恋人というよりは体目当て
僕は悶々としていた。
ロランがお菓子を持ってやってきて、体も狙われているし、一向に諦めていないのもいいとして……。
本気で落とされかかっている気がする。
時々見せる優しい眼差しや優しい感情が不味い。
性格悪い俺様変態と分かっているのにこの前は肩を抱かれたりしてもう、うきゅ~だ。
このままだと僕はどうなってしまうんだろう。
ロランに絆されて……。
「いや、あいつは僕の銀髪にしか興味ないんだ。そう、銀髪にしか……」
考えていたら悲しくなってきて、皿をふく手が止まる。
僕はどうしたいんだろう。
まるでこれでは僕は……そんな事を考えていると、
「リュシー、悪いが買ってきて欲しい調味料があるんだが」
「はーい、分かりました」
店主に言われて僕は、その調味料を買いに行ったのだった。
見はられている。
僕はその視線を感じた。
あのロランが僕を監視する為に付けている奴らだ。
微妙に僕から離れた場所で様子を見ているのは、僕の力を警戒しているのか。
でも別の力だと思っているはずなのだけれど、と思いながら僕は調味料の店に行く。
そこで僕は、ある人物に出会う。
この前くっつけたケイトだ。
彼は僕を見て、変な顔をして、
「げ、何でリュシーがここに」
(あの屈辱的で恥ずかしい思いを告げ口されたけれどまたさえるんだろうか。でもリュシー、最近前よりも可愛くなったような……恋でもしたか?)
「あ、ケイト。アシルとのその後はどう?」
「もうラブラブだよ、この前なんて、ケイトだけだよって」
(この前は初キスもしちゃったし、やっぱり愛されているから、変に要求されたりしないんだね)
その心の声を聞いて僕は愕然としていた。
ちょっと待て、今、なんて思ったと僕は思う。
だってロランは僕にキスしたり、肩を抱いたり、体を触ったり……セクハラしまくりだ。
でも愛されているなら、そんな事は普通されない物なのだろうか。
だったらロランはどうして。
別の目的で近づいてきたとも思えるけれど、だったらどうして僕が欲しいんだ?
あんな風にお菓子を持ってきて、装って。
僕が無碍にしてちょっと距離を思うとしているのにそれでもやってきて。
あんなに見た目は良いのに。
そもそもあれだけ見た目の良いロランなら入れ食い状態なんじゃないのか?
自分でも自信があるみたいだから、多分モテていただろうというかそんな事を考えているような心の声を以前僕は読んだ気がする。
そんな彼が僕をターゲットにしている。
そんなの、別の目的があるからだ。
僕に一体どんな価値があるんだろう。
「……直接切り出すか、どうしようか」
試しに聞いてみてどんな心の声が聞こえるか試してみよう。
もしかしたなら別の人物と間違えているのかもしれないし。
僕はそう思って……ぞっとした。
僕は誰たと間違えられて、ロランは会いに来ている。
その仮説に僕は愕然とした。
だってもしそうならば、そうだとロランが気付いたのなら僕には、ロランはもう会いに来てくれない。
そう考えると嫌であったはずなのに、ロランが会いに来なくなるのが怖く思える。
何なんだろうこの感情と僕は思いながら、そこで、
「どうしたの、リュシー?」
(突然真っ蒼になったけれど、大丈夫かな)
ケイトは心配そうに僕を見ていて、だから僕は聞いてみた。
「アシルは、その、キスとか、体を触ったりとか、指を舐めたりとかする?」
「……リュシー、何かあった?」
(……リュシー、とうとう誰かに喰われたか? いや、これだけ可愛ければ時間の問題だと思っていたけれど、そういえば最近変な貴族が追いかけ回していると……まさか)
誤解されてしまいそうなのでリュシーは慌ててケイトに、
「い、いや、恋人同士はそういった事をするって聞いたから」
「……よっぽど深い仲ならそうかもだけれど、いきなりはないかな。よっぽど手が早いのかな? ……体目当てかも」
(恋人というよりは体目当てだよね、段階踏まないし。でもリュシー……まさか)
勘の鋭いケイトに僕はそれを隠すために、
「そ、そうなんだ。良かった、僕はそうじゃないから、狙われていないね」
そう答えるとケイトは、何だと残念そうに言って(心の声も同じ)そしてその場で別れる。
そんな僕は再び妙な視線を感じるが、それよりも。
「体目当てか。……銀髪フェチだし」
そう僕は呟いて更に落ち込みながら、とぼとぼと帰っていったのだった。