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俺達は神【世界】を否定する  作者: 十文字もやし
三章 商業国ストリア編 神を作ろうとする者達
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38話 大通りでの観光

 街に出た俺達は、とりあえず先ほどの大通りへ行くことにした。

 シュエが言うには、大通りには観光客をターゲットにした店が多く、比較的扱われている商品も信頼できるという。


「さっき通った時は、ゆっくり見る暇がなかったから気づかなかったけど。意外と飲食店も多いんだな」


 左右をキョロキョロと見ながらそう呟く。

 そして何より驚いたのは、俺の世界と似ている食べ物が結構あるということ。お、あれはクレープ屋みたいだ、あれはアイスクリーム屋か?


「この大通りは観光客をターゲットにしているので、飲食店が中心なんです。武器とかは西区の地下商店に多くありますよ」


 左にいるシュエが呟きに答えるように、補足説明を入れてくれる。

 今俺の状況は、左にシュエ、右にリリナ、そしてその隣にシェリアだ。勿論二人は俺と手を繋いでいる。この光景ってなんだか修学旅行の引率してる教師みたいだな。


「地下商店? そんなところもあるのか?」


「はい。地下商店はストリアの西区にあります。地下商店には武器、魔道具、なんかの結構危険な物が扱われてるんです。ここは東区で、主に観光を中心に作られているんです」


 それからもシュエの丁寧な説明が続く。

 ストリアには東西南北で扱われている商品が違う。西が武器。東が観光関係。南が工場、企業などが集中している経済関連。北は人の居住区、宿などが集中してる。らしい。まあそれは主にというだけであって、実際は多少は混じっているらしい。

 シュエの解説に勉強なったと思いながら、へーと口にする。


「お役に立てたみたいでよかったです」


 ニコッと笑うシュエ。

 ということは、ここは東区、大通り。観光するにはもってこいなわけだ。

 するとシェリアが俺を呼ぶ声がする。


「ねー零君。あれ食べようよ!」


 シェリアが指差すのはさっき見たアイスクリーム屋のような店。看板に描かれた絵はジェラートみたいだ。

 なんだか、本当に俺の世界と似てるよな。異世界なのにこの共通点の多さ。俺は単なる偶然とは思えなかった。異世界に来たのも……何かあるのか?


「どうしたの零?」


 難しい顔をして考えている俺を見て不思議そうに尋ねるリリナ。

 せっかく観光してるのに、こんなこと考えてたらつまらないな。このことはまた一人のときにでも考えよう。


「なんでもない。それより、あれ食べるんだろ?」


 安心させるように笑顔を取り繕う。今はこの時を楽しむんだ。

 俺達は店に近づく。店の前にあるメニューを見てどれにするか悩む三人。今は俺の手からは離れてる。

 それよりも、あいつらと仲良く手を繋いで歩いてるとさ、何だか周りの視線がたまに痛いんだよな。なんでだ?


「私は……これ!」


 一番早く決めたのはシェリア。指を差すのはオレンジのようなジェラート。

 それに続くように残った二人も決めていく。


「じゃあ……青いこれ」


「この白いのでお願いします」


 リリナが選んだのは、かき氷のブルーハワイみたいな鮮やかな色。シュエは白いスタンダードなバニラだろう。

 こいつら選んだのが髪の色と似ているのは気のせいか? まあ気にしないでおこう。


「三人とも決まったか。じゃあ俺は……この緑の抹茶でいいや」


 その一言に三人の顔が曇る。え? 抹茶頼むのがそんなにおかしいか?

