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俺達は神【世界】を否定する  作者: 十文字もやし
一章 ガルム帝国編 一部 神と呼ばれる少女
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5話 白い霧

 パサッと音を立てるかのように草の生える地面へ落ちる包帯。

 そして、リリナの右手の痕に気づかれるのには時間はかからなかった。

 その右手の甲に現れる痕を見て驚く俺以外の全員。それもそのはずだ、青髪の少女が実は神の子だったのだから。


「おいカイ……まさかその子……」


 震えた声でリリナを指差す。


「ああ……こいつは驚きだなあ。まさか神の子とはな」


「まさか……この子……今軍が探してる……」


 リンも地面に倒れた状態でリリナの手の痕を見ていた。


「16番目の神の子……か」


「――くっ!」


 俺は足に力を入れてリリナを男の腕から取り返そうと走る。

 しかし現実は甘くない。わき腹に何かめり込んだと思うと、俺はそのまま木に飛ばされ叩きつけられる。

 木は衝撃で揺れると上から葉っぱが数枚落ちてくる。


「おいおい、行かせるとおもうか?」


 棒を片手でクルクルと回しながら余裕の表情で俺を見る男。


「その程度にしといてやれイオ。どうせもう動けないだろうからな」


「まあそれもそうか……」


 そして大男はリリナを抱えたまま立ち上がり、歩いていく。もう一人もついて行くように歩く。


「……お前ら……リリナをどこへ連れてくつもりだ……」


「どこへ? 決まっているだろ、軍だ」


「行方不明中の神の子を差し出したら、俺達はどんな報酬がもらえるだろうなぁ」


 ニヤニヤとしながら二人の男は笑っている。

 リリナは口を塞がれた状態で泣きながら助けを求める。


「あんた達……神の子がどういう扱いを受けるか……知って言ってるの?」


「なんだ、まだ意識があったのかお前?」


「知ってるとも。神の子は国のためにその神力を捧げるんだよ……ま、このガキがどうなろうと知ったこっちゃないけどなぁ」


 棒を背中に担ぎながら、ヘラヘラと答える男。

 俺は胸の底から怒りが湧き上がるのがわかった。そしてこいつを――消してやりたいと思った。


「あんた達って人は……その子が可哀想だとは思わないの……!?」


 倒れた状態で声を振り絞って叫ぶリン。


「思わないなぁ。他人だ……し?」


 突然二人の表情が変わる。その目線は俺へ向けられている。


「なんだお前……それになんだ、それはよぉ?」


 二人は俺の周りに漂う霧を見て警戒するようにしてる。


「白い……霧? これがこいつの、スキルなの……?」


 俺の姿が霞むほどの霧に、呆然とするように見ているリン。

 まるでどんな能力なのかわからない、そんな顔をしていた。


「なあお前……さっき力が見たいって言ってたよな? 見せてやるよ……」


 その言葉と同時に俺の周りに白い霧が量を増やし、男達にゆっくりとその白い霧が伸びていく。

 異質な光景に驚く男達。しかし見た目はただの霧。そしてすぐに余裕の表情に戻る。


「ただの目くらましかぁ? 馬鹿にすんのもいい加減にしろよ兄ちゃん!」


 棒を構え風のような速度で俺に突っ込む。


「いいのか……そのまま来て?」


「あ?」


 このまま俺に向かってくれば、こいつもあの時のように――


「――――消えるぞ?」


 男が気づいたときには手にはすでに棒は無かった。残っていたのは肘までしか残っていない右腕。

 そしてその腕から溢れ出す血。森の中に響く男の醜い断末魔。


「ガァァァァ! 腕が! 俺の腕が!」


「てめえ、何をした!」


 もう一人の男も剣を構える。しかしその剣先に霧が触れた瞬間、塵となって消えていく。そして刀身が徐々に塵となって消えていく。

 その光景を見て男の背筋が凍るようにビクッとする。 俺に殺される――そう思ったのだろう。


「なんだ……こりゃ……」


 霧に触れて短くなった刀身を見て、震えるように喋る。

 剣を地面に投げ捨て、リリナを抱えていない方の手を前に突き出す。


「ま、まさか俺が魔法を使えないとでも思ってるのか!?」


 錯乱したように声を荒げる男。さっきまでは冷静だったのに不利になったとたんこれだ。

 手からはあの時は違った魔法が発動された。男の拳がバチバチと鳴ったと思うと一直線に俺に向かって黄色の電撃が飛んでいく。


「無駄だぞ?」


 俺の手前まで迫るが纏っている霧に触れた瞬間電撃でさえも消えていく。

 魔法も物理も効かない。あらゆる物を塵に変え消滅させる。

 男は俺に勝てないと悟ると、リリナを抱えて逃げようとする。


「おい! 逃げるぞ!! こんな化け物に勝てるわけねえ!」


「まて! 俺をおいてくな!」


 しかし男達の退路は白い霧によって塞がれる。白い霧は男達にとって死の霧にでも見えているのではないだろうか?

