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俺達は神【世界】を否定する  作者: 十文字もやし
一章 ガルム帝国編 一部 神と呼ばれる少女
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3話 お金を稼ぐために

 ここはとある宿屋の一室、内装は日本にもありそうな安いビジネスホテルのような感じだ。

 俺は目を覚ますと、あくびをしながら身体を起こす。横を見れば青い髪の少女はまだ可愛く寝息をたていいる。


「神の子か……」


 少女の右手を見る。右手の甲には十字架のような黒い痕が見える。

 この痕は『天のファート』と呼ばれるものらしく、神の子である証らしい。こいつと話していて分かってのだがこの世界では先代の神の子が亡くなったら、次の神の子として11歳の少女からランダムで選ばれるらしい。不運にもリリナは選ばれてしまった。


「ん……」


 青い髪を指でくるくると触っていたら目を覚ました。


「よ、おはよう」


「おは……よう」


 目を擦りながら起き上がる。

 さてこれからどうしようかね、あの一件の後俺達はとりあえずこの宿屋、というかホテルを拠点に活動していた。

 金については、この前の男が置いた財布を使っている。通貨の単位がわからないが、リリナ曰くこれだけあれば一〇日は大丈夫らしい。

 俺やリリナの服なんかもこれで買えた。流石に血まみれの服じゃ不審者にしか見えないからな。服も日本みたいな物もありジーパンみたいなものにシャツの上に灰色のコートみたいなのを羽織っている。


「こいつが安心して暮らせる場所はどこにあるんだろうな……」


 呟くように喋る。リリナは聞こえていなかったようで、フラっと立ち上がると顔を洗いに行った。

 俺は窓際にある花瓶を見る。少し力を入れると花瓶のあたりに白い霧が漂いだし花瓶に刺してある花はあの男達のように塵になる。


「俺は……この力で人を殺した……のか」


 手が震えた。いや身体全体が震える。怖い、自分の力が怖かった。

あの時は頭がごちゃごちゃしていて殺すことになにも感じなかった。冷静になったとたん、人を殺したという恐怖が俺を襲う。

 あの光景を思い出すと震えが止まらなかった。人を殺すということがこれほど覚悟が必要なものとは思っていなかった。


「仕方ないんだ……あいつを守るためには……」


 仕方ないと自己暗示のように言い聞かせる。こうでもしないとこれから先この力は使っていけそうにないから。

 一息ついて、冷静に戻す。そして改めて自分のスキルについて分析をする。


「触れた物を消滅させる力か……」


 どうもこいつの力はあらゆる物体を消滅させる力を持っているようだ。魔力も無い俺にとってはかなり強力な能力だろう。名前はそうだな……『消滅の霧』なんていいだろう。中二みたいだな……このさいいいや。


