ステータス
服を着ると少しゴワゴワする、まあしょうがないか柔軟剤とか無いんだろうしな、慣れれば気にならなくなるだろう。
服を着る時に気が付いたが、髪は黒だった、、前髪は眉にかかる位の長さだが、他は肩甲骨の下の部分まであり、首の後ろ辺りで一束に結んであった。
顔は確認出来ないので、どんな顔なのか分からない、瞳の色も気になるが今は我慢しよう、まずショルダーバックの中身を確認しとくか。
さて、まず最初は、これはパンだな、手の平より少し大きくて楕円形だ、思ってたより黒い、これが俗に言う黒パン? 少し固いがこっちの世界だと普通なのかもしれないな、まあいいとりあえずパンと。
次は干し肉、短冊状になっている、何の肉だろう?
そうだ、鑑定のスキルをもらってんだっけ、早速試してみようか、干し肉を見て【鑑定】と念じてみる。
頭の中に鑑定結果が思い浮かぶ。 <干し肉>
ちょっと待て、干し肉なのは見ればわかるんだよ、何の肉かを知りたいのに、全然使えねえじゃんこのスキル、鑑定スキルは外れだったのか? 頼み込んで貰ったのに・・・まあいいや次いこう。
次はこれだな、大きさは栄養ドリンクほどの透明な小瓶が四個入っている、中に入っている液体の色は緑、青、赤、黄と全て違う。
あれ?小瓶を持つと少し弾力がある、ガラスだと思ってたんで少しびっくりした、プラスチックの類なのか?そうだとしたら科学も発達してるんだろうか? この世界の事は魔法があって、魔獣がいると神様に教えてもらったが、文明はどんなレベルなんだろう? 気になるが、今はそれを知る方法も手段も無い、それを考えるのは後回しにしておこう。
中身が何か分からないので、まず緑の液体の入ってる小瓶を【鑑定】と念じてみる。
<回復薬>
おお、前言撤回、鑑定はやっぱり使えるな、これからも役に立ちそうだ。よし、他の小瓶も調べよう。
結果、緑⇒回復薬、青⇒マナ回復薬、赤⇒解毒薬、黄⇒消麻痺薬、だった。
回復薬なんかは、傷にかけるのか、飲むのかどっちだろう? 近い内に検証しよう・・・苦くないといいな。
皮で作った小さな巾着があり、手に取るとチャラチャラと音がする、感触は硬貨みたいだ、お金か?
中を見ると、金貨、銀貨、銅貨・・・だよね? 金貨なんかは記念コインでしか見たことが無いし、取り合えず鑑定すると、金貨、銀貨、銅貨だった。
硬貨は三種類とも小さい物と大きい物のがあるが、今は価値が分からないので保留だな。
他は、ナイフ、水筒など入っており、残りはコップ、火打ち石などの小物が少々で終わりだった。
よし、次はこの体の性能を確認しておかないとな、高性能って神様が言ってたけど、何処が如何なってるんだろう? たしかチェックボードでよかったよね、頭の中でチェックボードと念じる。
名前 (女性名・未定)
年齢 16
LV 1
HP 100
MP 200
力 10,000(10)
防御 10,000(10)
俊敏 10
器用 10
運 10
戦闘スキル
【弓術】レベル1 【槍術】レベル1 【体術】レベル1 (【怪力】【頑強】ダミー)
魔法
(未修得)
パッシブスキル
【状態異常半減】【精神耐性】 【夜目】 【覚醒】 【魔力上昇】レベル1
アクティブスキル
【鑑定】レベル1 【索敵】レベル1
特殊スキル
【異世界言語】【文字認識】【ブレーカー】
おいおい、何だよこれは、突っ込み所しか無いな。
初っ端から、名前未定って何? 女性の名前限定らしいが、自分で考えろって事か?突然名前が出てきたり? う~ん、放って置こう、次。
ステータスなんか初めて見たけど、これは如何見ても異常だろ、力と防御が突出してるし、(10)って何だ? ダミーに怪力と頑強のスキルがあるって事は、誰かから見られるって事か、そういえば神様がチェックボードの劣化版があるって言ってたな、そうすると(10)ってダミーって事か? 10000だけど10に見えたりするのかもしれないな、よし次だ。
魔法が未修得になっている、メインは水属性って言ってたはずだが、・・・・・これから覚えろって事なんだろうな、すぐ使える気になってたんで、ちょっとガッカリした。
まあそうだよね、何もしないで魔法を使おうっていうのは考えが甘かったか、だが問題は魔法を使うのに何を如何すればいいのかが、全く分からないって事の方が問題だな、誰かに教わったりしなくちゃならないんだろうな、これも今は保留だな。
聞いてないスキルがあるな、【覚醒】を意識すると詳細が見えた。
【覚醒】〔スキルが発現しやすくなる、スキルの成長も早くなる〕
ほう、これは便利だな、神様のいってた御褒美ってこれのことかな? お詫びが【精神耐性】なのかもしれないな。
【精神耐性】〔精神に負荷が掛かるのを軽減する、精神攻撃に耐性を得る〕
さっき気分が悪く成ってたのが、急に直ったのはこのスキルのお蔭か、これも重宝しそうだな。
するとこれは何だ?
