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俺達は神【世界】を否定する  作者: 十文字もやし
四章 聖都ウィンデル編 神の歌姫
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68話 二人目の女神、聖騎士

「神城、俺達は話を聞くために来たよな」


「そうだな」


「話をする気配すら感じられないがいいのか?」


 男2人、椅子に座りながら視界に入る様子を冷静に眺めていた。

 視界に入るのは、和気藹々と楽しそうにお喋りをする女性陣。この数十分でかなり打ち解けている様子だ。

 だが本題である、護衛に関しての詳細は未だ聞けていない。


「あいつら楽しそうだし、まだいいんじゃないか?」


「お前さんも結構甘いよな、まあそれに関しては同感だ」


 お互いあの楽しそうな雰囲気を壊したくないようだった。あいつらには、こうやって楽しんでもらえる時間が少なかったからな、少しぐらい長い間楽しんでほしいもんだ。


「あ、これも美味しいですね」


「そうでしょー。そうそう、これも甘くて美味しいのー」


「へー、私も食べてみたーい!」


 本当に楽しそうだな。あの女性グループに混じって会話する自信はないな。なんだか除け者にされた感じで少し寂しい。


「しかし甘いものしかないんだな……」


「オッサン嫌いなのか?」


「いや、嫌いではないが苦手だ。塩気のある食い物が好きだな、煎餅とか」


 塩気とか完全にオッサンだな、いや年齢的にもオッサンだけども。しかしながらその意見には同意、俺も口の中に甘味より塩気を欲している。


「ポテトチップスとか食いたいな」


「なんだそれ?」


「俺の国のスナック菓子だよ、薄塩とかコンソメとかあって旨いんだ」


「ほー、食べてみたいもんだな」


 俺の世界のお菓子に興味を示したようだ、作ろうと思えばこの世界でも簡単に作れそうだし、もしかしたらあるんじゃないか?