「この力を上手く使えればあいつとここから脱出できるはずだ」


 手にグッと力を入れる。

 あいつを絶対に守り通す。俺はそのためなら世界も敵にする覚悟だ。だから――この力が発現した。俺はそう思ってる。

 そのために人が死ぬ可能性がある。でも……こいつを守るためだから……でも出来るだけ人は殺さない。それにこしたことはない。


「零ー顔洗わないの?」


「ちょっと考え事してたんだ、すぐに行く」


 ベットから降りると声のするほうへ行く。

 今日は町に出てあるところへ行く予定だ。さてこれから先どうなるかね……




 目的の場所につき、入り口の扉を開ける。

 俺の視界に見えたのは、武装をしている集団だ。剣、銃、鈍器、など様々な武器を背負ったり、腰に挿している。内装も日本の銀行みたいな感じだ。

 ここは帝国ギルドの受付……らしい。なんでここに来たのかというと、この先この世界で暮らしていくにはどうしても金が必要になってくるからだ。

 流石に強盗や泥棒なんてことは出来ないからな。働くのはリリナから目を離してしまうから無理、だからギルドで稼ぐしかないという結論に至った。


「人が沢山いるな……」


「ここはガルム帝国のギルドの本部みたいなところだから」


「お前が神の子だってバレないか?」


「右手の痕を見られなければ普通の人は分からない……と思う」


「だ……大丈夫か?」


 少しばかり不安だ。俺はリリナの右手に視線を向ける。

 一応リリナの右手は包帯を巻いて、怪我をしているように見えているはず。よっぽど大丈夫だとは思うが……


「とりあえず、受付にいこう」


 俺達は受付に向かう。歩いていると周りから妙な視線を感じた。

 おそらくリリナが異様なのだろう。そりゃ周りは屈強な者達がばかりだし、子連れなんてどこにもいない。


「すいません、ギルドへの加入をしたいんですが」


 窓口にいる長髪のお姉さんに尋ねる。

 お姉さんはニコッと笑うと、営業スマイルで丁寧に対応してくれた。


「加入申請ですね。では何か身分証明が出来るものなどはお持ちですか?」


 身分証目という単語におもわず顔が引きつる。

 まずい、そんなもの無い。リリナは持っているだろうが、出したら一〇〇%正体がバレる。

 嫌な汗が背中を流れるのが分かった。どうする? ここはひとまず……


「すいません。忘れました」


 夏休みの宿題をやってないような言い訳をしてしまった。

 でもこのときはこうするしかないだろ?


「そうですか。ではまた身分証明が出来る物を持ってきて下さいね」


 営業スマイルで俺達は追い返された。

 まさか異世界でも俺の世界みたく身分証明が必要になるとは思わなかった。どうしよう……このままだと路頭に迷ってしまうぞ。


「どうする?」


「とりあえず、座って考えようぜ……」


 肩を落とし落ち込むようにテーブルのある席へと向かう。

 と、その時目の前に背の大きい男達が俺達の前に立ち塞がる。


「よお兄ちゃん、ここは子供を連れてくるような場所じゃないぜ?」


「ギルドは子守所じゃないんだぜー?」


 右の男はいかつくまるでプロレスラーのような体系だった。左は細いが筋肉がついてる、細マッチョってやつか。あとどっちもタンクトップ。汗臭そうだな。


「そんなの分かってるよ。俺達は仕事を探してるんでな」


 こういうDQNタイプは厄介だ。面倒になる前に軽くあしらって退散したほうがいいな。


「お前のようなヒョロヒョロがか? 笑わせるなあ?」


 大男の方がニヤニヤしながら喋る。

 うざいなこいつ。でも我慢だ、挑発はDQNの十八番だからな。


「気に障ったのなら謝る。だから退いてくれないか?」


「なんだてめえ? 俺達を知って言ってるのか?」


 いや知りませんが。ただのタンクトップマッチョだと思ってます。


「俺達は帝国ギルドの、黒金兄弟だぞ?」


 訊いてもないのになんか語りだしたぞ。

 そうか、すごいんですねー


「そ、そうか……すごいんですね……」


 ひとまず驚くふりをしておいた。

 これで納得して帰ってくれればいいが……

 俺は苦笑いをしながら男達の横を通り過ぎようと早歩きで逃げようとする。


「じゃあ、そういうことでー」


 しかし肩をつかまれた。

 あーやっぱりそう簡単には帰してくれないか……。どこの世界にもいるんだな……こういう奴。


「おい待て、まだ話は終わってね――」


 誰か助けてくれ、そう思った瞬間だった。近くの席から声が聞こえた。


「そこまでにしたらー?」


 声が聞こえたほうを向くとそこにいたのはある少女だった。


「新人に絡んで……ベテランがみっともない」


 窓際の席に座る少女。その姿は茶色のポニーテールで、肩を露出させたオレンジ色が特徴的な服でと黒い色のフリルがついたようなスカートをしていた。あと胸がでかいな。あれはなんだスイカか?

