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リーネ

洞窟の奥へ行くと小部屋の入り口に、頑丈そうな木の格子が見える、女性はあの中のようだ。

格子から中を覗くと赤毛の女性がうつ伏せに横たわっているのが見えた。

ぜ、全裸!・・・落ち着け俺、まず格子を開けないと。

格子の戸を開けようとしたが、鍵が掛かっている、力を込めて格子を抑えて戸を引くと、鍵は角材を軋ませて抵抗していたが、直ぐにバキッとした音と共に破壊された。


中に入り女性に近づく、近くと痣や擦り傷が体のあちこちについている、それを見て盗賊達への怒りが再燃したが、今はそんな場合じゃない。

「助けに来ましたよ」

そばに寄って声を掛けるも反応が無い、もしかして・・・じっと女性を観察すると浅く呼吸をしている。

生きてた、しかし、そうとう衰弱している? 鍵を壊した時に結構な音もしたけど動いた様子も無かったし、声を掛けても反応がない、肩を軽く揺すろうとして肩に手を掛けると・・・冷たい、体温がだいぶ低下しているようだ。

こんな時はどうしたらいいんだ? 温める? いや、まず体を調べないと、怪我をしているかもしれないし、病気の可能性だってあるかもしれない。

俺は女性を仰向けにするが意識は戻らず反応はない、顔を見ると俺と同じか少し年上のように見える、18歳位だろうか、暗い中でも顔色が悪いのが分かる、他に異常はないか? と顔から視線を下げると、大きな丸い膨らみが目に飛び込んでくる。

Cカップは確実にあるな、俺の視線はそこから離れない、怪我を確認しなくちゃ、そんな事をしている場合じゃ無いのに、そこから目を離すのにかなり精神力を使ってしまった、肋骨など骨などにも以上は無かった。

さ、さて、つ、次は下半身に異常が無いか確認しなくちゃな・・・急がないと、・・・落ち着け~、よ~し、落ち着け~、やましく無いんだ、これは必要な事だ、そう、必要な事だ、・・・はあ、緊張する、喉が渇く、・・・・・よし、確認するぞ。


結果、気になる場所を確認した時には、視線を外す為に莫大な意志を必要としたが、無事に確認が終わり、骨折等の酷い外傷などは無かった。

俺は女性を抱えて、部屋を見て回った時に見つけたベッドに寝かせて、毛皮らしき物を掛けた。

さて、どうしようか? とりあえず回復薬を飲ませる事しか思い浮かばないが、さっきと同様に声を掛けても起きる様子が無い、口に瓶の先を当てて飲まそうとするが、こぼれてしまう、回復薬は2本しか無いので無駄には出来ない、確実に飲ませなければ足りなくなってしまう。

・・・やはり、口移しか・・・ハードルが高いな、また緊張してきた・・・でもな~、口移しならこぼれなくなるとは思うけど、せたり肺に入って肺炎とかになって、余計に具合が悪くなる可能性もあるな、もっと良い方法は・・・・・あれ? そういえば、矢が刺さった時、直接掛けてたよな、・・・皮膚というか傷口から吸収するなら、肺に入ってもそのまま吸収される・・はず、・・・肺炎にはならないよな? このままの状態にしては置けないし、口移しで飲ませてみよう。


俺は瓶から回復薬を口に含み、女性の口を開けて、念のため鼻をつまんでから唇を塞ぐように口移しで回復薬を流し込む、噎せる事無く飲んだみたいだが、肺に入ったかは解らない、しばらく様子を窺うが、なにも変化は無いように見える、量が少なかったのだろうか? 残りの一本も同じように口移しで飲ませる、決してもう一度キスがしたいと思った訳じゃ無い。


