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崩落

 おかしい何でこんな白い所に?


・・・俺さっきまではバイクで夜道を疾走していたはずだ、疾走というほど乗り方はかっこよくないが気分的には疾走だ、免許とりたてで親父から借りたバイクがカブだったとしてもだ。


トンネルに入り中間に差し掛かろうと言う所で、いきなりハンドルを取られるような弾むような感覚があり、慌ててブレーキを掛けて止まると、地面が揺れており地震だとわかった、故障や運転ミスではない事で安堵したのはしょうがない事だと思う。


止まって気がついたが、かなり激しく揺れてる、必死に脚で踏ん張って、バイクを倒さないようにするのがが精一杯だった、しかし中々おさまらない(これは、やばいかもしれない)と思った矢先、真上付近でバキッっと何かが砕けるような大きな音がした。


はっとして見ると天井付近に亀裂が出来ており、それがすさまじい勢いで四方に広がっていく、その直後トンネル全体がひしゃげるようにゆがみ、視界の範囲全てに一抱えも、又はそれ以上に大きな外壁が土砂と共に降ってきた、もちろん俺の上にも。


その時は、死ぬとか怖いとか考えつかなくて、自分に向かって落ちてくる瓦礫がれきから目が離せずに(逃げなきゃっ)て思いながらも体が動かなかった、パニックになっていたのかもしれないが、危険にひんして刹那せつな的に脳が判断して出した答えが、”間に合わない”だった。


次の瞬間、全身を圧迫されて骨折したような感覚があったけど、不思議と痛みはなくてドンと強い衝撃だけが印象に残っている、そのまま意識を無くしたと思ったんだけど、その時に子供の声で、名前を呼ばれた気がしたんだ、「弓元ゆみもと 大和やまと君、ちょっといいかな?」って。


で、現在に至るわけだ。

気がついたら何故か白い部屋の中に一人で立っていた、部屋と言っても体育間くらいの広さがあって床、壁、天井の境界があやふやで、継ぎ目のない空間のようにも見える、照明は見当たらないが全体的に明るく、寒さも暑さも感じない。


床も少し柔らかい感じがすると思って、足元を見たら衣服と同化するように体が透けており、靴を通して踏んでる床がそのまま見えた。脚、腹も同様に視界を妨げない。

パッと両手を目の前に持ってきてじっくりと手を見ても、指など輪郭は立体的だが重ねた手の平から向こうの壁が見えている。


「透けてる」

「魂だけなんで透けて見えるんだよ」

思わずつぶやいた言葉に返答があり、びっくりして声の方に顔を向けると、三メートルほど先に子供が立っていた。

(さっきまで誰も居なかったはずなのに)と思いつつジッとその子を見る、金髪でストレート、髪型は日本人形のオカッパの様で肩の長さで切り揃えられている、瞳の色も金色、顔は西洋風のかわいらしい顔立ち、服は上下共に絹のような滑らかそうで白か銀かよくわからない色をしている、身長は百二十センチ位、うっすらと全身が光っている。

