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髪フェチという物なのだろうか

 皿洗いを終わらせて、嫌々ながら僕はロランの元に歩いていく。

 気付けば彼の周りには人だかりができていて、


「それでリュシーは、ゲームに強くて“銀色の妖精”と呼ばれているのですか」

(ゲームに強いね、やっぱり先読みの力か。でも妖精? あの動物が? 妖精というよりは銀色の猫だな)

「そうですね、今の所不敗じゃないですか……おっと、リュシーが来ましたね」

「あ、セレス、と呼んだ方が良いのかな?」

(さりげなく確認してもやはり、リュシーという名だし。どうしてこんな風に、今は俺に対しては男も女も皆心を許すのに、こいつだけは警戒したままなのか……いきが良さそうだしたっぷり躾けてやるよ。まずはリュシーと呼んでも良いようにさせてやる)


 誰がお前なんかに躾けられてたまるかと僕は思ったのだが、ここまで来てしまえば別の名前を使うのも無意味に思える。

 だから名前くらいは良いだろうと、


「リュシーです。この前は知らない人だったから、違う名前を言っただけです」

「リュシー……その名前も素敵だね」

(ようやく名前を自分で言ったか。だが、名前はこいつに似合って良い響きだよな)


 絶対にようやく言いやがったかこの淫乱ビッチめとか、碌でもない事を言われるかと思っていた。

 なのに似合っているとか、少し優しげな心の声が聞こえて僕はどきりとしてしまう。

 でもこいつは警戒対象なんだと思いながら、


「今、何を話していらしたのでしょうか」

「実は以前から君を見ていたのだけれど、ゲームに勝利すれば君を良いようにできると聞いて、挑戦してみたくなったんだ」

(ゲームで誘惑してとんだ淫乱ビッチだと思っていたが、ただお付き合いする権利だけとか……それはそれで、頭が軽いな。まあ俺が勝利するのは目に見えているし、楽しませてもらおうか)


 心の中が丸聞こえなリュシーは、完膚なきまでに叩き潰して、金をむしり取ってやると決めた。

 けれどその後心の中で、君の体を楽しみたいんだと鬼畜な事を言いやがったのでやっぱりゲームを止めようと思った。

 負けさせてもこのロランという貴族は約束を守るようには思えないからだ。


「申し訳ありません。今はそういう気分じゃないんです」

「俺とゲームするのは嫌なのかな?」

(警戒していやがる。まあいい、少しずつこのリュシーという人間を見せてもらおうか。気に入らなかったら……どうしてやろうか。散々この俺を振り回して、しかも俺に嘘の名前を言ったんだからなぁ)


 嘘の名前を教えた事をものすごく根に持たれていると僕は気づいた。

 しかも、僕がロランを気に入らないのも良くないらしい。

 適当にあしらってこっそり距離を置く方が、関わり合いをなくせて良いのではと僕は思って、


「こ、ここでお話しするのもなんですので、場所を移動してもよろしいでしょうか」

「構いませんよ。突然押し掛けたのは俺の方ですから」

(場所を移動ね、よっぽど後ろ暗いことでもあるのか……まあいい。俺が負けるはずがないからな)


 この自信をへし折ってやりたい、リュシーはそんな気持ちになりながらも必死で我慢していたのだった。






 近くの公園に誘ってベンチに腰を下ろす。

 古い木の椅子なので座ると小さくきしむ。

 ロランは心の中で毒づいていたので、僕はちょっとだけ溜飲を下げたのだが、そこでロランが僕を見て、


「……綺麗ですね」

(本当に見た目だけは可愛いよな。こんなに可愛ければ、変質者に狙われたり痴漢にでもあったりしているんじゃないのか? ……やっぱり慣れているのか?)


 その一言だけ聞けば、きっと機嫌を良くしただろうけれど心の声が聞こえる僕には通用しない。

 なのでわざとその綺麗を誤解して、


「この銀髪ですか? 珍しいと言われるんですよ。よく綺麗だって言われますし」

「触っても良いかな」

(触りたい)


 珍しく心の声と言っている事が同じだった。

 なのでここで文句を言うよりは機嫌を良くさせて、適当に切りあげようと思った僕は頷く。

 そこで長い銀髪をロランが一掴みするが、


「……思った通りだ」

(素晴らしい銀髪だ。このさらさらと艶めく銀髪、日の光に透けて輝くこれはまさに銀の輝き……しかもこの一本一本が絹のような手触り。こんな銀髪は今まで出会った事がないな。何時までも触れていたくなる素晴らしい銀髪。この触れた感触も良く、淡い色で輝くこの髪。はあ、最高だ。しかもいい香りがする。香水か何かを付けているのか? そもそもこいつは本当に男なのか?)


 もしかしてこのロランは髪フェチという物なのだろうかと、触れられて背筋がぞわぞわするのを僕は必死で耐えた。

 しかも僕の事を男かどうか疑いやがって、本当に失礼な奴だ、でもここは我慢我慢と思っているとそこで、ロランの手が髪から離れて僕の腰に手を回す。

 何を勝手に触れていやがると僕が思っている内に、そのまま体を抱きあげられて、ロランの膝の上に座らせられた。


「な、何を……やぁああっ」

「本当に男なのか見せてもらうね」

(まあ、男だろうけれどな。でもせっかくだからセクハラしてしまえ)


 ふざけるなといい返したかったのだが、そこで腰のあたりをさわさわと……。


「やぁああっ、ぁああっ」

「ごめんごめん」

(本当に感度良いなこいつ。可愛いのに感度が良い……やはり淫乱だな)


 ごめんといいながらこんな事を考えやがってと僕は、少しずつ怒りをためて行く。

 そこでロランの手が離れ後ろをむかさせられる。


「……」

(涙目な顔も可愛くてそそるな)


 耐えきれず僕はロランに肘鉄を喰らわせ、怒りながらその場を走り去ったのだった。

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