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俺達は神【世界】を否定する  作者: 十文字もやし
一章 ガルム帝国編 二部 神秘の炎を纏う、5番目の少女
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19話 帝国から脱出しろ

 穴から出ると、外ではリン達が壁にもたれるように待っていた。


「待たせた」


「来たわね、その子が……例の子?」


 リンはしゃがんでシェリアを見る。


「俺の仲間だ、警戒しなくてもいいぞ?」


 そういうとシェリアは、少しだけ緊張が解れたのか肩の力を抜く。

 しかしまだ慣れていないのか、俺の腕に抱きついている状態だ。それとなんだかリリナの視線が痛い気がする。


「私はリン・シューリオスよ、よろしくね」


 リンは握手をするために手を差し出す。


「シェリア……フリネイトよ、よろしく」


 ゆっくりと手を伸ばすとリンと握手するシェリル。

 その姿はなんだかぎこちない感じだった。


「ほらリリナもこいつに自己紹介しとけ」


 俺がそう言うとリリナはブスーとした表情でシェリルの前に行く。

 あいつなんで怒ってるんだ?


「リリナ・フローリア……よろしくシェリア」


 リリナは自分の自己紹介をする。

 なんだろうか、この二人の間に火花が見える。その様子は獲物を取り合うライオンみたいな……そんな感じ。

 するとシェリルはリリナの顔を見て、余計なこと言い出す。


「……リリナね……ねえあなたは――零君の何?」


「私は零の……恋――」


 リリナが面倒なことを言う気がしたので、俺はそれを妨害するように割って入った。


「妹だよ! 妹みたいな感じだ!」


「へー妹みたな感じ……」


 リリナは俺をキッと睨む。その目つきはめちゃくちゃ怖い。

 それを聞いてシェリアは小悪魔みたいな顔をしている。


「じゃあ――私が恋人になっても問題ないね零君」


「……は?」


 恋人だと? こいつは何を言ってるんだ。俺とお前の年齢差を考えろよ? 俺17だからな?


「おい冗談言うな……」


「冗談じゃないよ? 零君のこと好きだし。初めて私を認めてくれた人だもん……それに見られちゃったし」


 顔を赤らめながら、身体にゆっくりとくっつくシェリア。見られたってあれか、トイレのことか?

 するとリリナから赤いオーラが見えるほど、怒っているのがわかる。漫画だったら背景にゴゴゴとつきそうなほど。


「……零……見たってなに?」


「それは私も気になるわねーあなた何見たの」


「いや、あれは事故だ。決して見たかったわけじゃない」


「見たくなかったの? 私のトイレするところ」


「俺はそんな特殊な趣味はねえよ!!」


 あ、しまった。言ってしまった。

 するとリンからは軽蔑の眼差し。リリナはあの冷たい目で見ると思ったら……涙目で俺を見ている。


「グスッ……やっぱり零って……私に興味ないのかな……」


「大丈夫よリリナちゃん。あれは変態だから」


 おいおいなんだかお前ら激しく誤解してるぞ。というか今の状況理解してるよな?

 俺は一刻も早く逃げなくてはならないのに、いつまでも話しているこいつら。


「……あーもう変態でもなんでもいいからさっさと逃げるぞ!!」


「あなた認めるの?」


「認めねえよ!! とにかく逃げるぞ!!」


 俺はシェリアを連れて走る。後ろからリンとリリナもついてくる。

 リリナの顔がやっぱり怖かった。泣き顔だけど、まるで般若のような顔で俺とシェリルを睨んでたような気がした。

 とりあえず後で誤解を解こう……そう思った。


「リン、どこに行けばいいんだ!?」


「そうね、正門とは違って城内の東にある兵士達が使う小さな門があるわ! そこに向かいましょ!」


「東ってことは……逆じゃねえか、遠いけど大丈夫か!?」


 現在地はリンの言う場所とは全くの逆の場所。走って10分で着くぐらいだろうか?

