卯田くんとおにぎりとゆめ
ぼんやりとしていると、いつの間にか草原に立っていた。
草原と言うより牧場かもしれん。
遠くで馬が草を食んでいるのが見えるし、その後ろは森がある。
天気は良いが日差しは強くない。涼しい。
「ああ、これは夢だ。」何となく夢を見ている、と判った。
流れる雲を眺めていると。
向こうから、馬に乗った騎馬武者がやってきて。目の前に止まった。嘶く馬。
「おう、新入り、ココに居ったか。もう始まっておるぞ。さあ乗れ。」
差し出された手を何の疑問も無く掴み、馬の後ろに乗る。
馬は進み、丘の上の白い陣幕に向かっている様だ。
陣幕の前で馬は止まり、馬から下りると。中が騒がしい。
幕を潜って陣の中に入る。
車座になった鎧武者達が酒盛りをしていた。
「権現様!新入りを連れて参りました!」
騎馬武者が叫ぶ。
えらく、カクカクした鎧を着た武者が軍配を上げ叫ぶ。
「よう来た!よう来た!顔をみせい!!」「ふむ、おぬし、何れかの武士に違いないが。我が一門の出ではないな?、何れの御家中か?」
御家中学校出ではありませんが。えーっと、母方のお爺さんは雷蔵で、父方の方は海無し県の山中の集落の出です。
「ふむ、雷蔵の娘が良い武者に嫁いだらしい。」「おおそうか!」「それは目出たい」
酔っ払いが多くて騒がしいが。皆、大喜びである。なんで?
「先の戦で多くの武士が散ってしまった。気に病んでいたが杞憂であった。」「ささ、まずは一献」「ほれ、新しい酒をどんどん持って来い。」
えーっと未成年なんですけど。
「なに?未だ元服しておらんのか?」「いや、まて、当代では碌な烏帽子親もおらぬ。」「なんと言うことだ一門の恥ぞ」「さあ飲め祝いの杯ぞ」
まあどうせ夢だと割り切って出された杯を飲み干す。
「おお!良い呑みっぷりじゃ!!」「流石若武者殿。」「コレで、御主も我が一門ぞ」「ほれみろ。我が一門の誉れじゃ。」「当代の武者もなかなかの者ぞ」
空にした杯に皆、酒を注ぎ始める。
「さあ、呑め」「戦の前の祝いじゃ」「剣は抜いたか?」「童子と剣は交えたか?」「当代の鬼は強いのか?」
えーっと、金虎の鬼柾の倅、鬼蔵とやって。手首を取りました。
「ほう!まづは一勝か!」「遅れを取っておらんな。」「さあ、もっと呑め。」
切っても足も手も動くので、気が抜けません。
「むう、たしかに」「良い所に気が付く」「ヤツ等は首を跳ねても噛み付いてくる」「良い具足を揃えろ」「山鳥の尾羽が在れば…。」「長いのを用意できれば不覚は無い」
何故、戦をするんですか?
「約定じゃ。」「戦じゃ。」「里の守りぞ。」「分捕りじゃ。」「敵の姫を分捕ったぞ。」「負ければ姫を盗られ。里を焼かれるぞ。」
「「「必ず勝て!!」」」
障子越しに朝日が差込み。茶室を明るくした。
いつの間にか寝てしまった様だが。
エアコンのタイマーが切れ暑さに目を覚ましたらしい。
朝から暑いじゃないか。今日も暑くなりそうだ。
エアコンのリモコンを操作して、冷気を出す。
未だ日の出の時間だ、今日は何しよう。
釣りに出たいが鬼が出そうだ、いや、日が出ていれば大丈夫か。
書机の上に平積みされた課題がイヤでも目に入る。
ああ。ヤルか。
黙々と課題を片付けるが。携帯のアラームが動作する。
朝食の用意をしなければ。
引越しが終わったばかりで冷蔵庫には何も無い。
久しぶりに、朝からレンジでご飯&お茶漬けの元という。戦闘食だ。
「親父、何も無いから非常食だぞ」
朝のシャワーを浴びて。会社指定のクールビズ制服のポロシャツ&スラックス姿の親父が食卓につく。
「買い物に行ってないからなあ」
「冷蔵庫が空っぽなんだよ、帰りにスーパー寄って何か買ってきてよ。」
「おまえ、昼 (メシ)はどうするんだ?」
「カップめんか、素麺(お中元)の残りで済ますよ。」
「コンビニで何か買ってこれば?」
「あの、山道の下り登りを考えれば。断食の方がマシだよ。」
「あー車だと何でもないんだがな。」
「だから、買い物頼むわ、主に生鮮食料品と冷凍食品をな。」
「判った。」
親父が車で出勤するのを見送って。
納屋へ向かう。
さあ、バイクはどうかな?
(´・ω・`)お酒は二十歳になってから。