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俺達は神【世界】を否定する  作者: 十文字もやし
四章 聖都ウィンデル編 神の歌姫
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77話 神の子の存在 世界の真理

 夜中の大聖堂。昼間と変わらず静かで、足音がよく響く。


「アリア様が中でお待ちしてます。では私はこれで」


 騎士の一人は、丁寧にお辞儀をすると俺を扉の前に残して去っていく。

 あの事件から一週間が経過して、今日の夜中にアリアの部屋に来てほしいと呼び出しがきたのだ。

 理由は、先日の頼みの件、神の子についての話だ。そういうわけで、俺は夜中に騎士に案内されてアリアの部屋に来たわけだ。

 コンコンとノックをすると、中から「いいですよー」と言う声が聞こえる。了承を確認した俺は、息を整えて中に入る。


「お待ちしてましたー」


 中に入ると、アリアが椅子に座って待っていた。

 テーブルの上には紅茶が二つ用意されている。


「悪いな、話の場を用意してもらって」


「いえいえー。零さんの頼みでしたからー。さあ、座って下さいー」


 対面になるように椅子に座る。

 今思ったがアリア寝間着なんだな。全身白一色で、ところどころにフリルがついてる寝間着を着ている。


「ではー零さん。お菓子をどうぞー」


「わざわざ悪いな」


「これもどうぞー」


「ああ、ありがとう」


「これもー」


「……待て待て、俺はお菓子を食いに来た訳じゃないぞ」


 つい流れに流されて、お菓子を口にしていた。アリアと話しているとどうも調子が狂うな。


「わかってますよー。でもまずは緊張を解してからにしましょうー」


「……そんなに、あんた達の存在について知られたくないのか?」


「……ふぅ。もう、折角私が気を使ってるんですから、乗って下さいよー」


 真剣な口調に変化しながら答える。

 手に持っていたお菓子を、皿の上に置くと、テーブルの上に手を重ねる。


「お話しします。私たちについて」


 口調は完全に変化し、あの真剣な雰囲気をまとい出す。


「零さん、はじめに言っておきます。全てはお教え出来ませんよ」


「わかってる。あんたが教えれることだけでいい」


「わかってもらえてよかったです。では私たちの存在について言います」


 アリアは俺の目をまっすぐ見て、続けて話す。


「私たち。神の子は世界の管理者なんです」


「管理者? どういうことだ?」


「世界の拮抗を保つ、いわばバランスです。私達はこの星が、正しい方へ進むように管理しているんです」


 管理者、それが神の子の役目。だが待てよ、あいつらを見ていてもそんな素振りは見せない。管理者として何かしているようには見えない。


「零さんは今、一体いつバランス保っているのかがわからないと思います。それもそのはずです、私たちは無意識にその管理をしていますから。そうですね……存在するだけで力のバランスを保っている……という感じですね」


 世界のバランスを保つ存在。それが神の子。

 だからあれだけの神力を持っているのか。


「ですが……何時の時代も、人は私たちの力を利用しようとします。零さん、何故神力が人の体に有害かわかりますか?」


「神力が強すぎるからか?」


「勿論それもあります。ですが一番の理由は――世界の禁忌だからなんです」


「だから身体が崩壊したりするのか……」


「なぜ禁忌なのか……人が私たちの力を使おうとすると、私たち世界の力が人の世界へ流れ込みます。多少は問題ありませんが……。それを続けていればいずれ力は混じり合ってしまい、引き起こされるのは――星の崩壊」


「神力を使うことが禁忌にされてるのは……世界の崩壊を防ぐためだってのか?」


「はい。それでも人は……神の力を求める愚かな生き物です」


 予想を遙かに凌駕する内容だった。

 今の話の通りだと、このままではこの星は近い将来崩壊を迎えるということだ。


「今お話出来る、私たちの事はこれぐらいです。零さん、私にまだ聞きたいことがあるのではないですか?」


「……あんたは鍵を知っていた。なら――リリナが始祖だってことも知ってるんだろ?」


「……はい。知ってますよ、彼女が生まれる前から始祖になるという事も」


「やっぱりな……教えてくれるのか? 始祖について、鍵について」


「正しくは、始祖ではなく『始まりの子』と言います。彼女は私たちの、母たる存在……この世界全ての神の子の始まりです」


 全ての神の子の始まりたる存在。それが始祖、『始まりの子』リリナ。

 そのリリナを使って、あいつらは何をしようとしている? スクード達の目的はなんだ?


