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卯田くんとおにぎり  作者: 王石 勉
第1章:卯田くんとおにぎりと夏休み
19/21

卯田くんとおにぎりとヤマ

ココ2、3日は。

朝起きて課題を片付け。

朝食を作り。

親父を送り出し。

庭の草むしりが最近のトレンドだ。

その後で、昼前までバイクの整備をする。

空いた時間に茶室でゴロゴロしながら地図を見て。

地形を思い出す。

こんがらかってきた。

うまく行くとは思えない。

どうしたら一クラス分の鬼を撃退できるんだろう?

答えはでない。

一方のバイクの方は随分と解かって来た。

庭で乗り回すコトも出来る様になった。

しかし、ココでは狭い。

もっと広い所で練習したい。

脳裏にあの広い広場を思い出した。

あそこなら誰も来ない、たぶん私有地だろう。

持ち主の許可を取れば良い。

親父は山は本家の持ち物だと言っていた。

大御婆様の許可が要ることになる。

こまった。どんなタイミングで何と言おう?

思案に暮れていると母屋の黒電話が鳴った。

走って玄関に飛び込み受話器を取る。

「もしもし、卯田です。」

『おるかー?おるなー。荷物が有るでこれから行くで~。』

「よろしくおねがい…。」

切れた。

う~ん。

何だろ?

最近は何も買っていない。なんの荷物なんだ?

冷蔵庫の中の栄養ドリンクを用意して玄関で待ち構えると。

門の外にトラックが止まり。

配達のオジサンが長い箱を持ってやってきた。

「ごめんくださーい。」

「はいはいありがとうございます。」

「ここやで~(トントン)」

「はい、たしかに受け取りました。今日も暑いですね~。コレどうぞ。」

栄養ドリンクを笑顔で受け取るオジサンはトラックに乗り込み帰った。

ドコからの荷物だ?

差出人は伯父さんの名前だった。

さっそく箱を開ける。

長さが違う長い羽が2本セットで3組、6本、一番長いので2m以上、一番短いので1.8mだ。

うーんコレが山鳥の尾羽か長いな。

どう使うんだろ?

使用方法を聞いていなかった。

その他にエアークッションに包まれた物があった。

慎重に開ける。

あらやだ。

いや、矢だった。

何だろ30本ぐらいある。

なるほど凶悪そうな鏃が付いている、そのうえ矢羽が茶と黒の縞模様。

山鳥の羽でできているのか?

後はお札が三枚。

封筒が出てきた。

手紙だと思い中を見ると諭吉さんが5枚…。

おいおい宅配で現金送付は違法だろ?

裏書を見ると”軍資金五萬也”の筆書き。

いや、助かるけど。

兄ちゃん、いろいろ気を回しすぎだろ。

どうしよう?

確かに軍資金は必要だ。

矢も手に入った。

弓の使える人が居ると言ったのは僕だ。

とりあえず。

さくらさんに相談だな。

大御婆様にもお願いがある。

よし、昼前だが電話しよう。

黒電話の前に立つ。

深呼吸してダイヤルを回す。

ブツブツという電子音の後に。

呼び出し音が続く。

それに向かって祈る。つばきさん出ろ。つばきさんでろ…。でんわでろ。

『はい、もしもし。』

ああ、声が若い。恐らく、かえでさんだな。

「もしもし、こんにちは卯田まさひろと申しますが。つばきさんかさくらさんはご在宅でしょうか?」

『はい、両方居ますがどちらにつなぎますか?』

よっしゃ!!思わずガッツポーズを取る。

「あ、お手すきなかたをおねがいします。」

『おねーちゃん!!卯田さんから電話~!!』

おい!!大きな声で叫ぶんじゃない!!!

何か受話器の向うでドタドタ音が聞こえるが。

良くわからない。

『ハイ替わりましたさくらです。』

何だろ。さくらさん息が荒い。

「ああ、さくらさん、申し訳有りませんが、お渡ししたい物がありお伺いしたいのですが、本日でなくても良いのですが、もし、ご都合が良ければ。本日15時頃はどうでしょうか?」

『はい、大丈夫です。』

「もうしわけありません、その時に大御婆様にもお願いしたいことが有るのですがよろしいでしょうか?」

「はい、わかりました。お待ちしております。」

受話器をゆっくり置く。

やった!!

通信に成功した!!

よーし!!

未だお昼には早いが祝いの冷麦だ!!

その前にシャワーを浴びる。

風呂場で手を良く洗う。

タオルで拭きながら、作業服を洗濯機の中にシュート。

洗剤を入れてふたを閉める。

キッチンに向かい。

鍋に水を張り火にかける。

めんつゆは濃縮の市販のヤツだ。

薬味はねりわさび(チューブ)とスリゴマのみ。

沸騰した鍋に乾麺を投入!

後は時間との勝負だ!!

キッチンタイマーをセットして。

深皿に氷と水を張り備える。

笊とボウル、茹で上がった麺はココで洗う。

PIPIPI!PIPIPI!

笊の中に鍋を開け、流水で洗う。

シャワーで火照った身体に湯気の湿度が迫り汗が吹き出る。

そして水気を切り深皿に開ける。

タコ唐草蕎麦猪口に濃縮めんつゆをワンフィンガー。

水をさらにワンフィンガー。

チューブわさびとスリゴマをイイ加減。

チューブのわさびってめんつゆに入れると油膜が広がるのが不快だね。

濃い目のつゆに冷麦を浸す。

一気に吸い込む。

うん、甘い。

市販のめんつゆってなんか甘いよね?

どうも慣れないわ~。

なんだろ?関西風味?

海なし県は底の見えない真っ黒なつゆで醤油と干しシイタケ出汁が正義だ、甘いのには慣れないわ~。

みりんか砂糖入ってるのかな?

まあ、つゆ作るのは大変だからコレで我慢するしかないけどね。

スリゴマで曇っためんつゆで冷麦を流す。

うん、薬味をもう少し何かほしい。

夏はは刻み茗荷の季節だけど。

ソコまで手間はかけたくない。

茗荷を植えてみようかな?

刻んだ茗荷に鰹節をあえて醤油を掛けただけでもオカズになる。

冷奴に乗せるだけで料理になる。

夏の味として万能だ。

茗荷は物忘れが多くなるらしいが元々記憶力に自信が無いので問題ない。

するすると進み深皿には濁った水と氷の残骸。

麺の切れ端しかない。

この切れ端は意外と生ゴミとして悪質だ。

必ず食べる。

食事が終わると。

食器を洗う。冷麦にすると洗い物がさっとできるから安心。

片付けた後には完了した洗濯物を干す。

ソコで我に返る…”何を着て行こう…。”

流石に学ランで弓を担いであの山道はよろしくない。

と言うか。むさい。

上下迷彩服はご年配の方々には刺激的過ぎるだろう。

さわやかに山ボーイを決めてるか。

チノパンカーゴタイプ(カーキ色)のズボンにTシャツとナイロンパーカー

ラフな格好だが。

帰りに林道から広場までの道を確かめて帰ろう。

いや、そう言い切ってしまおう。

リュックに箱を入れる。

かなりはみ出すが手で持つよりマシだ。

汗拭きタオルを首にかけ水筒に麦茶を詰める。

火の元よし、戸締りよし!

トレッキングシューズと帽子を装着!!

忘れ物ナシ!

昼下がりの強い日差しの下。

僕は海風を受けながら。

山を登る(ブローバックマウンテン)。

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