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俺達は神【世界】を否定する  作者: 十文字もやし
四章 聖都ウィンデル編 神の歌姫
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76話 神を超える力

「――ゴホッ!」


 口からゴポッと音を立てながら、鮮血が逆流し口元から溢れ出る。

 口から滴った血が、少女の顔に赤く斑点模様を作る。

 ゆっくりと、ずるっと引き抜かれる少女の赤い手。


「ゼ……クス……てめえ!」


 口元を自身の血で赤く染めた状態で、自身の身体を貫いた少女を睨みつける。


「主。私はあなたに愛されて嬉しかった。あなたのために、頑張ろうと……思ってました」


 前髪で隠れて、目元が見えないが、少女の頬に二つの涙が伝わるが見えた。


「でも――嘘だとわかって、とても悲しかった。あなたが好きだったから……! 好きだからあなたの為だけに今まで頑張ってきたから! でももう……あの時のあなたは、私の中に……いません! 今のあなたは……主じゃない!」


 薄々この子は自分が本当の子供じゃないと気づいていたのだろう。それでも愛してくれる人がいるから、頑張れた。でも……ダリアが向けていたのは偽りの感情。それがわかり、本人の口から告げられて……この子はダリアはもう主ではないと思ったのだろう。


「ハァ……ハァ……! この……人形の分際で! 創造主に逆らいやがるか!」


 血が激しく流れ出る腹部を押さえながら喋る。時折、口から血が逆流しその苦しさを物語る。


「形勢逆転ですね、ダリアさん」


「はっ……! 何勘違いしてるの小娘、まだ終わってないわよ」


「その状態で何をするつもりですか? 投降すれば、命の保証はしますよ?」


 降参すれば命を助けるというアリア。敵にまでここまで情けをかけるのかこの子。こういったところが聖女と言われるのか。

 瀕死の状態のダリア。このままでも、出血多量で絶命するのは目に見えている。だがこいつの自信はなんだ?


