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救出

怒りを抑え込むのに少し時間がかってしまった。

女性が虐げられていると聞いて、感情のコントロールが出来ず興奮してしまったようだ。

今までも、ニュースで女性が強姦されたなどの内容を聞いて、そんな奴等は死刑とか去勢してしまえばいいなんて思っていたけど、今回は異常なほど怒りが抑えきれなくなってしまった、やはり女性の肉体になってしまった事による産物なんだろうか? 女性の体に感情が引きずられてしまったのか、それともこの体のオプションなのか? 今後も似たような事があったらやっぱり感情が乱れてしまうんだろうか? 不安だ、感情に任せて行動するのは判断を間違えそうで・・・いかんいかん、今そんな事を考えてる場合じゃない、早く助けに行かなければ。


盗賊のアジトに行くのは俺と、道案内をするニエンだけだ、みんなは心配したけれど、他に行く人は居ないのだからしょうがない。


俺がオークを倒した所を皆が見ていたので、実力については納得をしているみたいだが、一人で行くのは賛成されなかった、だが捕らわれている女性の事を話せば、他に案も無く、それに俺の意志が固い事もあり、渋々ながら行く事に同意してくれた。


馬車が遠ざかる、もう人が認識できない位小さくなったので、そろそろ出発しよう、ニエンは後ろ手に縛ってあり、腰にロープを巻いて端を俺が持っている。

アジトに案内するように言うと素直に前を歩き進んでいく、少し前までは俺が女性なので、隙をみて反撃でもしそうな態度が見て取れた。

ニエンは縛られていたので夜の奇襲は見てないし、オークとの戦闘も見ていないので、俺の強さを知らない、見た目で何とかなる、とか思ってるんだろうな、なので道に落ちているゴルフボール大の石を、見せる様にして片手で握って砕き「こうなりたい?」と聞いて見たところ、顔を青ざめて、首をぶんぶんと横に振った、妙な真似をしないように念を押すと何度もうなずいていた、今は素直に案内をしている。


最初はもっと大きな石と思ったんだけど、割れなかったら恰好悪いので、小さ目の石にしておいた、微妙な大きさだったけど、ビビってくれたので良しとしておこう。


昼近くになってアジトが見える所に着いた。

森に少し入った辺りで多少の勾配がある、そこの崖に洞窟の入り口があるのだが、崖の影や木に隠れるようになっており、あらかじめ言われてなければ、見落としてまうくらい巧妙にカモフラージュしてあった。


普段であれば、見落とされたであろう洞窟の前に、今は荷馬車が横付けされており、洞窟の中から荷物を出して荷馬車に積み込む作業を、数人で行っているのが遠目にも見えた。


どうやらみんなが言ってた通りアジトを放棄するようだ、やはり王都に着いてからでは手遅れだったな、ギリギリではあるが間に合ってよかった。


さて、ここでニエンを逃げないように木に縛りつけて口に猿ぐつわをしておく、そして俺一人で洞窟に向かう。


入口近くは生えている木が少なく、草の丈も腰位と低いので、音を立てない様に気をつけて、低い体勢でゆっくりと進んで行く。


入口まであと20メートル位まで来たが、そこから先は開けていて隠れる場所が無いので、それ以上は進まずに様子を窺う、風下なので会話が何とか届いている。

やはりここは放棄するらしい、女性は大丈夫だろうか?生きているのかが気に掛かる。


落ち着け俺、慌てて突っ込んで逃げられでもしたら面倒だ、他で同じ事を繰り返すんに決まってる、また被害者が増えるし当然その中には女性も含まれる、ゆるさん! いやいや落ち着け俺、慎重に行動しないとな、そして確実に殲滅だ。


逃げられないようにするには、移動手段を潰しておくのが一番だ、見た所では洞窟に横付けされている荷馬車しかないな、馬を殺してしまうのが確実なんだが、保護する予定の女性が歩けない状態も想定すると、馬車はあった方がいい。

逃げられたくはないが、馬車は欲しい、・・・そうだ、直ぐに使えない状態にしておけば・・・ん~と、あった、これでいくか。


深呼吸をする、落ち着けているか? ・・・大丈夫みたいだ、今から人を殺すのだが、忌避感は無い、相手が犯罪者だから? 女の敵だから? スキルの精神耐性のせいなのか? わからない、・・・今は・・・今はいいか、今は女性を救出する為に、邪魔な奴らを排除する、それでいい、・・・さあ、いくか。


