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死に至る病に侵される

作者: へたれ

作中の主人公の言動をあげつらって作者の意見や精神状態であると邪推して

批判するのもやめてください。あくまで小説であり、フィクションですよ。

そしてこの主人公は私ではありません。自分をモデルにした部分はありますが。

自堕落な人間に興味がある人、お読みください。エッセイ風…なのか?


__生きている実感がない、と思い始めたのはいつの頃からだろうか。

私は兎に角、自分に自信がない。

自分への失望感は、強い強迫観念と共に

この私の骨身に染み込んでいるのだった。

まるで呪いのように。

今日も日長何もせずに終わってしまった。

久しぶりの休日だというのに。

布団にくるまりながら、私はボンヤリと天井を眺めた。


…このまま一生起き上がることなく、無になれるならば。


何も、やる気が起きない。

狂ったように夜半時間を潰すゲームすらも面倒で今は手につかなかった。


…いっそ、死んでみようか。


死ぬことは怖くなかった。痛みが怖いのだ。

未練はあるが、捨てていける物ばかりで。

溜息ばかりが出る。

生きている状態が死んでいる状態よりも良い、とは誰が決めたものなのだろう。

人間なんて生まれてこない方が楽なのではないか?

だとすれば子供を持つ親というのは罪な存在だ。


…どうして私は空白の世界から苦しみに満ちた世界に放り込まれたのだろう。

いずれ死ぬなら、いっそ元から居ない方が楽ではないか。


私は輪廻転生など露ほども信じていないのだ。

だから人間は生前も死後も無であると信じている。

夢も希望もない、機械的な世界観だ。


私は思う。


…存在さえしなければ、考えることさえなければ、と。


いや…もっと…私が生を楽しめていれば、人生観は違う筈なのだ。

親に結婚でもする時、恒例の両親宛ての手紙でも読みながら、

自分を産んでくれたことに感謝するに違いないのだ。


「お母さん、お父さん、産んでくれてありがとう。育ててくれてありがとう。」


嘗てはそう思いたかったし、今でも両親の為にはそう思いたい。

だが私の心はそう思うにはあまりにも硬く、冷えていた。

このように思うことが普通の人々から受け入れられないことも知っている。

つくづく、社会不適合者なのだ。自分は。

今までは開き直って生きてきた筈なのだが、就職を目前にして暗い未来しか浮かばない。


「あんたと生活しているとイライラするのよ。このブス。

こんな簡単なことも出来ないなんて、社会に出たらすぐリストラされるんじゃないの?」


毎朝ストレスが溜まっているのか、罵倒してくる母。

リアルすぎて、苦笑すら浮かばない。


確かに…これからどうしたものか。


確かに自分は無能だ。人よりもトロく、容姿も醜いのではないか。

母の言葉の毒が自分の首を締めるのを感じる。

人間の価値は相対評価によってはかられる。

社会的に必要とされるべき人間の価値は決まりきっていて、外れた者に他人は厳しい。

自分が存在しているだけで肯定してくれる人間など、この世にはいないのだ。

親でさえも、その価値から逃れることは出来ない。


幼い頃から私は周りと比較されて育った…と思う。


努力というものと何時から無縁になりはじめただろう?

どのような習い事をしても人に勝てず、年下にすら負けた時だろうか。

果ては容姿…特に目をからかわれた時だろうか。


それでも私は何かに憑かれたように自分の居場所を作ろうと思った。

興味を持った教科で学年一位を取ったり、目を整形して二重にしてみたり。

特に目を二重にした時は、元の自分に反逆したみたいで愉快だった。

コンプレックスへの復讐心が満たされた感じがした。

とにかく己という無様な存在から逃げたかったのだ。


これをすれば、自分を認めることが出来るのではという狂気じみた信仰心があった。

化粧でも良いではないか、と普通は思う。

だが化粧では自分を変えたという達成感を得られなかったのだ。

今思えば、自分の諸々のコンプレックスを自分の最も気に入らないパーツに被せただけなのかもしれない。


しかし、望むものは渇きのように出てくる。


…自己満足感が欲しい、充足感が欲しい。


そう願い続ける醜い私。

世間の評価に踊らされる惨めで愚かしい者。

本当に賢い人間は自分を受け入れて、世間に動じず生きていく者だ。

だが、私はそこまでタフじゃない。

諦めと期待を繰り返し、疲弊した。

幸せになりたい…だが、幸せって一体どんな状態を以て幸せというのだろう。

私の我欲が満たされれば幸せになれるのならば、私は一生幸せなどにはなれない。


私は自分改めて問うた。

元から輝いている「デキのいい」人間と同類になれるだろうか、と。

例えば、学校のクラスで一目も二目も置かれているグループに入っていけるか?

