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俺達は神【世界】を否定する  作者: 十文字もやし
三章 商業国ストリア編 神を作ろうとする者達
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47話 シルファス再来

 空が暗く黒い背景の窓を背に、シルファスは立っている。

 どうしてだ、どうしてこいつがここにいる? 瞳に映る赤白衣を羽織るシルファスを睨みながるそう心で思う。


「…………」


 両者に間に沈黙が発生し、ピリピリした緊張感が部屋を支配する。

 そんな気まずい雰囲気の中、アルマは何がなんだかさっぱりわからない様子で、睨み合う二人を交互に見ている。まあ睨んでいるのは俺だけだが。


「何故お前がここにいる?」


「何故? ここと外の空間を一時的に繋げただけだよ」


「そうじゃない! なんでお前がここに来たのかだ!」


 どうしてシルファスがここに現れたのか。こいつと俺は敵対関係にある。あのガルム帝国での出来事は、忘れたことはない。

 ギリッと口を噛み締める。いつでも戦えるように臨戦態勢をとり、霧を発生させる準備もする。その時、横にいた少女が姿を消す。


「――動かないで」


 突然聞こえた少女の声。目の前には黒髪が揺らいでおり、俺の首元にナイフを突きつけている。

 一瞬の出来事にアルマは目を疑うように驚く。俺は額から一筋の汗を流しながら、その首もとのナイフを見る。


「待ちなさいメリル」


「でもお父様、こいつ攻撃しようとしてたよ?」


「いいから来なさい。彼には死んでもらっては困るからね」


 メリルはムスッと頬を膨らませると、シルファスの指示に従い首からナイフを離す。そしてさっきと同じで一瞬で目の前から消えると、いつの間にかシルファスの横へと移動していた。

