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俺達は神【世界】を否定する  作者: 十文字もやし
三章 商業国ストリア編 神を作ろうとする者達
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58話 同類・真実を知るために

「まさかあれだけしても起きないとは……ある意味すごいね君は」


「だからって普通落書きするか!?」


 部屋に響く怒鳴り声。怒る理由は、俺が寝ている間にエルヴィーナが顔に落書きしたからだ。

 特に額に『変態』と書いたのは許せない。


「いやー寝ている顔にはつい、落書きしたくなるだろう」


「ならねえよ、あんたいい歳して子供かよ?」


「童心に帰りたい時があるんだよ」


「帰るなら一人のときにしてくれ」


「おやおや辛い事を言うね、付き合ってくれてもいいんじゃないか?」


「願い下げだよ……」


 顔をタオルで拭きながらため息を吐く。

 これ中々落ちないな……こいつ何で書きやがった? 油性か?


「さて空気が和んだところで……」


「俺の心は怒りで満ち溢れてるがな」


「コレの解析結果を君に話そうか」


 コトンと音を立てて机に置かれた黄色い玉。相変わらず曇ったように光っている、なんだか寂しそうな感じで。


「結論を言うと、何かはわからないね。ただ――中には膨大な神力が宿っている」


 膨大な神力が宿っているか……でもあの時のミーシャは神力は枯渇状態。それだけの神力があるのか?

 この世界では神の子は謎多き存在でもある。だからこんなこともあるのか……?


「これだけの神力をよくこんな小さな物に凝縮しているよ。そうだね例えるなら……コレの力で国一つは軽々と滅ぼせるよ」


「マジかよ」


 驚愕の神力を保有している玉。本当にこれが何なのか、わけがわからなくなってきたな。


「それと本当に意思があるみたいだね、ほらっ」


 黄色い玉を投げ渡す。それを受け取ると、シルファスから受け取った時の様に優しく光りだす。


「君が持っていると、嬉しそうに光るだろう? 君から離れると……まるで悲しそうにしている」


「確かにな……」


「結果は異常な量の神力を宿してるぐらいだ。それをどうするかは、君次第さ」


 俺次第か……どうすればいいかなんて検討もつかないけどな。でも、これには何か意味はある、あいつが残した物なら尚更だ。


「ありがとう、それだけでもありがたいよ」


 ケースに入れると、懐に大事にしまう。そして立ち上がると、刀やコートを着だす。


「そうだ、子供達を明日にでもここに連れてくるといい。どうせ君達の部屋では限界だろう?」


 確かにあれだけの人数は流石に無理がある。一週間の間窮屈な場所にいるのも可哀想だ。

 その提案に甘えさせてもらうことにする。


「何から何まで悪いな」


「いやぁ、私も一人では寂しいからね。子供がいたほうが騒がしくていいんだよ」


「それじゃあ明日にでも連れてくるよ」


 そして俺は玄関へ向かって歩き出すと、背後から声が聞こえる。


「帰って少女達に囲まれて寝るといい。きっと抱き心地は最高だぞ」


「いや普通に一人で寝るからな」


 この人絶対に俺を玩具としか見てないな。もうこれは確信に変わった。

 苦笑いをしながらため息交じりで答える。そしてドアノブを引きその場を後にする。



 外はすでに暗くなりだしていた。赤色に染まる空も、徐々に黒に染まりだしている。

 無言で歩き、宿へと目指す。そんな時、スクード達と出会ったあの橋までやってきたときだ。


「やあ少年、一人とは珍しいね」


 もはや聞きなれた声。そしてその登場の仕方に驚く事もなく、橋の水面へと視線を下ろす。

 後ろには赤白衣を着た男性。いつの間にとは、もう感じなかった。


「シルファスか……」


 面倒くさそうに振り返る、そこにはやはりシルファス。そして横にいる少女メリル。


「おや、驚かないのかね?」


「もう慣れたからな」


「それは駄目だな少年、反応が楽しくないぞ」


 残念そうな表情をするシルファス。なんだかこいつとよく会うな……いや、こいつが接触してきているだけか。

 すると次の瞬間だ、シルファスの口から耳を疑う言葉出てきた。


「ふむ。今日は『月』が綺麗だな少年」


「気持ち悪いこと言うなよ……」


 ……待て、今『月』って言ったか? なんで異世界なのに月が存在する?


「おいシルファス。お前今なんて……」


「ん? 『月』が綺麗だと言っただけだが?」


 間違いない、こいつは『月』だと明言した。どうして俺の世界の言葉が存在する?