回復薬を飲ませた後、直ぐに変化が表れて痣や擦り傷は治ってしまった、体温もさっきと比べると上がっているようだ、相変わらず回復薬って凄いな。

そんな凄い回復薬だが意識は戻っていない、精神的な疲労なんだろうな、こんな所に一人で・・・・・起こさずに様子をみるか、その間に何か使えそうな物でも探す事にしよう。

いくつも部屋を物色しているが、さほど必要だと思うような物が無い、武器庫らしい部屋で使ったランスは使えそうなので持って行こう、しかし、何も無いな。

あ、そういえば外に荷物を運び出してたんだっけ、荷馬車にほとんど積んであるのかな? 確認しに行くか。


洞窟から出て荷馬車の所に行く。

荷馬車は俺が片輪を壊して傾けたままで放置してあり、中に積んであった荷物も当然ながら崩れている。

これは車輪を直してから確認した方がいいな、オッと索敵で見ていた女性に動きがあるな、起きたらしいので戻ろう。

部屋に入ると、ベットから上半身を起こしていた女性が、俺を見てビクッと体を震わせる。

「安心してね、助けに来た冒険者です、ベットに寝かせたのも私です」

女性が脅えてたようなので説明をする、女性らしく話てみたが、まだ理解出来てはいないようで脅えたままだ。

脅かさないようにそっと近づいてベットに腰掛けて、彼女の手を優しく握る。

手を握った時もビクッっとしたが、自分なりに精一杯の優しい声を出して、

「此処に居た盗賊達は全員倒したので、もう安全ですよ」

と、ゆっくりとした口調で笑顔を作り、現状を伝えると、彼女は俯いて肩を震わせ始めてた。

それを見て、俺は何と言って話をしたらいいのか解らずに固まっていると、急に彼女が俺にしがみ付いて、顔を胸に埋めると大きな声で泣きだした。

俺の胸に顔を埋めて泣く彼女に、気の利かない俺は途方に暮れて、泣き止むまで「もう大丈夫だから」と壊れたレコードのように繰り返し、頭や背中をさする事しか出来なかった。


どれ位そうしていたかは分からないが、彼女が泣き止む頃には陽が傾いていた、今日はここで泊りだな。

彼女は泣き疲れたのか今までの疲労の為か、その後寝てしまった、食事の準備が出来たら起こせばいいか。


外にで出ようとした時に馬の鳴き声が聞こえたので索敵で外の様子を見たら馬の近くに反応がある、急いで外に出ると、ゴブリンが馬に襲い掛かろうとしていたので、サックリと倒す、索敵に数匹の反応があるので、それも倒しておく。

けっこう血を流したから、それで寄って来たのかもしれないな、また来られると困るから埋めておくか。

入口付近に洞窟を掘ったときの道具があったから・・・・・ニエンはどうなった?

俺はニエンを縛っておいた所へ行くと、血を流して事切れたニエンが横たわっていた。

なんとなく見る前から予想は出来ていたが、実際に見ても何の感慨も浮かばない。

ニエンの体にはゴブリンから受けた傷や、噛み千切られた痕がある、その表情は恐怖の為か、引き攣った顔をしていた。

死んだニエンを見て最初に思ったのは安堵だ。


彼女の体に刻まれた仕打ちを見て、殺さないと言った事を後悔していたからだ、なのでられたのはこっちにしては都合が良かった、まあ俺が殺したようなものだが・・・盗賊相手に罪悪感を持つのがそもそもの間違いかもしれない、奴らだって捕まえた人達の約束を守らなかったのは、ニエンの証言にもあったしな・・・さて、さっさと穴を掘って埋めるとするか。


さすが怪力、サクサク掘れる、盗賊とゴブリンを入れる穴は5分かからず掘れた、大きく掘ったので血の付いた地面も削って一緒に埋めた、これで血の臭いで集まっては来ないだろう。


荷馬車の中に食糧や道具があったので、それで晩飯を作ろう、といっても俺は料理が苦手だ。凝ったものは作れない、結果作ったのは、野菜を刻んだだけのズープに干し肉を入れた物と黒パンだ、料理を覚えておけばと思ったが、後の祭りだ、今後少しずつ覚えて行こう。

食器は此処にあったのを使ったが、衛生状態が心配だったので、でかい鍋に入れて煮沸してから使った。


食事が出来たので彼女彼女を起こしに行くとベットに横になってはいたが、俺が部屋に入ると顔をこちらに向ける。

「起きてたのね、回復薬を飲ませたんで、体の傷とかは治ってると思うんだけど、具合はどうですか?」

「痛い所はありませんけど、少し怠いです」

と言ってベットから降りようとする、顔には疲労の色が濃く残っている。

「まだ立たないで、精神的にも疲労してたと思うので、食事はそのまま食べましょう」

ベットに腰掛るように座ってもらい、テーブルを近づける。

テーブルに二人分の食事を置いて、一緒に食べる。

野菜スープに干し肉が入った皿と、黒パンのみではあるが、スープの方は野菜からエキスが、干し肉からは塩分が出ており思ったほどは悪く無かった、彼女は食事に肉が入っていれば良いほうだと食べながら話してくれる。

彼女の名前はリーネだ。

他にも身の上なんかも聞いたが、リーネは結婚しており、夫と一緒に王都で仕入れなどの商売をしていたが、中々思うようにいかず、今回金策も兼ねての仕入れに行く途中で、盗賊に襲われて、夫は殺されてリーネは捕らわれたらしい、護衛も4人ほどいたが、全員殺されてたそうだ。

今後については、王都に実家も有るので、そっちに身を寄せようと思ってると話す。

盗賊に獲られた物は、馬車と仕入れの資金との事で、獲った中から資金分の金額を渡そう、外にある馬車かどうかは、明日にでも確認してもらおう、もし違うとしても欲しかったら譲ってもいいかな、でも商売をしないのなら必要ないか? その時は俺が使う事にして、馬車の分の金額を渡す事にしよう、商売をしなくてもお金は必要だろうし。