【ブレーカー】〔スキル発動中のみ詳細閲覧可〕
え? 何このスキル、名前からして何かを遮断するんだろうけど、何を遮断するのか、発動条件も不明って、怪しすぎる、だが用心しようにも、どう用心していいかが分からない、何かこのスキルには嫌な予感するな、現状は放置で見なかったことにしとこう。
さて気分を入れ変えよう。ん? 今何か動いたな。
白い物が見えた木の方へ行って下草を覗くと・・・ウサギが居た、こっちを見るとピョンピョン跳ねて来る、こっちの世界にもウサギは居るんだな、などと考えていたら、想像してたよりも早い、まるで突進してくるようだ、慌てて避けると後ろの木に頭からゴォンとぶつかった。
勢いを弱めずに当たったので死んだのかと思ったが、何事も無かったようにこっちを向いて、跳ねて来る、あんな勢いで頭突きをくらったら、骨折してもおかしくない、距離が近く避ける暇が無かったので、咄嗟に手で横に払うようにして腕を降ると、偶然にもウサギに当たった、するとパンと高い音がしてウサギが文字道理吹っ飛んで行き、森の奥の少し離れた木にぶつかり、弾けた。
「えっ?」俺は自分のした事が信じられずに、その場に立ち尽くしたままで、弾けたウサギをぼんやり見ていた。
これが10,000の力か、とんでもないな、オーバーキルにも程がある。
ウサギに近づいて見ると、よっぽど激しく木にぶつかったんだろう、体の半分ほどは潰れていた、血が辺りに撒き散らされており、毛皮はあちこち破れて赤く染まっている、内臓は飛び出し千切れてる部分も多い、ちょっとしたスプラッタ映画みたいだ。
こっちの世界のウサギは何か違うのかな? さっきの頭突きも強烈だったしな。
じっくり見てみると、頭にコブと角の中間のような突起があった、これが頭突きをする武器になるのか、他は変わった所は無さそうだな。
じっとウサギを見ていたが何の変化も無い、ゲームみたいに死体が消えて素材が残ったりはしないようだ。
当たり前だと思いつつ、ほんの少しは期待してたんだけどな、残念だ。
そうすると剥ぎ取りなのかと思ったけど、毛皮は破れて使えそうもない、肉の半分は大丈夫みたいだ、剥ぎ取りの練習でもと思ったが、やめとこう、この惨状じゃあ血まみれに成るのは確実だな、水筒の水は貴重だし、手も洗えないのに血まみれに成る訳にもいかないしな、干し肉で我慢しておこう。
これからどうしたもんかな、森の中のほうが、食料になる獲物や水の確保には良さそうだけど、物騒なんだろうな、魔獣が居る世界らしいし、森からは離れたほうがいいな。
移動するまえに【索敵】のスキルを使ってみると、自分を中心に百メートル位の範囲の動物の反応が分かる、レーダーを見ているような、何とも妙な感覚だな。
森の中の探知ギリギリ付近に反応が二つあるが、どんな動物かは分からない、近づかない方がいいだろう、森に背を向け反対方向へ歩いて行く事にした。
俺は草原と言っていいのか、丈の短い草だらけの平地を、宛ても無く歩いている、何処に向かったらいいのか見当もつかないからだ、何処を歩いても外れのような気がしてならない。
人の気配も痕跡もまるで無い、当然道などあるはずもない、もう何時間も歩いているが何の進展も無く不安になってくる、数日歩く程度の範囲に人は居るんだろうか? ここは島で人が居ない場所なのかもしれない、時々【索敵】してみるが何の反応も無かった。