 俺もフラフラと歩きながら男達に近寄っていく。


「なんだてめえ……許さないってのか?」


「ちょっと強いスキル持ってるからって調子に乗るなよ!」


 腕が消えて流石に俺にはもう近寄ってこない。

 そして細い男は左手でナイフを取り出す。こいつはそのナイフをリリナの顔に近づける。


「へへ……お前このガキが大事なんだろ?」


 焦ったような顔でナイフの刃先をリリナの顔に当てる。

 リリナは恐怖で目を閉じて、男の脇の中で震えていた。こいつら、逃げれないと分かったら今度は人質か……


「どうしたんだよ! さっさとこの霧を退けろ!」


「退かさなければ大事な神の子が傷つくぞ?」


 大男もその作戦に賛同したのか、俺を脅すように喋る。

 もういい……消すか。


「……そいつに俺の霧効かないんだよ……」


 リリナは何故か俺の霧の力の影響を受けない。どれだけ触れていようと塵になることはない。それが神の子だからなのかは分からない。


「じゃあ――消えろ」


 霧が発生したときのようにゆっくりと伸びるのではなく、今度は風のような勢いで男達を包むように囲む。

 男はナイフを急いで突きつけようとするが、させない。ナイフをごと腕を消し飛ばす。


「ば――化け物がぁ!」


 叫びながら消えていく細い男、一瞬の間に男の姿は霧に包まれ塵となった。


「そうだな……俺は――化け物だ」


 そしてもう一人も霧に包み込まれる。悲鳴を上げているがその声も聞こえなくなりその場から消えていた。

 どちらも躊躇することなく消し去った。リリナに危害を加えるなら容赦はしない。だから人だろうと俺は塵に変える。

 男は消えリリナは解放される。着地に失敗したようでお尻を押さえている。


「大丈夫か……リリナ?」


 俺はリリナの元へ行き頭に手を乗せる。

 リリナは泣き顔で俺を見ると、そのまま俺の腹に顔を押し込む。


「悪い……怖かっただろ?」


 顔をうずめたまま無言でうなずく。

 怖いだろうな。目の前であんな戦いを見せられて、挙句の果て刃物を突きつけられるんだから。本当に……ごめんな。


「でも……零が助けてくれるって信じてた……」


「ボコボコにされてたけどな」


 苦笑いでリリナの頭を撫でる。

 すると視界がぼやけ始める。まずい、流石に最初にボコボコにされすぎたみたいだ。


「悪いリリナ。俺……ちょっと寝るわ」


 その言葉を最後に俺は後ろにフラーと倒れ、草の上へ横たわる。


「零!?」


 俺を揺するように安否を確認するリリナ。

 止めてくれ……今は身体中が痛いから……

 そして眠るように意識が遠くなっていき、いつの間にか視界は真っ黒に変わっていた。




「ん……?」


 赤い灯りで目が覚める。視線をずらして周りを確認すると夜なのか辺りは黒一色だ。

 パチッいう音が聞こえ、ゆっくりと起き上がりながらその音が聞こえた方を見る。目の前には焚き火がしてあり、炎を挟んだ向こう側にはリンがなにやらしている。


「あ、起きた?」


 俺が起き上がっているのが見え、リンが何か筒状の入れ物を持ってこっちにやってくる。


「どう……なってるんだ?」


「男達が消えたとこまでは知ってるよね?」


「ああ……」


「貴方はあの後倒れて意識を失ったのよ。それで今まで寝てたわけ」


 なるほどそれで今夜中なわけか。

 リンは俺にはその筒状の物を渡す。中を覗き込むとなにやらスープのような物が入っている。

 一口飲んでみるとその味はコーンスープのような、コンソメスープのような……よくわからない味だ。不思議と不味くないが。


