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俺達は神【世界】を否定する  作者: 十文字もやし
一章 ガルム帝国編 二部 神秘の炎を纏う、5番目の少女
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18話 作戦決行

 暗闇の中動く俺達の影。迷彩のような物でも羽織っているのか姿は見にくいはずだ。


「…………ストップ、見張りがいる」


 リンの合図で止まる俺達。幸い気づかれていないようだ。

 俺達が被っているのは草や葉っぱなどをくっつた黒い布だ。宿舎を出る前に俺の提案で即席で作った。


「零の作ったこれ……意外とバレないね」


「子供の工作レベルの出来だけど……意外とうまくいくのね」


「失礼な……発想の天才だぞ俺は」


 リンは適当に返事をすると、なにやら懐から銃を取り出す。

 おいおいそれで撃つつもりか? そう思っていると同時に筒のようなものを取り出して先端に取り付ける。

 サランラップの芯みたいだな……サイレンサーってやつなのかな?


「――っ」


 リンの銃からはほとんど音もなく魔力弾が発射された。

 撃たれた男はその場に倒れると、気を失ったのかピクリとも動かない。


「ん……? おいお前、どうし――」


 その様子に気づき近づいた兵士を二人、続いて狙撃する。

 二人も気を失ったように倒れる。こいつすごいな、こんなこと出来るんだ。


「行きましょ?」


「リンさんすごいね……」


「まさか死んでないよな……?」


「生きてるわよ、ただ頭の魔力を乱して意識を失わせただけよ」


 簡単に言ってるけど、なんとなくそれがすごい技術なんだとわかる。

 こいつってやっぱりすごいわ。サポートなら右に出るものはいないって感じだな。

 倒れている兵士達の横を通り過ぎる黒い木の葉を纏った影。俺はその時二つ目のいい考えを思いつく。


「なあ、こいつらの服を着たらどうだろう?」


「こいつらの? まあ……確かに動きやすくはなるけど……」


「これでも限界あるだろうし……どうだ?」


 俺は手に持つ黒い布を見て言う。こいつらの服を拝借すれば結構楽になると……思う。

 少し悩むリン。そして俺を見ると、提案に賛同したようで、兵士に近寄る。


「あんまり男が着た服、着たくないけど……仕方ないか」


 渋々鎧と黒い軍人のような服を脱がしていく。時折「うわ……」と嫌そうな顔をしながら脱がしている。

 すまんなリン。まあ俺も人が着てた服を着るなんて嫌だけど……それに何が悲しくて男の服を脱がさなきゃならないんだ。


「ねえ、私はどうするの?」


「お前は着れないからな……とりあえず通りそれを羽織っててくれ。俺達が隠しながら行くから」


 リリナではブカブカ過ぎて着れないからな。こればかりはしょうがない。

 俺とリンは兵士の服をとりあえず羽織る。おおこれは汗臭いな……確かに女性のリンにとっては最悪だこれ。

 学校の授業で剣道の胴着を着たときのことを思い出した。あんな感じだった。


「行きましょう」


 急ぐように先を進むリン。あいつらしくない感じだ。

 おそらく一刻も早くこの服脱ぎたいんだろうな……まあそれに関しては俺も一緒だ。

 服を脱がされて、パンツ一着になった兵士を隅によせて隠すと、俺達は再びあの部屋の周りを目指して歩いた。



 あれから他の兵士に見つかって、うまく誤魔化したり。さっきみたいに気を失わしたりしてなんとか目的の場所へ着いた。

 ここは城の城門から見ると、一番西北に位置する場所だろう。俺のすぐ後ろにはまるで山かと思わせるほどの白く高い壁。目の前も同様で、高い壁に囲まれている。

 リンはなにやら腕時計のようなものを見ており、現在時刻を確認している。


「何事もなくてよかったね、零」


「そうだな……でもこれからが本番だぜ?」


 少し心臓の鼓動が早い。緊張しているのがわかる。

 風でカサカサと足元にある草が音を鳴らす。そのたびに肩がピクッと驚いたように震える。


「……9時……時間よ」