 それに兵士達も巡回してるし、そろそろバレるはずだ。そうなるとかなり厄介だ。

 するとサイレンのような物が鳴り始める。城のいたるところから照明が照らし始め、暗かった外はまるで昼のような明るさへと変わる。


「まずい! 予想より早いわ!!」


「バレたのか!?」


「その子がいなくなったことがわかったみたいね。これはかなり面倒ね」


 おそらくこのサイレンを聞いてあらゆる場所から兵士がやってくるだろう。そうなると俺達がバレるのも時間の問題だ。

 どうする? 様々な考えを思い浮かべて俺は一つの方法を思いついた。


「なあリン、俺が囮になる」


「え? でもあなた……」


「大丈夫だ、俺の霧ならいける」


 そう言うとリンは俺の見て、納得したようにうなずく。


「じゃあこの子達は私が……」


 リンが二人を連れて行こうと言おうとした瞬間、リリナが俺も元へ走ってきて俺の空いてる方の手を握る。


「私も一緒にいる」


「えぇ!? リリナちゃん?」


「だって私は零の霧の中でも大丈夫だし」


 そう言うとリン「確かにそうね……」と呟く。

 そしてシェリアを見て、手を伸ばす。


「じゃあシェリアちゃんは――」


「なら私も一緒にいる!!」


 こいつもか。リリナはまだわかるけど、お前は……

 俺は霧の影響を受けるかどうかわからないシェリアを見て考える。リンはというと少し凹んだ様子だった。


「……シェリア、ちょっと動かないでくれ」


 俺は手を離すとシェリアの髪の毛の先端を持つ。そして手元に少しだけ白い霧を発せさせる。


「……何してるの?」


 一体何をしているのかわからない様子のシェリア。首をかしげて俺を見ている。


「嘘でしょ……消えない」


「ああ……やっぱり神の子だと消えないのか?」


 シェリアの髪の毛は俺の霧に触れても消えなかった。

 その様子を見て俺とリンは驚いていた。やっぱりか、これもリリナが言ってた受け入れるってのが関係してるのか?


「……リン、俺はこいつらを連れて逃げる。リンは裏からサポートしてくれないか?」


 そう言うとリンはため息をついて、懐から紙を取り出すと俺に投げて渡す。


「マークしてある場所は通りやすい道よ」


「流石リンだな、準備がいい」


「……その子達はあなたの能力の中にいたほうが、よっぽど安全だしね……私はあなたをサポートしながら目的地に向かうわ……」


「気をつけろよ?」


「あなたもね」


 そしてお互い背を向ける。

 同時に走り出すと声が重なるように叫んだ。


「「また目的地で!!」」


 俺は二人の手を握ると走り出した。

 右にリリナ、左にシェリルという感じだ。中の良い兄と姉妹に見えると思うぞこれ。


「なるべく見つからないように逃げたいが……」


 照明が当たってない箇所をなるべく進む。俺の姿は今兵士と変わらないが……二人を見られたらアウトだ。

 自身の影に隠すように移動する。しかし考えが甘かった。


「いたぞ!!」


「げ! もう見つかった!!」


 遠くから数人の兵士が走ってくる。

 何でこんなにもあっさりバレたんだ?


