62話 夜の襲撃?
「あー眠い……」
リンゴでも入りそうなぐらいの、大きな欠伸をしながら歩く。
現在時刻は朝の8時ぐらいだと思う。聖都ウィンデルに来て一日が経過し、今は二日目に入ったところだ。
眠そうな瞳で辺りを見ながら歩く。街並みはシュトラスのような建物が多く、それをもっと建物密度を多くし都会っぽくした感じ。
「……くっそーあれから寝れなかったからな」
昨夜の出来事を思い出しながら文句をぶつぶつと呟きながら歩く。
俺は基本的に寝付きがよくて、寝不足なんて滅多にならない。だが昨夜ある出来事が起きたんだ。
それは昨晩のことだ。
一日が終わり、その日の疲れをとるためにベットへ潜り込んだ。
部屋は一人一人用意されており、その用意された部屋も結構豪華で、冷暖房完備でトイレ、冷蔵庫付きだった。しかし冷蔵庫がこれまた似てたから驚きだ。電気で動いてはないが。
ランクアップしたホテルって感じだな。
「なんだか、久しぶりに落ち着いて寝れるな」
ここ最近身の回りでいろいろありすぎて、まともな休息を取れていなかった。最近だとシュトラスでの二日間ぐらいかな?
やることが全て終わったわけじゃない。でも物事に追われることがなく肩の重荷が降りた感じだった。それもあって布団を被るとすぐに夢の中へと落ちた。
「……」
眠りに落ちてから数時間経過した頃だろうか?
突然夢から覚めた。何か身体に違和感を感じたからだ。
「ん……? なんか脇の辺りに柔らかい物がある?」
もぞもぞと手探りにその物体を掴んでみる。
モニュっと鳴りそうなモチモチした感触。そしてスベスベしている。……これはまさか。
バッと布団を退けてその正体を見る。視界に入ったその姿は金色の髪の少女。
「こいつ……なんでここにいやがる」
正体はシェリア。すぅと寝息を立てながら、幸せそうに寝ている。髪は下ろしてありストレートだ。
まあ寝ることはいいとしよう。問題はそこじゃない、どうしてこいつ――下着姿何だよ。
「暑いから? いやいや、それにしてはおかしいだろ」
そうだとしたら俺に密着して寝る必要性皆無だ。
ため息をつくと、シェリアの肩を揺らして起こす。
「おーい起きろ」
すぐに起きたようで、目を擦りながら眠そうにこちらを見る。
「ふにゃ?」
「ふにゃ? じゃねえよ、なんでここにいるんだ。部屋あるだろ?」
「零君が人肌が恋しいかと思って」
「いや別に間に合ってる」
シェリアは「えー」と言いながら文句を言っている。
「その前にな……何で下着なんだよ……」
「可愛いでしょ? 悩殺されちゃうでしょー」
シェリアは身体を反らせてポーズのように決める。
「そうだな。悩殺したいなら18歳になってから出直せ」
「むー! 零君乙女心わかってない! やっぱり胸? 胸なの? それとも耳? 耳がいいの?」
「あー騒ぐな! みんな起きるだろ!」
「胸だって少しは大きくなったもん! ほら!」
シェリアはそう言って俺の手を掴むと、自身のまな板に押しつける。
……すごく、ぺたんこだ。板って感じだ。
「なにその目はぁ! 哀れみの目!?」
「いや何だシェリア。お前はまだ成長期だから……いじけるな」
「うー! 零君のアホ! おっぱい野郎!」
そう言い捨てると部屋を出てどっかに行ってしまった。まるで嵐が去ったみたいだ。
「というかおっぱい野郎って……とんだ不名誉だな」
シーンと静まりかえる室内。嵐が去った後の静けさってこういうのを言うんだろうな。何故シェリアがいたのかは謎だったが、まあ気にしないでおこう。
そして再び眠りにつくため何事もなかったかのように布団を被る。
……シェリアって以外と大人の下着着けるんだな。見たいんじゃないぞ、見えたんだ。
また眠りについてから数時間経過。
再び夢から覚めた。
「……またシェリアか……?」
あいつなら同じことしそうだしな。
そう思いながら呆れた顔で布団を退ける。
「……今度はこいつか」
金色の髪……ではなく。視界に入ったのは青色の髪。今度はリリナだ。
そして何故かシェリア同様、下着姿である。
リリナってシェリアと違ってまだまだお子さまな感じだな。どこが、とは言わない。
「……」
無言で肩を揺らす。シェリアの時のようにすんなり起きてくれない。それどころか身体を密着させて来て、スリスリとすり付けてくる。
ワザとかこいつ?
