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俺達は神【世界】を否定する  作者: 十文字もやし
二章 シュトラスの町編 暖かい町、そして無情な現実
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31話 死神のような少年

 フラフラと夜道を歩いていく。光りの指す先には、森の中へ続いていた。町からもう1時間は歩いてた。結構な距離だ。

 薄気味悪い森の中へ入っていくと中に見えたのは古い洋館のような建物。光りはこの先を示している。


「ここか……」


 目には憎しみを感じ取れるほどの憎悪。俺はフラフラと歩いていく。

 入口らしきところは鉄格子の門で閉じられていたが、俺は構わず前を進む。霧に触れると、鉄製の門が人の形に切り抜かれたように、消え去る。


「ああ? なんだお前?」


 門を過ぎるといたのは一人の男。

 黒いマスクをして、砂のような茶色い服装。半そでの黒いジャケットを着ている。そして腰には剣が刺さっていた。


「おい止まれガキ」


 その言葉を無視して進む。

 耳にはこいつの言葉なんて聞こえていない。


「止まれって言ってんだよ!」


 男が剣を抜くと、俺のほうへ歩いてくる。

 そうか、こいつらが……町の人を殺したのか……! とたんに、憎しみの感情が高ぶる。

 男に俺の声が聞こえる距離になったとき、一言呟いた。


「……消えろ」


「あ? お前何言――」


 俺は見張りである男の横を、何事も無かったかのように通り過ぎる。

 通り過ぎた後には、男の姿は無い。ただ地面に血が少し滲んでいるだけだ。

 何のためらいも無く、人を塵に変えた。不思議と、人を殺したことに恐怖が無い。おそらく負の感情が高ぶりすぎて感覚がおかしくなっているのだろう。


「…………絶対に……許さない」


 俺は入口の木製の扉を消すと中へと入っていく。

 内装は古い洋館のような感じで、石で作られたような頑丈な壁が見える。入ってすぐに左手に二階へ続く木製の階段。一階は奥に大きな扉と横にも数箇所扉がある。壁に掛けられたランプのような物がうっすらと室内を照らしている。

