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俺達は神【世界】を否定する  作者: 十文字もやし
三章 商業国ストリア編 神を作ろうとする者達
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36話 ストリアの街。新たな謎

「ふぁぁぁ……」


 大きな欠伸をしながら歩くリリナ。その横を歩くシェリアも同じく欠伸をしている。


「おいおい、大丈夫か二人とも? 今から人ごみの中を歩くんだぞ?」


 列車内の通路を歩き、出口を目指す俺達。一日経った今、この列車は商業国ストリアへ着いた。

 歩きながら小窓の先を見ると、沢山の人が歩いているのが見える。そして乗車した時と同じ場所から降りると、広がる景色はまた違った。


「ここが……ストリア」


 大勢の人達。まだ駅だというのに、その人の数は帝国を超える人達。周りには俺達の列車だけでなく、同じような黒い車両がいくつも並んでいる。中には白色の物も見える。

 雰囲気としては日本の駅とは違い、外国にあるような駅。天井が鉄骨で組まれ、ガラス張り。いくつかの乗車場所が用意され、その両端に列車が止まっている。


「私達が乗ってたのがこんなに沢山……」


 周りに見える黒い車両をグルッと眺めながら、リリナが口を少し開けて見ている。

 確かにこれだけ集まってるのはすごいよな。日本でもあんまりないんじゃないかな?


「中々新鮮な反応だな嬢ちゃん、でもまだ序の口だぞ?」


「もっとすごいの?」


「ああ、町に出ればわかるさ」


 そのファルガの言葉に、ワクワクしたような期待の表情を浮かべるリリナ。

 実は俺も内心少しワクワクしてるんだよな。一体どんなところなんだろうな、ストリアの街ってのは。

 するとリンが俺の肩を叩く。


「珍しいわね、あなたがそんな顔するの」


「ハハハ……実は結構楽しみなんだよ」


「まあ暗い気分で旅しても辛いだけだし、楽しむことも必要よね。でも、まずは宿に行くわよ」


「姉ちゃんの言うとおりだな、とりあえず荷物を置いてからだ」


 リンとファルガが前を歩いていく。それについて行くようにシュエとシェリアも走っていく。

 その時、俺の手が握られる感触がした。手を見るとリリナの小さな手が繋がれている。


「零が迷子にならないようにね」


「それは俺よりお前の気がするんだが……まあいいか、お互い迷子にならないようにだな」


 人が多いし、割と本当にそんなことになりそうだ。

 手を繋いだ状態で、俺達は皆を追いかける。



 駅を出て街中に出る。そこはガルム帝国の町並みとはまた違った感じだった。

 俺の世界でいうアメ横とかそんな感じで、周りには至ることろに店が陳列している。一階だけでなく二階三階と店があるところもある。勿論人も多い。


「ここが大通り、最もストリアで人が賑わう場所だな」


 駅も近いことから、おそらく観光客とかを狙っているんだろうか?

 背伸びして大通りの先を見渡すが、人ごみばかりで先が見えない。一体どこまで続いてるんだ?

 するとファルガが、俺やリリナ達に注意するように言う。


「お前ら気をつけろよ? 人が多いから当然スリなんかもいる。それと偽物を売りつけてくる輩もいるからな」


「気をつけるよ」


「まあ俺に聞けば一発で判別してやるさ!」


 自慢げに言うファルガ。流石だな頼りになるぜ。

 しかしそのファルガの自信を崩すように、シュエがボソっと呟く。


「でも、お父さん何回も騙されてるよね」


「おい、余計なこと言うな!」


 あー被害にあって学んだってパターンか。頼もしいんだが、頼りないんだか……

 そういう点では俺達のリーダー的存在、リンはいつも頼りになるんだよな。困ったときはリンに聞け! と言っても過言じゃない。

 俺は尊敬の眼差しでリンを見る。しかしリンの目は何だか輝いている。


「あれ? どうした?」


「ストリアで買い物とかしてみたかったのよねー新しい銃とか見てみたいし!」


 リンって意外と武器オタクなのか? そいうえば、いつも自分の銃を丁寧に手入れしてるのはよく見たな。うっとりした目で。

 その意外な一面に、驚かされる。


「さて!! さっさと荷物置きに行きましょ!」


 グイグイと俺の腕を引っ張るリン。この人駄目だ、暴走してらっしゃる。

 その様子を見て苦笑いするみんな。


「リンさんが暴走してる……」


「一番楽しみにしてたのは……あの姉ちゃんか」


 ファルガとシュエがその様子を見て呟く。

 俺はというと、リンに引っ張られながらこう思ってた。この面子……大丈夫かな?

