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俺達は神【世界】を否定する  作者: 十文字もやし
三章 商業国ストリア編 神を作ろうとする者達
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39話 追われる少女

 路地裏の走っていく。帝国の時とは違い、路地は狭く人二人が通れるかぐらいの幅しかない。

 ゴミが入っているバケツや、裏口の扉などもある。流れるような壁の景色を進んでいき、少女を追う。

 俺を先頭に、一番後ろをシュエに任せている。オッサンはシュエの戦闘能力を高く評価していたからな、だからこそ後方を任せられる。


「出口か?」


 走っていると、前方が明るい通りが見える。

 通りから出ると、さっきの大通りとは違い全く人が見えない場所。その空間に異質だと感じる。

 夜だというならわかる。だが今はまだ明るい時間帯だ。なのに人の気配が感じられない。まるで別の空間みたいだ。


「今は考えてる場合じゃない……! あの子は?」


 考えるのを止めて、辺りを見渡す。すると少し離れた場所の、橋の下のトンネルのような場所に四人の人影が見える。


「零さん! あれです!」


「ああ! 行くぞ!」


 全力で駆ける。その人影と徐々に距離を縮めていく。そして同時に、そいつらの話し声も耳に聞こえる。


「やれやれ……なんで逃げたんだ?」


「社長もお前を心配してるぞ?」


 ジリジリと迫るように少女を囲む三人の男。少女の背中にはコンクリートの出来たような壁があり逃げることが出来ない。


「嘘よ! あいつは心配なんかしてない! 私達をモルモットとしか見てないわ!」


「おい、口の聞き方に気をつけろよ小娘。社長をあいつ呼ばわりするとはいい度胸だ」


 捕まえようとするスーツの男。その行動を止めるように俺は喋る。


「女の子一人を取り囲んで何やってんだよ?」


 その声にピタッと男の動きが止まり俺を見る。

 おそらくその視界に映ったのは異質な光景だろうな。俺だけならいいんだけどさ、後ろには少女達がいるという。


「……あ、朝の……」


 少女は俺の顔を見て、朝での出来事を思い出したようで。目が開いていく。


「なんで一般人がこの場所に……」

「おいお前、人払いはしたのか?」

「しっかりと人払いの魔法は発動したはずだぞ?」


 人払いね、なるほどそれで人一人いないわけだ。そしてなんで俺がその影響を受けなかったかも理解できた。おそらく霧の能力だろう。発生させなくてもそういった魔法は俺には効果がないんだろうな。

 男達はイレギュラーの登場に困惑する表情をするが、すぐに俺を冷静な目つきで見る。


「おいお前ら、今すぐここから立ち去れ」


「どうして?」


「お前には関係ないからだ」


 こんな光景見て、どっか行けなんて無理に決まってるだろうが。

 それに俺はその子から聞きたいこともあるしな。


「俺は……明らかに目の前のお前らが悪者にしか見えない。そしてその子は困ってる……ならすることは一つだろ?」


「貴様……我々がただの人間だと思ってるな?」


 その言葉と同時に男達は腰から銀色の拳銃を取り出す。まだ武器を持ってるか?