「アリア、俺はスクードって奴からリリナが始祖である事。俺が鍵であることを教えられた。あんたならわかってるんじゃないのか? あいつらの目的が」


「……やはり接触してましたか。知っていますよ」


「教えてくれるのか?」


「それは世界の真理に関わるのでお教え出来ません」


 奴らは何をしようとしている。リリナの力を使い……何をしようとしている。世界の真理に関わることなら……この星に関わることなのか?


「彼等は『再世機関リライト』という組織に所属してます。世界中で重視されている、世界規模のテロ組織です」


「それが奴らの組織か……」


「いいですか零さん。彼等は必ずあなたの元に現れます。始まりの子と、その鍵たるあなたがいるここへ」


「アリア、鍵の役目はなんだ? 鍵って何を意味してる?」


「鍵は彼女の心を目覚めさせるのが役目です。零さんはその素質があると思われたのでしょう」


 リリナの心を目覚めさせるのが鍵の役目。目覚めさせることにより……何が起きる? 始祖として力でも開花するのか?


「そうですね。もうこれ以上は真理に関わるのでお話出来ませんね。これ以上知ればあなたは……崩壊を起こしますので」


「崩壊って……神力を受けてないのにか?」


「真理を知ることは、人にとって神力と同等なほど有害です。禁忌として、精神崩壊を起こします」


 冗談を言っているようには見えない。その言葉にゾクッとしてしまう。


「ふぅ……。ではーお茶を再会しましょうー」


 気の抜けた声に変わり、ガクッと頭を落とす。

 キャラ変わりすぎだろこの人……


「あらー? どうしたの?」


「いや、もう何も言わないよ」


「あらあら? 眠くなったの?」


「いやそういう訳じゃないけど……」


 時刻は深夜。まあ眠くなる時間帯だから全く眠くないわけじゃないが。

 するとアリアは立ち上がって俺のそばへ歩いてくる。


「じゃあー寝ましょうかー?」


「は? おいちょっと待て、腕を引っ張るな」


 グイッと腕を引っ張り立ち上がらせると、ベットへと誘導しだす。

 待て、俺をそこで寝かせるつもりか? 正気かこの子?


「私と寝るの嫌かしらー?」


「いやおかしいだろ。なんで一緒に寝る話になった?」


「だって眠そうだしー」


「寝るなら宿に戻るわ……」


「私は構わないわよー? それにー、女神と寝れるなんて機会ないですよー?」


 笑顔でサラッと言うなよ……恥じらいがないのかこの子は?

 仮にも俺男だぞ?


「あんたなぁ、俺男だぞ」


「わかってますよー? いえー零さんとなら結婚してもいいかなーと思いましてー」


「……はぁ?」


 今アリアなんて言った?

 聞き間違いであってくれ。まさか一回護衛したぐらいで結婚するなんてそんなことはないよな。


「冗談だよな? そうだよな?」


「本心ですよ? でもー。今は止めておきましょうか」


 手を離すと、アリアは少し離れる。

 窓をバックに、月明かりがアリアを照らす。


「あの子達、怖いですしー。何より零さんの命が危ないですからー」


 あー言われてみれば確かに。

 なんか結婚しますとか、言ったら……血を見そう。聖都に血の雨が降るな。


「怖い冗談は止めてくれ……」


 苦笑いしながら答える。


「では、今日はここまでですねー」


「話してくれてありがとう」


 礼を言うと、扉に向けて歩く。

 このとき、もう一つだけ聞きたいことを思い出す。 扉の取っ手を開ける前に、振り向きそのことを訪ねる。


「アリア。もう一つだけいいか」


「はい?」


「俺は――何者なんだ」


 アリアは笑顔を崩さず、俺を見る。


「……あなたは……あなたですよ。ただ違うのは、日本からやってきた――異世界人というだけです」


「そうかい」


 やっぱり知ってるんだなアリアは、俺がこの世界の住人でないことを。

 俺はそれ以上聞くことなく部屋を後にする。

 あれ以上問いただしても、答えてくれないだろう。自分自身の事だ……俺が、自分で知るしか方法はない。






 扉が閉まる音が静かに鳴り響く。

 白い寝間着に身を包む少女は、窓から見える月を見る。


「零さん……あなたの事はあなた自身しかわかりません。きっと近い日に自分の力を知るときがきます」


 窓に近づいていき、ガラスに手を触れる。


「あなたも少しずつ気づいてるはずです。自身の異常な力を。あなたは自分の存在に気づいた時に、どうするんでしょうね?」


 窓から見える、大聖堂の入り口から歩く人影を見ながら呟く。


「否定の具現……。あなたは――――人でも神でもないのですから」


四章はこれで終了です。

無駄に壮大な内容になってきました。

これから先、世界についてどんどん明かされていきます。

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