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俺達は神【世界】を否定する  作者: 十文字もやし
三章 商業国ストリア編 神を作ろうとする者達
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46話 敗北者。そしてとある来訪者


「…………ここは……」


 目覚めて視界に最初に入ったのは何の変哲も無い白い天井。ここは宿の部屋だ。

 上半身を起して、一体何故ここにいるのか思い出す。すると扉が開くを音が聞こえる。


「あ、起きたのね」


 頭のポニーテールを揺らしながら扉を閉めると、リンは俺の横の誰もいないベットへ腰掛ける。

 なんで俺はここにいる? その時ハッと、あることを思い出した。そうだ、リリナが!


「なあ! リリナは!? あいつはどうした!!」


 答えを催促するように荒々しく叫ぶ。その錯乱する様子を見てリンが落ち着かせるように、両手で押さえ込むように俺を止める。


「聞きたいことはわかってるから落ち着きなさい!」


「……悪い」


 表情を落ち着かせる。だが心の中は噴火しかけの火山のように焦っている状態だ。

 リンは一息つくと、事の経由を順を追って話し出す。


「あの後、ファルガさんとシュエちゃんがあなた達を運んできたのよ」


 叫んだ後俺は意識を失ったんだったな。それで無事だったオッサンとシュエが俺達3人をここまで運んでくれたのか。

 あの魔物化してしまった少女も無事だとわかり、ホッと安心する。


「本当にびっくりしたわ、あなたはボロボロ、シェリアちゃんは瀕死の重傷、挙句の果てには魔物みたいな女の子までおまけでいるんだから。それに何より……あなたが負けたのが信じられなかったわ」