 俺は男達を分析しながら、持っていそうな武装などを考える。

 すると銃声が響き渡る。男の持っている銃口からは煙が出ている。威嚇射撃をしたようで、俺の足元の地面は抉れている。


「もう一度だけ忠告する。立ち去れ、でなければ痛い目にあうぞ」


「……その痛い目にあうのは……どっちになるだろうな?」


 俺は腰の鞘から白い刀を抜く。俺が武器を構えると後ろにいたリリナ達も身構える。

 今迂闊に霧を発生さえることは出来ない。もしも発生させて俺の正体がバレでもしたら、この街にいられなくなる。その為に、今は薄く体に膜を張る程度ぐらいにしか使えない。


「……そうか、お前らギルドの奴らか」

「構うか、俺達はあいつを回収するだけだ。あいつらを動けなくするぞ!」


 次の瞬間、男達の銃口が光りだす。街中に響く銃声。

 だが魔力の銃弾は、俺の表皮に触れた瞬間、先が削れていくように無くなっていく。

 驚く男達、何かの魔法的な防御壁でも展開したのかと探るような顔だ。そしてその驚きで、隙が出来る。


「ハァァ!」


 刀を裏返して、刃ではない方で殴るように斬る。

 だが俺の剣の腕は、ド素人だ。その無駄な動きで簡単に剣の軌道を読まれ、後ろにバックステップするように回避される。


「――この!」


 後ろに後退しながら銃撃を繰り返す。しかしその攻撃はすべて無意味に終わっていく。

 相手の攻撃を気にすることなく突撃し、刀を振るう。相手から見たら捨て身で突撃しているようにしか見えない。


「おい! なんで魔力弾が効いてない!?」

「高位の魔術師か!?」


 叫びながら俺の能力を分析しているようだが、男達の考えはどれも違う。

 そして現状では無理だと判断したのか、狙いを変更する。


「俺はこいつを相手にする! お前らは後ろのガキ共をやれ!」


 他の二人はその指示に従い、後ろにいるリリナ達へと照準を向ける。

 だがこの時、男の一人があり異変を感じ取る。そして視線を左右へと移動させて、誰かを探している。


「おい、もう一人の白髪のガキがいないぞ?」


 白髪ということはおそらくシュエだろう。

 すると俺と交戦している男が、二人に叫ぶ。


「おいお前ら! 下だ!」


 その叫びを聞いて男達は足元を見るように視線を向ける。そこには男の足元にいつの間にかいたシュエ。

 とっさに銃を向けるが――遅い。


「気づくのが遅いですよ?」


 シュエは男の鳩尾(みぞおち)に向かって一発、拳を叩き込む。11歳の少女とは思えないほどの衝撃で、男の背中のスーツが衝撃が伝わり、なびくほどだ。一瞬手に青いオーラが纏っているのが見えたので、おそらく魔法で強化したのだろう。


「――がっ!」


 胸の空気が全て押し出されるように、口を開き舌を出すように苦しむ表情をする男。もう一人が撃とうとするが、シュエは男を盾にするように移動する。


「この……ガキ!」


 自身も移動してなんとか照準を合わせようとするが、何度移動しても合わない。

 そしてシュエはニッコリと笑いながら一言。


「この人返しますね」


 先ほどの男を蹴り飛ばし、吹き飛ばす。放物線を描くように飛んでいき、もう一人の男の上に覆いかぶさるように倒れる。

 ほんの一瞬の出来事だったが、二人の大人を相手に、ここまで簡単に倒してしまう少女。可愛い顔して恐ろしい実力だ。


「なに子供に負けてるんだ!」


 その一連の様子を見ていて叫ぶ男。おい、お前ももう少し目の前の敵に気を配ったほうがいいぞ?


