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俺達は神【世界】を否定する  作者: 十文字もやし
四章 聖都ウィンデル編 神の歌姫
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65話 世界の禁忌

 呆れるような顔をして、銃を構えた状態でゆっくりと歩いてくる。


「あなた本当になにか憑いてるんじゃないの?」


「かもな……」


 ここでリンが来てくれるとはありがたい。これで2対1戦況はかなり変わるはずだ。これで不利と判断して引いてくれれば嬉しいが、そうはいかないみたいだ。

 フードはリンを見て、戦闘スタイル変えはじめる。左側のダガーをしまうと、黒い銃を取り出す。

 そしてそれをリンに向けて数発撃ち出す。


「そんな単調な動きじゃ無理よ!」


 横に走り銃弾を回避する、お返しに数発銃弾を撃つ。

 自身に向かってくる高速の銃弾をリンのように走って回避する。その速度は人の脚力とは思えないような疾風のような速さ。

 そして銃弾を回避すると、壁をまるで床のように駆ける。壁を蹴り出し、リンに向かって弾丸のように突撃する。


「くっ!」


 リンは短剣と銃でダガーを受け止めると、バックステップをとり俺の元へ近づく。。


「速いわよあいつ」


「それに、神力も使えるみたいだ……俺の霧で消滅しなかった」


「神力まで? かなり厄介な相手みたいね」


 睨み合うこと数秒、その数秒が長く感じてしまうほどの緊迫感。

 先に動いたのは相手。腕を振るうような動作をする。すると相手の両端から旋風のような小さな竜巻が踊りながら向かってくる。


「やっぱり風使いね」


「リン、あの竜巻は俺がなんとかする。あいつを頼めるか?」


「神力使う相手を倒せるとは思えないけど、やるだけやってみるわ」


 霧を前に盾のように形成させると霧を集めて厚みも増せさせる。地面の瓦礫を巻き上げながら霧にぶち当たる。


「この風、やっぱり神力を纏ってるか……!」


 消滅速度が遅いことから神力を込められて放たれたと考える。幸い突破されることはなさそうで、削るようにその竜巻は徐々に姿を消している。


 竜巻の処理を任せたリンは霧を飛び越えるように飛翔すると、上空から黒フードに向けて数発銃弾を打ち込む。だが向かってく銃弾を軽々と弾く。


「やっぱり、これじゃ無理よねー。でも銃しか撃てないってわけじゃないわよ?」


 黒フードは見えない顔でリンを見ている。だが足下に何かある事に気づく。

 足下にカランカランと音を鳴らしながら転がる、細長い缶のような物体。爆発物か何かと思ったのかその場から離れようとする。


「気づくのが遅れたわね」


 ニヤッと笑うリン。するとその足下にあった缶はピカッと閃光弾のように炸裂する。辺り一帯が真っ白に包まれ、俺の視界まで真っ白に塗りつぶされる。


「――くっ!?」


 閃光をモロに受けてしまいフラフラとする黒フード。

 リンは地面に着地すると、腰を落とした低姿勢で肉迫にする。短剣を使わず鳩尾に向けて拳をたたき込む。

 短剣や銃を使わないのは生け捕りにするつもりだからだろう。拳を叩き込まれた相手はフラッと仰け反る。


「っつー! こいつ一体何腹に付けてんのよ!」


 顔を歪めながら痛そうに叫ぶ。すると黒フードがダガーがある方の腕でリンの首を切り裂こうと腕を振る。だが相手はまだ目が慣れていないようでその的は大きく外れて、リンの髪を掠る程度だった。


「これだけ頑丈なら、ゼロ距離でもいいわよね?」


 肩に銃口をそっと当てると、光と共に低音の銃声が鳴り響く。

 撃たれると同時に悲鳴のような高い声を上げる相手。

 飛ぶように離れると、左肩を押さえる。


「その様子じゃもう銃は撃てないわね」


 弱った様子の相手に向けて一歩一歩前に進みながら喋る。


「殺しはしないわ。ただ少し眠っててもらうだけよ」


 銃口を額に向けるとトリガーに指をかける。


「……任務に支障をきたす可能性があるため、拘束具一番――解放します」


 シュルという音と共にフードの間から床に大きな音立てて落ちる。

 落ちたのは青銅のような金属をした網状の鎧。一つだけじゃない、二つ三つと同じものを重ねて着ていたのかいくつも床に落ちていく。


「この!」


 まずいと判断し、躊躇無くトリガーに力を込めて引く。そして低い銃声が鳴り響いた。だがその場にフードの相手はいない。


「嘘でしょ、一瞬で!?」


 そしてリンが振り返ろうとした時だ、苦痛に顔を歪める。


「リン!」


 瞳に映るのは腹部にダガーを突き立てられたリンの姿だ。身体を反らし、その腕を掴むことで被害を最小限に抑えている。


「大丈夫! この程度なら自分で治療できるから!」


 強気の表情で叫ぶ。だがとても大丈夫には見えない、腹部は少しずつ赤く染まりだし床に血が落ちる。

 リンの加勢に向かいたいが護衛をやめるわけにはいかない。霧を使ってもあいつは消えないから意味がない。どうする?


