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卯田くんとおにぎり  作者: 王石 勉
第1章:卯田くんとおにぎりと夏休み
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卯田くんとおにぎりと山道

一同が見送る中、門を出て、少女と共に山道を進む。

なんだろ、字面で見ると清々しさ溢れるが、この重苦しさ。おう、帰り道の雰囲気が最悪です。

山道は一応整備してある様子で。下草も刈ってあり、笹も無い。

始め見たつばきさんの格好は、白っぽいワンピースに帽子とバスケットシューズと言う姿に、そんな装備で大丈夫か?と聞きたくなった。

まあ、詰襟学ランの僕も似たような物だが。

山道をずんずん進む少女、そんなに急ぐと、ほらみろ、転びかけた。手をついて耐える少女に駈け寄り声を掛ける。

「つばきさん大丈夫ですか。お手をどうぞ。」

すごい、形相で睨む。ワレ機雷ニ触雷セリ。

「あんたねえ!バカじゃない!何者!!なに気取ってる!アホじゃない!!」

「この制服がここら辺では珍妙なのは分かります。海なし県から来た卯田将弘です。女性には親切にしろと言われています。勉学に励んでいますが成果は高くないです。」

「なに、全部答えてんのよ!あせじふ…。」

うむ、こういう場合は天井の紙魚を数えていれば、大丈夫だ。

「…なのよ!聞いてるの!」

「はい、えーと、先ず一番初めのご質問は…」

「答えなくていいわ!!」

肩で息をするつばきさん。

「もう、家のみんながオカシイのは解ってるのよ。大御婆様は鬼が出るって言うし。お姉様は戦うって言うし。」

その場でしゃがみこんで、顔を伏せる少女、ぶつぶつ言っている。

なんて声をかければ良いんだ?気の利いたコトを言わねば。

「まあ、笛を吹けば蛇が出るとか言いますし。天気がよければ鬼が出ることもあるでしょう。」

「そうゆう意味で言ってるんじゃないの!!家の者全員が鬼が出るって言ってるの!戦えって!鬼ってなによ!!」

「えーっとギョロ目の大男でツノがあって、赤くなったり青くなったりします。」

顔色がな、昨日見たから間違いない。

「あんたまで!私を馬鹿にするの!!みんなでウソツキ呼ばわり!!」

「ウソじゃないですよ、昨日見ました。」

ビックリした顔でコチラを見る、涙の痕がある、やっば女の子泣かしちゃった。

「変質者って言ったじゃない。」

「ツノが生えた変質者です。さくらさんを追い回していました。」

「だって、お姉様、怪我までして。」

「鎧武者の格好でしたね、もう、夜の山中で鎧武者と出会えば、鬼が出ようが、蛇が出ようが驚きません。」

でも、熊と蜂だけは勘弁な。

「でも、倒したって。」

「ああ、先ほどの脇差をお借りして。腕と足を切り落としました。」

「そんなことできるはずが…。」

「落とした腕は今朝のご年配の男性が、昨晩、御宅に持ち帰ったハズです。えーと、さくらさんと一緒に?」

おびえた顔でコチラを窺っている。むっ、やばい。

逃げようとする、瞬間に腕をつかみ「いやっ、放して!!」と叫ぶが。放さない。押して引っ張り体制を崩して両手で確保。

こんな山奥に置いてきぼりなんて、嫌過ぎる。うわ、なんか、やわらかい、いいにおいがする。(注意:肩しかさわってません)


「大丈夫です、鬼が出たって何とかなります。」

暴れるのを止め、胸を借りて泣く少女をやさしく、つつんでいいのか?この両腕を背中に回したら嫌がられないだろうか?


泣く少女のうなじと、どうしたらよいかわからない自分の両手を見ながら。わきわき手のひらを宙で動かし、気まずさを解消する。

そういえば昨日のハンド君どうなったかな、元気に標本してるかな?


