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俺達は神【世界】を否定する  作者: 十文字もやし
一章 ガルム帝国編 二部 神秘の炎を纏う、5番目の少女
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16話 炎の少女

 徐々に火が消えていき、俺がいた場所は煙だらけで全く見えない状態になっていた。


「ふん……みんな燃えればいいんだ……」


「すげえな……これが神の炎ってやつか……」


「――!!」


 何事もない様子で姿を現した俺を見て、少女は唖然とした顔で見ていた。

 俺の足元以外は黒っぽくなっており焦げているかのように見える。だが俺の周囲は炎すら通っていないようだった。


「え……なんで?」


「おい、そう身構えるなって」


 身体に炎を纏ったまま警戒した様子で俺を睨む。

 この子は一体何をされてきたんだろうか? ここまで酷い憎悪は初めて感じた……


「こ、来ないで!!」


 さっきと違ってバーナーのような炎を放射させるが、それは俺に届くことは無かった。


「なに、その霧……なんで私の炎が効かないの……」


 一歩一歩少女に近づく。そのたびに少女は身体を縮こませながら、震える。


「来ないで……お願い……痛いことしないで……!」


 少女の目から涙がこぼれ落ちた。身体を小刻みに震わせながら怯えていたのがわかった。

 身体には炎はもうなく、その姿は普通の女の子となんら変わらない。

 その震える肩に手をそっと乗せる。その瞬間身体をビクッとする。


「大丈夫、そんなことしないから」


 肩に手を乗せたまま、俺はそう優しく言った。

 少女は体の間から覗き込むように俺を見ると、震えた声で「ほんとに?」と言った。

 その問いに答えるように俺はニコッと笑う。


「なんで……? あなたは……私を利用しに来たんじゃないの?」


「どうしてお前を利用する必要がある?」


「だって……私、神の子だよ?」


「俺、ここの兵士じゃないし。それに可愛い子を利用しようとは思わないな」


「……あなたは……一体誰なの?」


「俺は神城零。お前を助けに来た……ただの一般人だよ」


 その助けに来たという単語を聞いたのか、少女は不思議そうな顔をしていた。

 このガルム城からどうやって出るのか不思議なのもあるが、なにより神の子である自分を助ける俺が不思議なんだろう。


「私は神の子だよ? 化け物だよ? なのに……助けるの?」


「それで? 俺にはお前はとても化け物とは思えないな。むしろ俺が化け物だ。それになミーシャから言われてんだよ、5番目の子を助けてあげてってさ」


「ミーシャ……まさか2番目の子から?」


「ああ、知ってるのか?」


「うん、ちょっとだけど……ねえ詳しく聞かせて、お願い」


「……わかった。全部話してやる」


 俺はあの時のことを全て少女に話した。そして何故俺がここにいるかも、全て隠さず話した。あいつが……消えたことも。

 全てを話し終えるころには少女の警戒は解かれていて、俺の話を真剣に聞いていた。


「そう……なんだ」


「信じてくれるか?」


「うん……あなたは嘘をついてるように見えないもん」


「ならよかったよ」


 信じてもらえて一安心だ。しかし潜入してすぐに神の子と遭遇するとは……俺も運がいいのやら悪いのやら……

 しかしなんで俺はここに連れてこられたんだ? それになんで食料渡された?


「なあ……お前はなんでここにいるんだ?」


「神の子ってわかって、引き渡されたの……パパとママに」


 少女の目にジワッと涙が再び浮かぶ。

 自分の娘が神の子だとわかって……捨てたのか。許せない、一発その顔を殴ってやりたい。娘をなんだと思ってる……

 悔しさと怒りで、拳に力が入った。


「なんで……あなたが怒ってるの?」


 俺の手の震えと、顔の表情でわかったのだろうか。

 おっと感情が表に出てたな、俺の悪いくせだ。すぐに感情的になる。


「顔に出てたか……なんでって、許せないからだ。自分の娘をそんなふうに扱うやつがな……」


「あなたは不思議な人だね、神の子ってわかったら普通なら怖がるよ? だって化け物だもん」


「化け物だなんていうな。お前はお前だ、化け物じゃない」


 神の子はみんな、自分のことを化け物だと思っているんだろうか?

 ミーシャも自分のことを化け物だと言っていた。この子もそうだ。俺には化け物には見えない。たとえ強大な力を持っているとしても。

 っとそうだ、ここに来た意味をしらなきゃならないんだったな。


「そういえば、こんなの渡されたんだけど……お前何かわかるか?」


 俺は兵士に渡された袋を少女に見せる。

 中身は食料とわかるが……何故食料。食べさせろとでもいうのか?