「他人の心配してる場合か?」


 こいつを消す覚悟で、胸元まで踏み込む。岩を砕くような勢いで、男の脇腹を砕くように斬る。


「――!!」


 脇に刀がめり込むと同時に、男の顔が歪む。そしてそのまま横に退かされるようにヨロヨロと移動する。

 肩で息をするように膝をつき、俺達を睨む。


「なんなんだよ、お前達は……!」


 そして銃を俺に向けると思ったときだ、その照準は俺ではなく後ろにいる二人に向けられる。


「お前と、あのガキは戦えるようだが……あの二人はどうだ?」


 俺とシュエには敵わないと判断して、非戦闘員に見えたリリナ達を狙うわけか。少女を狙うとは、こいつも結構外道な奴だな。

 だがあいにく、あいつらは普通の女の子とは違う。リリナだけなら違ったかもしれないが、シェリアが近くにいる時点でその行動に意味はない。


「我々に逆らうと、どうなるか教えてやる……!」


 銃声が何発か鳴り響く。音速のような弾丸はリリナ達へ飛んでいき、その小さな体を貫こうとする。

 男の予想は弾が命中し、倒れる少女の姿。だが結果は違う、弾はリリナ達の手前で蒸発するように燃える。


「なっ……!」


 シェリアを中心に燃え盛る紅蓮が二人を包んでいる。その姿はまるで炎の鎧を着ているかのように。


「そんな攻撃で私の炎を消せると思う?」


 そしてシェリアは小悪魔みたいに笑みを浮かべると、「お返し」と言って人差し指を男に向ける。

 真っ赤な炎がまるでホースから出た水のように、細く放射される。男は立ち上がり逃げようとするが間に合わない。

 あっという間に男を炎が包み込む。どうやら丸焦げにする気はないみたいだな。手加減しているであろう、その炎を見て思う。


「…………」


 炎が消えると、体から黒い煙を上げながらその場に崩れるように倒れる。ちょっと火傷をした程度らしく、命に別状はなさそうだ。

 どうやら三人とも倒したみたいだな。シュエも戦闘が終わったのを確認すると、俺の元へ歩き出す。


「――!」


 この時、あることに気づき俺は目を見開いた。同時にその事を伝えようと、口を開ける。


「まだ終わってないぞ! シュエ!」


 その叫びに、後ろを振り向くシュエ。後ろには震える手で銃口を向けている男。あれは飛んできた男に潰された奴だ。

 この時の一連の流れがゆっくりに見える。回避しようにも、間に合わない。俺が向かおうにもその間に銃口からは弾が発射される。


「このガキがぁ……! 死ねぇ!!」


 そして銃口が光、音が鳴ると同時に弾がシュエ向かって飛んでいく。

 ガァンという鉄が響くような音が鳴り響く。


「え……? どうして?」


 シュエはその光景に唖然としたような顔で、その出来事を見ていた。

 俺も驚いていた。銃弾はシュエを貫くはずだった。だが銃弾は何か硬い物に遮られ、弾かれた。そしてその弾いた人物はあの追い詰められた少女だったから。


「……大丈夫ですか?」


「……はい、私は……でもあなたが……!」


 シュエのは心配したように少女を見る。すると少女は優しく微笑む。

 俺はその光景に驚愕した、少女の腕を覆うように形成された青い金属。あれはまさか……オリハルコン? 腕だけじゃなく体の表皮全てが光を反射してまるで宝石のように輝いている。


「私は大丈夫です。だって――化け物ですから」


 その子の顔は笑っていた。だがその笑みの中に隠された悲しみが俺にはわかった。

 だってあいつは、こいつらと一緒で自分を化け物と言っている時と、まったく一緒の顔だったから。


「アルマ! 我社に逆らうか!!」


「元より私はあなた達に従っていたつもりはありません。強制的に実験をされていただけです」


 我社? 実験? この言葉からどうやら裏で黒いことをしていたに違いないと判断する。

 そして少女は、足元に力を込めると。足元の地面が抉れるほどの勢いで蹴り出し男へ接近する。


「あなた一人なら――倒すのも簡単です!」


 その華奢な体で男を地面にめり込ませる様に拳を叩き込む。拳がダイヤのようにキラキラとしたような物に覆われていた。

 シュエの魔力による強化とは違い、純粋に肉体の力だけのように感じた。地面が震え、男の周りの地面に亀裂が入るほどの一撃。


「ふぅ……」


 一息つくと男から離れる少女。男は完全に意識を失っており、口からは泡を吹いている。

 なんだかこの子、一人でもこいつら倒せたんじゃないかな? なぜ逃げているのか、謎だったがそれはあとで聞くとしよう。

 少女の体からは光が無くなっていき、反射しなくなる。腕も青色から元に戻っていく。


「おい、本当に大丈夫なのか?」


 一応安否を聞いておく。本人は大丈夫だと言っていたが、直撃を受けていたからな。

 俺は少女に近づきながら訊く。


「大丈夫ですよ。体は頑丈なので」


 頑丈って……そういう問題でもないと思うけどな。でも、さっきのこの子の体の変化から、何か特殊な能力を持っているのは間違いない。


「あの、それとありがとうございます。一度だけでなく二度も……」


「気にすんなよ。困った子は見捨てられないしな」


 そしてその台詞に便乗するようにリリナが口を挟む。


「そうそう。零は女の子なら誰でも助けるから」


「お前なぁ……」


 ある意味真実を言われているため反論が出来ない。

 いやでも、偶然今まで助けてきた子が女の子ってだけだからな? 勿論男で困ってたら助けるぞ?

 俺はゴホンと咳払いをして話を元に戻すようにする。


「なあお前……なんで追われてる?」


「それは……」


 出会ったときと一緒で口を閉じる。あの時は逃げられてうやむやにされてしまったが、今回はそうはいかない。

 しょうがない、色々とこっちでわかってる事を言ってみるか。


「……神力を持ってるから言えないか?」


「!!」


 少女はビクッと一瞬震えるように驚く。どうして知っているのか不思議そうな顔だ。

 俺はリリナを見て、指を指す。


「こいつは、神力を見れるんだ。だからお前が神力を持ってることもわかった」


「神力を見れるなんて……そんなの一体どうして」


 この子なら言ってもいいのかもしれない。俺がそう考えていると、リリナが代わりに喋る。


「私は16番目の神の子。『癒し』を司るの」


「えぇ!? か、神の子なの!?」


 それに続くようにシェリアも手を上げて自慢げに喋りだす。


「私は5番目! 『炎』を司ってるよ!」


「あ、私は違いますよ。ただのギルドの一人です」


 まさかの神の子が二人もいることに驚愕の表情をする少女。そりゃそうだよな、一人でもすごいのに二人もいるんだから。


「あなた達は一体……何者なんですか?」


「まあ、神の子を助けるために旅してるだけだよ」


 そして俺は少女に手を差し出す。


「俺は神城零。よかったら聞かせてくれないか? お前が追われてる理由を」


「……わかりました、あなた達なら話せます」


 どうやら教えてくれるみたいでよかったよ。少女は続いて自分の名前を俺達に教えてくれた。


「私はアルマ・レイナードです。よろしくお願いしますね」


 俺達はアルマから話を聞けることになった。この話を聞くことにより、俺はこの街で起きていた、とある非情な実験を知る。



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