「ついにきたか……」


 リンは時計から目を離すと。俺を見る。

 俺はリンと目を合わすと、それが合図のように白い霧を発生させ始める。


「……今なら、引き返せるわよ?」


「何をいまさら」


「これをしたら……私達は二度とこの帝国に戻ってこれないわ……それでも?」


 リンは二度という言葉を強調したように俺達に言う。

 上等だ、やってやる。それに俺の決意はリリナを助けたときから初めから決まってる。

 俺はリリナに視線を送る。リリナもどうやら俺と一緒だな。


「……じゃあ、やりましょうか!」


 俺はその声を聞くと、あの部屋があるあろう城の壁を見る。

 そして人一人通れるぐらいの穴を開けていき、どんどん中へ進んでいった。


「ずいぶん厚い壁だな……」


 このまま貫通してしまうのではないかと思うほど厚い壁だ。

 神の子を閉じ込めるためにここまで強固な作りにするとは……それほどまで神の子ってのは重要で、強大な力を持っていることがわかる。


「お、ついたか……?」


 ほんの少し光が見えて、俺は着いたことがわかった。

 そして残りの部分を一気に消滅させる。


「待たせたな……助けにきた……?」


 足が止まってしまった。それはある光景を見てしまったから。

 別に部屋を間違えたわけでもないし、目的の場所に着いたんだ。そこはあの部屋と変わらない白一色だった。俺もあらかじめ言っておいたからわかってると思ってたんだ。

 俺が見たのは……パンツを太ももの辺りで持って俺を呆然と見ているシェリアの姿。


「……へ?」


「……」


 シェリアの顔が徐々に赤くなっていく。そしてそれと同時に身体に炎を纏いだす。

 まずい、ここで大声とか出されたら作戦が台無しになる。

 俺はとっさにシェリアの口を手で塞いで、大声を出せなくさせる。この光景って誰が見ても、犯罪者だな……


「んーー!!」


「落ち着けって! 大声出したら台無しなんだよ!」


 なんとか落ち着かせて手を離す。その瞬間俺に飛んできたのはシェリアのグーパンチ。

 腹にクリーンヒットした俺はその場に崩れて、うめき声をあげながら屈む。


「……女の子トイレ中に来るなんて最低……!」


「事前に言っておいただろうが……!」


 俺だって言っておいたのに、まさか本当にトイレ中だとは思わねえよ。


「だって……まさか本当に来るなんて思ってなかったんだもん」


「おいおい、言っただろ? 必ず助けるって」


「あれは、私を慰めるために言ってるんだと思ってたもん。だって……軍を、この国を敵に回すんだよ?」


 まあ常識的に考えれば国を敵に回すなんてしないよな普通。真剣に俺を見ているシェリアの顔を見てそう思った。

 でも俺はあいにく普通じゃない。あいつに命を救われてから俺は、軍だって国だって相手にする覚悟がある。


「それがどうした」


「どうしたって、零君私の言ってることわかって――」


 シェリアが最後まで言う前に、俺はそれを消すように喋った。


「お前達を助けるためなら、軍だろうと、国だろうと……世界だろうと相手にしてやるよ」


「なんで……? 私達のためにそこまでするの?」


「助けるのに……理由はいらないだろ?」


 神の子って俺みたいに世界に嫌われてるような感じがするんだ。

 寿命が短くなって、世界に狙われて、親からは見捨てられ、周りから化け物扱い……別に何にもしてない、ただ神の子ってだけでさ。


「あとはお前次第だシェリア」


「…………」


「このまま帝国の道具として生きるのか……俺と一緒に逃げてまだ見てない、この国の外を一緒に見るか――お前はどっちを選ぶ?」


 残るのか一緒に行くのかはシェリア次第。俺だって強制的に連れて行こうとは思わない。

 だが訊くまでもなかったようだった。


「逃げる! 零君と一緒に……ずっと逃げる!」


「世界から狙われて、過酷な生活が待ってるぞ?」


「それでも……零君がいるから、私はいいよ。だって、私を守ってくれるんでしょ?」


 俺はシェリアを見ると、その金色の頭に手を置いてニコッと笑う。


