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俺達は神【世界】を否定する  作者: 十文字もやし
三章 商業国ストリア編 神を作ろうとする者達
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53話 外道

 豪華な椅子と机。装飾の入った赤い絨毯。壁に掛けられる銀や金色の拳銃。

 棚には宝石のような物が入っており大事そうにケースに入れて保管されている。

 そんな一室にいる二人の男性。一人は執事服を着ていて藍色の髪。右腕は無く、腕からは人の肌ではなく緋色の物体が覗いている。そしてもう一人は薄緑色のスーツを着た男。鼻の下に白いひげを生やし、丸い眼鏡を着けている。年上の貫禄がある感じだ。


「どうだ? 奴らは?」


「彼ではどうすることも出来ないと思ったので……放置してきました」


「そうか、まああの餓鬼の性格なら無様に殺されるだろうな」


「そうですねー彼は優しいですから」


「優しい? ハッ愚かだな、そんな感情はクソの役にもたたん物だ」


 執事の男性が喋ったことを鼻で笑い。あざ笑うかのように喋る男。


「手厳しいのですね社長。優しさはいらないと?」


「優しさなど無意味だ。そんな物に意味は無い、優しさは馬鹿だけが持つ愚かな感情だ。いいかスクード、この世で信頼出来るのは、金と己のみだ」


 その様子は本当に自分しか信じていない。そんな様子をかもし出していた。


「つまり――私も信頼されていないと?」


「当然だ。ワシは誰も信頼などしたことはない、信じるのは自分自身だ」


「なるほど、社長の言葉は勉強になりますね」


 納得するように相槌を入れるスクードと呼ばれる男性。


「自身の力を他人の為に使おうとする事自体、愚かなのだがな」


 男はその餓鬼と呼んでいる人物を思い出すように喋る。


「ですが社長。思いの力は時として驚異的な力を発揮しますよ? あの少年はそれを出していました、それでも意味はないと?」


「そんなくだらない物、それを上回る力で捻じ伏せればいいだけだ」


「なるほど、それが社長の考えですか」


 二人で話していると、慌しい足音が聞こえる。

 時間帯は深夜。この建物内に人は少なく、さらにこの時間帯、付近には人がいることはない。

 そして考える間もなく、部屋の扉は勢いよく飛ぶように開けられた。







 バァンと音を立てて勢いよく扉を開けた。

 目の前に広がるのは、今まで殺風景な部屋や通路とは違い木造の立派な部屋。壁には装飾が施され、ガラスのケースには何やら光る物が飾られている。

 ここが特別な部屋。おそらく社長室か何かなのかは一目瞭然だ。


「……!!」


「おや? やはり……生きてましたか」


 中から聞こえる冷静な男の声。

 扉の先には、カイダールとスクードがおり俺が入ってきたことに心底驚いている顔だ。だがスクードだけはこの結果を想定したようで、特に驚く素振りを見せていない。


「貴様……! 生きていたのか!?」


 木で作られた立派な机に腕を置いた状態で喋るカイダール。


「アルマが俺を助けてくれたおかげでな」


「あいつが? 馬鹿な、奴は力を制限しているはずだ」


 カイダールの疑問に気づくように、スクードがある答えを口に出す。


「なるほど、神獣化ですか。確かに彼女の力を使えば……数分は活動可能ですね。ですがそれをしたという事は、アルマ君はもう生きていないでしょう」


「チッ……貴重な商品が使えなくなったか」


 スクードの考察結果に舌打ちするように喋るカイダール。まだ商品扱いするか……

 だけど残念だったな、アルマは……あいつらは生きている。


「勝手に殺すなよ……あいつは生きてるぜ? それに――お前達が実験に使った子もな」


「冗談が下手ですね君は。完全な神獣形態になった子は元に戻れない、それにあの子達はどう足掻いても崩壊する運命でしたよ?」


「信じられないか? ならお前らの目で直接見てみろ」


 扉の影から現れたのはアルマと二人の少女。

 アルマの後ろに隠れるようにしがみ付いて、カイダールを憎悪の目で睨みつけている。


「……なっ!」


 そのありえない光景に自身の目を疑うカイダール。相変わらずスクードは冷静な目で見据えている。だが顔には現れなくても、内心驚愕しているのは感じ取れる。


「馬鹿な……この餓鬼共どうして!?」


 目が飛び出すくらいに目を見開いて、二人の少女を凝視する。

 ほぼ獣に成り果てたはずの少女が、元の姿に戻っているのだから。全て元通り、まるで夢でも見ているのではないかと疑うほどだろう。


「零さんが助けてくれました」


「この愚か者が……?」


「もう消えるはずの私達を……元に戻してくれたんです」


 ありえないアルマの証言に、頭を混乱させたように瞳を揺らす。そしてその発言に眉をピクッと動かすスクード。


「元に……戻す? 時間を巻き戻したとでも言いたいのかな?」