見た瞬間普通の子供じゃないなとは思ったけど、気になったので聞いてみる。


「男の子?」

(あ、マナー的には女の子?て聞いた方がいいんだっけ?)とんでもなく如何どうでもいい事が頭をよぎる。


「最初の質問がそれなの? 君は変わってるね~」

ニコニコとしながら話しかけてくる。

「ああ、性別を聞きたいんだったね、僕には性別は無いんだよ、便宜上僕って言ってるけど、男でも女ないよ」

「おかま?」

「違うからね、・・・君は思ったことを直ぐ口にしちゃうんだね、直したほうがいいよ?」

さっきとは違い、かわいそうな子を見るような目をしている。

それは俺も自覚してるんだよ、でも子供にそんな目で見られると、さすがにグサッとくるものがあるな。


まあそんな事は置いといて、この状況はどうなってるのか聞いたほうがいいだろうな、何かあまりいい予感がしないんだけど、このままじゃこの先に展開して行かなそうだしな。

「ちょっと質問してもいいですか?」

「さっきも質問してたよね?なに急に改まったりして、やっぱり思ったことを口にするから変なかんじに」

「あ~分かった、分かりましたから、直すように努力しますから質問させてくださいよ、お願いしますから」

「ほんとに? まあいいけどね、じゃあ何でも質問してね、僕が君を此処に呼んだのも聞きたいことがあったからなんだよ」


そういえば、あの時俺の名前を呼んだ声って、薄っすらとしか覚えてないけど、この子の声に似てるような気がするな、それも確認しとこうか。

ず、此処ここ何処どこで、貴方あなたは誰でしょう?」


「此処は、君に分かりやすく言うと天界と言うのがが一番分かり易いかな、この空間はその中の一角に在るんだよ、そして僕は神様と言う事になるね」

言いながら、ちょっと嬉しそうに胸を張る。


天界か、そうかとも思ってたけど、あの崩落で俺は死んだのか、短い一生だったな~ もう一度家族に会いたかったな、兄貴に詩織、父さん、母さん、ごめんよ、親孝行も出来なかったな、もうちょっと真面目にすれば良かったかもしれないな、がんばって第一志望の高校に入れて、やりたい事もいっぱいあったのにな~ 後悔先に立たずってこれほど実感出来る事ってないな、あ~落ち込むな~。


「どうしたんだい?、急に落ち込んだように見えるけど、・・・事情はどうあれ、なるべく質問を早めに終わらせたいんだけどね」

神様が質問の催促をして来る。


神様も忙しいって事かな、感傷に浸る暇は無いか。

「いや、家族の事を思ったら少し、しんみりしただけだから」


「そうかい? 本来なら時間をもっと取ってあげてもいいんだけど、今は時間が惜しいんでね、質問があるならしてくれないかね」


「じゃあ質問を続けるよ、トンネルが崩れて俺が埋まった時に声を掛けたのは神様だったのかな?」

「そうだよ、あの時僕が声を掛けたんだけど返事が無くてね、それで魂だけ連れてきたんだよ」

まあ死んでるんだから、返事はしないでしょ、問題は呼ぶ理由と何で俺なのかって事かな?


「呼んだ理由はなんでしょう?」

「うん、ずばり異世界に行ってみないかな?って誘う為だよ」

「へ? 異世界ってパラレルワールドみたいな平行世界とか、異次元とか、此処と違う世界ので・・・いいのかな?」

「そう、そんな感じだね、剣と魔法の世界なんだ、すごいでしょ?」

と、えっへん、と胸を張る。

そうかな~ 物語としては在り来たりなんじゃないかな?

「あ、ちょっと馬鹿にしたでしょ、実際に魔法のある世界を作るのは大変だったんだからね、無い物を創造しなくちゃならないから、世界そのものを変革しなきゃ成らなかったんだからね、それに」

「ああ、ごめんなさい、馬鹿になんかしてませんよ、物語に魔法って多いなって思っただけなんで、多いって事はそれだけ、憧れてる人が沢山いるわけですし、ほんとですよ、それに急いでるでしょ?話を進めましょうよ」

うあ、表情に出てたか、急に不機嫌になるんだもんな、これも気をつけないとな、考えずに口に出したりするし、俺の改善する所は多いな。


「まったくもう、こっちの苦労も知らないで、でも時間が無い事でもあるし、話を進めるよ?」

「お願いします」

「じゃあ確認するよ、君は僕の作った剣と魔法の世界行きを希望するかい?」

「他には選択肢はあるんですか?」

「あるよ、そのまま輪廻の渦に入って記憶を洗い落として、普通に生まれ変わる事になるけどね」

「ダメじゃん」

記憶が無くなるって論外でしょ、ほぼ一択と同じだよ。

「そんな事無いよ、それが普通なんだし、今回が特別なだけなんだから、で、もう一回聞くよ、希望するのかい?」

「行きます」

「そうかね、そう言ってくれると思ったよ」

神様は満面の笑みを浮かべる、その笑顔を見てグッと心が引き込まれそうになる、このまま虜になりそうだ、さすがは神様だ、笑顔だけでこの威力、すごいもんだ、不遜ふそんだとは思うが俺の中で神様の評価は上方修正された。


「今回は、特別に高性能な身体を用意してあるんだよ、ジャ~ン、これだよ!」

そう言って、神様は空中から光る何かを取り出した、よく見ると人のような形をしているが、光っているせいなのか、ぼんやりとしか分からない。

「良く見えないんですが」

「まあまあ、これは向こうへ行ってからのお楽しみと言うことで見た目は内緒です」

神様は、うれしそうにニコニコしている。


「え~ それは無いでしょう、その身体・・が俺のになるんですよね、しっかりと把握して置きたいじゃないですか」

これから自分のになるのに、内緒って何?