「神の子の反応あり……! 間違いないぞ!!」


 その言葉に俺は二人を見る。なるほど、神力を探知したわけか。


「動くな!!」


 気づけば左右も前も兵士に取り囲まれている。

 さっすが帝国一の警備能力だな。ここまであっさり囲まれるとは……

 俺は白い霧を徐々に発生させていき、俺とリリナ達を包むようにする。


「すごいな……まるで自衛隊みたいだな。でも……捕まるわけにはいかないんでね!」


 俺は無視して走り出す。その瞬間「撃て!」と聞こえる。

 後ろ、前、いたるところから降り注ぐ弾丸の雨。


「攻撃が何で効かない!?」


「邪魔だ!!」


 俺は目の前にいた複数人の兵士の片足を塵に変える。兵士達は体勢を崩しその場に倒れる。

 その横を避けるように走っていく。後ろからはさっきの兵士達のうめき声や断末魔が夜の城に響く。


「追え!! 絶対に逃がすなー!」


「チッ! 面倒だな!」


 俺は後ろを振り返りながら舌打ちをする。出来るだけ消さないようにしているが、無理がある。

 全員塵に変えれば楽だが……俺には出来ない。


「とにかく足止めしろ! 少尉が来るまで持たせろ!」


「でも、神の子もいるぞ……当たったらまずくないか?」


「大丈夫だ、あの化け物は傷ついても多少は再生するらしいからな」


 後ろから聞こえる声。俺はその一言に額に青筋が入る。

 そして足を止める。化け物だと……? どいつもこいつもこいつらを化け物扱いするのかよ!


「化け物? 本当の化け物ってのはな……俺みたいなことを言うんだよ!!」


 霧を風のように伸ばしてその男達の持っている武器を全て塵に変える。中には武器ごと手も消えたものもいた。

 その圧倒的な力を見てすくみ上がる兵士達。後ずさりする者もいた。


「こいつらの事化け物って言ったら……消すぞ?」


「ヒッ!」


 ギロっと睨むと、周りいた兵士達は少しずつ退散していく。しかし全員ではなくまだ戦う意思のあるものもいる。


「まだ戦うのか? 消えたいなら来いよ」


「このぉ! ただのギルド風情が!!」


 前、後ろから挟み撃ちをするように兵士が突撃してくる。持っているのは剣や槍といった近接系武器。

 なりふり構ってられないか! こいつらは消すしかない、そう考えていたときだ。

 その兵士達をなぎ払うように真っ赤な紅蓮が俺たちを囲った。


「零君かっこいいねー私、もっと好きになっちゃったよ?」


 俺は周りを囲む燃え盛る炎を見る。


「この炎……お前か?」


 右を見るとシェリアが真っ赤な炎を纏っている。

 不思議とこの炎は熱くなかった。それよりも、暖かいと感じた。


「お前、力抑えられてるんじゃなかったか?」


「零君の力で力を抑える首輪、消えちゃったみたい」


 ニコッと笑うシェリア。

 首輪って……そういえばこいつ、着けてたな……青い奴を。あれもオリハルコン製だったわけか。

 炎の壁が消えていくと同時に、周りの兵士から声が飛び交う。


「おい……No5も力が使えるのか?」


「オリハルコンで抑えてたはずだぞ……なのにあれだけの火力が出せるのか?」


「あんな化け物みたいな奴が相手じゃ俺たちじゃ……」


 圧倒的な戦力差に怖気づく兵士達。

 それも当然だろう。あらゆる攻撃を消滅させる霧だけでも恐ろしいのに、加えて神の子まで加勢している。誰だって諦める。

 するとそんな情けない兵士達を一喝するような声が聞こえた。


「情けないぞ君達。何三人に苦戦してるんだ!」


 兵士達を退けるように現れたのは一人の男。

 周りの兵士達と似たような、黒い服に鎧を着た男。しかし違うのは後ろに黒いマントのようなものを着けている。そして短い金髪。


「バート少尉! 来てくれたんですね!」


「君達が情けないから来たんだ! 全くそれでも我がガルム帝国の騎士かい?」


 周りの兵士達を叱るバートと呼ばれる男。

 少尉と言ったな……結構面倒そうなやつだな。


「さて……君がNo5を攫った人間か」


「攫った? 違うな、助けたんだよ」


「面白いね君……神の子を助けるなんてね」


 睨み合う俺とバート。その少しの間が長く感じるほどの緊張感だった。


「君があの『神の部屋』を消した張本人とは思えないね……魔力すら感じられない」


 そのバートの言った言葉に周囲の兵士達がざわつきだす。


「少尉……まさかこの男が……?」


「ああ、この男が第一魔学研究所『神の部屋』を消し去り、レオ少佐を殺した犯人――『ゼロ』だ」


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