 何故そんな顔をしたのか聞けないまま、俺達は店員に注文をする。奥で待ってくださいと言われたので、店内に入る。

 店内は明るい雰囲気で、白や黄色などの明るい色合いの壁。そして天井にはクルクルと回る大きなプロペラ。


「零さんって……意外な味を頼むんですね……」


 席に座ると、前の席に座るシュエが俺に先ほどのことを訊いてくる。

 前の席はソファーになっていてシュエとシェリアが座ってる。


「抹茶が? 俺達の間では普通だったぞ?」


「零の世界の人ってどんな味覚してるのか知りたい……」


「零さんの世界?」


 そのリリナの言葉に反応するように首を傾げるシュエ。


「ああ、俺の故郷のことだよ!」


 急いで言い直す。別にバラしてもいいんだけど、今言ったら混乱しそうだし、落ち着いたら伝えようと思う。それに頭が変な人と思われたくないし。

 そんなことをしていると、注文したジェラートが運ばれてくる。コーンに乗っているではなく、白いカップに入っていて、スプーンが刺さっている。


「「おおー」」


 感激の声を漏らすシェリアとリリナ。シュエは落ち着いているようだが目は輝いている。

 やっぱり女の子ってデザートには目がないよな。その微笑ましい光景に、思わず口元が緩んでしまう。


「それじゃあまずは一口!」


 最初に口に運んだのはシェリア。どうやらもう待ちくたびれようだ。

 その小さな口にオレンジ色の冷たそうな物が入る。そして目を閉じるように美味しさを表現するシェリア。


「甘ーい。ほらみんなも食べてみてよ!」


 リリナ達もその可愛らしい口に、冷たいジェラートを運ぶ。目を開いて顔が明るくなり、美味しいのがわかる感じだ。


「美味しいですね。この優しい甘みがなんともいえません」


 笑顔で答えるシェエ。本当に美味しそうな顔してるなー見てるこっちまで、幸せになるほどだな。

 さて俺も食べるか。しかし何でみんな抹茶を頼んだときに驚愕の顔をしたんだ? あんなに美味しいのに。

 そう思いながら俺はその緑の物体を口に入れる。


「――!?」


 このときだ。俺は何故あいつらがあんな顔をしたのか理解した。なんだこれは……これはまるで、抹茶じゃなくて。野菜だ。

 キュウリ、キャベツ、レタス、セロリ、ブロッコリー。とにかく緑色の野菜の味がした。そしてそれに追い討ちをかけるかの如く、微かに甘い。


「抹茶じゃ……ねえのか……」


「やっぱり予想通りの展開だね」


 表現できない味に微妙な顔をしてる俺を見て、リリナがそう呟く。

 俺の中では緑=抹茶みたいなイメージが定着してたから……異世界だと違うのね。


「どうー?」


 ニヤニヤしながら訊いてくるシェリア。

 こいつの顔、わかってやがったな。知ってるなら注文する前に教えてほしいものだ。


「すごく……微妙だ」


「それでも食べれる零さんは……すごいですね」


 苦笑いでその様子を見るシュエ。この口振りから食べるのすら困難なのか?

 まあ味は果てしなく微妙だが、食べられなくもない。野菜ジュース飲んでると思えばなんとかな。

 するとリリナが何かを思いついたような表情をする。頭上に電球マークでも出てそうな顔だな。


「はい」


 そう言うと、スプーンに乗った青いジェラートを俺に近づける。


「お、くれるのか?」


 リリナはコクンとうなずく。そして近づけられるスプーンを口に入れる。

 おお、結構美味いな。爽やかな甘みがしつこくない。リリナはにっこりと微笑みながら見ている。若干頬も赤くなっている。


「しまった……! 完全に出遅れた!」


「野菜味に気をとられすぎました……」


 その様子を見てフッと鼻で笑うように見るリリナ。あいつあんな悪そうな顔するんだな……

 二人も負けじと手元にあるスプーンを俺に伸ばす。


「ほら! 次私の!」


「いえ、私のをどうぞ」


 ずいずいと寄せられる二つのスプーン。身を乗り出して、自分のを先に食べてもらおうと頑張っている。


「くれるのは嬉しいんだけど……落ち着け」


 そんな必死な顔されたら、なんというか怖い。それに周りの客の目線が痛いです。主に男性客の目線が。

 とりあえず、何も考えずにシェリアのから先に食べる。うん見た目の色どおりオレンジの味だ。風味があり、あっさりして美味しいな。シュエのバニラもしつこくない甘さがいいな。


「ありがとうな、お礼というわけじゃないが……食べるか? 俺の野菜味」


 申し訳ないような顔をしながら一応進めてみる。もしかしたら気に入るかもしれないだろ?

