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襲撃

ゴブリン襲撃後も、変わらず単調な移動が続いていた。

夜は魔力を感じる訓練を続け、午前中は寝て過ごす日々。

ここ数日で何とか魔力を感じられる様になってきた、教会で感じた物に比べると、非常に薄っすらではあるが、同じ様な感覚が感じられる。

気を抜くとすぐに消えてしまう程度ではあるが、確実に前進している手ごたえを感じて嬉しかった、魔法を使える様になるのが楽しみだ。


午後の暇な時は護衛の人と話をして過ごすこともある、特に弓を使うカシムさんと話をする事が多い、軽い口調でちょっとチャラい印象だ、会話は面白いんだけど、俺の胸を見過ぎだろ。


出発から11日目の午前中、いつものように寝ていたら何やら騒がしい声で目が覚めた。

寝ぼけまなこで、あたりを見ると、進行方向に森があり、そこから何者かが此方に向かって来ているが、遠くてよく分からない。

まわりで「オークが来た」と言っていたので、あれがオークなんだろう、数えて見たら15体いた、御者の人に聞いてみたら、普段は出てきても10以下で、今日は多いらしい。

オークが近づいて来て姿が良く見えた、二足歩行なのは分かっていたが、想像していた豚のよう顔ではなかった。

全身に体毛があり、豚というよりいのししのような顔立ちだった、腰巻のような物を着けたり腕や首に何かを巻いているようだ、装飾か? それなりの知性はあるようだ。

手に持つ武器は、おそらく自作したであろう石の斧やメイスらしき物を装備していた。


オーク達は真っ直ぐ此方に走って来る、背は2メートル位で、腹が出ており樽のようだ、体重は百キロは軽く超えているな、それが集団となってドスドスと走ってくるのは、結構迫力がある。

矢が先頭のオークに集中して刺さり倒れるが、向かって来るスピードが衰えることは無かった、そして次に先頭になったオークに矢が幾本も刺さり倒れる。


その間に距離は縮まり、前衛とオークが交わるように戦闘になった、オークは護衛の人達に比べると攻撃が遅いが、破壊力のある石斧などを喰らえば一撃で戦闘不能になりそうだ、オークの攻撃をよける様にして剣を繰り出している、剣士はオーク一体に一人で対応しており、弓使いの護衛は力が弱いのだろう、剣に持ち替え二人で一体のオーク相手に戦っている。


残りの三体のオークは戦闘に加わらずこっちの馬車に向かってくる、戦闘は護衛優位で進んでいるが、オークの方が数が多い為に、こちらに来るのに多少時間が掛かりそうだ。


「こっちに来るぞ」と、馬車に乗っている誰かが叫ぶ、回りを見ても脅えている人ばかりで、戦えそうな人は居ないように見える。


俺がやるしかないか? 武器は預けてあるんで手元には無い、馬車を降りて辺りをみても武器になりそうな物は無い、・・・あった、俺は馬車の下に潜り込んで予備の車輪を取り出した、直径は1メートル位あるので大丈夫だろう。


馬車に乗ってた人たちは、俺が馬車の下に隠れたと思ったらしいが、車輪を持ってオークに向う姿を見て「危ないぞ」「戻って来い」と大きな声を上げるが、今は無視だ。


オークがこっちに走って来ているが、俺が向かって来るのを見て、猪顔いのししづらがニヤけている、なんかムカつく、俺を交尾相手にでもとおもってるんだろうな、ゴブリンとオークは繁殖に人を使う事も多いと言ってたし、小柄な俺は強そうに見えないので余裕の表れなんだろう。


スキルのせいなのか、自分よりデカイ三体のオークを見ても恐怖を感じなかった、そうでなきゃ自分から倒しに行くはずもない、スキルのおかげで思いっきりやれそうだ。


俺を舐めているらしく、攻撃範囲に入っても何もせずニヤついている先頭のオークに、両手で持った車輪を振り回すようにして顔面に叩きつける、首から上がバンと破裂するように砕けて吹き飛び、残った胴体が少し遅れて前のめりに倒れる。

いきなり仲間の血しぶきを浴びたオークは、何が起きたのか分からず唖然とした表情をしているように見えたが、そんな事には構わずに、振り切って回転した勢いを利用して、右のオークの顔面めがけて車輪をぶち当てた。