様子を見ていてチャンスがやって来た、さっきまで二人で荷物を積んでいたのだが、今一人になっている、しかもこちらに背を向けて作業している、俺はゆっくりと立ち上がり、隣にある木に隠れて弓を構える、矢は金属の鏃がついたのを使う。


今までは鏃のない先を尖らせただけの矢を使っていたので、この矢を使うのは初めてだ、小動物用の矢では、防具を貫通しないだろう、防具の無い場所を狙えばいいだけなのだが、動いてる的にピンポイントは難しい、この鏃付きなら確実に盗賊達が着ている防具を貫通すると思う、見た目は皮鎧みたいだし、いけるはずだ。


心臓を狙う、多少は外れても致命傷になるはずだ、引き絞った弓から矢を放つ、小さな風切音と共に矢は真っ直ぐに飛んで行き、盗賊の背から心臓の辺りに突き刺さったが、そのまま貫通して向うの林に消えて行った。


男は何が起ったのか解らないようで、自分の胸を見つめていたが直ぐにその場に崩れ落ちた。流石は強弓だな、矢が鏃の威力と相まってかなりの威力になってるな、これはかなり大型の魔物でも倒せそうだ、おっと、そんな事を考えている暇は無い、急いで馬車に行かなければ。


俺は、隠れていた茂みから出て馬車に走る、そして馬車の車輪を蹴り壊す、バキバキと大きな音を立てて車輪が壊れて荷台が傾く、荷台にはけっこうな荷物が積んであり、それを降ろさなければ、重くて車輪は交換できないだろう、これで奴らは逃げられない。


大きな音のせいで、洞窟の中からこちらに向かって来ているような音と声が聞こえる、茂みに戻って距離を取って弓を構えて待つ。


入口から二人の仲間が出てきて、倒れている男に駆け寄るが、こちらにはまだ気が付かない、その隙を狙って矢を射る、後ろに居る男の頭に命中して派手に倒れる、矢はやはり貫通して飛んで行った。


その音を聞いて先頭の男が振り返って驚いている、攻撃されたのは分かったみたいだが、何で攻撃されたかは解らないらしい、振り向いたら頭から血を流して倒れており、凶器も見当たらず、誰もいない、混乱するのも頷ける。

男はとっさにしゃがみ込んで辺りを見回しているが、こっちからは丸見えだ、連射するように指に挟んでいた矢をつがえて狙いを定める、この時やっと俺が狙っているのに気が付いて、驚いた顔をしたが、もう遅い、驚いた顔のまま心臓あたりに矢を受けて、一瞬呆けたような表情をしたが直ぐに自分の胸に目をやり、顔をしかめてそのまま倒れて動かなくなった。


よし、作戦通り上手く行った・・・嘘です、こんなに上手く行くとは思わなかったなかった、先制攻撃に成功し、馬車は走行不能にして、盗賊も3人倒せた、俺って天才かも・・・なんてね。


ちょっとワザとらしくはしゃいでみたが・・・まあ盗賊を3人殺した後で、罪悪感は湧いてこなかった、たぶんスキルの恩恵? なのだろう、殺した相手が外道という事もあるのだろうが、結構割り切っている俺が居た。

もしもこれがスキルのせいならば、何かの間違いで罪のない人を殺してしまった時も、罪悪感に苛まれる事無く、平然と出来るのだろうか? 何か怖いな・・・。


もう洞窟から誰も出てくる様子がない、まあ車輪を壊す音も派手にしたし、血の臭いもするし、出て行った奴が戻って来ない、もう襲撃はばれてるな。

残りは2人のはずだが、中で警戒して待ち構えているんだろうな、もう洞窟に入るしかないんだけど、不意打ちに気をつけよう。


いざ洞窟へ、待ち伏せされてるのは間違いないよな。

中に入ると暗いが、夜目のスキルがあるので視界は確保出来た、この洞窟はどうやら自然に出来た物ではいようだ、壁全体に削ったような跡がある、通路はやや歪んでいるが一本道で30メートル位ある、そこに横穴がいくつも見える、平面的なアリの巣みたいな感じだ、これだけ掘るのにどれ位かかったんだろう?