 その言葉に三人はお互いの顔を見る。そこまで覚悟が必要なのか……


「じゃあ……食べてみますね」


 先に名乗り出たのはシュエ。他の二人は行くのかこいつ? という顔をしている。


「それで……あの……食べさせてもらえますか?」


 顔を赤らめながらそう呟く。


「いいぞ。ほら」


 緑の物体が乗った物を口に運ぶ。シュエの口は恐る恐る口を近づける。

 そして口に入れると同時に、シュエの表情はさっきの俺のようになんともいえない、微妙な感じに変化する。


「中々……個性的な味ですね……」


「また不思議とこれ、そこまでまずくないのがなぁ……」


 味は果てしなく微妙なんだけど。

 シュエの感想を聞いて、挑戦を決める顔をするリリナ。


「……そうなの? それじゃあ私も食べてみる」


「ほらよ」


 シュエの時のように食べさせてやる。

 あ、この顔。好みの味じゃない顔だ。


「私は……苦手かなぁ……」


 口直しと言わんばかりに、手元にある自分のジェラートを食べる。


「シェリアは……食べるか?」


「ふぇ!? いやあの……私は……」


 そしてなにやら考えるようにぶつぶつと呟く。


「零君に食べさせてもらうチャンス。だけど……あれは……」


 何を言っているのか聞こえない。そこまで悩むのか?


「別に無理しなくてもいいぞ?」


「いや……! 食べるよ!」


「お、おう。じゃあほら」


 シェリアの口に緑の物体を運んでやる。それを口に含むと、やはり微妙な顔をする。


「うーやっぱり、私には合わないかな……」


「だから無理すんなっていったろ?」


「でも……せっかくチャンスだったし」


 一体何のチャンスなんだよ。言葉の意味が理解できなかったが、気にしないでおく。

 それから残りの野菜味のジェラートは俺がなんとか食べきりました。デザートなのに、デザートじゃなかった感じだったけどな。



 店から出ると、街を照らす太陽が傾き陰が伸び始めている。

 時間は昼過ぎぐらいか? さてこれからどうしようかな?

 俺はこれからの予定を考えながら、あたりの店を見渡す。


「……?」


 すると視界の中に、ある光景が入ってくる。

 路地の中に逃げるように走る一人の少女。茜色の髪の毛が特徴だ。それを追うように路地に入る三人のスーツ姿の男達。


「あれって確か……!」


 この大通りでぶつかった、追われてる女の子だと思い出す。

 あの子まだここから逃げてなかったのか……!

 そして同時にとあることも思い出す。リリナが言っていた。あの少女は神力を持っていると。


「零……今のは」


 どうやらリリナも見ていたようで、その路地を見ながら喋る。


「ああ間違いないな」


「どうするの?」


「……あの子は神力を持ってる。なら何か神の子に関係する事が起きてる可能性がある」


「それじゃあ追うんだね?」


 リリナの問いに俺はうなずく。あの子から何か聞くことで、今この街で起きていることが掴めるかもしれない。

 でもこのまま追えるのか? リリナ達がいる状態だと、こいつらに危険が及ぶ可能性がある。

 歯を食いしばってどうするか悩んでいると、横から声が聞こえる。


「大丈夫だよ零君。私達なら」


「そうは言ってもな……」


「私の炎で焼けないものはないよ? リリナを護衛するなら私に任せてよね」


 頼もしい表情で俺を見るシェリア。するとシュエもそれに続くように喋る。


「私もいます。こんなときの為に着いてきたんですから」


「……わかった。でも戦闘が始まったら俺に任せてくれ。お前達は自分の身を守ることに専念しろ」


 その言葉に全員がうなずく。俺達は少女が入っていった路地へ向かう。

 心の中には、一つの思いがあった。もう、間に合わなくなるのは嫌だと。

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