 上空に浮かぶ二つの惑星、それのどちらが月なのかは知らないが……

 戸惑う俺の様子を眺めながら、ニヤリと笑みを作るシルファス。


「不思議かね? どうして月と呼ぶのかが?」


「…………」


「何故――――少年の世界の言葉が存在するのかが」


「――っ!?」


 その言葉にまるで電気でも発せられていたのではないかと思うほど、身体に電撃が走るように驚いた。

 どうしてシルファスが俺を異世界の人間だと知っている? いや監視しているなら、会話で聞いたからか? でも月なんて単語は口にしていない。


「なんで知ってる? いつから気づいていた?」


「最近だと答えておこう」


 シルファスは不敵な笑みを崩すことなく、続けて喋る。


「私も半信半疑だったんだがね、少年には不可解な点が多い」


 俺の元へ歩きながら、淡々とそれについて説明する。


「まずは人とは思えないスキルだ、いやスキルなのかも不思議だがね。神力を消す、そしてあの時のような不可解な現象」


 あの時、アルマ達を救った時と俺の傷が癒えたことを言っているのだろう。


「とても人とは思えない力だ。神の子の力でも無理だと言ってもいい――だが君のソレは現実にその現象を起こしている」


 まるで俺が認めない事象は全て元通りになったとアルマは言っていた。それがこの『消滅の霧』の力の本質なのか……いやそもそも消滅なのかも怪しいところだ。


「そして極め付けに、君には魔力が無い。これもありえないのだよ」


 この世界の人間は魔力があると言っていた。俺はこの世界の人間ではないから魔力が無い。

 それを不思議に思うのも無理は無いだろう。


「そこで私は仮説を立てた。魔力が無いということはこの世界の人間ではない。この世界の者でないなら……あれだけの強力な力を持つことも可能なのではないかと……」


 そして答えが当たった言いたげな顔で、俺を見る。


「どうやら私の仮説は当たっていたようだ」


「俺が異世界の人間だと知ってどうする?」


「別に? ただ――興味がさらに沸いただけだよ」


 そしてシルファスが片手を差し出す。まるで握手を求めるかのように……


「さて本題に移ろうか……少年私と共に来い、君はそんなところいるべき人間ではない」


「……断る」


「予想通りの返答だな少年。だが君はアレを見て何を感じたかね?」


 そのアレという単語には一つでないとわかった。

 子供達の扱い、研究に使われた無残な死体、死を待つだけの絶望に満ちた目。その光景を思い出すと……狂いそうになる。


「絶望しただろう? あれが君に対する世界の答えだ」


 まるで心を覗くようにシルファスが語る。


「君個人がどれだけ必死になろうと、世界の答えはいつも残酷だ。君は確かに立派だ、だが君はその手で――全てを救えたか?」


 グッと歯を食いしばり、自然と拳に力が入った。

 悔しい、だが何も反論が出来なかった。実際にシルファスが言うように俺の心は絶望していたんだ。この無情な現実に。


「無理だろう? 君がどれだけ子供達を、世界を変えようとしても――無駄なのだよ」


「無駄じゃない! 現実に救われた子だっているんだ!」


「フフフ、それは一時の救いだ少年。所詮偽りでしかないのだよ」


「何が言いたい……」


「君はまだ……世界を知らないから言えるのだよ。世界に(あらが)う、愚かな少年よ」


 明確な答えを喋らないシルファス。こいつは知っているのか? 世界を、真実を。


「始祖……鍵……君も少しづつこの世界の真実へと近づいている……」


「やっぱり知ってるのか……」


「ああ、彼女が始祖だと知ってるとも。スクード君が知る前からね」


「本当にお前は何者だ……?」


「さて? 君にはどう見えるかな?」


 俺にはシルファスは……狂気に満ちた研究者としか見えない。そして心は闇に染まり海のように深い……そう感じる。


「少年、今一度言おう。私と共に来たまえ」


「何故……俺なんだ?」


「君のその力と、私の頭脳。二つが合わされば世界は変えられるのだよ。子供達も助かるぞ? 神の子の運命だって変えられるぞ?」


「確かに……あんたの力があるなら可能なのかもしれない……でもお断りだ――俺はあんたとは違う。まだ絶望していない」


「予想通りでいいなぁ少年。やはり君にはまだまだ絶望が足りない」


 そして俺の目をジッと見ると、再び口を開ける。


「少年、女神に会うといい」


「女神……どうして?」


「聖都に行くのだろう? そこで聞くといいだろう、少年の疑問を」


 ストリアに来て、スクードと出会い疑問が増えた。

 それが聖都の女神に聞けばわかるのか?


「君もそろそろ疑問に感じる頃だろう? ――『神の子』とは何かを」


 シルファスの言うように、神の子が何故この世界に存在するのかは、疑問に思っていた。

 神の子というシステムが無ければ子供達も、リリナ達もこんな目に遭わないからだ。


「女神の一人、『歌姫』に問うといい。そしてさらに絶望するといいだろう」


 シルファスは俺の横へ来ると、ボソッと呟く。


「世界の真実を知ったとき――君は必ず絶望し、光を喰われる」


 この言葉はとても重かった。身体に謎の荷重が圧し掛かるかのように、重く、暗かった。


「少年は私と同じだ、だから私と同じ――――復讐者へと変わる。これは予言ではない、確信だ」


 シルファスも同じ立場だったのか?

 復讐者、シルファスは世界へと復讐しているのだろうか? 俺もいずれ……こいつと同じ――復讐者へと変わるのか?


「俺は……絶対にお前にならない……!」


「強気だな少年、ではまた会おう。異世界の謎多き少年よ」


 風を感じて横を見る。だがそこにはシルファスの姿はない。見えるのは暗くなり夜の町並みだけだ。


「絶対に……絶望しない。あいつらを助けるって誓ったんだ」


 決意を確かめるように呟く。

 世界の真実。始祖、鍵、神の子。知らなくてはいけないことが出来た。

 始祖とは何か、鍵とは何か。そして――神の子とはなんなのか。何故存在しているのか……

 そしてそれ以上に……俺の中に一つの疑問が浮かび上がり始めた。

 俺の世界とこの世界『レイスブルー』の共通点が、単なる偶然とはとても思えなかった、どうしてここまで似ているのか? まだその理由はわからない……


結構長くなりましたが、これにてストリア編終了となります。

中身が結構暗く、重い内容ですいません。

次章は『聖都編』です。多分明るい話になる…………いやならないか。

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