 なんとかリンを落ち着かせて、解放される。今俺達はなるべく固まって行動し、はぐれないようにしている。


「むー人が多い」


 人に押されたり押したりして、文句を言うシェリア。さらに周りは大人ばかりで、子供のシェリアはどちらかと言うと潰されるような感じだ。

 そんなシェリアに俺はもう片方の手を差し出す。


「迷子になったら大変だからな」


「……うん!」


 満面の笑みで俺の手を取る。その様子をジーと見ているシュエ、しかし残念ながら両手塞がってるんだよな。


「なんだシュエ、お前さんも神城と手を繋ぎたかったのか? しょうがねえなー俺が変わりに繋いでやろう!」


「いや、お父さんはいい」


 その一言に、漫画のように顔に黒い線が入る感じで、ショックを受けるファルガ。一言「娘に拒否された……」と呟く。


「なるほど……あなたはそうやって無意識に好感度を上げてるわけね」


 俺の様子を見ながらリンが喋る。


「好感度ってお前なぁ……ただ慕ってくれてるだけだよ」


 ハァとため息をつく。そのため息と同時にリリナやシェリア、リンもため息をつく。なんでお前らまでため息してんだよ。

 どうせ聞くと面倒な顔をされると思ったので聞かなかった。

 その時だ、何かが飛び込んだような、小さな衝撃が入る。一瞬目を閉じてその衝撃を受け止める。


「あ! ご、ごめんなさい!!」


 目を開けると茜色の髪で、ウェーブのかかった背中までの髪に、右側を三つ編みしている少女。首には黒いチョーカーをしていて、白のブラウスに、スリット部分に赤いリボンがついた膝丈までのスカートを履いている。全体に赤色が目立つ服装だ。

 少女は慌てた様子で後ろをチラチラと見ている。


「あの! 大丈夫ですか!? 怪我とかしてないですか!?」


「大丈夫だから、落ち着けって」


 この子の慌てっぷり。なんだかどこかで似たような光景を見たような気がする。

 そこで思い出した、これはリリナと会った時と一緒だ。ということはこの子は誰かに追われてるのか?


『おい! いたか!?』

『いないぞ?』

『よく探せ! まだ近くにいるはずだ!』


 人ごみの奥から聞こえてくる数人の男の声。

 俺は視線をしたにずらし、茜色の髪をした少女を見る。どうやら俺の予感は当たったみたいだ。

 少女は俺達から離れて逃げようとする。俺はとっさに少女の手を掴む。そして引き寄せると、コートの中に隠すように覆う。前にオッサンと配置して後ろにリンを。少女のいるコートの周りにはリリナ達で囲むようにする。

 とっさの出来事に、抵抗する少女。俺はその子を落ちるかせるように呟く。


「いいから動くな。あいつらが行くまで匿ってやるから」


 その言葉に反応するように、少女は動きを止めてじっとする。

 しばらくして男達は去っていき、俺は一息する。どうやら大丈夫みたいだ。


「大丈夫だぞ神城」


「ああ。ほらもういいぞ」


 コートから出てくる少女。何故匿ってくれたのか不思議そうな顔をしている。

 まあこんなことは初めてじゃないしな。困ってる子がいるんだから、助けるのは当然だ。


「あ、あの……ありがとうございます!」


「気にすんな、それより何かしたのか?」


 俺の問いに口を閉じてうつむく少女。訳ありってことか。

 無理に聞くわけにもいかずに困る。そう悩んでいると少女は俺達から離れる。

 そしてペコッと頭を下げてお礼すると早々と去っていった。


「行っちまったな……」


 その様子を見て呟くファルガ。少女は人ごみに紛れてしまい、もう見えない。


「何だかだた事じゃない雰囲気だったわね……どっかのお嬢様かしら?」


 色々と考えを浮かべるが、どれもピンと来ないな。するとリリナが震えた目でその子を見ていた。


「あの子……どうして」


「リリナ……? どうした……?」


 そしてリリナはその大きく見開いた瞳で少女が紛れた人ごみを見つめていた。

 瞳はゆらゆらと揺れて、信じられない。そんな感じをしていた。


「なんで……神の子でもないのに――神力を持ってるの……?」


 その一言に戦慄するこの場にいる全員。ガルム帝国の神兵(フール)でもない、神の子でもない。ただの少女に神力が宿っているから。


「わかったのか……?」


「私は生命力が見えるから。だからあの子に神力が宿ってることがわかったの。それにどうして……」


 そしてリリナが次に発した言葉は、今まで体験してした常識を覆す内容だった。


「あれだけの神力に体を侵食されてないの?」


 強すぎる力は自らを滅ぼす。ガルム帝国で戦ったバートは神力によって体を蝕まれ、怪物へと変わった。おそらく、あの子はあのバート以上に神力を保有し、何故か体を侵食されていない。リリナが驚いているのはそこだろう。


「この街で一体何が起きてるんだ……」


 不安を感じさせない、賑やかな人だかりをみて呟く。

 賑わう街中。だが確実に、この街の内部では何かが起きている。

 神の器と呼ばれる少女達が、神の子が誰かに道具として扱われている。この街の闇の根は深く、そして俺はここで新たに非情な現実を思い知る。


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