 光りを見ると、光りは上を示している。その光りに導かれるようにゆっくりと進んでいく。


「おいお前何者だ!?」

「見張りは何してる!?」


 俺の姿を見て、数人の男たちがやってくる。格好は全員一緒か。


「見張り? ああ、それなら俺が――消した」


 そして一人の男が警戒するように近づく。


「こいつ……なに言って――」


 次の瞬間、その男の右肩までが塵となって消える。

 肩からはまるで噴水のように血が飛び散りだす。断面からは真っ赤な肉と骨が見えている。


「ギャァァァァ!!! 体がァ!!」


 洋館内に響くほど叫び声。その声を聞いたのか、周りの部屋が騒がしくなりだす。

 後ろにいた男は何が起きたから理解できていない様子でその一連の様子を見ていた。


「うるさいな。消えろ」


 躊躇無く、その叫び声をあげる頭を削り取るように霧を伸ばす。霧に触れた瞬間頭は消滅し、残ったのは右肩のない胴体。

 その頭の無い胴体は力なく倒れていく。


「なんだ!? お前何をした!?」


 残った男が槍をを抜くと構える。槍はカチャカチャと鉄の金具が当たるような音がする。

 恐怖なのか手は震えている。だから音がするのだろう。


「言っただろ? ただ、消しただけだ。それと――邪魔だ」


「こ――!」


 その男は叫び声を上げる間もなく霧に全身を包まれる。こいつも手品のようにその場から消え去った。

 不思議と冷静だった。人ってここまで残虐な性格になれるんだな。俺の中には、こいつらを残さず――消したい。それだけだった。


「何が起きた!?」

「おい、あれを見ろ! 敵だ!」


 周りの扉が次々と開き、中から大量の盗賊達が現れる。一階、二階と男達で溢れかえるほどだ。

 数はざっと、30人ほど。俺は階段の間に挟まれるように囲まれている。まだ他の部屋から声が聞こえるってことは、まだこの倍はいるか。


「何者だお前は?」


「……そうだな、とりあえず化け物って言っとくよ」


「なんだと?」


「それとさ、お前ら邪魔だから――消えてくれるか?」


「は? ……腕が消え――」


 俺に一番近い、二階にいた男の姿が、腕からどんどん侵食するように消えていった。

 その一瞬の出来事に、周りを取り囲んでいた盗賊達はゴクリと息を飲むように見た。額には汗、顔には恐怖や怒り。それぞれ様々な感情を見せている。


「や……! やれ! 全員で攻撃しろ!!」


 一人の男が錯乱したように叫ぶ。その声に全員武器を構えたり、身体を赤や緑などの魔力で覆い、魔法を発生させようとしている奴もいた。

 そうか、今のを見ても俺を殺すつもりでいるのか。でも俺の霧にはあいにくだが……そんな物通用しない。


「お、おい! 何だよあれ! 近づいた奴から消えてくぞ!?

「俺は死にたくねえ! 逃げるぞ!!」


 勝てないと悟った奴が少しずつ逃げていく。

 おいおい、関係の無い人たち殺して自分は助かるってか?


「逃げるなんて――させると思うか?」


 洋館内の退路を塞ぐように、入り口や通路を霧が覆い始める。


「そんなに逃げたきゃ、俺を殺してからにしろ」


 入り口の霧の前で、歯を食いしばるようにする数人の男達。

 そして俺を見ると、鬼のような形相で睨む。その目からは憎悪が感じる。


「こんな力、報告で聞いてないぞ……! 注意人物はあの、炎使いの少女だけじゃないのか!?」


 何をしても攻撃が通らない様子を見てそう叫ぶ。


「ま、魔法も全く効いてない……どうなってるんだ」

「こんなスキル、聞いたことねえよ」

「諦めるな! 俺達は『蒼目のライナス』の一員だろ!」


 『蒼目のライナス』それがこいつらの通称か。ということはライナスって奴がボスらしいな。


「この野郎! これでもくらいな!」


 カランという音が聞こえたと思うと、俺の周りに霧に触れない距離にスプレー缶のような物がいくつか転がっている。

 そして盗賊達は逃げるように、俺からできるだけ離れていく。そして一人の盗賊がニヤリと笑う。

 次の瞬間、俺の周りが光ったと思ったら。大爆発を起こす。


「どうだ! 魔力を蓄積させた特製の爆裂弾だ!」


 洋館が揺れるほどの轟音と衝撃。天上からはパラパラと埃や砂が落ちて来る。


「洋館が壊れるが……しょうがねえ。だがこれなら奴も死んだ……え?」


「普通の人なら死んでるだろうな。だが言っただろ――俺は化け物だって」


 その爆発の中心部から現れたのは、無表情で歩く俺の姿。

 身体には汚れ一つついていない。その異様な光景に、この場にいた全ての男達が驚愕の顔をしていた。


「ば……化け物だ!」

「死にたくねえよ!! 出してくれ!!」


 俺と戦う意思を見せるものは誰もいなかった。この場から逃げたい、助かりたいと思う者しかいなかった。

 助かりたい一心で入り口に捨て身で突撃するもの。だが外に出たときには身体は全て消え去っている。


「頼む! 見逃してくれ!! 俺達の意思じゃないんだ!!」


「意思じゃないなら……なんで町の人を殺した?」


「それは命令だからだ!! だから頼む!!」


 命乞いするように足をついて俺に許しを請う。

 お前らは今までに何人殺してきた? その幸せを奪い取った?

 自分だけ助かろうなんて……都合がよすぎないか?


「話にならないな。お前らも味わえよ、殺される側の恐怖ってやつをさ」


 命乞いする男を頭から足にかけて一瞬して塵に変える。


「お前だって……!! お前だって人を殺しているだろ!! 矛盾してんじゃねえか!?」


「そうだな。俺は人殺しだ。だが俺はあいにく……私利私欲のために関係の無い人を殺すほど、おちちゃいない」


「この人殺しがぁぁぁ!!」


 複数の盗賊が錯乱した表情で、捨て身で突撃する。

 だがその突撃も空しく、男達は一人、二人と消えていった。

 周りを見渡せば、あれだけいた盗賊達も10人もいない。武器を捨ててガタガタ震える者、壁を破壊して逃げようとする者。その姿は様々だ。


「悪いな。今回ばかりは……俺はお前らを見逃すわけにはいかない」


「死にたくない!! 嫌――!!」

「ああ……来るな……! 来る――!!」


 徐々に消え去っていく盗賊達。悲痛の叫び、断末魔、色々な叫び声が聞こえた。

 お前らは……今の俺みたいに、助けを請う人を今みたいに殺してきたんだぞ?