 少女は歩いてくると、俺を掴んでいる男の腕を離すと距離をとるように俺達を離してくれた。


「おいてめえ、調子こいてんじゃねえぞ?」


「はいはい。ごめんね」


 やれやれといった感じに適当に謝る少女。


「それより時間いいの? あんた達依頼の時間でしょ?」


 柱に掛けてある大きな時計を指す。

 男達は悔しそうな顔をして、俺達を見ると「行くぞ」と言ってギルドから出て行った。


「悪いな」


「いいのよ。あんたもあんなのに絡まれて大変ね」


「まあ昔からよく学校で絡まれたしな……」


 嫌なことを思い出してしまい、苦笑いしながら答える。

 少女は俺達を見ると、リリナをジッと見てまた再び俺を見る。


「あなた達……まさか、わけあり?」


「分かるのか?」


「女の勘ってやつかな」


 俺はリリナのことがバレていないよな? と思い、少し顔を引きつらせていた。


「私でよかったら聞くわよ?」


 少女はさっき座っていたところに座ると頬を手の上に乗せて俺を見る。

 今は少しでも情報が欲しい。しょうがないこの子に色々訊いてみるか。

 俺は少女の向いに座る。リリナも俺の横の椅子に座らせると、事の経由などを話した。勿論リリナのことや俺のこと言ってないぞ。色々嘘を混ぜながらな。


「ふーん、働けないからギルドで稼ごうと……」


「まあ簡単に言うとそうだ」


「で、身分を証明する物は持ってないと……」


 少女は怪しそうに俺とリリナを見る。

 そりゃ怪しいよな……身分証明が出来ないのにギルドに加入したいとかな。


「ま、いいや。わけありなんだし」


 少女は両手を机の上に交互に重ねるように置くと、俺達に質問をしてきた。


「まあギルドに入りたいのはわかったけど……あなた達戦えるの?」


「まあ、一応」


「ほんとに? 見たとこ武器もないし……貴方からは魔力すら感じられないし……大丈夫なの?」


「スキルっていうのか? 俺はそれを使える」


「私は回復魔法なら……」


「あなた……スキル所持者なの?」


 少女はすこし音量を上げてそう言う。口を開いていていることから、驚いている様子がわかる。

 確かスキルって100万人に1人の割合だっけ? やっぱり珍しいみたいだな。


「どんな能力なの?」


「発現したばかりでまだ詳しく分からないな」


 霧に触れたら塵になります! なんて言えるわけないだろ。そんな危険な能力持ってるなんて知ったら警戒されるわ。

 俺はリリナに目線を向ける、リリナも小さくうなづく。お前もやっぱり言わないほうがいいと思うわけか。


「そっか発現したばっかりか……」


 詳しく聞いてこないようで安心だな。

 さて俺も本題に入らせてもらおう。


「なあ、どうやったらギルドに入れる?」


「身分証明無しでってことでしょ? 一応あるにはあるけど……」


「あるのか!?」


 俺はその言葉に食いつくように身を乗り出す。


「ちょっと落ち着いて!」


「わ、悪い」


「その方法なんだけど……他のギルドに入ればいいのよ」


 他のギルドに入る。それはさっきの男達みたいのギルドに、仲間として入るというわけか。

 でもこんな見ず知らずの奴を受け入れるチームなんているのか?

 可能性が限りなく0に近いため、黒いオーラを感じさせるように落ち込む。


「あーそれなんだけど……あなた達がよかったら私のギルドに、入る?」


「マジで!?」


 落ち込んだようすから目をキラキラさせるように俺は少女を見る。

 その目を見て少女とリリナが一瞬引いたような顔をする。少女は一息ついて続きを喋る。


「でも条件があるわよ? 貴方達が私のギルドで使えるかどうかを判断してからよ」


 そりゃそうだな。使えない奴を仲間に入れたところで意味ないしな。

 俺はリリナを横目で見る。こいつは魔法が使えるが……俺もやっぱり使うしかないよな……霧の力。だがチャンスだ、これは乗るしかない。


「わかったそれでいいぞ」


「じゃあよろしくね。私はリン・シューリオスよ」


「神城零だ、よろしく」


「リリナ・フローリアです」


「神城零? なんだか面白い名前ね……」


「少し特殊なんだよ。零でいいぞ」


「そう。じゃあ零、リリナ。よろしくね」


 俺達はリンと挨拶をすると握手をした。

 こいつに認めてもらえればギルドに入れるわけだ。そうすれば当面の金の問題はなんとかなる。


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