「頼むから起きてくれ」
こいつはシェリアと違って、少しだが出るとこ出てるから困る。
「んー?」
ようやく目覚めてくれたようだ。唸るように声を出す。
「あー零」
「よし起きたな。聞こう、何故俺の布団にいる」
「……誘わ……じゃなくて添い寝?」
「なんで疑問系なんだよ」
最初に言おうとした事は聞かないでおこう。
あとシェリアにも聞いたが、一応聞いておく。
「それと、どうして下着なんだよ……」
「ムラムラする?」
「そうだな、お前が同い年ならしたぞ」
「……本当に女心わかってないよねー」
そもそも11歳の少女にそんな感情を抱くとヤバいだろ社会的に、人間的にも。
「これでも? これでもしない?」
膝の上に乗って抱きつくように腕を回す。
髪から女の子特有の、良い香りがする。だがそれでも顔は冷静を保つ。
「女の子なんだから止めなさい」
冷静な顔つきで膝の上から退ける。
退かされてムスーと膨れっ面になるリリナ。
「ねえ……零って……女の子に興味ないの? まさか男の子が好きとか?」
「ホモじゃねえよ! 普通に女の子が好きだよ、でもなお前ら年齢考えろ」
「6歳しか変わらないけど?」
「離れすぎだろ。その前にお前の年齢がアウトだから」
「でも零って幼い子好きなんでしょ? リンさん言ってたよ」
「あの野郎……変なこと吹き込みやがって……」
ハァっと深いため息をつく。
あー頭が痛い。ひとまずリリナを自室に戻らせよう。
「とりあえず部屋に戻れ」
「寝ないの?」
「その格好がアウトだ」
「まさか裸がいいの? 零って結構スケベだよね」
少し頬を紅葉のように赤くさせながら俺を見る。
「違うわ! 服だよ! 裸はもっとアウトだ! というか脱ごうとするな!」
「……別に零なら見られてもいいけど?」
「お前がよくても俺はよくない」
脱ごうとする下着を元に戻させて、呆れた様子でリリナを見る。
なんでこいつは二人になると訳の分からん行動に出るんだか……
「別にやることしても私はよかったけどね」
とんでもないこと口にした気がするが。聞かなかったことにしておく。考えると頭が痛くなるし。
「とにかく戻れ。戻りなさい」
追い返すようにリリナを自室へ戻らせる。納得いかない顔を
していたが無視した。気にしてたら根負けしそうだったし。
よし今度こそ寝れるな。いい加減に夢から覚めさせるのは勘弁してほしい。
そしてまだこれで終わりとは気づいていなかったんだ俺は。次がもっとも危険だとまだ知らない。
何かがのしかかるような夢を見て、目が覚める。時間はまだ夜。
夢と同じように上半身が重い。何が乗っているような感じだ、それと胸元に柔らかい物体がある。
いい加減にイライラしてきたのか、苛ついた顔で布団を退ける。
シェリアか? リリナか? 一回叱ってやらなきゃな。
「……は?」
「あ、こんばんわ」
雪のような白い髪。今度はシュエだった。
意外な展開に拍子抜けの声を上げてしまう。シュエがこんなことをするとは夢にも思わなかったからだ。
「……え、何してるの?」
「えっと、その……夜這い、です」
「……とりあえず退こうか」
素直に退くと、横にちょこんと座る。当然だが下着姿だ。
あいつらが寝てた理由が……わかった気がする。
「何故夜這いを?」
「零さんのこと好きですし。その、嫌でしたか?」
「嫌じゃないけど、まだシュエには早いな」
そもそも夜這いの意味知ってるのかこの子?
「確認するけど夜這いって意味知ってる?」
「……?」
首を傾げてわからなそうな顔をする。意味知らないんだな。
するとシュエが手からなにやら包みを出す。
「お父さんがこれを渡せば零さんが全部教えてくれるって」
シュエが渡してきたのは……伸縮性があって装着するアレ。ご丁寧に手紙まで添えてやがる。『これつけろよbyファルガ』……あのセクハラ親父、娘に何て物渡してやがる。
「……あの? 零さんこれはどういう物ですか?」
「気にするな。そして忘れろ」
ベットから出ると壁に立てておいた刀を掴む。
「出かけるんですか?」
「あーちょっとセクハラ野郎斬ってくる。シュエは部屋に戻れよ」
バタンと部屋の扉が閉められる。シュエは首を傾げたまま俺がどこに向かったのかわからない顔をしていた。
そして廊下に響く騒がしい声。
「おい神城、落ち着け! 刃物は駄目だ! って霧まで出そうとするな!」
その後、廊下に響きわたった断末魔によって全員が目を覚ますほどだった。
とまあ。これらが昨晩の大まかな出来事。あの後は目を覚ました奴に俺の部屋にいた下着姿のシュエを見られて、浮気者とか呼ばれるし。リンに至っては軽蔑の眼差しで見てたな。
弁解に数時間掛かったんだよな……
「はぁ……朝なのに疲れた」
でもしかし三人とも11歳とはいえ女の子なんだな。なんというか香り? フェロモン? そんな物を感じた。
脳内に蘇る昨晩の映像。色欲が広がりだしたので、目を閉じてそれを忘れる。
すると胸のあたりに何か小さな衝撃が当たる。
「キャ!」
衝撃と同時に聞こえた女の子の声。目を開けてその姿を見る。
「悪い、よそ見してた」
「いえいえー私こそ見てませんでしたからー」
視界に映ったのは銀色の髪。そして純白のワンピース。姿を隠すようにローブを羽織っており、フードも被っていたのか、今の衝撃で脱げている。
「……え? 歌姫のアリア?」
「あらー? あなたは昨日の男の方ですねー?」
突然の歌姫との出会い。
そして波乱の一日の始まりでもあった。