「ハァ……小娘。私が神城零の消滅の力を求めたと思ってる?」


「……まさか、気づいていたんですか」


「まあね、消滅だけじゃないってことぐらい把握してるわよ!」


 部屋を覆っていた霧がダリアに向かって収束していく。そして体中を覆い、その姿を白く霞ませる。


「もっと……もっとよ! もっと情報を引き出す!」


「嘘でしょ……! 傷が塞がり始めてる!?」


 リンはダリアに起きている異変を見て、震えた声で喋る。

 肩に開いた風穴は綺麗に塞がり、腹部に大きく開いていた穴も、時間を巻き戻すように治っていく。


「あはははは! すげえなぁ! すごすぎるわぁ! これが神力を超越する力!」


「なんで! 傷が治るんだよ!? 俺の力は……!」


「あれぇ? あなたオリジナルなのに知らなかったの?」


 完全に復活し、傷一つ無い状態に戻ったダリアは苦痛も無い、笑顔でこちらを見る。


「使い手がこれじゃあ、宝の持ち腐れねぇ……あなたの力はねぇ、消滅だけじゃないのよ」


 傷口があった箇所をさすりながら喋る。


「お前の力は……全ての――」


 その先を言おうとした瞬間――ダリアの指先が塵になって消えた。

 俺は霧を向けていない。だがダリアの指先は塵に変わった。そして指先だけじゃなく、右腕全てがあっという間に塵になって消えてった。


「嘘でしょ――なんで!? 私の身体が!」


 消えた右腕を見て、震えた目で錯乱するダリア。

 塵に変わるのは右腕だけでなく、左腕にも及び出す、そして足元も少しずつ塵に変わり出す。


「嘘、嘘、嘘! なんでなんで!? ありえない! 私は、力を使いこなしているはず!」


 消えていく身体を見て、どうにかしようと足掻く。姿を元に戻し、能力を解除してもそれは収まらない。


「最終警告をしましたよね? 彼の力は人の身に余る力だと」


「くっそ! 歌姫ぇ! お前、私がこうなることを知ってやがったなぁ!」


「あなたが彼の力を使い出した時、薄々気づいていました。あなたの身体は零さんの力に蝕まれ消えていくと。たとえそれが――偽物の力でも」


 消えゆくダリアを、哀れな目で見るアリア。

 強すぎる力は、自らを滅ぼす。そういうことなのだろうか。

 だが何で俺は、その力を使って何ともない? 俺は一体……何なんだ。


「認めない! 私が消えて何故、こいつは消えない! 同じ人であるこいつは何故消えない!!」


「ダリアさん。あなたは器ではない……それだけですよ」


「くそぉ!! 認めるかぁぁ! こんな、こんな結果ぁ! 認め――――」


 ダリアは叫びながら、完全に塵になった。

 消え去った後、沈黙が部屋を包み込む。


「終わったの……?」


 リンが、呆然とした様子で呟く。


「終わりましたよー」


 アリアが元の口調に戻り、にこやかな顔に戻る。

 終わったのか……。誰が倒したわけじゃない。ダリアが俺の力を復元し、それが原因で自滅した。

 あいつが言おうとしていた言葉はなんだった? 俺の力は一体……



 ダリアが自滅し事件は終わりを迎えた。主を失ったゼクスにもはや敵意は無く、その場に立ち尽くしていた。

 俺たちは今治療を受けている。


「アリア様、この少女を牢に連行しますね」


「はいー。お願いしますー」


 その場に座り込んでいる少女の元に二人の騎士がやってきて、その腕をつかもうとする。

 腕が伸びたその時、声が動きを遮る。


「待って!!」


 声の主はリン。手当を受けたおかげで立ち上がって歩ける程には回復している。

 リンは少女の元へ歩いていく。


「この子は、強制的に従わされていたのに、牢に入れるの?」


「事情があるとはいえ、アリア様を狙ったことは事実。見過ごせません」


「――でも!」


 口論を広げるリン。シャルルと同じ遺伝子を持つ子だからこそ、ほっとけない思いがあるのだろう。


「その子の連行、ちょっと待ってもらっていいですかー?」


 口論の中に割って入ったのはアリア。


「リンさん。零さん。お二人とも、今回は私のためにありがとうございます」


 何故か突然お礼言い出すアリア。このタイミングで言うのが不思議だったが、何か考えがあるのだと思う。


「あなた達は、私に何か頼みたいことがあるんじゃないんですか?」


「アリア……?」


「私の命を守ろうとしてくれたんです。その報酬が無いとおかしいですよね?」


「……なんでもいいんですか?」


「私に出来ることなら、どうぞー」


 リンの言葉にニッコリと笑顔で答えるアリア。

 まさかアリア……俺たちの考えがわかった上で、今この話題を持ち出したのか。

 俺の頼みは決まっていた。そしてそれを口に出す。


「アリア、この子を――――」


「アリア様、この子の罪を全て無しにしてください!」


「……えっ、おいリン?」


 俺が言おうとしていた内容がリンに言われてしまった。

 リンの願いの内容に、周りの騎士達がざわつく。


「いくら恩人とはいえ、それは如何なものかと……」


「アリア様……流石にこれは……」


 願いの内容を聞いて、アリアは表情を変えることなく口を開ける。


「はい。わかりましたー。では、この子の罪は帳消しにしますねー」


「アリア様!? 正気ですか? この子はあなたの命を狙っていたんですよ!? 考え直してください!」


「女神命令ですー。異論は認めませんー」


 笑顔で、権力を行使するアリア。地位とか嫌いなんじゃないのかあんた……。でも、そのおかげでこの子は助かった。


「……どうしてですか? どうして私を助けようとするんですか?」


 そのやりとりを見ていた少女にとって、リンの行動が不可解であった。散々傷つけて、瀕死まで追いやった相手をどうして助けるのか。謎で仕方ない様子だ。


「私が助けたいから助けるの。文句ある?」


 リンは屈むと、座り込む少女の目線に自身の目線を合わせる。


「でも……私は、人じゃ――」


「あなたは人よ。人形なんて言わないで」


 座り込む少女を抱きしめるリン。

 なすがままに抱きしめられ、リンを見る少女。


「あなたを縛る鎖はもうない。あなたは自由よ。あなたはこれからいっぱい笑って沢山楽しみなさい。あんな奴を親なんて思わなくもいい。私があなたの、本当の親になってあげる」


「なんで……? なんで私に……そこまで優しくしてくれるんですか?」


「あなたは……あの子の生き写し。それに私はもう後悔はしたくない、あなたは私にとって、大切な存在なのよ」


「嘘じゃ……ないですよね? もう……裏切られないですよね?」


「嘘なわけないじゃない。お願い……私のそばにいて。それだけでいいから」


 その言葉で、少女は手を回してリンの服を掴む。今まで溜めていた感情を爆発させるように大きく泣いた。

 初めて人に認められた。必要とされた。もう偽りじゃない、心から本当の思いを受けて、堪えきれないほどに嬉しかったのだろう。


「あなた、名前が番号なんて嫌よね……私があなたに名前を上げるわ」


「名前……いいんですか?」


「ええ。だって家族なんだから。そうね……ティユール……。あなたの綺麗な髪色から取ったわ。どう?」


「……嬉しいです。私なんかに名前を与えてくれて! その名前、大切にします!」


「そう、よかったわ喜んでもらえて」


 頭を撫でながら、笑顔で話すリン。リンの笑顔を見て、少女の顔も笑顔になる。その二人の様子は本当の親子のように見える。

 初めてこの子が笑顔になったこところを見た。その笑顔は心から嬉しいという気持ちが伝わってきた。


「……リンさんの願いは叶えました。……零さん、あなたの頼みはなんですか?」


「俺の頼み……」


 俺の言おうとしたことはリンに言われてしまった。

 するとリンが俺の方を見て、口を開ける。


「零。あなたはあなたの聞きたいこと聞きなさい。あるんでしょ? アリア様に――聞かなきゃならないことが」


「……わかった。ありがとうな、リン」


 リンに後押しされて、決意を固める。

 もう一度、もう一度アリアに聞く。俺がこの聖都に来た理由で、知らなくてはいけないことを。


「……アリア。じゃあ言わせてもらうぞ」


「はいー」


「今一度頼む。神の子について……あんた達について教えてくれ!」


 この問いをすると、やはりアリアは真剣な顔つきに代わり、雰囲気が一変する。


「……なぜ、そこまでして知りたいんですか」


「知らなくちゃならない。俺は――鍵だから」


「……あなたも気づいていたんですか。自身の鍵の可能性を」


 やはりアリアは鍵について知っていた。ということは、リリナが始祖だということも知ってるという事か。


「……わかりました。あなたの疑問にお答えします」


「本当か?」


「はい。女神として約束は守ります。ですが、あなただけにお話します、なのでまた後日になりますが、よろしいですか?」


「ああ。構わねえ」


「ではー。また後日、誰かに言伝を頼みますのでー。首を長くして待っていて下さいー」


 突然元の口調に戻り、一気に緊張が抜ける。

 なんというか……結構難しい子だな……

 神の子について、アリアから聞けることになった。俺はそれ以外にアリアに聞くこともある。始祖、鍵、そして――俺が何者なのか。

 アリアは俺の力の本質を知っていた。どこで知ったのかは謎だが、アリアは俺にとって何か重要な事を知ってはずだと、感じている。


 ――俺は本当に…………人間なんだろうか?






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