「……静かになったな……」


 俺以外の人間は全て消え去り、静かになった。

 さて、あとはこの光に向かって進むか。するとその時、二階の奥の部屋から声が聞こえる。


『い……!! 放……て!!』


「この声……シュエ!?」


 俺はその声が聞こえた扉へと駆け出す。まだ生きている。

 シュエがいるなら、周りに他の人もいる。光もその辺りを指してる。今度こそ間に合ってくれ!






 零が進入しようとする数分前。

 ここはとある一室。教室のようなほどの広さで、周りには20人ほどの盗賊達がいる。

 そして部屋の中央に置いてある黒い椅子に偉そうに座る男。右目が蒼く、赤髪。服装は男達とあまり変わらないが、黒いコートのようなものを羽織っている。


「……こいつは奴隷いきだな」


 男は目の前にいる女性を見ると、そう呟く。

 そしてその声を聞いた二人の盗賊はその女性を引きずって、部屋の横にある、鉄で作られた部屋へと放り込む。


「次でラストか……つれて来い」


 その声と同時に扉が開かれる。現れたのは雪のような髪色をした少女。腕は縄のようなもので縛られている。


「ほーお。中々いいガキだな」


 その言葉にキッと睨みつける少女。その目には殺意が込められている。


「神の器にしてはもったいないな……」


「……どうして。どうして、こんなことするんですか?」


「あ? そりゃ決まってるだろ。金だ」


「お金のために……人の命を……!!」


「いいかガキ、教えてやる」


 男は立ち上がると、少女の前に歩いていく。

 そしてその髪の毛を触るように、少女の顔を見る。


「世の中ってのはな、力がある者が支配する。そしてそれは力がある者が、金を持つのにふさわしいんだよ。お前らみたいに力の無い弱者は……こうやって支配されるんだよ」


「外道ですね……! その力で誰かを救おうと考えないんですか!?」


「偽善で飯が食えるか? 偽善は金にならねえからな。だからする意味はない」


「腐ってますね、あなたの頭の中は!」


「おいガキ、口の聞き方に気をつけろよ。お前自分の立場を考えろ?」


 そして男は何かを思いついたようにニヤリと笑う。


「ちょうどいい。俺に歯向かうとどうなるか――教えてやる」


 男は周りにいた数人の男を手招きで呼ぶ。


「なあお譲ちゃん。俺はよ、お前みたいに気の強い奴が、泣き叫ぶのが好きなんだよ。俺の部下にはちょうど……お前みたいな子供が好きな奴がいてなぁ……」


「……!!」


 少女の顔が恐怖に染まる。これから何をされるのか気づいたような表情だった。


「いいんですかボス? こんな可愛い子を」


「構わん。好きにやれ」


「へへへ、こりゃこいつがどんな顔すんのか楽しみだな」


 近寄る男達。その姿を見て縮こまるように震える少女。


「嫌……来ないでください……!!」


「悪いなお譲ちゃん。楽しましてくれよ!」


 男の一人が少女の腕を掴むと、引き寄せるようする。もう一人がその身にまとう服を掴むと引き破る勢いで引っ張ろうとする。


「やめて!! 放して!!」


 少女は叫ぶ。だが心では諦めがあった。

 これから私はこの男達に犯されて、惨めな姿になるのだと。予想したような顔だった。

 この空間には絶望しかなかった。


(お父さん……ごめんなさい)


 心でそう思った時だった。扉が勢いよく開けられる音が聞こえる。

 その涙ぐんだ目で、音の聞こえた場所を見る。そこに映ったのは黒髪で、灰色のコートを着た少年の姿。


「シュエからその汚い手を放せ」


「ああ? なんだこいつ? どうやって入った?」


「……零さん? どうして……?」


 少女はどうして零と呼ばれる少年がここにいるのか謎だった。

 どうやって来たのか? 他の盗賊達はどうやったのかなど。色々と謎なのだろう。


「遅くなった……助けに来たぜ」


 さっきまで絶望だった空間に、一筋の希望の光が差した瞬間だった。

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