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出発

俺はスカートを持ったまま床に手を付いて反省をしていた。

服を注文した時に気が付いていれば・・・姿が女性なんだから、ちょっと考えればスカートの可能性があるのは分かったはずだ、そして服を受け取った時にも確認しなかった、そこで気が付ければズボンにしておけたのに・・・痛恨のミス!


「コンコン」ドアをノックする音がした、反省している内に朝食の時間になったらしい。

「はい」

俺は立ち上がってドアを開けると、いつもの様に少年が立っていたので、お礼を言ってチップを手渡す、チップはドア横の棚に昨日の内から用意してある、毎日の事なんで手慣れたもんだ。


少年はチップを受け取ると、顔を赤くして走って行ってしまった。

あれ? 顔を赤くするのはいつもの事だが、今日は理由は無いよな? 服は着てるし。

ドアを閉めると床にスカートが落ちている、あ・・・スカート履いてなかったな、下を見るとブラウスが少し長く、ちょっと見たらパンツも履いてない様に見える、つまり少年には、俺がノーパンで出てきた様にみ見えたって事か、・・・何か、もうちょっと女性だって事を意識しなきゃな、羞恥心のない女性はどう見ても駄目な気がするし、言葉使いだけじゃなく、所作なんかも女性らしく振舞えるように・・・振舞えるか? ・・・やるしかないよな、頑張れ俺。


朝食後、森に出かける、もちろん着替えたさ。

昨日と同じ様に女言葉の練習をしつつ狩りや採取をする、女性の仕草を思い浮かべても、あまり思いつかない、モデル歩きが頭に浮かんだが、これは違う気がする、それでも歩く時にはがに股に注意したり、背筋を伸ばして歩いたりした。

この体には、俺が男の体だった時の猫背や、がに股のような癖が付いてないので、女性らしい仕草はやりやすかった、それでも俺の思い付く程度の事しか出来ないけどね。


仕草で思い出したが、日本に居た時に、一人の女性が、猫背のように背を丸めて目の前を通り過ぎて行った、その人はプロポーションが良くて綺麗な人だったのだが、そのせいか猫背が強調されて見えて、すごく残念というか勿体ないような、妙な事を考えた事があったっけ、・・・なんかそんな風に見られるのは嫌だな、・・・ん? 俺は自分が綺麗なのが前提で考えている? 確かに鏡で見た俺の顔は綺麗だったが、う~ん、ナルシストっぽいか?・・・まあそれはいいや、それに俺はあんまり恰好は気にしないタイプだったはずだ、はずなんだけど、嫌だな、女性の体になって立場が違うと心境も変化せざる得ないんだろうか? まあ、やらないよりは、やっておいた方がいいだろう。


そんなこんなを色々と考えながらも、狩りや採取を終えて町に戻る、冒険者ギルドで精算後、商業ギルドに寄り明日の事で分からない点など聞いて宿に帰った。

食後に体を拭いた後は、魔法を早く使えるようになりたいので、寝るまでの時間をすべて、自分の中の魔力を感じ取れるようにする。

意識を集中していると、時々何かを感じた様な気がして、これは!っと、思う場面が何度かあったが、単に筋肉が反射運動でピクっとしただけだったり、気のせいでのぬか喜びを何度か繰り返して時間が過ぎて行った。

最後の頃に座禅なんかもしてみた時に少し何かを感じた気がしたけど、感じ取れたのか気のせいなのか、もう分らなくなってきたので、止めて寝る事にした、焦ったらロクな事が無いし、明日は王都に向けて町を出るので、良く寝ておかないとね。


「う~~~ん、まあ、しょうがないか・・・」

俺は朝起きてから、気乗りせずにブラウスを着て、渋々とスカートを履き女装していた。

体が女性なので正しい着こなしなんだが、俺の中では女装という位置づけになっている。


今回は客として乗るので、冒険者の恰好は好ましくないと、商業ギルドからも言われていたからだ、理由は盗賊対策との事らしい。


実際過去に盗賊が、冒険者姿で武装し客として紛れ込み、街道で盗賊に襲撃された時に呼応して、内側から攻撃されるなどの被害が有った為、現在はそれをを防ぐ目的で、武装を解除して馬車に乗ってもらう決まりに成っているそうだ、それなら武器だけ仕舞っておけばいいんじゃないかと聞いてみたが、他に乗る人が不安になるとの事で駄目だった。