「あまり人前では使いたくないですけどー。仕方ないですねー」


「え……?」


 アリアが前に出て行く。その行動に目を疑う、自分が標的だってわかってるのか?

 俺から離れたのを相手は見逃さない。離れた瞬間アリアに向かって刃を向ける。


「あらあら、物騒ねー。落ち着きなさいー?」


 スゥッと息を軽く吸うアリア。そして身体がぼんやりと光った思うと、背中から四枚の純白の翼が生える。

 本当の天使のような姿で、その姿に瞳が吸い込まれる程の美しさ。

 次の瞬間、アリアを中心に波動のような音波が発せられる。空間を揺らすような音で、景色がブレる程だ。だが不思議と俺には何ともない、リンも同様なようだ。だが黒フードは別のようで耳を押さえて苦しんでいる。

「これが聖都の女神の力……なのか」


 アリアが自分が強いと言っていた事もわからなくない。

 リンを圧倒していた相手を一瞬で抑えるほどの力。

 そして相手が上空を見上げるように身体を仰け反らせた時だ、フードが脱げてその顔が現になる。その顔に目を見開くように驚いてしまう。

 美しい緑色の髪、ボブカットのようなショートヘアだ。何より驚いたのは子供のような顔立ち。リリナと大して年齢が変わらないような感じだったからだ。


「え……? どうして……!?」


 だが驚いたのはそこじゃない。俺よりもリンが目を揺らすように驚いているからだ。その驚きかたは尋常じゃない、信じたくない、信じられないといった感じに思える。


「――――っ!!」


 緑髪の少女は苦痛の顔をしたまま、垂直に飛び上がる。そして風のように上空を飛ぶとあっという間にその姿を消してしまった。


「退散してくれたか……」


「大丈夫ですかー?」


「俺は大丈夫だ、リンが少し負傷したけどな」


 リンは腹部を押さえながらこちらに歩いてくる。


「大丈夫、この程度なら治せるから」


 平気そうな顔をしているが、結構な出血だ速く治療したほうがよさそうだ。

 するとアリアがリンの側に寄ると、傷ついた箇所に手をかざす。


「ほらー。これで大丈夫ですよー」


「傷が治ってる……リリナちゃんみたいな力じゃないのに……?」


「すこし神力を傷口に漂わせて活性化させただけですよー。大したことじゃありません」


 簡単そうに言ってみせるがそれがかなり難しいことがわかる。神力のコントロールは難しく、神の子自身ですらがうまく制御出来ないからだ。


「では私はこれでー。零さんも気をつけて帰ってくださいねー」


 ペコリとお辞儀をすると、去っていこうとする。

 だが俺は去っていこうとするアリアを引き留める。


「待ってくれ!!」


「はいー」


「俺が言った事に答えてくれ……」


「……神の子について……ですか?」


 またあの雰囲気に変わる。にこやかな雰囲気ではない、真剣な感じ。


「知ってどうするつもりですか?」


「……神の子を助けたい、あいつを助けるために知りたいんだ」


「……そうですか、あなたも彼と同じなんですね――シルファスさんと」


 アリアの口にした言葉、シルファス。この子の口からまさかあいつの名前が出るとは思わず目を見開く。


「10年前、彼もあなたと同じ質問をしました、神の子とはなんなのかを……」


 10年前? ちょっと待てよ10年前ってこの子は6歳だろ? なのになんで知ってる?


「おいアリア10年前って……どう言うことだよ……?」


「零さん、あなたの質問には。全て――お答え出来ません」


「なんでだよ……?」


「……私達の存在を知る。すなわち世界を知る事。それは世界の禁忌だからです」


 世界の禁忌だと……? それほどまでに重要な事だっていうのか?


「では私はこれで失礼しますねー?」


 アリアは元の口調に戻ると、ゆっくりと去っていった。


「零……あなた。何を知ろうとしてるの?」


「…………」


 俺の問いにアリアは答えてくれなかった。

 そしてシルファスも俺と同様の事を過去に聞いていたこともわかった。奴の過去に何があった? あいつはアリアに聞いて何を知った? あいつが言うように絶望し、光を喰われたのか?

 この世界は一体どうなってる?






 聖都に聳える大聖堂に向けて歩みを進めるアリア。


「リアナ……あなたが連れてきた彼は……一体この世界をどう見るかしら……? 彼は全てを知った時――どうするかしら?」


 含み笑いをするとアリアは上空に視線を移し、大聖堂を瞳に映す。


「まだ時ではないわ。彼が知るには早すぎるわね……」


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