「残念だけど、ここでは見せる事が出来ないんだよ、ここは天界だから肉体は入れないんだよ、君も今は魂の状態だから此処にいられるんだよ、この光ってるのが保護する結界みたいなもんでね、解除すると肉体が消滅しちゃうんだよ、だから向こうに行くまでのお楽しみって訳なんだよ」


「理由はわかったけど、何かすっきりしないし不安だし、何とかならないかな?」

「そう言うとは思ってたよ、これから末永く使っていく自分の体だもんね、だから少しは結界の外から調節出来るようになってるから、希望があれば言ってみて」


よし、調整できるのか、見えないのは残念だけどしょうがない、少しでも良い感じにしないとな、ずは見た目からかな?

「じゃあ先ず、身長は」

「あ、ごめんね身長は無理なんだよ、この骨格は変えられないんだ、あくまで表面位までで、筋層から内部も駄目なんだ、顔の方は何とか成りそうなんだけど、後は表面上だけだね、スタイルも少しなら変えられるよ」

最初からつまずいたな、俺のテンション下がりまくりだよ、先行き不安でしょうがないよ。


「顔は大丈夫なんだよね? じゃあハンサムにしてほしい」

自分で言ってて恥ずかしい、でもやっぱり男なんだから女性にはモテたいし少しはキャーキャー言われてみたいよな、俺の顔は典型的な普通顔だし、これはチャンスなのかもしれない。


「ふ~ん、”ハンサム”ね、そうかそうか、なるほどね、じゃあ”美しい顔”って事でいいのかな?」

何やら語弊ごへいのある言い方するし、いいじゃんか、モテたいんだよ。

「それでお願いします」

「じゃあ髪とか目の色とかを決めちゃおうかね、どんなのが希望かな?」

「向こうの世界は髪の色とか、こっちと違ったりするのかな?」

「そうだね、君の居た世界の髪色かみいろも当然あるし、髪色で虹が出来る位色が多いね、当然ながら目の色も同じ位は豊富ほうふだよ」


う~ん、迷うな~ どんな色が良いのか全然わからないな~ 実際に身体・・を見て無いからどんな色が似合うか分からないし、どうしようか。

「神様はどんな色が似合うと思ってるんですか?」

「そうだね、おもいっきり派手な光輝ひかりかがやくような、そして尚且なおかつ荘厳な」

「ちょっとちょっとストップ、もういいですから、じゃあ向こうの世界で珍しくないような、平均的な髪や目の色で悪目立ちしないようなのでお願いします」

神様に任せるのはやめたほうがいいな、とんでもない事に成りそうだ。

「え~ それは詰まんなくない?折角の異世界なんだし、ここはバーンとはでに行ったほうがいいんじゃない?」

「何でそんな格好しなきゃいけないんですか、絶対いやです」

「そんなに言うならしょうがないね、平均的なのにしておくね、そうそうスタイルはどうする?多少は変えられるよ」

「顔に見合うようなスタイルって出来ますか?多少は肉体美みたいなモテるようなかんじで、でもマッチョに成らないようなバランスが良いような、ふう、自分でも何言ってんのか分かんなく成っちゃったな」

「要約すると、”顔”に見合うスタイル抜群の容姿がほしい、かな?」

「まあ、そうですね、こんな事は自分で言うのはやっぱり恥ずかしいな」

「そんなに恥ずかしいものなのかね?まあいいや、君も質問が有るならドンドン遠慮せずにしてね、此処からは時間との勝負になるからね」

神様なのに大変だな~。

「そんなに忙しいのに、誰か神様を手伝ってくれる人はいないんですか?」

「人じゃなくて使徒ならいるよ」

居るのなら何で手伝わせないんだろう?神様しか出来ない事なんだろうか?

「手伝ってもらえば?」

「僕と使徒と同時に話をして君は答えられるのかね?」

「たぶん無理かと」

「でしょ?だから僕だけなんだよ、あっ・・・・・」

急にハッとした表情で黙ったままになったけど如何したんだろう、何かすごく嫌な予感がする。

「ごめんね、言い忘れてた事があったんだよ」

神様が申し訳なさそうに話してくる。

「重要な事ですか?」

「とっても重要だね、君にとってはだけどね」

「言って下さい」

よし、気をしっかり持て、ガンバレ俺。

「じゃあ言うよ、時間も貴重だしね」

「どうぞ」

「君まだ死んでないんだよ」

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