「当たり前だ。世界が敵に回っても俺だけはずっと味方でいてやるさ」


 リリナにも言ったこの台詞。

 俺はもうリリナだけじゃない、シェリアも、他の神の子達を助ける。あいつ等の味方でいてやるんだ。


「それじゃあ……行くか? まだ見ない世界を見に」


「うん!」


 俺はシェリアの手を握ると、空けてきた穴を戻っていく。

 さて行こうぜ、これが俺達の旅の始まりだからな。






 ここは神の子を監禁している部屋の入り口。

 扉の左右には兵士が二人立っており、不審な人物が入らないように警備している。


「……長いな」


 扉から見て右側の兵士の一人が壁に掛けられた時計を見てそう呟く。

 時間帯は9時を指している。この時間は神の子が唯一トイレが出来る時間でもある。


「そうだな……まさか逃げ出したとか?」


「馬鹿いえ、この部屋の周りは全てオリハルコン製だぞ? いくら化け物みたいな神の子でも無理だろう」


「しかし、万が一ということは無いか? たとえば暴神化するとか……」


「ありえない。仮にそんなことになったら俺達あっという間に消し炭だ」


 そう言われた左側の兵士は「それもそうか」と言って納得したように呟いた。

 待つこと数十分は経っただろうか。時計の長い針は若干動いている。


「いくらなんでも長いな……」


「……確認するか?」


「……しょうがない、確認するか」


 右側の男はすぐ後ろにある、黒いパネルのようなものをタッチする。

 そして何かを調べるようにタッチして行き項目を進んでいく。すると男の表情が急に変わる。


「魔力反応ロスト……!?」


「なに!?」


「おい!! 扉を開けて中を確認だ!!」


 左側の男が急いで扉に近づき、扉のパスワードを解除すると開ける。

 徐々に開く扉。足をばたつかせて落ち着きのない様子の兵士。そして通れるぐらいに開いたら潜るように入って行き、持っていたライフル型の銃を構える。


「……敵の反応なし……!」


 そして兵士は何もない部屋を確認すると、続いて魔力反応がロストした場所である扉を開けた。


「なんだと……」


 兵士はその様子の驚愕の表情で見ていた。後ろからもう一人も駆けつけてくる。


「どうした!!」


 もう一人の兵士も部屋の様子を見る。そしてその表情はもう一人と一緒で驚愕の表情に変わった。


「おい……なんだよ、この穴……」


 白い空間に出来た一つの穴。その穴目掛けて風が吹き抜けている。

 当然周りを見ても神の子らしき人影も無ければ、犯人の影も無い。


「まさか……No5が……」


「いや……違う……」


 右側にいた兵士はハッと何かを思い出すように、目の前にいる兵士に叫ぶように指示を出した。


「そうじゃない!! お前は今すぐ軍司令部に状況を伝えろ!! Sランク警戒態勢だ!!」


 その兵士は「わかった!」と叫ぶと、慌てた足取りで部屋を出て行く。

 一人になった兵士は、空けられた穴をジッと見ていた。その穴は溶けたのでもなく、崩されたわけでもない。そこだけ綺麗に削り取られたような感じだった。


「オリハルコンの壁をどうやって、それにまるでこの穴の開けられ方……!!」


 兵士は雷に撃たれたように表情を変えた。


「確か……レオ少佐の武器って……こんな感じに綺麗に削られてたよな……それに、消えた『神の部屋』……まさか!!」


 兵士は頭の中でまるでパズルのピースが合ったかのように、謎が解けたような顔をした。


「犯人は……あの事件と一緒だと!? どうやって……ここを!!」


 そしてまた一つ何か思い出したようにハッとした顔で気づく。


「この部屋を知る外部の人間……あのギルドのやつが……まさか」


 そして急いで部屋を出る兵士。さっきの兵士のように慌てた足取りをしている。


「まずい、この城内に奴がいる!!」


 兵士の足音が静かな夜の城内に鳴り響いていた。

 そして数分後にはこの城内は、夜とは思えないほど騒がしくなる。


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