次に索敵を使って相手の位置を確認すると3か所に光点があった。

10メートル先、15メートル先、30メートル先だ、検索は範囲が広いので、範囲が絞れないかななんて思ってたら、急に索敵範囲が変わり、一番遠かった場所辺りをカバーするように半径30メートルで表示された。


べ、便利だ、あまりにもあっさり出来たのでちょっとビックリした、その後2~3回索敵の範囲を変えてみた。


いつもより範囲を広げる事は出来なかったが、狭める方は半径1メートルまで小さく出来た。

範囲を狭くするとちょっと光点が歪な形になるが他は問題ないようだ・・・あれ? 今、光点が変形したぞ、何もしないのに形を変えている、範囲を固定したままでも変形するぞ、・・・まあいい、とりあえず一番近い光点に向かって行くか。


横の小部屋に入った所で待ち伏せをしているみたいだな、索敵範囲を絞ってみるか、あ、光点が・・・あ~ なるほどね範囲を狭めると人の形に成っていく、対象の形になるって事か、光点がオオカミだったら、オオカミの形になるんだろうな。


これは思った以上に便利だな、小部屋の中で待ち構えている形に見える、壁の先の様子が分かるなら、今みたいな不意打ちにも対処が出来るな。


俺は剣を抜いて、小部屋に一歩足を踏み出し直ぐに後ろに体を引く、目の前を剣が上から下へ滑って行った後、前に踏み込み横薙ぎに剣を振ると、相手は胸から上下に分断される、勢い余って剣が小部屋の壁をザックリと切り崩した。


けっこう砂岩みたいに硬そうな壁だが、あっさりと切れた、まあ普通の人は厚さを50センチ位の砂岩の壁は切れないかもしれないが、あ・・・剣が曲がってる、刃も潰れてる、一回しか使ってないのに勿体ない、まあ砂岩を切った俺のせいなんだが、・・・武器は丈夫なのを基準にした方がいいかもしれないな。


他の二つの反応を見ると動いてないな、待ち伏せなのか? 二人の内一人は女性のはずだがどっちだ? 


近い方に行ってみるか、部屋に入ると中に武器が色々置いてある、だが誰も居ない、あれ? 隣だったか、そのまま光点に向かって行くと壁に着く、その向うだ、やはり隣の部屋らしい、隣の部屋に行ってみると、壁に絵が飾ってあり光点はその後ろにある、近づかずに再度武器のある部屋に戻る。


壁に近づいてみると光点との距離は大体80センチ位だ、絵の奥は隠し部屋らしい、他は壁が1メートル以上あるのにそこだけ薄いようだ、確認するのに索敵を最小範囲の1メートルにしてみるとその光点は男の姿になった、範囲最小だと指まで確認出来る、狭い中で武器を構えて隠れているようだ。


こいつが頭目か? さっき倒した奴かもしれないが、まあ後でニエンに確認させよう。

そうなると一番遠いのが捕らわれている女性か、奥に行ってる間に逃げられるかもしれないので、今の内に倒しておいた方がいいな。

剣はさっき駄目になったから、この部屋にある武器を使うか。


回りを見ると片手剣、両手剣、メイスなんかもある、端に槍もあるな、そうだ、槍なら壁ごと刺せるか? 柄が木製だから折れるかもしれない、なら両手剣か、微妙だなギリギリ届くかどうかだな、他には何か無いかな? 


これはなんだ? 円錐のデカイ千枚通しの様な形? こんな時にこそ鑑定だな、どれ? <ランス>・・・ランスか、言われれば・・・確かにランスだな、全然馴染みが無いんいで分からなかった、ランス持つ手を守るガード状の物が肘の方まである、そこも合わせれば長さも2メートルを超えるな、だけどランスとしては短くないか? 何かで見たやつは、馬上で決闘するシーンだな、それで使ってたのはこれの何倍も長かったよな? これはショートランスなのかな? もしくは歩兵用? おっと、それは後に考えよう、これなら壁越しに突き刺せそうだ。


少し助走をつけて、壁の向こうの光点に目掛け、ランスを力強く壁に突き刺す。

ランスは、あまり抵抗無く根本まで刺さり光点を貫通した。

引き抜いたランスに血が付いている、急所に刺さったのか光点は動かない、穴から声も聞こえない、即死したみたいだ。


隣の部屋に行くと絵に穴が開いていた、絵を外すと小さい隠し部屋になっており、そこに男がうずくまる様な形で死んでいた。


これで盗賊達は全滅か、これでやっと女性を救出する事が出来るな、ん? 女性は最初の索敵から全く動いていない? 結構な音がしてたはずだけど・・・急いで女性の所に向おう。




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