…否。

私は生まれながら、彼らとは違うのだ。

所詮何かを変えたところで私は紛い者なのだ。

例え成績が良かろうが、顔を変えようが私の本質はこの内面だ。

幼い頃から培った、黒ずみに浸食された形のない不安定なこの心を誰かと交換でもしない限り、私は一生暗い内面と付き合って苦しんで生きねばならない。

それが嫌だ。どうしてこんな辛い思いをして、

自分を受け入れないような社会で働いて、食って、自分の命を繋がねばならない。

親を恨み、情けないことに「いっそ自分など産まなければいいのに」と悪態をついたこともある。売り言葉に買い言葉で、母親も自分に死ねという罵声を浴びせかけてくるのだが。


「死ねばいいじゃない。あんたなんていなくても生きていけるから。

…死ぬ勇気もないくせに。」


…その通りだ。

私は痛みが恐ろしい。

母が本気で自分に死ねと言っている訳ではないことは承知している。

出来の悪い子供ながらとりあえず愛して貰っている。ただし自己本位で。


「まぁ、自殺するなら私が死んだ後にして。私が死んだら自殺していいから。」


就職活動を期に親と衝突することが増えた。

私の無気力な姿勢、価値観諸々に親は髪を逆立てて怒るのだ。

私の両親は自信に漲り、強く、心の弱い者を理解など出来ない。

したくもないだろう。ひたすら自分の主張を押し付けてくる。

社会的には両親の姿勢が正解だ、と思う。彼らは正論を言っている。

だが私は、中々動く気力が湧かない。


__惰性で生きているこの私には。


何の為に生きるのか、という問いは考えない方が身のためだと思う。

そこに大層な理由などない、意味など見いだせないことが多いのだ。

生きている意味は自分でこじつけるもの。

そういう意味で自己評価が低い自分は主観的な意味を見いだせないのだ。


…何か目標があれば違うのだろうか。


だがその目標さえも自分の自信や能力に裏打ちされて出てくるのだから残酷だ。

目標は努力を生む。努力出来ない人間は社会に必要とされない。

無理やりにでも生きるならば意欲を自分で勝ち取らねばならない。

この折れた心から目を逸らし、自分は社会的価値を持った人間であると心の底から信じ込まねばならないのだ。


この世界で生き抜くには。

すべてが金銭で動くこの世界で生きるには。


その後、目的を見いだせないながら、亡霊のように動いた結果、

かろうじて内定を貰うことが出来た。

今、布団の中で考えを巡らしていることもそのことだ。

内定…その事実は私に生きる道を提供すると同時に逃げ道を塞ぐものであった。

否応なく、社会の枠に嵌められていくだろう。

そして私はまた苦悩するのだ。

出来の悪い自分に。そして目的なき未来に。


今までもそうだった。

だが、これからはそうはいかない。

私は食べていくために周囲に認められなくてはならない。

そしてより切実に順応していくことが求められる。

無気力でもそれなりに動けていた今までとは違う、死地に放り込まれる。

自分のプライドを傷つけられ、再起不能にさせられるのではないか。

私は追い詰められて死にたくはない。


…穏やかに自分で死を選べたらいい。


こんな自分は情けない奴だと自分でも思うのだが、

どうしようもない。


「…怖いなでも。」


臆病な心が「生きていたい」と制止する。

結局私は目を閉じた。

そうすることで、外界と自分の意識を遮断する。

その日もまた、一時現実から目を背ける。


…だが。


数日後、愛していた犬が死んでしまった。

最も身近な心の支えが。

親よりも愛したかもしれない。

余りに泣きすぎたせいで、目が一重に戻ってしまった。

そんなことが吹き飛ぶ位、寂しい。

生きていた頃の姿が目にチラついて、飯時になると空の皿を見て泣く。

暑がりな犬の為にエアコンをつけようとして実感する。


…ああ、もういないんだ…。


私の心がズシリと重くなり、暗闇に支配される。



__徐に包丁を取り出す。

そして私は…。






…二重の埋没って取れるそうですよ。それでいて糸抜けないらしくて不便ですね。

精神的負荷がそれだけでもありそうだな。

シリアスな話が好きでゴメンなさい。


最後書いてて、自分でも怖いと思いました。

何度も言いますが、作者の精神状態じゃないですよw。

裏設定で、主人公はアスペルガー障害ということにしました。

他者に順応しにくい障害です。

弱い心を持った人は主人公のように絶望しないように気を付けて!


ラスト、死んだのか、惰性で制止したのかは想像にお任せ。


もう、怖い。でも書きたかったから仕方ない。

危ない人だとか思わないで笑!

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