残りは俺の物になるそうだが、何が入ってるんだろう?、奪って貯め込んだ物の殆どが、木箱に入れられ荷台に山積みになっている、木箱はほとんど開けてないし、気になるな。


明日早く出発するので、話をやめて早目に休む事にした。

馬は魔物に襲われるかもしれない、洞窟の一番手前の部屋が、広く入りそうなので入れておく。


寝る時にリーネに「心細かったら添い寝しようか?」と聞いてみたが、「ありがとう、でも大丈夫だから」と断られてしまった、残念。


翌朝、日が昇る頃に起きて朝食の用意をする、昨夜と同じスープと黒パンだ。

リーネの表情はすぐれないが、疲労は取れてきたと言っている。

朝食を食べて、出発の準備をする、まずリーネの着れそうな服はなかったので、俺の普段着用の服を渡す、身長が同じ位なので問題なく着れた。

次は馬車の車輪の修理だ。

「リーネ、馬車を修理するんで手伝って」

「壊れてるの? 私達で直せるかしら?」

「直せるわ、車輪を交換するだけだから」

「そう、それ位なら大丈夫かしら」

リーネと一緒に外に出て馬車に向かう。

車輪が壊れ、傾いた馬車を見て

「急いで荷物を降ろさないと、出発が遅くなるわね」

とリーネは眉をひそめて言いながら、すぐさま荷台に乗って荷物を降ろしにかかる。

「荷物を出すから、受け取って下に置いて」

と木箱を持って俺に渡そうとしてくる。

「ちょっと待って、降ろさなくても車輪は交換出来るから」

「そうなの? どうやって?」

「私が荷台を持ち上げるから、壊れた車輪を外して、付け替えてほしいの」

「何言ってるの? そんなの無理よ、空の荷台ならともかく、こんな重たい木箱が山の様に積んである状態で、持ち上がる訳ないでしょ」

リーネは呆れた口調で、持っている木箱を受け取れとばかりに、俺の方に持ってくる。

「大丈夫よ、ほら」

俺はリーネが乗ったままで荷台を持ち上げて見せる。

「きゃあ、え?」

荷台が上がったので、よろめいたリーネが声を上げる。

「何? 持ち上げたの?」

そして荷台を俺が持ち上げているのを見て、リーネは木箱を持ったまま、信じられないと言ったような顔をしている。

「降ろさなくても平気だから、それは置いといて早く交換しちゃいましょう」

「そ、そうね」

リーネは驚きつつも、持っていた木箱を床に置いて荷台から降りる。


予備の車輪を持って来て脇に置く、俺が荷台を持ち上げてリーネに車輪を外してもらう事にした。

リーネには車輪は重いらしい、なんとか軸から引き抜いて外す事が出来たのだが、取り付ける予備の車輪は持ち上げる事が出来ないかった。

半壊した車輪は重さも半分だし、引くだけで外せたが、付けるとなると多少は車輪を持ち上げなければならず、リーネには予備の車輪は重過ぎたようだ。

しょうがないので俺が片手で荷台を支えて車輪を受け取る、手を伸ばすとギリギリ軸に届いたのでなんとか入れる事が出来た。

リーネは俺が片手で荷台を持ち上げているのを見て「片手で?」と驚いていたが、そのままスルーして車輪の固定はリーネにしてもらった。


荷台の傾きが直ったので、手前にある木箱を開けてみる。

蓋をあけると反物が色々とが入っていたが、良い物なのか価値が分からない、他にも幾つか開けてもたが、毛皮や、小物などが入っていた、その中で貴重品と分かったのは、金貨などの貨幣と宝石位だ。

価値が分からないのに見てもしょうがないので、そのまま積み直しておく、ギルドに報告して調べてもらえば判るだろう。

この馬車はリーネのでは無いそうだ、リーネに馬車の相場の値段と盗られた金額を聞いて、箱に入っていた金貨から今の内に渡しておいた。

渡した後にリーネに聞いたが、盗られた物が戻ることは殆ど無いようだ。

盗賊を倒して戦利品を得られるような旨みがあると、盗賊狩りに冒険者も前向きになるし、その結果、街道の治安の向上に繋がるそうだ、なので冒険者に優遇的な配慮がされており、被害にあった人が生き残っていた場合は、盗賊を倒した冒険者の裁量で返したり、返さなかったりで、命が有っただけでも儲けものと思って諦めざる得ないのがほとんどらしい。


俺としてはリーネの身の上も聞いたし、同情する気持ちが強いので、全額分を渡したのは別に惜しくはない、嫌な気持ちを抱えたまま金を渡さない、などという選択枝は俺にはないし、・・・この世界では俺は甘ちゃん野郎なんだろうな、あ、見た目は野郎じゃなくて女だけどね。

リーネ旦那さんはもう居ないし、これから生活して行くにもお金があったほうがいいはずだ、金で解決出来る事じゃ無いんだけど、少しでもリーネの助けになればいいな。

さて、そろそろ出発しよう。



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