表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/9

5(検索ワード)

「ゆっくり、」抜いて垂らさぬよう注意され、あたしはレバーに触れぬよう、そっとノズルを元に戻した。お父さんはキャップをギチギチ鳴らし締めて、カチッとカバーを閉めた。

 お終い。手首を振って、指先のニオイを嗅いでみた。うわ、くっさ。

「ガソリン、ついたか?」

 かぶれるぞって。ううん。ついてない。

 ドアを開けて車に乗ると、ニオイも一緒についてきた。もしかしたらゆらゆらの影だったかも。だったらあたしは燃える女。ファイヤマンは消防士。これ、引っかけ。

 その晩、お風呂に入って歯を磨いて、寝る前に時間割りを見ながら気が付いた。おっとどっこい、大発見。お誕生日の神さまからのプレゼント。以前見た夢は、とどのつまりあたしの深層心理で願望で。なんて素敵なの、世界を開く突破口。エウレカ!

 すぐさまパソコン、起動させ。

 検索ワード:火炎瓶モロトフカクテル


   *


 警察で聞かれたこと。

「火炎瓶の作り方はどうやって知ったの?」

 年かさの婦警さんはいかにもって感じの優しい声音だったけど、目は笑ってなかったな。

 私の答え。「映画とテレビと国語辞典」

 分からなければ調べればいい。字が読めれば理解充分。知りたい気持ちは何より勝る。だから回答に嘘はない。ちょっと端折ったかもだけど。それよりこの建物、奥の部屋だか地下の部屋だかにもっとたっぷりエグいもの、仕舞ってるでしょ。今度案内してくれないかしら。それともおトイレの帰りに迷子になっていいかしら。お父さんとお母さんがお迎えに来て、おじゃん。

 他にも何故か世間話をだらだらしたような気がする。学校生活まで訊ねてどうしようっていうの。お友達とか作ってくれる? いらないよ、そんなの。と、まぁお腹の中は別として、あたしなりに如才なく答えたと思う。感じ良くいられたと思う。少なくとも婦警さんの目から険は取れたと確信してる。

 とは云え、罪には罰なんだな。少しは割引してくれないかしら。中学生割り。初犯だし、未遂だし。それにしたって学校の成績まで知られてたのはあいたたた。誰よ、通信簿、横流したの。一だの二だのと並ぶばかりだけど、恥ずかしいって思った自分に驚いた。へぇ、こんな気持ち、あったんだ、みたいな?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