言われれば、確かにその通りなので、受け入れざる得ないのだが、過去にそんな事をした奴らのせいで、女装しなければならなかった俺としては、そいつ等をぶっ飛ばしたい気持ちで一杯だ。


コンコン ドアをノックする音がした。

女装でくすぶっていたら、もう朝食の時間になったらしい。


「はい」

ドアを開けると、いつものように少年が立っていた。

「今日で終わりだけど、毎日起こしに来てもらってありがとう」

声を掛けてチップを渡す。

「いえ、いつもチップをありがとうございました」

と、笑顔で返事をする。

何故かその笑顔を見ていたら、思わず少年の頭をぎゅっと抱きしめてしまった。

ハッと我に返って抱えてた手を放すと、少年は顔を赤くして走って行ってしまった。

あれ? 俺は何で少年を抱きしめてしまったんだろう? 衝動的にやってしまったが一体何が? 何故? ・・・解らん、う~ん、しいて言えば笑顔が可愛かったから? いや、尚更おかしいだろ、いままで俺はそんな事は感じた事も、した事も無いのに・・・ショタに目覚めたとか? この場合は同性愛か? でも体は女性だから同性じゃない? ストップ、ストップ、何考えてんだよ俺は、俺が男を好きになるはずが無いだろうが、まったく。

そうなると、それは体のせい? さっきは抱きしめた時はどんな感じだったっけ?・・・可愛いって感覚が若干は有ったような無いような? 男を好きになるって感じじゃないような気がするんだが・・・この体には母性本能が標準装備されてるとか、・・・他にもオプションとかが付いてたり? ・・・まさかね、そんな事は無いよね、・・・まさかね・・・


朝食を食べてから宿を後にする、王都に向けて出発の日だというのに、何やらモヤモヤする出だしになってしまった、鏡を見なくても浮かない顔をしてるのが分かる、先行きが不安でしょうがない。


集合場所に着いて声を掛けると、あと数人来ればみんな揃うとの事で馬車に腰掛けてぼんやりとみんなの様子を眺めていた。

馬車は全部で5台で護衛らしき冒険者が11人いる。

5人と6人で分かれてるので2パーティなのだろう、剣や盾を持ってたり、弓を持っている者はいるのだが、魔法を使いそうな格好の人はいなかった、やはり魔法使いは希少なのかな? 魔法使いが魔法を使う所を見たかったが居ないならしょうがない、おそらく王都には居るだろうから会えるまで期待しておこう。

そんな事を考えている内に、全員そろったので王都に向けて出発となった。


俺は今、馬車の荷台に座って、何を見るでもなく景色を眺めている。

出発してから、移動する風景を見ていたが、町に来た時や依頼で行ったような、草原や森ばかりが数時間延々と続いているので飽きてしまったのだ。

馬車の速度は荷物が多い為か、速度はゆっくりで徒歩とさほど変わらない、その周囲を護衛が警戒しながら歩いている、俺は客として馬車に乗ってるが、座れるスペースが有るくらいで、何をする事も無く、ゆっくりと進む風景を眺めることしか出来ない、・・・暇だ。


途中何度か休憩を入れて、馬を休ませながら商隊は順調に進んで行った。

こっちでは昼食の概念はあまり無いらしく、食事は朝、夕の2回だ、あとは小腹が空いた時に軽く何かを食べる位だそうだ、俺も休憩の時に干し肉をたべた。


たまに近くを歩いている冒険者に、護衛の妨げにならない範囲で話を聞いてみた。

俺も冒険者だと話すと気さくに応じてくれて、護衛の基本やコツ、警戒と索敵、盗賊の対処や魔獣相手の連携、他には失敗談なんかも聞く事が出来て有意義な時間が過ごせた。

話は有意義だったのだが、話の途中で、彼の視線が胸のほうにチラチラ移っているのが分かった、これも仕様なんだろうか? それとも感覚が鋭くなっているのだろうか?。


女性は男の視線に敏感だと聞いた事がある、男のチラ見は女のガン見、なんて言葉を思い出していた、俺も日本じゃチラっと見てるつもりなのがバレバレだったんだろうな、思い返すとちょっと恥ずかしい。

むっ・・・そういえば上はブラウス一枚しか着てなかったな、ノーブラだ、こっちの女性は中にもう一枚着たり、何か胸に巻いたりするのかな? ブラジャーが無いからそいうものかと思ってたけど違うかもしれない、服屋でもっと詳しく聞いておけば良かったか、いや、あの時は恥ずかしくて聞けなかっただろうな、王都についたら服屋に行っとこう。


