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俺達は神【世界】を否定する  作者: 十文字もやし
一章 ガルム帝国編 二部 神秘の炎を纏う、5番目の少女
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21話 旧地下水路

 一体何人殺した? 一体何人消した?

 息を切らしながらただただ、走った。不安で、辛そうな表情をしながら。


「零……大丈夫?」


 その様子を見て心配したのかリリナが訊いてくる。

 人を消す、殺すというのは慣れない。いや慣れたらだめだ、人を殺すことに慣れるのは……


「大丈夫だ、それよりもうそろそろ着くぞ」


 場所は地図でいえば、城の東側のマークされている目的地周辺のはずだ。

 目の前には徐々に行き止まりを示す城壁が見えてくる。


「あ! リン!!」


 シェリルが城壁の近くにいるリンの姿を発見して叫んだ。

 どうやら何事も無かったみたいだな。よかったよ。


「みんな無事ね?」


「お前もよく無事だったな」


「あなたが騒動を大きくしてくれたおかげでね」


 その言葉に俺は苦笑いをする。

 さて、目的の場所には来たわけだけど、ここからどうするんだ?

 俺は目の前にある城壁を見上げてそう考える。飛び越える……なんて言わないよな?


「リンさん、どうするの?」


「ここは、兵士達が出入りする小さな扉があるの。それを利用して脱出するのよ」


 暗闇でよく見えなかったが、城壁の一部に鉄のような扉が一つポツンと作られている。

 なるほど、正門から逃げるよりはこっちのほうが目立ちにくいな。


「さて、あなたの霧でこの扉を消してくれる?」


「任せろ」


 扉に近づき、霧で扉を塗りつぶすように覆う。瞬きもしない間に霧に覆われた扉は消えてしまった。

 穴からは城壁向こう側。町の様子が見える。


「行きましょ、時間はないわ」


 リンのその言葉に俺達三人はうなずき、その人一人通れるぐらいの扉の穴を潜っていった。

 扉を潜ると見えたのは、帝国の町なのだが。いつもと雰囲気が違う。なんというのか……栄えていない感じ。


「……ここはお金が無い、裕福じゃない人が住んでるところなのよ」


「だから……活気が無いのか」


 あの近代的な感じの都市からは想像が出来ないな。スラム街とかそんな感じかな。

 よく町を見ればホームレスのような人達もいる。どこの世界ににも……こんなところはあるんだな。


「……着いてきて」


 リンはそのまま俺達を連れて街中へ走っていく。

 街中はごみが落ちていたり、道路が凹んでいたりと、環境も悪そうだった。周りを見ても高いビルなんかは無く、家が並んでいるだけだ。

 そしてリンは家と家の間の狭い路地へ入っていく。


「……来たか」


 狭い路地を進んでいくと民家の小さな庭のような場所に着いた。

 そこにいたは頭がツルツルのおじさん。まあ禿げだな。

 白いタンクトップに、ボロイジーンズのような短パンを履いていた。


「話は聞いとるぞ。……本当にいいのか?」


「ええ、私はこの子達を助けに行くわ」


「……神の子を助けることは、お前の目的でもあったからな……ワシは何も言わんさ」


 俺はこの親父の言葉から衝撃なことを聞いてしまった。リンが……神の子を助けるのが目的?

 頭の中には何故? という単語が浮かぶほどだった。


「もう……あれから7年か、早いもんだな」


「その話はしないって約束でしょ?」


「そうだったな、悪い」


 親父は「さて」と言いながら重たそうな腰をあげると、岩畳で出来た花壇のような場所へ移動した。そしてその一つの石をどける。

 石の下から現れたのは穴だ。一体何の穴なのかはわからない。これがリンの言う脱出の方法か?