 女性と男性でもはや会話が分かれており、お互い談笑していた。

 その雰囲気の中、扉がキィと音を鳴らしながら開けられる。


「お姉さま、昨日の件ですけど……」


 そう言いながら部屋に入ってきたのは、ブロンド色の、腰まで伸びたポニーテールをした少女。

 青銀に輝く鉄の前掛け、腰回りにも同じ色の鎧が見える。肩は露出しており、二の腕辺りから手元にかけて袖が伸びている。


「アリアお姉さま。一体何をしてるんですか?」


 この光景を見て冷静な目つきでアリアを睨む。

 アリアはというと、笑顔でその鎧姿の少女を見ている。笑顔だが額から汗が流れており、焦りが感じ取れる。

 やべえ見つかった、みたいな顔してるな……


「お客さんとお茶してただけよー? ほらぁリューちゃんもどう?」


「お姉さま、誤魔化さないで下さい。僕は客人が見えるとは一言も聞いてませんけど?」


「あらぁ? 言ってなかったかしらー?」


「聞いてません」


「あらあらー。うっかりしてたわね」


 テヘっと舌を少し出して、可愛らしく首を傾げる。その動作を男が見ればどんな事でも許せそうだな。

 しかし相手は依然として表情を変えることなく見ている。

 そしてツカツカと忙しく足音を立てながら、アリアの元へ近づくと――その頭部へ拳骨が落ちた。


「いたぁい! リューちゅん酷いじゃないー」


「お菓子は一日一個と言ったでしょ! それに僕に何も言わずにこんなことして」


「だってー。リューちゃんに言ったらダメって言うでしょ?」


 そんなにこの子厳しいのか……

 アリアの言動からこの鎧少女が厳しい子のなのかと思わせる。


「当然です。――お菓子は一日一個が決まりですから」


 そっちかよ。


「うー。いいじゃない、食べたって……リューちゃんも食べたいでしょ?」


「いりません。僕は甘い物より塩気のある物が好きです。それと、リューちゃんって呼ぶのやめて下さい、僕にはリュミエールという名があります」


 ほーこの子塩気の物が好きなのか。オッサンが少し嬉しそうな顔してる、仲間が見つかったからか。


「それで、この方達はどうしてここへ呼んだんですか?」


「私の護衛をしてもらおうかと思ってー」


「……」


 ゴツンと低い音が室内に鳴り響く。アリアの頭に二つのたんこぶがあり、目に涙を浮かべた状態で頭を押さえている。


「うー酷いわよ、二回もぶつなんてー」


「何故そのような重要な事が、騎士団長である僕の耳に入らないんですか?」


「だって断るじゃないー?」


「あたりまえでしょ! あなたは一般市民の方を巻き込んでいるんですよ? それにお姉さまは毎度毎度、勝手に物事決めて……もう少し聖都の女神として自覚を……」


 長ったらしい説教が始まった、この様子と会話内容を聞いているとアリアがこの子に説教されるのは初めてじゃないらしい。


「こら、食べようとしない。まだ話は終わってませんよ」


「ぶー。けちー」


「あなた本当に、この国の女神として自覚ありますか?」


 苦労してるんだなこの子。

 その様子を見ていたファルガが何かに気づいたように、呟く。


「そうか、あの子どっかで見たことあると思ったが……」


「知ってるのか?」


「あの騎士の子は、聖都の女神の一人――リュミエール・フォンブルス。通称、聖騎士だ」


 そう言われてリュミエールの右手に視線を向ける。そこには神の子証である、天のファートがはっきりと見える。

 説教が終わったのか、リュミエールが振り返りこちらを見る。


「すいません、お姉さまがご迷惑をかけてしまったようで……」


「いや別に迷惑なんて思ってないから、頭を下げないでくれ」


「お心遣いありがとうございます。今回の護衛の件につきましては私達が担当します。皆さんを危険な目に遭わせるわけにはいきませんので……」


 申し訳なさそうに喋る、この子は聖都の女神として俺達の安全を考えてくれているとわかる。

 本来なら任せるのが一番だが、こちらも事情という物がある。


「それなんだけどさ、護衛は引き受けるつもりなんだ」


「しかし、それでは皆さんが危険です。騎士でない方にそのような事は……」


 戸惑いを見せながらも、危険だから止めてくれと訴えるリュミエール。


「私達にも護衛する理由があるの。あの襲撃者に少しばかり用があるのよ」


 リンが護衛する理由を告げる。明確な事は言わないが、今回リンにとってこの護衛は親友を知るための重要な事だ。

 その決意が秘められた目を見て、リュミエールも何かを感じ取ったようだった。


「……いいんですか? 命を落とすかもしれないんですよ?」


「覚悟は決まってる。それに今回は引き下がれない理由があるの」


「そうですか……」


 リュミエールは目を閉じて少し考える様子をとる。そしてゆっくりとまぶたを開く。


「わかりました。お姉さまの護衛をお任せします。あなた方に危険が及ばないよう、こちらも精一杯守りますので安心して下さいね」


「それでいいのか? そんなに簡単に俺達なんかに任せても」


「お姉さまが直々に頼んだ方ですし、何より理由があるのですから。お姉さまには一言教えてほしかったですけど」


 未だに頭をさすりながら、痛そうにしているアリアを見る。


「遅れましたが、私はリュミエール・フォンブルスです。これからよろしくお願いします」


「ああ、俺は神城零。よろしく」


 伸ばされた手を握り、俺も名前を名乗りながら握手をする。

 そして順番にリュミエールと他のみんなも自己紹介を交わしてく。

 数十分が経過した。俺達はアリアの代わりに、リュミエールに護衛についての話などを聞いていた。


「あなたが神城さんだったんですね」


「まさか俺の事知ってるとはな」


「エルヴィーナさんからの手紙で名が書かれていましたから。何でも子供好きとかで」


 あの野郎、何て事書いてやがる。まだロリコンと書かないだけマシなんだけど。


「あいつの言うことはあまり信じないでくれ……」


「あの方は冗談が好きですからね」


 この子も知ってるのか。

 その会話の中、復活したアリアが参戦してくる。


「あらー。だからクレイス院であんなに好かれてたのねー」


 クレイス院という言葉にリュミエールの耳と眉がピクッと反応する。

 その反応を見て、アリアはヤバいという表情を作る。


「お姉さま、クレイス院に行ったなんて聞いてませんけど」


「……あ、そうだ! まだ、フィーちゃん起きてないでしょ! 起こしてくるわねー」


 席から立ち上がると逃げるように、室内から去っていった。まさに風のような速度で。

 逃げたアリアを見て舌打ちをするリュミエール。


「はぁ……どうしてお姉さまは毎度毎度……」


「苦労してるんですね」


 リンが苦笑いしながら、そう言うと。リュミエールはため息混じりにリンを見る。


「そうなんですよ、聞いてくれますか?」


 あ、これ長くなるパターンだな。リンもしまったという顔をしている。


「お姉さまは一日一個と決め手も守らないし、事務仕事をサボって街に逃げるし、結婚相手見つけないし……」


 アリアに対する愚痴が出るわ出るわ。

 俺は静かに立ち上がると、部屋の扉へ向かおうとする。その姿を見て、リリナが引き留める。


「零、どこ行くの?」


「長くなりそうだから用足してくる」


「あ、うん。行ってらっしゃい」


 静かに扉を開けると、部屋から脱出する。

 トイレというのは真っ赤な嘘。ただあの話に巻き込まれたくないだけである。


「はぁ……あの子も苦労人だな」


 あの話し方を思い出しながら、苦笑いしながら呟く。


「あの様子じゃ一時間は喋るだろうな……散歩しよ」


 部屋の外で待つのも辛いので、時間が経つまで行く宛もなくブラブラと歩き回ることにした。


「ほんとに広い建物だよなぁ……」


 過去にガルム城など大きな建物に入ったことはあるが、それ並に大きい。これだけ大きいと掃除とか大変なんだろうな。

 どうでもいいような感想を感じていると、ある物体に目が行く。


「……なんだあれ」


 視線の先にあるのは、橙色の毛布にくるまった何かがモソモソと芋虫のように動いている。

 果てしなく不気味な光景だ。

 おそるおそる、そろっと近づき、その毛布芋虫を間近に見る。


「顔とか見えないな……」


 顔どころか、足とか腕すら見えない。人じゃないのか?

 依然としてモソモソと前進していく、不気味な物体を眺める。

 刀の鞘を使って、試しに突っついてみる。


「にゃ」


「……にゃ?」


 猫か? 猫にしては大きいな……

 もう一度突っついてみると、ブルッと震えて再び「にゃ」と呟く。わけわからん。

 人間というのは、好奇心旺盛な生き物だ。このように訳の分からない生き物がなんなのか興味がある。意を決して、毛布を掴むと、チラッと中を覗く。


「さっきから何をするですにゃ」


 中にいたのは、ピンクの髪をした少女だった。


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