オークはとっさに斧を持った腕で顔をガードしたのだが、車輪を止められず、後ろに吹き飛ぶ、破裂はしなかったが、腕が吹き飛び首の骨が折れて頭が背中まで裏返っている、斧に当たったせいか車輪が少し欠けてしまった。


最後のオークは、仲間が倒される間に立ち直ったらしく、怒りをあらわにして石斧を力まかせに振りおろしてくる、車輪で受けたが欠けていた場所に当たったらしく、車輪が砕けてしまった、思わずよろけた隙に斧を振り回して来た、とっさに避けると服は切れたが体には当らなかった、斧に服の切れ端が少し付いている、あぶねえな。


車輪が砕け武器が無くなってしまった、殴るしかないか? おっ、こいつを使おう、おれは最初に倒したオークが持っていた石斧を拾って構える。


オークの攻撃を躱して攻撃をするも、簡単に避けられてしまう、斧なんて使った事がないし、おまけにデカくて持ちづらい、何度か双方とも空振りをしていると、背後から「離れろ!」と大きな声がした、直ぐに後ろに退すさって、オークから距離を取ると、矢がオークに立て続けに刺さり倒れる。


後ろを見ると弓を持ったカシムさんがいた、あのままだと攻撃を喰らってた可能が高かったな。

「ありがとうございます」

俺がお礼を言うと、カシムさんは、近くに寄ってきてニヤケた顔をしてこう言った。

「いやいや、こっちこそ助かったよ、馬車に居た人達に被害が出る所を防いでくれて、こっちがお礼を言いたいくらいさ、それにしても見掛けによらず強いんだね、あんなのを振り回してオークを一撃なんてさ、俺たちとパーティーを組まないかい?」

カシムさんがさっきの様子を見ていて誘ってくるが、俺としては男だけのパーティーには入りたくない、自分で言うのもなんだが、鏡を見た分には美人だったから、男に言い寄られるのは避けたいし、何より女性とパーティーを組みたい、今の容姿なら可能なはずだ、ここで誘いに乗る事は出来ないな。

「すいません、まだパーティーを組むことは考えてないんです」

出来るだけ女性っぽく、お断りをしてみる。

カシムさんは特にガッカリした様子もなく明るく話す。


「まあ当然か、お互い相手の事も良く知らないし、うちに来てくれればむさ苦しいパーティーが華やかになるんだけどね、美人だし、そして何より・・・」

カシムさんは、さっきから俺の胸を見てニヤケている、胸を見るのは毎度の事だが、今は食い入るように見ている。

ふと自分の胸を見ると、ブラウスが縦に切れてボタンも無くなっている、その為オッパイが丸出しに・・・アイツか、そっちを見ると矢が刺さって既に事切れるオークが見える、カシムさん、・・・もうカシムでいいや、カシムを睨むと、首をすくめて、「俺のせいじゃないし~、良い物見たな~」と言って戻って行った。


カシムが近づいて来たのは、心配じゃなくて見る為か、そして色々話しかけてきたのは胸を見る時間をを長引かせるためか? 油断も隙もないな・・・まてよ、今の場面なら相手を睨まずに、恥らって胸を隠すとかしなきゃ駄目なんじゃ? せっかくの女性アピールのチャンスが、結構練習したのに・・・、ああ~、女子力が欲しい~。


さて、今更だが胸を隠すのにブラウスを巻くって胸元を結ぶ、お腹が出るがしょうがない馬車までの我慢だ、戻ったら着替えよう、そう思って馬車に向かって歩いていると、「ウルフが来るぞー」と大きな声がした。


索敵をすると、多いな、えーと、18頭、こっちに向かって来ている。

ウルフはスピードが早いな、姿が見えたので鑑定してするとブラウンウルフだ、前に見たグレイウルフに比べると小柄でシェパードと同じ位だ、あいつら素早いから苦手なんだよね。


ブラウンウルフは俺達を囲むようにして走っている、どこか隙があるところを狙ってるんだろう。

その間にも矢がブラウンウルフに命中して頭数を減らされている、諦めたのか焦れたのか、オオーンと一頭が吠えると群れがいっせいにこちらに向かって襲い掛かって来た。


素早いとはいえ、オークに比べれば格下相手で、噛みつくなどの単調な攻撃しか出来ない相手では、護衛たちに敵うはずもなく、一刀の元に切り捨てられたり、傷つき動けなくなった所にとどめを刺されていく。


