卯田くんとおにぎりとたい
よくよく考えたら未だ学園もいくさもない。(´・ω・`)
さて、女中さんが下がると。
目の前には三つのお膳。
豪華で美味そうで、カラフルだ。インスタント&レトルトとスーパー惣菜のヘビーローテの僕には眩しい彩色だ。
お婆様が手を合わして。弾んだ声で始める。
「さあ、いただきましょう」
皆手を合わせて合唱する。「「いただきます!」」
各々、箸を取り椀に手をつける。
吸い物に手をつけてから、さあ、どうしよう。
まあ、先に苦手そうな物からやっつけるか。
焼き勝ち栗を食べる、
『ボリボリボリ』
食器のこすれる音しかしない座敷に騒音が発生する。すごく、恥ずかしいです。こんなん誰が食べても音が出るだろ!!煮付けにしろよ。
「まあまあ、男の方は足を崩して、ささ、先ずは一杯。」
お婆さま、僕の隣りに移動して。白徳利を両手に持つ。
正直、正座は辛かったので胡坐に変形!!良かった、後もう少しで無様な生まれたての小鹿のような姿を曝す所だった。
「いえ、未成年ですのでお酒はチョット。」
手の平を見せて断る。
「お屠蘇です。だいじょうぶですョ」
やだ、お婆様、押しが強い。仕方が無いので。箸を置き。ひっくり返してある。杯をとり、受ける。
「ささ、どうぞ。」
仕方が無いので、杯をあおる。やだー、お酒じゃないですか。
「あら、良い呑みっぷり、私ももらおうかしら。」
お婆様の杯に白徳利をさす。杯を飲み干す。お婆様。僕にうなだれてくる。
「うふふふ、」
やだ、お婆様カワイイ…。
包帯少女は驚いて箸が止まっている。超不機嫌少女は超々不機嫌少女に二段変身した。まだまだ変形しそうだ。セイラー少女は黙々と食べている。なんかハムスターっぽい。
包帯少女にアイサインを使って『どうしよう?』と送信したら。受信不良で。首を傾げる動作をした。
「おや、そうでしたね。長女のさくらと次女のつばきと三女のかえでです。」
ソコ大事だろ。お婆様。
「さくらと申します。昨晩は助けて頂きありがとうございます。」
深々とお辞儀する。御髪が椀にかかってる。残念さんなのか?
「妹のつばき…。」
わーい、ツンツンさんだ。
「もぐもぐもぐもぐ…。かえでです。もぐもぐ」
うん、たくましいぞ。
「あ、あの、卯田様はどちらの学校へお通いですか?」
残念包帯少女が尋ねた。やはり昨晩の声に間違いない。
「名路鵜西高に転校する予定です。この制服は前の学校の制服で、未だ新しい制服は出来ていない。盆明けには取りに行く予定です。」
「そ、そうですか私は。名路鵜一高の三年です。」
箸が止まった超々不機嫌少女は超々々不機嫌少女に変形した。
「まあ、一高では無いのですか?」
止めてお婆様。超々々不機嫌少女が変形しそう。
「あちらは、定員に空きが無かったそうです。」
「まあ、一言、相談していただければ、何とかしようが有ったのに。」
こわいから止めて下さい。お婆様。
「西高の方がバスの乗り継ぎが無くて便利ですよ。まあ、父の急な転勤では贅沢も言っても仕方ありません。あと、僕は二年なので敬語は不要です。」
やだ、超々々不機嫌少女は超々々々不機嫌少女に進化した。ドコが地雷発言だったか解らない。
「うふふふ、カッコイイ制服ですね。」
お婆様、お屠蘇が進んでる。
「いや、海なし県では不評でしたよ、男子校ですしバンカラ(死語)なヤツが多かったもので。」
男子校と聞いて、セイラー少女が目を輝かせている。やだ、もしかして、この子…。
「あら、将弘さん、お魚に手を付けておりませんが、御魚はお嫌い?」
「いえ。魚は好きですが、海なし県生まれの性か、あまりキレイに食べることが出来ません。人前では御見苦しいので。」
「あらあら、うふふふ、そんな所までそっくりなのね。それではこうしましょう。はい、あ~ん」
あ~んで鯛を食べる僕。なんという羞恥プレイだ!鯛は旨いけど。
「ごちそうさま!!」
超々々々不機嫌少女が最終形態に進化して、席を立ち、座敷を後にした。
その後。昼食は進み。
全てのお膳をたいらげると。
「まあ。流石、男の子、立派だわ。」
と、字面から微妙な評価を頂き。妙に居心地の悪い昼食会は終了した。
女中さんがお膳を片付けはじめ、帰りの算段を考えていると。
片付いた後に。古そうな唐櫃を持ってきた。やだ、大きなつづら?舌きり雀なの?
お婆様がフタを開けると中から。兜を取り出した。
「これが、貴方に似合うと思うの。着けてごらんなさい。」
兜を付けて碁盤から飛び降りるぐらいで済むかと思ったら。
何故かフルセット有った。やだ、コスプレ大会?と言うか、端午の節句の様だ。
お婆様の音頭の下、残念包帯少女と女中さんも手伝って、鎧を着る(詰襟は脱いだ)
ああでもない、こうでもないと和気藹々の女性陣の中。指示に従うだけだ。こう言う時は逆らっちゃいけない。
全ての具足をつけ終わると。
起動戦士1/1スケール鎧武者”僕”が出来上がる。
「まあ、まあ、流石、ぴったり。これ、貴方にお譲りするわ。」
「この様な高価なものを頂いても困ります。手入れの仕方も着方も分かりません」
請求書だけ後から渡されても困るからな。
「おや、大丈夫ですよ。手入れや、仕度は女の仕事ですから。」
いや、その女っ毛が我家には皆無です、と言おうとしたが、更なる地雷なので、言わなかった。
「うふふふ、この具足は貴方の物、当家で責任を持ってお預かりしますわ。」
「おー、」と声をだしてぺちぺち拍手する、お腐れセイラー少女。お前、見てただけで、何も手伝ってないだろ。
少々ストレッチを行い、ドコにも無理の無い稼動箇所を確認し。
サッサと脱いだ。
どうやら調整箇所の修正があるようなので。女中さんが仮縫い場所の長さ、とかを測っている。
さいごに肩幅や腕の長さを測って終わりだった。
手土産のお菓子をいただき。御屋敷の門でお見送り。
全てが終わり、ご挨拶すると。最後にお婆様が爆弾発言。
「つばき、将弘さんをご自宅まで案内しなさい。」
「はい!」
返事は良いが。突き刺さる視線が痛い。最終形態から更なる進化を遂げたスーパーDX不機嫌少女は最早、一発触発の爆弾だ。それより、帰りの車、無いのかよ。
「ふふふ、実は山中の近道が有って。歩きですと車より早いのですよ。つばきはここらの山道に詳しいのでご案内します。」
「しかし、それでは帰りが…。」
「大丈夫ですよ、今日は鬼が出ない日です。でも、日の高いうちに帰して下さいね。今日でも明日でも構いませんから。」
止めて!お婆様!信管の上で踊らないで。
(´・ω・`)結構、しんどい話だった。
次回、卯田くんが山道を歩く話。
リア充爆発しろ!!(キャッキャ・ウフフは無い。)