それから、しばらくして、落ち着いたつばきさんとポツポツと話し始めた。


「えっ、大御婆様はつばきさんのお婆さんでは無いのですか?」

「そうです、お婆さまは私が、中学に上がる前に死にました。」

「そうすると大御婆様はつばきさんの曾お婆さん。」

「いえ、お婆さまがお嫁に来たときはもう既に大御婆様だったそうです。」

「うーん。」

なぞだ、大御婆様、歳を聞いたら殺されそうだ。

「あの、」

「なんでしょう?」

「あの脇差を使っていましたね。」

「ええ」

「あの脇差は当家の女しか運ぶことができないのです。もちろん歴代の当主が使っていた物と聞いています、お姉様は我家で唯一、抜くことができたので。使用を許されました。」

「へー」

1、へー出ました。

「他の者が持つと重くて持ち上がらないそうです。お姉様も片手では使えないと言っていました。」

そう言えば刀を抜いたかと聞かれたな。

「私も抜けなかったのです。」

「む?妹のかえでさんもですか?」

「かえでは何も知りません。元より教えて無いのです。お姉様と私が子供の頃から鬼の話ばかり聞いて育ったので、同年代と話が合わず、少なからず虐められました。お姉様は優秀でしたので、一高に合格しましたが、私は出来が悪く。入学できず、随分と家の者からも言われました。」

涙声になる、少女に掛ける言葉を失う、大丈夫ですよ、妹さんは我々の知らない腐った世界へ旅立ってます。とは言えない。絶対に。

「大丈夫です、無理をしなくても良い。血生臭いコトは男の仕事だ。」

せいしをかけるのは男の仕事だからな。落ち着いたのか声のトーンが普通に戻る。

「お父様とお母様はお仕事で県庁所在地の住居から帰ってきません。元々、入り婿の父と大御婆様とは折り合いが悪く。何時もギスギスしています。今日、あんなに機嫌の良い大御婆様を見るのは初めてです。」

ソコが解らない。何かあるな。


そうこうしている内に。家の裏手まで出た、ココなら分かる。

「ココまで来れば大丈夫です、しかし、つばきさん、帰り道は良いのですか?」

「えへへ、実は子供の頃からこの山は私の遊び場だったので。足にも、地理にも自信が在るんです。」

笑顔で答えるつばきさん、そういえば初めて笑っている顔を見たな。

「そうですか?何か有ったら叫んで下さいね、すぐ駆けつけます。」

笑顔で別れる。山道をひょいひょい歩くつばきさんを見送り、家に帰る。


さて、どうしよう?

制服を茶室のハンガーにかけ、脱ぎ捨てた作業着を着て午前中に広げた店バイクパーツを片付ける。

片付けが終わると、日が傾き始めたので、大御婆様の家に電話くろでんわして、無事につばきさんが帰宅したか確認の電話をする。

「はい、戻っております。おつなぎしましょうか?」の女中さんの声に、「いえ、確認だけでございます、お手を煩わせるコトもございません。」と言い通話を切る。

なんか、すごい疲れる。携帯番号聞いておけば良かった。

でも、もしスマホだとLI○Eだろうから、こっちが携帯ガラケーだからカッコ悪いよな。


まあ、安心したので、シャワーを浴びる、終わったら。洗濯機を動かし、今日の衣類の汗を洗う。

未だ親父は帰ってこないので、茶室に戻ると、部屋の中がオンナの香りが充満していた。

制服に付いた臭いだろう、マジかよ僕の部屋、今までコンナに男臭かったのか?


仕方なく、あさの中断した、課題を片付ける。

日も落ちて、辺りが暗くなると、庭に車の音、親父が帰って来た。

やったー食料だ!!

玄関で、スーパーのレジ袋を両手でぶら下げる親父を出迎える。

やったー今日もスーパーの特売弁当だ!!(涙目)

空の冷蔵庫に詰め、インスタント味噌汁と弁当で夕食をすます。

「母親の本家の方が来て、お土産をもらった。」旨を話す(ウソではないが事実でもない)

ちょっと親父が驚いていた。手土産の中は羊羹だったので、食後にお茶と共に食べた。

その時の親父の話だと、母の本家は旧家過ぎて地元でも特殊な存在らしい。

地元の県議が母の実家の方だとか。ソコの大御婆様は県知事でも頭が上がらない、とか、オカルトじみた話がまことしやかに言われている。

親父は、「あまり、母の本家とは係るな」的な話をしたが、残念賞、たぶんもう遅い。

ココに来た時点でもう遅かった。

夕食が終わり、ゴミを片付けると。茶室に帰り、ゴロンと床に倒れる。

今日はイロイロあった。寝床で今日を振り返ると。


あれ?僕?女の涙で鬼倒すこと宣言してね?


(´・ω・`)いゃん、本編に追いつかれる。

次回は別視点。


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