歩きながら何度も此の方向で合ってるのか自問してみても、答えは出て来ない、こっちの方向で合ってるのか、方向を変えるべきか、変えて失敗するかもしれない、もう少ししたら何かあるかもしれない、その内俺は纏まらない考えを放棄して、ただ黙々と歩き続けた。
平地といっても多少の高低はある、少し丘のように成っている所に来たとき辺りを見回すと、ずいぶん遠くの草原に一筋の線があるように見えた、もしかして・・・ある種の期待を胸に俺はその線に向って歩き出した。
たどり着いてみると、そこには轍のような跡があった、道だ、此処には人が居るんだ・・・よかった~、どうやら俺は間違わなかったらしい。
道が草原を貫いている、此処に来て、更なる問題が発生した、此の道はどっちに行けばいいんだろう? どっちに行っても町や村などには着くんだろうけど、問題は距離だ、どっちが近いんだろう、この道は轍がある位で、そんなに往来があるようには見えないから、誰かが通るのを待つのは期待できそうにない。
辺りを見回して、山や森から離れる方向に伸びている道筋にそって歩いていくことにする。
一時間ほど歩くとT字路にぶつかった、此の道は若干広く剥き出しの地面も、なだらかで多少整備している感じに見える。
良かった、こっちに来て正解だった、ホッとしたらグーっと腹が鳴った、そういえば何も食べてなかったな。
干し肉を三枚ほど出して齧りながら水筒の水を少しづつ飲む、干し肉も水もまだまだ節約しといた方がいいな、まだ遠いのかもしれないし、そう思いながらゆっくりと硬い肉を噛む、干し肉は少し塩が効いていた、何の肉かは分からないが、臭味もなく思ってたより旨い、二枚ほど食べた所で騒がしい音が聞こえてきた、音の方を見ると馬車が百メートルくらい先から、こっちに向って来るのが見えた、どうやら食べるのに夢中で近づくまで気が付かなかったらしい、良く見ると二輪の台車を引く荷馬車みたいだ。
急いでいるらしく、かなりスピードが出ている、止まってくれるように声を掛けようとしたが、三十メートル程に近づいた辺りで、ガンと大きな音がして荷馬車の片側が弾んだと同時に、車輪が外れて横倒しになってしまった。
俺は慌てて駆け寄ると、そこに荷台から投げ出された男がうつ伏せに倒れていた、乗っていたのは一人だったらしい、声を掛けるも返事がない、死んではいないようだが気絶しているのか? もう一度声を掛けようとして、男の右肩に矢が刺さっているのが見えた。
襲われていたのか? 荷馬車が来た方を見る、すると少し先の草がザワザワと音をたてて揺れて、猿のような人型が幾つも姿を現した。
見た目は一メートル位で、チンパンジーやオラウータンなどの猿を掛け合わせたような、見たことも無い生き物だ、木の棒や錆びた剣などを持ってる奴もいる、そいつに【鑑定】をしてみた。
<ゴブリン>
やっぱり、居るとは思ってたけど、実際に見ると、想像以上に気味が悪い、こっちを見て威嚇するように、牙を剥き出しギャギャと叫んでいる。
何か武器のような物は無いか辺りを見回すと、男の横に剣が落ちている、こいつを借りよう、鞘を抜くと両刃の剣だった、普通の剣なんだろうか?などと思っていたら、ゴブリンが叫び声をあげながら襲ってきた、棒で殴りかかってきたのを避けて横に剣を振ると、ゴブリンの体が声も出さずに上下に真っ二つに分かれて転がった。
