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俺達は神【世界】を否定する  作者: 十文字もやし
四章 聖都ウィンデル編 神の歌姫
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60話 襲撃者

「あれが……『歌姫』か」


 その神々しい姿を瞳に映しながら呟くように口にした。


「なんだ? 神城、お前さんあの子が気になるのか?」


「ちょっとな……」


「ほほぅ。あの子に一目惚れでもしたか?」


 アリアの様子をジッと見ている俺をファルガはからかうように、ニヤニヤと微笑を作りながら言った。

 その一言に三人の少女。リリナ、シェリア、シュエは反応するように目を開いた。


「一目惚れって……浮気?」


 背景が黒くなるほどに、恐ろしい嫉妬のオーラを漂わせるリリナ。シェリアに至っては、少しずつ身体に炎を纏いだしている。シュエは笑顔で俺を見ている。


「オッサンの言うことを真に受けるなよ……」


 今にも攻撃しそうな三人を落ち着かせるように誤解を解く。


「というか、浮気ってなぁ。そもそもお前らと付き合ってないからな?」


 先程リリナが言っていた言葉を訂正する。年齢差があるし、もし仮に付き合ってたら完全にロリコン扱いだよ。


「やっぱり零は胸が大きい人がいいのかな……」


 リリナが自身の胸元を見下ろすように視線を下げる。視線の先に見えた地面を見て大きくため息をつく。


「だよね……あのアリアって子。胸大きいし……」


 シェリアも同じ行動を行い、ペタペタと平らな自身の胸元を両手で触っている。


「人を胸しか見てない色魔にするの止めてくれ」


 まあ二人が言うように、あの子の胸元は見事だけども。まあリンには負けるが。

 失礼な事を考えていることに気づき、振り払うように頭を振るう。


「俺は少し考え事してただけだ。特別な感情があるわけじゃない」


 あの子は自身にとって重要な存在だから。この世界の謎を知るための存在だから。

 真剣な瞳で、歌姫を見ている俺を見て。ファルガも何かを察した。


「……お前、何かあったのか?」


「詳しいことはまた話す」


 ファルガはその答えに「そうか」と言ってそれ以上聞こうとはしなかった。


「しかしアリア様は美しい方ですから、そのような感情を持つ方も不思議ではありませんよ」


「あの子に惚れてる奴がいるのか?」


「国民にはいませんが、他国の王や貴族の方は気に入る方が多いですね。よく縁談の話を聞きます。ただ、あの方自身興味が無くて……よく逃げ出すんですよね……」


 苦笑いを含ませながら、歌姫の様子を眺めているルイフ。

 どうやら縁談が持ち込まれると同時に、何か面道事を起こしている用だなあの子。その苦労がこの顔から感じ取れる。


「いい加減に身を固めてくれと、周りの方も言うんですけど……」


「本人は聞く気はないと」


「はい。好きな人としか結婚はしないと言い張ります」


 それはそれは、とても乙女心が満載な子だな。

 待てよ結婚って、この子何歳だよ? 神の子は11歳少女。流石にあの容姿で11歳はないと思うが……


「なあ歌姫って何歳なんだ?」


「アリア様は16歳。この世界で最も長寿の神の使いです」


「16歳で長寿か……」


 別の意味で驚いていた。16歳で長寿ということは、それはこの世界の神の子は16歳になる前に死んでいるということだ。10年も生きられない儚い運命だ。

 暗い瞳で彼女達、神の子一生について考えていたら、集団の中にいた歌姫アリアと目線が合う。

 すると目線が合って数秒後、アリアはニコッと笑みを作って会釈を送ってくれた。その会釈に息を呑むように心を揺さぶられる。あーなるほど、確かにこれなら他国の人間が惚れるのも納得だな。