辺りも暗くなってきた頃に予定の野営地に着いた、道中にもあったが、定間隔で野営が出来る場所が作られており、地面は均してあり大抵は川など水が確保できる場所で、簡易のかまどなども設置してあった。

それぞれ係りの者が、野営の準備や食事の支度を始める、その後しばらくして配られた食事はスープと黒パンだった、乾燥した野菜をお湯に入れてあり味付は塩のみ、野菜からもエキスが出ているようで味は思ったほど悪くない、黒パンは堅いがスープに浸ければけっこうおいしく食べる事が出来た。


暗くなって護衛の人達は後退で見張りをしている、いずれは護衛の依頼を受けるつもりでいるので、どんな風に見まわりをするのか見ていたが、基本的には立ってるだけだ、たまに歩いて、回りを警戒したりする位しか動きが無い、見ている分には退屈で一時間も見ていたら、すっかり飽きてしまった。


護衛の仕事を見るのは諦めて、魔力を感じる訓練をする事にした

昨日座禅をしたら僅かながら手ごたえを感じたので、今日も座禅を組んでみると集中出来るような気がした。

手ごたえを感じたら直ぐその気になるんだな~と自分の事ながら少し可笑しかった、おだてられると調子に乗るかもしれない、気を付けないといけないな。


座禅を組んだまま集中すると、何かが僅かに引っかかる、だがそれが魔力なのかは確認出来ない、続けていても、その感覚に変化は見られず、そのまま日の出を迎えた。

日が出ると馬車やテントから皆が起き出して朝食の用意が始まった、野営の朝は早いな。


朝まで訓練したのには訳がある、最初は日中に訓練をしようと思ったのだが、馬車が揺れて集中できなかった、なので昼は暇つぶしも兼ねて寝るようにして、夜に訓練をする事に決めのだ。


朝食も昨夜と変わらずスープと黒パンだった、移動中の食事というのは、あまり変わり映えしないらしい、眠いので食べた後は馬車の隅で寝る事にする、ガタガタ揺れるが気にならない、おかげで良く眠れそうだ。


昼過ぎの休憩中に目が覚めた、少し小腹が空いたので干し肉を食べる、辺りを見ても昨日と変わらない景色だ、その後、護衛の動きを観察しつつ索敵をしてみても反応はなかった。


そして数日は何事も無く過ぎて行った。


五日目の昼過ぎに森の近くを通る時、索敵に反応があった、11個の表示が此方に近づいてきている、護衛の人に声を掛けようとしたが、森に近い方の護衛が気がついて、声を出さずにハンドサインの様な合図を他の仲間に送っていた、なるほど参考になるな。


道と森が一番近づいた時に、奴らは此方に向けて飛び出して来た。

ゴブリンだ、一匹だけ大きいゴブリンが居たので鑑定をして見たが、結果はゴブリンだった、紛らわしい、ちょっとホブゴブリンとかじゃないかと期待してじゃないか。


森からゴブリンが出て来たと同時に護衛が剣を抜き、弓を引き絞る。弓を構えている二人は直ぐに矢を射ろうとはしなかった、ゴブリンが走って来るが速度は人より遅い、十分こちらに引き付けてから矢を射る、そして直ぐに次の矢を番えて矢を放つ、さらに次を放つ、連続撃ちだ、早い、しかもすべて違うゴブリンに命中している、二人で三度矢を放ち6匹のゴブリンが倒れている、だが即死したわけではないようだ、倒れて呻いている、急所を狙うより、連射で向かってくる数を減らす方を選択したみたいだ。


剣を持った4人がゴブリンに向って走る、雄叫びを上げながらゴブリンも、錆びた剣やこん棒を振りかざすも、一刀のもとに切り伏せられていく、大柄のゴブリンもあっさりと倒される。

戦闘に参加しなかった者はその間、商人や荷物の側で周囲を警戒していた。


チームワークが良いと云うか、行動に無駄がない、安全を確保しつつ、逃がさないように、相手が十分近づいてから一気に攻撃して殲滅か、倒した分魔石が手に入るから収入も増えるし、俺だったら近づく前に弓で攻撃して、撃ち漏らして逃げられたりしそうだな、今回本当に護衛の依頼が受けられなくてよかったよ、もし受けてたら、みんなに迷惑を掛けてたんだろうな。

魔石回収後は、何事も無かったように移動を再開した。





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