何の抵抗も無くスッパリと切れた、剣がいいのか俺の力のせいなのか、おそらく力のほうなんだろうな、などと頭の片隅で考えていたら、仲間を殺されたせいか、次々に叫びながら襲ってきた。
「ギャガ」「ギャウ」果敢に攻撃してくるも、俺が剣を振ると剣筋にそって相手の武器ごとゴブリンが切り裂かれていく、七匹を切った所で矢が俺を掠めてとんで行った、そうか弓を使う奴も居るのを忘れてた、男の肩に刺さった矢はそいつの仕業か、矢の来た方を見ても、草が邪魔で見えなかった、さらにもう一匹を切る、もうゴブリンは居ない。
あとは弓を使う奴だけか? 何処にいるんだ? そうだ、【索敵】をすると一つ反応があった、二十メートル位離れている、しゃがんで相手から見えないように隠れて、回り込む、そして反対側に切り落としたゴブリンの腕を放り投げる、そしてなるべく音を立てないようにそっと近づいて行く、残り五メートルになってこっちに気がついたので、いっきに走る。
「ギッ」慌てて弓をこっちに向けるも間に合わず首を切り落とされた。
これで全部らしい、ホッとため息をつく、そして自分の戦いぶりを振り返ってみる。
スムーズに体が動いたな、戦う事が体に染み付いてるみたいだ、これも高性能な体の機能の一つって事なのかな? まあ何にせよ怪我もせずに終わって良かったな。
荷馬車に戻ると、まだ男は気絶したままだった。
「おい、大丈夫か?」左肩をゆすると、「ううっ」と声を出して目を開ける、そして急に両手でガバッと上半身を起こし「ゴブリン、ゴブリンが来た」と大きな声を上げる、うつ伏せだったから分からなかったが年齢は四十代かな? 顔は可も無く不可も無くといった所か。
「ゴブリンは全部倒したよ」と俺が言うと、びっくりしたようにこっちを見る、俺が居たのに気がつかなかったみたいだ、俺の顔を見つめて「えっ」と声を出して、しばらく固まっていた。
「大丈夫か?」俺は再度声を掛ける、すると男はやっと我に帰ったみいで、「ああ、ありがとう、ゴブリンに襲われて、必死に逃げてる最中に突然荷台が倒れて、もうだめだと思って気がついたら、こんな綺麗な娘が目の前に居たんでびっくりしましたよ」といって笑った。
そうだった、体は女性だったんだっけ、すっかり忘れてたよ、口調も女性の様にした方が良いんだろうな、男のように喋ると何かと、注目を集めたり変な目で見られるかもしれないし、よし、今から女性のような喋り方をするようにしよう。
「ふふっ、綺麗だなんてお世辞でも嬉しいわ」と言って、ニッコリと笑ってみる。
うあ、違和感が物凄くあるな、鳥肌が立ちそうだ、・・・ガマン、我慢だ。
俺が言葉の違和感に身もだえしてるのに気づかず、男は顔を赤らめている。
「いやいや、お世辞じゃなんかじゃありませんよ、本当にお美しいですよ、なのに見かけによらず、お強いんですね」
男は起き上がって辺りを見回した。
俺もいっしょに立って改めて辺りを見回した、あちこちに散らばる首や胴から飛び出た内臓、周りはウサギどころじゃ無い位スプラッタな状況だった。
俺は気になる事を聞いてみる事にした。
「肩に矢が刺さってますけど、痛くないんですか?」
「え?」男はびっくりしたように自分の右肩を見る。
「そうだった、襲われたとき矢が刺さったんだった、あの時は逃げるのに必死だったから・・・ううっ、刺さってるのを思い出したら急に痛くなってきた」
肩を抑えて痛そうに顔をしかめ出した。
大丈夫かな、この人は? 主に精神的な意味で。