残り僅かとなり終わりかと思った時、一頭だけ囲みを潜り抜けて中入ってきた、馬車より前に居たせいか、真っ直ぐ俺の方に向かって来る、まあ見た目に俺が弱そうってのもあるんだろうけどね。


低い体勢でブラウンウルフが走ってくる、武器もないし蹴るか、タイミングを合わせてローキックをしようとしたら、ジャンプして喉元を狙って来た、慌てて軌道修正をして、蹴り上げるようにして足を延ばす、なんとか間に合って、つま先に骨の折れるような感触が伝わり、ウルフが吹き飛んで行く、おい、カシム、捲くれ上がったスカートの中を見てるんじゃない、仕事しろよ。


襲撃も終わり護衛達が、オークやブラウンウルフの剥ぎ取りや魔石を取出している、護衛中に倒した獲物は彼等の臨時収入として認められているからだ、俺にも権利があると言われたが、客として乗っているので今回は遠慮しておいた。


みんなの話を聞くと今回の襲撃は少しおかしいらしい、まず数が多い、次に普段ここら辺に居ないオークが出た事、そしてオークであれウルフであれ、逃げ出す奴が居なかった事。


一つ目、数が多いのは、今までに無かった訳じゃないから偶然かもしれない。

二つ目、オークもここらでは珍しいけど居ないことはない、何処かに移動中だったのかもしれないし。

三つ目、向こうから襲ってきても、相手が強いと分かったら逃げる個体が居るはずなのに、そのまま突っ込んで来て全滅した、これはちょっと有り得ないらしい、俺が森で戦った時もグレイウルフは逃げたんだったな。

そして問題なのは、これら三つが同時に発生した事だ、何か森の中で起きたのか、それとも他の原因があるのか? 今の所調べる手段は無い、あ~だ、こ~だと憶測を話していたが結論が出るはずも無く、これについては次の町に着いたら報告をする事にして、我々の中では決着とした。


オークとブラウンウルフの襲撃後、護衛の人と話をする事が多くなった。

オークとの戦いで、冒険者としての実力を認められたせいらしい、両方のパーティに加入を勧められたが、丁寧にお断りしておいた。


怪力のスキルがあり、強弓を持ってると話したら、見せる事になり、休憩の時に仕舞っておいた弓を出す。

カシムが本当に引けるのか? と聞いてきたので目の前で引き絞ってみせる、弦を離したらバシッと右の胸に弦が直撃した、多少痛かったが、それよりも驚きのほうが大きかった。

いつもは胸当てをしてたから当たらなかったが、胸に当たるものなんだなと、変な所で感心してカシムを見ると、したり顔でニヤケている、コイツ知っててやらせたな、ジト目で睨むが、ケラケラ笑っている。

このままではしゃくなのでカシムに引いてみろと、弓を渡すと、一呼吸してから弓を引くが、僅かしか引けない、顔をを赤くして力を入れても、それ以上は弦が動く事はなかった、カシムが悔しそうにしていたのをを見てちょっとスッとした。

剣士も弓を引いてみたが途中までしか引けなかった、張力はどれ位かきかれたので百五十キロと答えると、全員が驚いていた、彼らが言うにはこの弓はBクラスの前衛ぐらいにならないと引けないレベルらしい、俺はまだ余裕で引ける。

ふと思ったが俺は何キロまで引けるんだろう? 弓をくれた店主が張力を自慢してたからな、かなり上位の物なんだろう、となるとそれが物足りない俺は引けない弓は無い? この世界で最強の弓でも俺は引くことが出来るんだろうな、無いなら作ってもらうしかない? いや、この弓は大金貨五枚って言ってたよな、それ以上の物を作るとなれば、もっと大金が掛かるって事か、当然却下だね、残る手段は自作になるが当然弓の作り方なんか知らないし現時点では不可能ってことかな。


弓の話も終わり、雑談になると今回の襲撃は厄介だったが、特に被害も無く切り抜けられたので、結果的には、魔物の素材や魔石にて収入が増えたと喜んでいた。

この先は魔物は少ないらしいので、これ以上の襲撃は無いとの事、でも今回のは異常だったらしいので、油断しないようにしたほうがいいな。




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