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卯田くんとおにぎり  作者: 王石 勉
第1章:卯田くんとおにぎりと夏休み
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卯田くんとおにぎりとうだうだ。

ソレからの俺は大忙しだった。

コマメに部屋や家の中の物を減らして。

転校の手続きと新居の下見。必要な物のリストアップにリフォームの相談。

友人と別れ。

夏休みに入ったらバタバタと引越し準備。




「ふー、あちい。」

もうすぐ7月も終わろうとしている頃、荷物と共に新居へ付いた。


新居の下見で、真っ先に行ったのは、離れの茶室の所有権を主張するコトであった。

つまり、茶室はオレの部屋。


親父は、広い部屋が有るのになんでワザワザそんな狭い部屋に…。


とぼやいたが、子供の頃から結構気に入っていた。

回廊でつながって窓から庭園を望む茶室は、もし将来、自分で家を建てたら。

絶対に茶室を作ろうと心に決めたのである。

もちろん、小学生に茶道の覚えが有るハズはない。

四畳半 (とチョット)の狭い茶室、正に僕の城。

にじり口からは庭にも出れる。



床間には小型の液晶TV(兼パソコンモニター)、給仕口には無理やり付けた窓用エアコン。

書机には山積みの新しい学校からの課題と、畳に敷いた万年床、手前畳に未だ梱包を解いていないダンボール多数、等

イロイロ台無しだが取り合えず寝起きするのには上等だ。


母屋は水周りをリフォームしたので工務店の人についでに電源の増設と上手くエアコン取り付けをしてもらってた。

つまり簡単に外して復旧できるようにしてもらったのだ。(だから使わない給仕口にエアコンが付いた。扉を元に戻せばすぐ復旧)

照明器具もTVアンテナ&LANコンセントも付けてもらい。上手く隠して配線してあるので工務店の腕はナカナカの物だ。


ただ、工務店の人の話では、

「茶室は人が住むように作ってないから、夏は涼しいけど。冬は最悪ですよ?一応、畳の下に断熱材入れてますけど窓が多いし障子紙も二重にしましたが無いよりマシ程度だと思ってください。」


まあ、母屋は部屋が余っているので。ふだんは勉強&寝室として使い、寒くなったら母屋に避難すれば良いだけだ、と軽く考えていた。


もうすぐ昼も三時も過ぎる頃。

母屋に大きな荷物の運び込みも終わり。とりあえず使う物の梱包も解いた。

引越し屋のトラックも帰った。

親父は、近所に挨拶に言って来ると外出した。


ごろんと寝転がる。見上げる古い天井に、そぐわない真新しいLED照明器具。(工務店の人が虫が寄らないからLEDの方が断然良いですよと強く勧めてきた。)


何しよう。

もちろん今すぐ使わない物の入ったダンボールを解く気にも。山と積まれた課題もやる気は無い。


漫画もTVゲームも荷物から解いてない。(大部分は前の学校の友人にあげたり処分した。)


遊ぶ友人も居ない。学校が始まってないので、実際の転校デビューは9月からだ。

うっわ。僕、一ヶ月ボッチ?

そんな事をボンヤリ考えていると。潮の香りを風が運んできた。


そうだ、釣りをしよう。海釣りが趣味だと言っておきながら。最後にやったのは小学生のころだ。

海有り県の連中に趣味”海釣り”と言っても恥ずかしくない腕を見せなければ。


(なお、後で判ったが海有り県の人は子供の頃から海釣りしまくっているので、高校生まで釣り趣味のヤツは殆ど居ないそうだ。)


母屋の隣りにある、納屋へ行き釣竿を探す。

もう使われなくなって長い納屋の中は埃が積っており、夏の日差しに慣れた目には酷く薄暗い。

(母屋&庭は無人で有ったが管理会社に頼んでいたので定期的に掃除されていた。)

「たしか、ここら辺に。」

記憶を頼りに納屋の中を探すと。防水幌が掛った大きな梱包物が有った。自転車にしてはデカイ。

幌を外すと中には一升瓶プラケースの上に載った、古いオフロードバイクがあった。

「Kawasaki、KDX125SR。カワサキか…。誰のだろうお爺さんが乗っていたのか、叔父さんの物か…。」


叔父さん(母の弟)は居るのだが、仕事で外国へ行ってしまい。現地の人と結婚して子供も居て家も建ててしまったので。

向こうで骨を埋める、全く日本へ帰ってくる気は無い。と宣言している。

なおこの叔父さんは、昔、この家で会ったが、当時、小学生の僕に真剣な顔をして。

「いいかボウズ。キンパツのネーチャンは最高だぞ!!」

と言って母に殴られていた。

確かに叔父さんのお嫁さんは金髪で綺麗な人であった。それから僕は俄然、英語を勉強しだしたんだが、無論、金髪女性の知り合いは居ない。


あの時は皆が揃っていたし楽しかったな。

こんな事に成るとは思いもしなかった…。孤独のせいで随分と感傷的に成る。


すぐに釣竿は見つかった。

古いバス釣り用竿とイカ釣り用のルアーが在った。

ポリバケツとバス竿。麦わら帽子。

玉網タモは無かったが何とか成るだろう。


愛車のMTBマウンテンバイクに釣具を引っ掛けると。

玄関に書置きを残し。

真夏の青空の下、海へと続く坂を風を切って下っていった。

昔の記憶を思い出しながら。


次回、(´・ω・`)…。急展開、ヒロイン登場!!(たぶん)

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