「怪我……治ってるでしょ?」


 リンも座るとその不思議なスープを飲みながら俺の身体を指す。

 そういわれてみれば身体の痛みがない。背中も腹も、どこも痛くなかった。


「その子が私とあなたを治療してくれたのよ」


 膝を見るとリリナが俺の膝を枕にするように寝ていた。

 顔には涙のあとが残っている。


「やっぱり神の子なんだねその子……」


「お前も軍に……連れてくのか?」


「連れてかないわよ。そんな残酷なこと出来るわけないじゃない」


「優しいんだな」


「褒めても何も出ないわよ」


 リンが軍に連れて行かないと分かって安心する。


「それにあなたのスキルだけど……あれは、何?」


 警戒するように俺に訊いてくる。

 そりゃ気になるよな、あんな恐ろしい能力。触れただけで塵になる霧だから。


「あれは……俺のスキルだ。俺は『消滅の霧』って呼んでる」


 俺は少し霧を出現させると、近くにあった石を消してみせる。


「今のところどんなものでも塵に出来る力だ」


「そんな恐ろしいスキル聞いた事ないわよ……」


 消えた石を見ていてブルッと震えるリン。

 俺もまだこの力の本質がわからないんだよな。ただ触れたものを塵にするしか分からない。


「まって……でもこの子、消えてなかったわよね?」


「それが謎なんだよ。リリナは霧の影響を受けないんだ」


 リリナだけは例外で霧にどれだけ触れていようと消えることはない。理由は神の子だからとしか思えないが……


「神の子は特殊なのかもね……」


 そして暫くの沈黙が流れる。パチパチと焚き火から鳴る音が静かに夜の森に響く。


「……悪かったな。こんなことに巻き込んじまって」


「気にしなくていいわよ。イレギュラーなんてよくあることだし」


「他の人に入れてもらえないか頼んでみるよ。今回はありがとう」


 こんなことになってしまっては、当然ギルドに入れてもらうことなんて出来ないだろう。

 俺はため息をつくと、木々の間から見える夜空を見上げる。


「何言ってるの? 合格よ、あなた達」


「は?」


 その言葉に俺はおもわず首をかしげてしまう。

 正気かこいつ、俺は人殺しだし、リリナは神の子だぞ?


「そんな強力なスキル持ってるし。この子の回復魔法は凄腕だし……断る理由がないんだけど?」


 確かに考えようによってはそうなるが……いいのかそれで?


「それにちょうど回復魔法使える子が欲しかったのよーあなたは……おまけよ、この子の」


「俺はおまけかよ……」


「冗談よーまああなたの力があれば仕事の幅は広がるから便利ね」


「まあ……とにかく、俺達はお前のギルドに入ってもいいのか?」


「うん。リーダの私が許可するわ!」


「リーダーねぇ……お前一人なんだろ実は?」


 俺の一言に図星だったのか目をそらしながら焦って喋る。


「こ――これから増えるのよ!」


「そういうことにしとくよ。とりあえず改めてよろしく」


「もう……まあ、よろしくね」


 色々とハプニングはあったがなんとか俺達はリンのギルドに入ることが出来た。

 これでお金の問題はなんとかなったわけか。

最近、読者の皆さんは一体どんな話が読みたいのかな?と思います(シリアス? イチャコラ? バトル? ほのぼの系?)

もしよろしかったら教えて下さい。今後の参考にもなるので……

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