暫くゆっくりしてもいいんだよ?」
「いつまでですか」
「焦るのは良くないのよ」
「二学期の成績、全部イチになっちゃう」
「でもずっとイチになるより、今学期だけイチにして来学期──、」
「今までイチだし、これからもイチです」
「そんなことないわ」