「私が何も食べなかったからだよ」


「……なんでだ?」


「兵器として使われるぐらいなら……死んだほうがましだもん」


 だからこの子は何も口せず、餓死か衰弱死しようと思ったわけか。

 それで兵士が無理やり食べさせようとするが、少女が抵抗して無理だったわけか。

 その時少女のお腹からグゥという音がなる。


「…………」


 俺は無言で差し出す。しかし少女は顔を横に振り食べようとしてくれない。


「んーならさ、こうしよう。俺はお前を必ず助ける、だから食べてくれないか?」


「本当に私を助けられるの……?」


 ジト目で俺を見る少女。そりゃあ信じられないよな。

 でも俺なら、俺達なら出来る。頼もしい仲間とこの力があるからな。


「俺の力は少し特殊でな。さっき見ただろあの霧」


 少女はさきほど自分の出した炎が全く通用しなかったの思い出した。


「そういえば私の炎、効いてなかった……結界でも溶かすのに……」


 あの炎結構恐ろしい威力だったのか。霧出してなかったら黒こげどころじゃなかったな。

 そして俺の力を信じたのか、少女は俺の手から袋を取る。


「絶対助けてくれる?」


「絶対だ」


「嘘つかないでよ?」


「男に二言はない!」


「……わかった。なら、食べる!」


 中からパンなどを取り出すと少女は口に運んだ。

 よかったよかった。これならとりあえずはなんとかなりそうだな。

 俺は少女が食べるのを確認すると、部屋を見回す。脱出できそうなところはないか、どうすれば穏便に逃げれるかなどを考える。


「そうだ、私の名前言ってなかったね。私はシェリア・フリネイトって言うの、よろしくね零君!」


 零君か、なんだか久しぶりに君付けで呼ばれたな。中学とかではよく呼ばれてたっけ。神城君だったけど。

 俺はシェリアの呼び方は自然と心地よかった。なんだか親しくなったみたいでいい感じだ。


「こちらこそよろしく、シェリア」


 さてと、神の子の居場所はわかった。これから忙しくなるな。作戦決行の前に色々下準備してからだ。

 俺はこの後とりあえずシェリアに別れを言って、部屋を後にした。扉から出ると周りの兵士が驚いていたようだった、まさか成功するとは思わなかったんだろうな。

 明日から俺の城内の仕事は警備ではなく、シェリアの世話になった。俺がいないとシェリアは食べてくれないらしい。これはこれでラッキーだな。



 城内の敷地内にある宿舎。つくりはボロい寮のような感じで木造建築だ。城は立派なのになんでボロいんだよ。

 その一室内では俺、リン、リリナがいる。二人は疲れたようにぐったりと布団に寝転がっている。

 部屋の大きさは狭く、六畳ぐらいだろうか? 布団が三枚敷いてあるのと、机が一個あるだけだ。


「疲れてるなお前等」


「当然よ……一日中立ちっぱなしよ?」


「足痛いー」


 リンはともかくリリナには辛い仕事だな。


「それで何かわかったか?」


「さっぱりよ。直接聞くわけにはいかないしね……」


「そういえば、兵士の人達が遺品が見つかったとか騒いでた」


「遺品?」


「そうそう、レオ少佐の武器らしきものが見つかったとか騒いでたわ」


 あのムキムキマッチョの白髪おっさんか。あの人強かったな……消えちゃったけどさ。武器の破片とか残ってたのかな……?


「それであなたは? なんか特別な仕事だったみたいじゃない」


「あーそれなんだが……神の子と会って来た」


 その瞬間リンが大きな声で「ハァ!?」と叫ぶ。耳に響くから叫ぶな。

 リリナも驚きを隠せないようだ。


「なんというかあなた……運いいわね」


「まあ出会い頭に殺されかけたがな」


「零はその子となんで会えたの?」


「色々事情があるんだけど……なんでもご飯を食べようとしなかったみたいでな。それで頭を悩ませた結果、俺に行かせたというわけだ」


 ものすごく簡単に説明したけどわかってくれたかな?

 俺はリンならきっと理解してくれると思っていた。だって賢いからな意外と。


「とにかく、妹がいる設定のあなたに任せればうまくいくと思われたと……」


「そうそう」


「妹……」


 リリナが何故か少し、しょんぼりして落ち込んでいる。

 お前俺の妹にされるのそんなに嫌か? ちょっと悲しいんだけど。


「で結果としてその子を説得に成功したと」


「そんな感じだ。それで明日からの仕事はシェリルの世話らしい」


「あなただけ重労働じゃないのね……」


「零ずるい」


「ずるくねえよ、これでも大変なんだぞ? 脱出の場所とか探したりするんだから」


 それに兵士の目があるから下手に動けない。あとはお互いのことをよく知っとかないとな。俺を信頼してもらうために。


「まあ内部調査はあなたに任せるわ。外は任せて、脱出経路とか探しとくわ」


「ああ、任せた」


「さてそれじゃあもう寝ましょう? 私疲れたし」


「それもそうだな」


 俺達はそれぞれの布団に入る。これはいわゆる川の字になって寝るというやつだな。入口側から俺、リリナ、リンという順番だ。

 するとモゾモゾと俺の布団がうごめく。おいまさかとは思うが。


「おいリリナ、自分の布団で寝なさい」


「……駄目?」


 上目遣いで布団の中から俺を見てくるリリナ。

 いっつもこんなことしないくせになんで今日に限ってするんだよ。あと白い目でリンが見てるんだけど。


「……リリナちゃんと一緒の布団で寝れてうれしいんでしょ? 神城零さん?」


「お前は何を言ってるんだ……それと誤解してるぞ……」


 なんでフルネームで呼ばれるんだよ。絶対こいつの中で俺のイメージが、子供大好き野郎になってる。

 いや可愛いし好きだよ? でもそれって小動物感覚だからな?


「私と寝るの嫌かな……?」


「……あーわかったよ、好きにしろ」


 リリナはうれしそうな表情をすると、俺の身体にくっつくようにする。

 なんで……俺みたいな世界の嫌われ者に懐いてくれてるんだろうな……こいつはさ……

 心の中で俺はこんなのも悪くないと思った。だって、心が温かいからさ。


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