「さあ行け、兵士共は誤魔化しておく」


「ありがとう、おじさん」


 リンはそう言うと、その穴を下りていった。

 カンカンと梯子を降りるような音が聞こえたことから、何かの洞窟だろうか。

 親父は俺とリリナ達を見る。


「お前さんが例の坊主か……」


 俺の目をジッと見つめる親父。そして何かがわかったような顔をした。

 そして俺の肩を叩く。


「強い目だ、お前ならこの子達を守れるだろう」


「おっさん……あんた何者だ?」


「ワシはただの禿げた親父。昔リンを世話してやったぐらいだ」


 そして親父は最後に俺に言ってきた。


「リンを頼んだぞ、坊主」


 その目は真剣な眼差しで、娘を託す父親のような目つきだった。

 この親父はリンの育ての親みたいな感じなのか……


「……わかった、任せてくれ」


 俺はそう言うと、穴を降りていく。俺の後からリリナ達も梯子を降りてきた。

 4メートルぐらいだろうか? それぐらい降りると下にはリンが待っていた。

 薄暗い洞窟のような場所。横幅は俺が四人分ぐらいしかない中央には水路なのか水が少し流れている。


「なにここ……? 気味悪いよー」


 シェリアは薄気味悪さで怯えた声をだしながら俺にくっつく。リリナも少し怖いのか俺にくっついている。

 そんなにくっつかれると動けないんだけど……


「ここは旧地下水路よ、昔使われてたの」


「それで水が流れてるわけか」


「ここを通れば、帝国の壁を抜けなくても外に出れるわ」


「……なんでそんなこと知ってるんだお前?」


「まあ昔色々調べてた時期があったのよ……その時にね」


 昔ね……神の子についてだろうか。そう思った俺だったが口には出さなかった。

 するとリンはポケットから細い棒を取り出す。そして手が白く光ったと思ったら棒が明るく光りだす。

 あれはライトみたいなもんか? 形はまるでただの定規ぐらいの長さの棒だが。


「魔物とかは出ないとは思うけど……念のため警戒はしていてね」


 ホルダーから黒い銃を取り出して構えるリン。俺も腰から刀を抜くといつでも戦闘態勢がとれるようにしておく。

 そして俺達四人はその地下水路を歩き出す。



 天井から滴り落ちた水がポチャンと鳴ったり、ピトと鳴ったりして不気味さを漂わせる。

 コウモリみたいな生き物や蜘蛛などの小さな虫もいるみたいで、シェリアとリリナはブルブルと震えながら歩いている。


「おい……そんなにくっつくな、歩きにくいだろ」


「だってぇ……」


「怖いもん……」


 ため息をつきながら二人の様子を見る。まあ11歳だし仕方ないんだろうけど。

 仕方なくそのまま歩きにくい状態でリンに着いていく。


「なあ……あの親父さんって、お前の父親なのか?」


 さっきの禿の親父についてリンに訊く。リンは前を向いたまま無言でうなずいた。


「本当の父親じゃないけどね……」


 そしてリンは自身の過去について少しだけ語りだした。


「私は小さい頃に戦争で両親が死んだの。それで国の保護施設に入れられた……」


 保護施設……俺はその言葉にあることが思い出した。


「神の器……か」


「知ってるの?」


「この間ちょっとな」


 神の子になれる候補、それが神の器。この帝国は捨て子などを無償で引き取り11歳まで育てる。そして神の子になれず、素質の無い少女達の末路は……

 俺はその先を思い出したくなかった。グッと目を閉じてその先を考えないようにした。


「それでね……私は神の子になれなかった。素質もなかった私は……売られるか処分、どちらかだったんだ」


 奴隷とされるか、処分されるか。どちらも最悪の選択、生きる意味で言えば奴隷はいいだろうが……それは一生、人として扱ってもらえず終えることを意味する。


「それで、あの人が私を引き取ってくれたのよ」


「父親代わりってわけか……」


「あの人は私の恩人でもあり、父親みたいな人だから……」


「それで神の子の辛い運命を知って、こいつらを助けようとしたのか?」


「まあ、そっちも色々と理由があるけどね……まあそんなとこよ」


 自身が神の器として育ち、神の子の運命を知った。それで助けようとしたんだろう。

 こいつも……この世界の被害者ってわけなのか。


「さて、ちょっと休憩しましょうか?」


 俺達はレンガのような壁にもたれかかると、一息つく。

 ずっと走りっぱなしだから足が痛いよ。元陸上部でもこれは堪えるな。


「……ねえ、これからどうするの?」


 シェリアが不安そうな声で訊いてきた。その問いにリンがすぐに答えてくれた。


「ここを出たら帝国領から離れた隣町へ行く予定よ」


「俺達のこと知られてたらまずくないか?」


「大丈夫、帝国は二人も神の子がいなくなったなんて、外部に漏らせないわ。そんなことしたら、他国に狙われかねないもの」


 ガルム帝国は一月も経たないうちに、三人の神の子を失ったことになる。そう考えるとかなり戦力的にまずい状況なのだろう。

 帝国外にはその情報を、安易に漏らすわけにはいかないわけか。俺はリンの言ったことに納得するようにうなずく。


「その町を出たらとりあえず、ストリアへ目指すわ」


「ストリア?」


 ストリアという町の単語に俺は首を傾げる。

 するとリリナがそれについて補足をいれてくれた。


「商業国ストリア、どこにも敵対しない中立国家だよね?」


「そうよ、中立国家ならあなた達も狙われにくいはずよ。それに他国の情報も集まりやすい」


 情報も集めれて、さらに神の子が狙われにくい場所か。確かにこれからの動きを決めるならもってこいの場所だな。

 そうと決まれば、さっさとここから出たほうが良さそうだ。


「そうと決まれば、行くか」


 俺のその言葉に他の三人も立ち上がる。さっきの同じような感じで歩き出す。



 数十分、薄暗い地下水路を歩く。地図や目印とかなかったら絶対に迷いそうだな。

 進んでも進んでも変わらない景色。壁、壁、壁そればかりだった。

 変わらない景色にそわそわし始めた時だった、リンが喋りだす。


「そろそろ出れるわよ」


「やったー!」


 その言葉によろこぶシェリア。俺の手を握る強さがすこしだけ上がる。

 リリナも顔がホッとしていることからうれしいのだろう。俺もようやくこのじめじめした空間から、出れると思うとうれしいよ。

 その時、俺は突然足を止めてしまう。


「……?」


 このときなんだろうか、なんだか嫌な予感を感じた。人間の防衛本能とやつだろうか?

 何故だかとても嫌な予感がする。背中や額に汗をかき始める。

 そして俺の予感は的中してしまう。


「――っ!!」


 刹那――背後から風を感じる。

 とっさに霧を発生させてその飛んできた何かを消し去った。

 今のは風か? 一体誰が俺達を狙っている?


「ちょ! なに!?」


「リン!! 敵だ!!」


「嘘でしょ!? この水路ってあまり知られてないのよ?」


 俺は二人をリンの元へ向かわせる、リンは二人を守るように前に立っている。

 そして敵の姿が徐々に光りに照らされて見えてくる。

 真っ赤な右腕が二本と黒い腕が一本。そして足は赤黒い色で、人間とは思えないほど太い。


「おい……嘘だろ……」


 その姿はどう見ても人ではない。だがこいつは知っている。

 こいつはあの時、シェリアの炎に焼かれて死にかけていた奴……


「やあ神城……また会ったね……」


 その人とは思えない怪物の正体は――――バートだった。


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