 首元からナイフが離れると、俺は安心したのか汗がドッと吹き出る。シルファスの言葉が無ければ死んでいただろう。彼女も神の子、霧で一瞬で消せないからだ。


「メリルが失礼してしまったね。、すまない。さて……私がここに来た理由が知りたいのかな?」


「当然だ、俺とお前は敵対関係のはずだからな」


「敵か……悲しいねぇ、私は少年と友のような関係だと思っていたのだがね」


「俺はお前と友達だなんて一瞬たりとも思ったことはない」


「まあいい、少年が私を敵と思っても私は君を友と思うだけだ」


 不敵な笑みを浮かべながらそう喋る。

 こいつが何を考えているのか全く読めない。敵である俺を友と言ったり、興味が湧くなど言ったり。謎めいた奴だと感じる。

 その時、アルマが俺達の会話を聞いていて疑問に思ったのか口を挟む。


「あの……この方は零さんの知り合いですか?」


「こいつは前にガルム帝国で会った敵だ。神の子に関する研究をしているな」


 両者の間で何かあったのかを察したのか、それ以上は聞いてこなかった。

 するとシルファスは喋ったアルマを目線をずらし、見ると何か納得したような反応をする。


「しかし少年、君はすごいな。この短期間に神の子を二人も確保するだけでなく、あの計画の被験者まで手中に収めるとは」


「そんなつもりはねえよ、ただ俺は被害者の子供達を助けるだけだ」


「助けるねえ、君はいつも立派なことを言うな少年。あの時も、シュトラスでの時も君は勇敢で立派だ」


「シュトラス? お前なんで……その事を知ってる?」


「言っただろう少年。私は君に興味があると、君の動きは24時間監視しているようなものだよ? 私は君に好意があると言ってもいいだろう」


 ゾゾゾっと悪寒がする。止めてくれこんな奴に好意なんて持たれたくないよ。意味合いとしてはLOVEではなくLIKEなんだろうけど、気味が悪い。


「さて少年。私がここに来た理由だがね、君に協力をしようと思ったのだよ」


「協力だと?」


 こいつ何を言ってるんだ? 俺に協力する? 敵である奴に協力してなんになる。

 シルファスの意図が全く掴めず、頭が混乱する。


「わからないのだろう? カイダール社の実験施設が。私はその居場所を……特定済みだ」


 そしてニヤッと不気味に笑いながら続けて話す。


「少年、私がカイダール社への潜入と脱出を手助けしようじゃないか」


 本当にこいつは何を言っている? シルファス側には何のメリットも無い。俺だけが得する内容だ。

 こいつは何か企んでいるに違いない、そう考える。


「何を企んでいる?」


「いや、特に?」


「嘘をつけ! これはお前に何のメリットも無い内容だ、そんなことをするわけがないだろう!」


「メリットが無い? 何を言っているんだ少年、メリットはあるさ」


 シルファスは俺をその不気味な顔で見る。その目は好奇心に溢れる少年のような目つきで今すぐにでも遊びたい、調べたいという感じだ。


「言っただろう君に興味があると。それに私は少年の力を見たいのだよ、君があれを見てどう思うのか、どうするのか……いやあ、考えるだけでもワクワクするねえ」


「どうしてお前は、俺にそこまで固執する必要がある」


 確かに能力が珍しいというのはあるが、ただそれだけだ。それだけでここまで付きまとうのは変だ。


「気になるかね? そうだね、君と私は同類……とでも言っておこうか、類は友を呼ぶと言うだろ?」


「お前と同類? こっちから願い下げだな」


「手厳しいな少年。だが私は君を同類だと思っている。だからこそ、少年の歩む道を見てみたいのだよ」


 シルファスと同類か、こいつと似てるとこなんて何一つないんだけどな。だがこいつと一緒にされるのは嫌だ。


「……それで、どうするかね?」


 思考をフル回転させ、現状の状況を整理する。

 シルファスは潜入の協力をするという。そしてその理由は興味があるというだけ。こいつが嘘をついている可能性は……微妙なところだ、だがこいつの目からは偽りの感じられない。それに……はっきり言って俺達では居場所を掴めていない、そのためシルファスの情報は欲しいところだ。

 敵の手を借りたいと思う。まさに藁にすがる気持ちだ。


「なに考えてるかわからないが……お前の企みに騙されてやるよ」


「ふむ、いい判断だ少年」


 了承の言葉を聞くと嬉しそうな顔をしてそう喋る。俺の言葉を聞いていたアルマは困惑したように見ていた。

 敵であると言ったのにもかかわらず、その敵の誘いに乗るのだから当たり前だろう。


「だが少年、一つ条件がある。潜入と脱出は協力しよう、だが行くのは――――君一人のみだ」


「より俺を観察するためか?」


「正解だ、君の力を存分に発揮し、それを見るには君を一人にするのがいいのだよ」


「……わかった、一人で行く」


 すると俺達の会話の中にアルマが大きな声で割るように入ってくる。


「あの――シルファスさん!」


「ん? 何かな少女よ」


「私も一緒に連れて行ってください!」


 一人で行くという条件の中、アルマは着いていくと言った。当然そんなことをこいつが許すわけが無いだろう。

 シルファスは断るために口を開こうとする。だがその前にアルマが続けて叫ぶ。


「私は――実験のファーストサンプルです!」


「ほう、君が完成形に近い被験者だったのか」


 ファーストサンプルという言葉に興味深そうに見るシルファス。


「いいだろう、君の同行を許可しよう」


「本当ですか? ありがとうございます!」


「あの実験には興味は無いんだが……君が同行することで、少年が何か面白いことをしてくれそうでね……」


 意味がありそうで無さそうな、そんな不思議な事を最後に呟く。

 ということは行くのは俺とアルマの二人だけだ。また一人で解決することになるけど……俺としてもあいつとの決着もあるし、何より一秒でも早くリリナを助けたい。


「では少年の気が変わらないうちに、行こうかね? メリル、頼むよ」


「はいお父様……ゲート」


 メリルはシルファスに言われてそう呟く。

 その瞬間俺達の間の空間がまるで曲がるように歪むと、徐々に黒くなっていき、あの中が歪曲する紫色の空間が出来上がる。


「さあ中に入りたまえ、あとはメリルが勝手に送ってくれる」


「こ、この中入るんですか……?」


「これは結構怖いな……」


 気味の悪い空間に入るのを躊躇する俺達。そんな反応を見てクスクス笑うシルファス。


「新鮮な反応だな少年。いやあ見ていて飽きないな君は」


「そりゃどうも、さて……覚悟決めて行くか」


 ベットから起き上がり、壁にかけてあるコートを羽織り、刀を取る。アルマも気合を入れるように両手をグッと握る。

 するとシルファスが突然俺の元へ歩き出す。そして赤い白衣のポケットに手を入れると何かを取り出す。


「そうだ少年、これを渡しておこう」


 軽く投げ渡される。それは宝石のような丸く黄色い鉱石。透明な正方形のケースに保存され、ピンポン玉ほどの大きさだ。

 それを受け取るとその黄色い鉱石は、ぼんやりと光りだす。まるで喜んでいるみたいだ。


「なんだ……これ?」


「そうだね……それはミーシャ君からの贈り物とでも言っておこうか」


 ミーシャという名前に反応し、シルファスを勢いよく見る。


「私が持っている物ではない、まあミーシャ君の意思みたいな物だ。私より少年のほうがいいみたいだからね」


 やさしく光る玉を見てそう呟く。まるで本当に意思があるみたいに光っている。


「なんでお前が持ってるんだ?」


「少年があの施設を消し去ったあとにね、ミーシャ君が消えた場所に何か光る物が落ちていたのが気になって拾ったのだよ」


 あの時そんな物があったか? いやあの時は感情が暴走していたし、そんな余裕は無かったか。


「まあ、それが何なのかは……少年が調べたまえ」


 俺は受け取った黄色い玉を懐に大事にしまった。不思議とこの玉は暖かく、心が落ち着くみたいだ。

 そして俺は目の前に渦巻く奇妙な空間を数秒眺めると、目を閉じながらその中へと駆け出す。それに続きアルマも走る。


「さて少年見せてくれ――君の可能性を」


 中に入る直前、シルファスはそう言い放った。それが何を意味しているのか……まだ俺にはわからない。

 そして俺達が入り終えると、渦巻く奇妙な空間はゆっくりと消えていった。

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