「これ以上は言うつもりはねえよ。ただこいつらはもう消えない、それだけだ」


 興味深そうに問うスクードに言い放つ。


「時を戻すだと? 神の子でもないただの人間に、そんな力があるわけがなかろう!」


 解せないと言いたげに叫ぶカイダール。


「なあカイダール」


 目の前にいるカイダールにぼそりと呟く。

 もうこいつらと話す事なんか無い。今俺は猛烈にこいつらを消したくてたまらない。


「俺が此処に来た理由はわかってるよな?」


 ゾクリと鳥肌が立つほどに凍てつく一言。まるで死刑宣告のように。

 まあ、今からすることは死刑みたいなもんだけどな。


「お前は子供達の命を弄んだ……! たとえ世界が許そうと、俺は貴様を許さない、必ず消すと決めた」


 ゆっくりと刀を引き抜く。ギラリと光るその刀身がカイダールの顔を映す。

 だがその表情は怯える事もなく、まだ自分が有利だと思っている顔だった。そしてその理由を知る事になる。


「愚かな餓鬼が。貴様は自分が有利だとでも思っているのか?」


 カイダールが取り出したのは、スクードが持っていたスマホのような機械。


「スクードに勝てるから大丈夫だと思ったか? 甘いぞ餓鬼、甘すぎる……まだまだ貴様は餓鬼だ」


「何が言いたい?」


 人を馬鹿にしたような言い草。その言葉に苛立ちを覚える。

 そしてその問いに答えるようにスクードが代わりに淡々と答える。


「それは起爆装置ですよ」


「起爆装置……お前らも死ぬ気か?」


「馬鹿か貴様? これはな貴様が大事にしていた――16番目の餓鬼を始末する装置だ」


 その言葉に戦慄するように、頭の中が真っ白になる。

 16番目、リリナの事だ。起爆装置ということはこいつがあれを作動させたら最後、リリナがいる場所は爆破される。


「絶望したか? 貴様が有利になることは絶対にない。スクードがあの餓鬼を連れてきた時にな、万が一のことを考え人質に使えるようにしといて正解だったようだ」


 あまりにも非道な言葉に、アルマが俺の心を代弁するかのように怒りの叫びを上げる。


「あなたって人は! 一体命をなんだと思ってるんですか!?」


「ゴミの命など商品程度の価値しかないわ。お前ら孤児もな、国の足を引きずるだけのゴミと一緒だ。ワシはそれに存在価値を与えているにすぎない」


 もはや命をゴミと宣言したカイダール。心底こいつが外道だと、生きる価値の無い屑だと感じた。

 そしてもはや人の命に存在価値を与えるなどと、馬鹿げたことを言う。こいつは……自分が神だと言いたいのか? 生死を与える存在だとでも言っているのか?


「外道が……!!」


「なんとでも言え。どう足掻こうと、お前達がワシに勝つ事は――無理だ」


 アルマもギリッと歯を食いしばるように睨む、後ろの少女達も同様だ。

 最後の最後で、まさかこんな手を打ってくるとは予想外だった。神の子は重要な存在、簡単に人質にとるとは考えていなかった俺の甘さが招いたミスだ。


「さて、特別だ。ワシの手で始末してやろう」


 机から立ち上がり、壁に掛けてある銀色の拳銃を手に取る。

 そして銃口を俺の頭へと向ける。


「防ごうなどと思うなよ? 防いだ瞬間に、神の子は死ぬぞ?」


「……くっ!!」


「帝国でテロを起こした名高いゼロをこの手で仕留めれる機会が訪れるとはな……長生きはするものだ」


 そしてその指に力が入りトリガーが動こうとする。

 防いだらリリナは死ぬ。こいつがハッタリを言っている可能性があるが、おそらく可能性は〇だ。こいつは目的のためなら、神の子すら平気で殺すそういう人間だ。

 額に汗が流れ焦りが表れる。


「ではあの世で会おうか、ゼロ」


 アルマ達が俺の名を叫ぶ中、ドンという低い銃声が部屋に響いた。


「――ゴホッ!」


 吐き出された血が床を赤く濡らす。そして胸が赤く染まり服を汚していく。

 そして鬼のような形相で、目をギラッとさせながら睨みつける。


「……?」


 なんで俺は撃たれていないんだ? なんで俺ではなくカイダールが撃たれている?


「なぜだ……!?」


 あの銃声はカイダールが構えていた銃から発した音じゃなかった。

 カイダールの持っていた銃は床に落ちている。じゃあどこから?俺は視線を横にいるスクードへと向ける。

 そこには、黒と銀のリボルバーを構えているスクード。その銃口は俺ではなく何故かカイダール。一体何が起きている?


「何故ワシを撃った――スクード!!」


 その問いにスクードは見下したような、下劣なものを見るような目をしていた。

 さっきまでの忠誠を誓ったような、目ではなく。ゴミを見るような冷血な目で。


「何故撃った? そうですねー役目が終わったからですよ社長。いや、カイダールさん」


 スクードはニッコリと笑うと、もう一度トリガーを引いた。

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