 リンは俺の力の恐ろしさを目の当たりにしている。施設を一瞬で消滅させるほどの力なのに、敗北したのが信じられないのだろう。

 だが俺は負けた。あいつの圧倒的な力の前で、俺だけじゃないシェリアもだ。


「なあ……シェリアは……?」


「大丈夫よ、一命は取り留めたわ」


 それを聞いて安心する。体を貫かれたんだ、さらにあの出血量なら死んでもおかしくない。

 するとリンは少し異質な感じでゆっくりと喋りだす。


「普通なら……死んでもおかしくなかったのよあの子。でもね、あの子の傷口が……まるで巻き戻されるみたいに少しずつ直ってくのよ……」


「神の子だからか……?」


「多分ね。私達とは存在が違うんだって……思ったわ。この世界の人が化け物だって言うのもわかるわ」


 化け物……俺はリンの言葉に反論が出来なかった。だってリンの顔は悲しそうな目をしていたから。

 それにそんな光景を見てしまったら、しょうがないのだろう。それがこの世界の一般の認識だ。リンは別に間違ったことを言ったわけじゃない。


「それでも、あの子は私達と同じよ。ちょっと特殊なだけだから」


 この世界の人がリンみたいな思考の持ち主だったら、あの子達も化け物扱いされなかったんだろうな。


「それより、シェリアちゃんより私はあなたが不思議だったわよ」


「なんで?」


「あなたに治癒魔法で治療しようとしたんだけど……魔法が効かないのよ。いや、受け付けないって感じかしら」


「でも……リリナの魔法なら治癒したぞ?」


「そこなのよ。あの子の魔法はよくても、なんで私や他の人が使う魔法は駄目なのか……」


 神力は受け付けているのか? だとすると辻褄が合うんだが……あいにくシェリアは動けないし、リリナもいない今では確かめようがないな。

 俺は上半身に巻かれている包帯を見下ろす。腹部にはプロテクターのようなものが装着されており、傷口が開かないように固定されている。


「あと、自然回復力って言うのかしら? あなたの傷の治りが異常に早いのよ。シェリアちゃんみたいに神の子でもないのに。まあ流石に二日間、目を覚まさなかったけどね」


 そう言われてみれば、体が少しだが軽い気がする。腹部の傷もそこまで痛まない。


「まあ、深く考えても仕方ないわ。それともう一人、あの魔物の女の子ことだけどね」


「あの子も大丈夫なのか?」


「まあ一応ね。今はファルガさんが看てるわ。でも……もうあの子は人には戻れそうにないわ」


「元は人だって……知ってるのか?」


「アルマちゃんから聞いたの。それで、もうあの状態になったら人には戻れないって言ってたわ」


 少女の姿を見たのか、悲しそうな目で告げた。

 もう人には戻れない……その残酷な現実にショックを受ける。どうして……無関係な子があんな目に遭うのか。


「本当に酷い実験よ、子供達を使ってこんなことするなんて。あの子達にはなんの罪も無い、あの子達は大人の玩具にしかされていないわ」


 だからこそ、俺達がその非道な実験を止めなくてはいけない。


「だから一秒でも早く終わらせるんだ……!」


 身体に力を入れて立ち上がろうとする。腹部や体中が軋むように痛む。まだ完全に治ってないのか。

 その無理に立とうとする俺を見て、リンが慌てたように肩に手を置いてベットに押さえる。


「ちょっと! 無理しちゃ駄目よ、まだ完治してないんだから!」


「待ってられるか! こうしてる間にも……他の子が……! リリナがどんな目に遭ってるか!」


「あなた本当に死ぬわよ!?」


「死んでもいいさ。それであいつが救われるならな」


 その時バンという、何か乾いた物を叩く音が室内に鳴り響いた。

 目の前には涙目で右手を振るったリン。俺の頬は赤くなっており、顔は横を向いている。


「あの子はね、あなたがいない未来なんて認めない。あの子にとってあなたは必要な存在なのよ。だからこそ、あなたを守るために……死んでほしくないから、あなたを守ったのよ? その救われた命を捨てるの? あなたはリリナちゃんとまた一緒にいたいんでしょ?」


 平手打ちからは悲しさと寂しさ、怒りなんかの感情を乗せていたように感じた。それが痛みを通じて心に響いた。

 一緒にいたい。生きてあいつと旅を続けたい。さっきの俺は感情に任せて暴走していたのか。

 無言で俺はその言葉を聞き。その通りだという目でリンを見ていた。


「子供達を助けることはいいわ。でも、もう少し自分の命を大切にして、あなたが死ぬことで誰が悲しむのかをよく考えなさい」


 そう言うとリンはベットから立ち上がり、部屋を去るように扉へ向かう。

 扉を開けて部屋から出て行くとき、ボソッと最後に呟く。


「私もあなたが死んだら……泣くからね」


 そう言い残して、バタンと扉を閉めた。静まりかえる室内。

 世界に嫌われていたから、いつ死んでもいいと思っていた。この世に未練などなかったから。


「いつの間にか……守りたい存在が、一緒にいたいって思える奴が出来たのか」


 まだリリナと一緒にいたい。この感情が何なのかはまだわからないけど、俺にとってあいつは特別なんだろう。

 だからこそ守る。そしてあいつと一緒にいるためにも死なない。


『あの……起きてますか?』


 新たに決意していた時だ、扉越しに声が聞こえる。この声は……アルマか?


「起きたけど、どうした? それより入って来いよ、その方が話しやすいだろ?」


 声を聞こえたのか扉が開く。そこからゆっくりと入ってくるアルマ。

 オドオドと気まずそうに歩いてくる。そしていきなり頭を下げる。


「――ごめんなさい……!」


 急に言われた謝罪の言葉。一体何なのか訳がわからず困惑してしまう。


「私が零さん達に頼まなければ、こんなことにならなかったのに……! 本当にごめんなさい……!」


 アルマは自分に責任を感じて謝罪しているのだろう。お前に責任なんてこれぽっちも無い。全部悪いのは奴らだから。


「お前に責任はねえよ」


「でも私が……」


「悪いのはこんな酷いことをしているカイダールだ。お前達はその被害者だ、だから謝ることなんてない」


 それに今回は俺にも責任がある。俺が弱かったからこうなった。もっと強ければみんなを守れたのに。己の無力さで拳に力が入る。

 改めて自身が能力に頼りっぱなしだということがわかる。今回のように能力が使えない相手となると、俺はほとんど戦えなくなる。


「お前は気にするな。絶対に俺が全て終わらせるから」


 俺は泣きそうな顔のアルマの頭に手を乗せる。

 全てを終わらせる。そのためにはまず身体を治すことだ。治ったらまた情報を集めることから始めるんだが……ここが一番の難題。どうすればカイダールの尻尾を掴める?

 この時俺は腕につけているリングの存在を思い出す。これでこの前もリリナの居場所がわかったんだった。さっそくリングを起動させてみる。


「……光が伸びない?」


 白い光は伸びず、丸く留まっているだけだった。距離が離れすぎなのか、壊されたのかはわからない。


「くそ……こいつでも駄目か。どうすれば……実験施設を特定できるんだ……?」


 この街でできる限りのことはした。しかし成果は0だ。まさに八方塞といった感じだ。

 頭を回転させて方法はないか考える。何か方法はないのか?


「どうしたらカイダール社の研究施設に入れるかわからないようだね?」


 この部屋にはアルマと俺しかいなかったはずなのに、急に聞こえた男の声にアルマと俺は驚く。そして声の主を見る。

 目を疑った、視界に入る人物がどうしてここにいるのか謎だったからだ。


「お前……なんで」


 忘れもしない特徴的な姿。あの赤い白衣、そして銀色の長髪。そして横にいる黒のゴスロリ服の黒髪少女。


「なんでここにいるんだ――――シルファス!」


「やあ、久しいな――少年」


 瞳に映るシルファスは、不気味な笑みを浮かべてこちらを見ていた。

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