 たかが笑顔。その笑顔が凄まじい破壊力を持っていた。特別な感情がある訳じゃないのにこの威力、納得だった。


「他の奴らが惚れるのがわかった気がする」


「わかりますか?」


「あの顔は一種の兵器だったな」


 その会話でなにを勘違いしたのか、シェリアが恐れるような顔でアリアを指さす。


「まさかあの子! 零君を攻略したの!?」


「あのウルトラ鈍感男、零を……! 恐るべし歌姫……」


「強敵出現ですね……」


 ゴクリと喉を鳴らし、ライバルを見るような闘争心に溢れる瞳するリリナとシェリア。シュエは身を反らすように驚いている。


「お前らなに言ってんだ?」


「神城、お前にはまだわからない会話だろうな……」


 三人がなにを言っているのか謎だが、まあろくでもない事は確かだから気にしないでおくか。

 するとザァと風が吹き抜ける。そしてその一瞬だけ、何かを感じ取る。


「……? 風……だよな?」


 ただの風のはずだった。だがその風に何か違和感を感じた。意図的に流れたようなその風に。

 するとシュエが突然ビクッと何かに撃たれたかのように、斜め上を見る。その瞳は何かを探すように、戦う時のような真剣な瞳。


「どうしたのシュエ? そんな怖い顔して」


 突然の行動に、シェリアが顔をのぞき込むように問う。


「……っ!!」


 シュエは目を開くと、太股に巻き付けてある黒のホルダーから小さな拳銃を取り出す。リンの持つ拳銃とは一回り小さい物で、護身用のような十だ。

 突然武器を構え出すシュエを見る周りの人々、その顔は驚きに包まれている。ルイフも驚愕の顔をしていた。

 そして構えた銃をアリアの右上辺りに向けると数発撃ち出す。そしてこの行動の後、なぜシュエが銃を撃ったのか理解する。

 撃ち出された方向に見えたのは、アリアに向かってくる銀色の反射する物体。


「金属!? いや……ナイフ?」


 その投げられたであろう金属はアリアに当たる前に、シュエの銃弾に接触。カァンという金属を響かせて弾かれる。その音は二回三回と連続で響く。

 軌道が逸れた物体は、アリアに当たることはなく地面へと金属を音を鳴らしながら転がった。その正体はやはりナイフ。


「しゅ……襲撃!?」


 アリアの後方にいた騎士のような男達が即座に守るためにアリアを囲む。そして攻撃が来た方向を見て、敵を探している。

 だが次は別方向。正反対の方向から飛んでくる。ゴォッと音を立てながら風が襲いかかる。


「まずい! 逆ですよ!!」


 ルイフがその様子を見て叫び、自身もどうにか守れないかと走り出す。取り巻きの騎士達もその攻撃を防ぐために、身を盾にするように移動する。魔法が使わないことから、間に合わないと判断したのだろうか?

 そして風が迫ってくる。風に触れた木々が木っ端微塵になるほどの威力。あれを受けたら重傷を負うのは間違いない。

 凶悪な風が迫り、周りの風が吸い込まれるのが感じるほどに近づいた瞬間。


「――っ!」


 覚悟を決めた顔をする騎士達。

 だがその風は目の前で何かに阻まれるように――消えていく。


「消えた?」


 突然の現象に、驚きの顔をする人達。

 風は消え、その代わりにアリア達を囲むように白い霧が漂っている。


「間に合ってよかった……」


「白い霧……あれはまさか、神城零さんの力ですか?」


 ルイフが漂う異質な霧を見て聞く。その問いに「ああ」とうなずき俺は答える。

 あの時、シュエが攻撃が弾いてから攻撃が一回では終わらないと判断した。そのため空中を移動させてシェルターのように霧を展開させた。


「シュエ、敵は?」


 ファルガが背中の剣に手を沿えながら訊く。


「……もういないみたい」


 目を閉じて何かを感じるようにするシュエ。

 その一言を聞いて、安堵の息を漏らすように安心するファルガ。

 俺も出していた霧を消すと、警戒を少しずつ解いていく。


「アリア様! 避難を!」


 危機が去ったため、騎士の人達はアリアを急いで安全な場所に連れて行こうとする。


「あらあら、でもーあの方達にお礼をしたいわね」


 騎士達の誘導に従わず、歩みを俺達の方へと向ける。

 そしてそれを制止するように慌てて数人の騎士が立ちふさがる。


「そんな暢気なこと言ってる場合ですか! 移動しますよ!」


「せっかちさんねーもう大丈夫よー?」


 ニコニコと笑みを崩さず、ゆったりと穏やかな口調で喋る。


「あなたは狙われてたんですよ!? もう少し怖がって下さい!」


「あらーでも彼らが守ってくれたわよ? そうだ、一緒にお茶しましょう。あなた達も一緒にするといいわー。ちょうどいいお店を見つけたの」


「見つけたのーってまた勝手に大聖堂から抜け出しましたね!?」


 両手を合わせて、提案のように言う。そしてその顔はものすごい笑顔である。

 そしてそれにツッコミを入れる騎士。


「あーもう! これだからアリア様は! いいから行きますよ、お礼なら後日でいいでしょう!」


 そう言われながら引きずられるように連れてかれる。

 毎回こんな感じなのかこの子?


「あーせっかく一緒にお茶して、限定のシフォンケーキ食べたかったのにー」


「アリア様それが目的ですよね!?」


 襲われたのになんて緊張感のない人だ……

 そのコントのような様子を見て呆然としていた。そしてアリアはブーと頬を膨らませて不満そうな顔をしながら去っていった。というか強制連行された。


「苦労がわかった気がする」


「心中の察しありがとうございます……」


 確かにあれだけ自由な人は苦労しそうだ。天真爛漫って感じだな。


「それより、アリア様をお守りいただいてありがとうございます!」


 ルイフが頭を深々と下げて礼を言う。まるで国民を代表して礼をしているかのような迫力だった。


「シュエが気づいたから俺も出来ただけだ、すごいのはシュエだよ」


 シュエの銀の髪の上にポンと手を乗せる。シュエが恥ずかしそうに、しかし少し嬉しそうな表情をしている。


「すごいねシュエ。なんでわかったの?」


「私は基本的にお父さんのサポートだから、周りの状況を把握しなきゃならないの。だから慣れてるの」


「シュエは遠くの敵の位置も把握できるほどに魔力探知が得意だからな、街では千里眼なんて言われてたな」


「でも直前まで気づけませんでした。おそらく相手はかなりの手練れです」


 先程ナイフが飛んできた場所を見つめながらそう呟くシュエ。

 戦闘経験が高いシュエが言うのだから間違いないのだろう。それにあの風の威力、そして速度。かなりの強敵だ。


「また俺の周りで何か起きてるわけか……」


 次は暗殺者か……そしてアリアを狙っている。アリアに用がある俺にとってどうにかしなくてはならない問題だな。

 なぜアリアを狙うのか。どうして神の子の命を狙うのか……疑問は尽きない。


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