15話 城内潜入開始
「よし、119番入っていいぞ」
結構な人の列が徐々に進んでいる。その人の列は全員武装している人ばかり。
ここはガルム城、城門。この人達全員、ギルドの人達だ。しかしざっと300人ぐらいいるんじゃないか?
俺は後ろに続く人の列を眺める。まあ流石国の依頼とだけあって報酬も結構大きいらしい。最悪神の子がいなくても、報酬として大金がもらえる。どっちに転んでも悪い結果ではない。
「次、120番目」
お、いよいよ俺達の番みたいだな。
俺の前にいるリンが門番の男の検査を受け始める。
しかし大きな城門だ。大型トラックが余裕で通れるぐらい大きいな。俺は率直な感想を思った。
「魔力値45、他特に問題ありません」
「よし通れ」
リンは俺たちを見ると小声で「先に行って待ってるわよ」と言うと、城門を潜っていった。
さて……次は俺か。
「次、そこの変なメガネの魔術師」
「あ、はい」
あのグルグルメガネ装着してるんだぜ? そりゃ言われるよな。なんか横の門番笑いこらえてるし。
そして検査が開始される。レジのバーコードを読み取る機械みたいのを取り出すと、俺をスキャンするように頭から足にかけて移動させていく。
すると、モニターのような物から「ビー」と音がなる。
「魔力値……0? エラー?」
「はぁ0だと? もう一度読み込め」
男の指示に、さっきの笑いをこらえていた男はもう一度読み込む。だが表示されているのはエラーらしき赤い文字。
「おい、どういうことだ?」
やばい、こいつら怪しんでる。そうだ! 通用するかどうかわからんが、やるしかない!
「あのう……私、魔力がほとんど0に近いんですよー」
通用するかな? ほらあるだろ、小数点以下は切り捨てとかさ。
とっさに思いついた言い訳。門番は少し悩むような顔をする。
「ふむ……まあいいだろう。しかし、貴様なにか能力はあるのか? なければ入れないぞ」
「目くらましの霧なら出せますよ? 私のスキルです」
まあ本当は目くらましどころの能力じゃないんだけどね。
「スキル所持者か。ならいいだろう、通れ」
なんとか第一関門突破だ。
俺はホッと一息つくと、歩いていく。しかし通ろうとした瞬間肩をつかまれる。
「おい、そこの子供も検査してからだ」
俺の横にくっついているリリナを見ながらそう言う門番。
やっぱりスルーされないか。さて、第二関門だ……一応作戦はあるが。
リリナは渋々門番のもとへ行き、さっきのように検査を受け始める。ちなみにリリナの格好だが、金髪のカツラに黒いスーツ、そして黒いサングラス……どこのヤクザだこれ?
「…………なんで君すごい顔歪めてるんだい?」
「……腹が痛いんだ」
すごい形相をしているであろう俺の顔を見て、もう一人の門番が不思議そうに見る。
腹が痛いなんて嘘だ。実は、リリナを薄く覆うように霧を発生させてるだけ。これなら神の子の神力を認識できないはずだ。
俺のときのように機械が「ビー」と鳴り出す。
「魔力値0、またエラーか?」
「……もしかして、この子供も魔力がほとんどないとか、言うんじゃないだろうな?」
流石が怪しまれたか。俺の霧だと魔力も阻害するから0になるんだろうな……
さてどうする、どうすればこの状況を打破できる? 俺が必死に考えているとリリナがとんでもない行動に出た。
「魔力だけで判断すると……死にますよ?」
俺は顔のパーツが全て吹っ飛びそうだった。だってリリナ、黒い拳銃を門番のあごに突き付けてるんだもん。
なにやってんだあのお馬鹿! あんなことしたら余計に怪しまれるだろうが!
「……いいだろう、通れ」
「「え?」」
他の人間と俺は拍子抜けな声を出す。いいのか判断基準それで。
「この子供、そこらへんにいるような子供とは違うと感じた。悪かったな小僧」
小僧と呼ばれて少しだけムッとリリナだが、我慢したようで俺の元へ歩いてきた。
「ほら行きますよ、へっぽこ」
「へっぽこって俺のことか!?」
俺はリリナに引きづられるように城門を潜っていった。
なんだかよくわからんが、とにかくよしとしよう。
城門を過ぎると、見えてきたのはとにかく大きな白い城。まるで山のような迫力があるほどだ。
石畳出来た通路途中にリンが立って俺たちを待っていた。
「待たせたな」
「結構時間かかったわね、まあ何事もなく入れたようでなによりだわ」
そうだリンも変装してるんだよ。赤毛の長髪のカツラとインテリみたいなメガネだけだけどな。
「まあ……色々とあったけどな……」
俺は横目でリリナを見る。サングラスでよくわからないが恥ずかしそうにしている。
やっぱりあれ演技か。いや演技でよくあれだけのこと出来たな。確かにあの時は人を殺せる感じは出していたな。暗殺者みたいな感じの。
リンは不思議そうな顔をするが、気にしていないのか話し始める。
「さて、とりあえず今から作戦実行よ」
「どうするんだ?」
「まずは、あそこの入口にいる兵士から担当場所を聞くの」
リンが指差す先には兵士が立っている。他のギルドの人達に指示をだしているように見える。
「あとは担当場所に配置されたら動ける範囲で捜索、情報を仕入れる。夜には宿舎に集合できるから、そこで情報交換……こんな感じでどう?」
「オーケー、それでいいぜ」
「じゃあ行きましょう」
そして俺達は城内に入る入口にいる兵士に近づく。
こういうのって甲冑姿の人を想像するだろ? だけど目の前にいるのは軽い鉄製の鎧を着けてる黒服の軍人みたいな格好をしている。手にはあの時と一緒でマガジンのないライフルのような銃を持っている。
「ギルドの奴等か。番号は?」
「120から122番です」
「そうか……ん? その子供はお前達の子か?」
この兵士とんでもないこと言いやがったな。その瞬間リンが顔を真っ赤にして「そんなわけないでしょ!」と叫ぶ。
なにもそこまで否定しなくても……いやまあ俺もそりゃ否定するけどさ。なんかあそこまで必死に言われると悲しい。
「い、妹ですよ!」
無難に妹としておく。するとリリナがまたムッとした表情に変わる。
次の瞬間俺の足に痛みが走った。
「痛っ! お前何すんだ!」
「バカ……」
風船のように頬が膨れるリリナ。一体なんで怒ってるのかわからないな。昨日の事まだ怒ってるのかな?
そのやりとりを呆れるように見ている兵士とリン。
「そ、そうか妹か……そうだな、なら」
少し悩むように顔をすると、兵士が俺達に指示を出す。
「そこの女と子供はこの庭園の警備をしてくれ」
「あれ、俺は?」
「お前には少し特殊な任務をお願いしよう」
特殊な任務だと……また何か面倒事に巻き込まれそうな予感がするな。
俺はそのまま別の兵士に連れて行かれる。リリナが心配だったけど、リンも一緒だし素性もバレてないから多分……大丈夫なはず。
「あの、俺は一体何をするんですか?」
「来ればわかる、お前はどうも子供の扱いに慣れていそうだったからな」
「そうですか」
そのまま兵士の後を着いていく。
城内を見回すと外の近代的な感じとは違って、歴史の教科書にあるバッキンガム宮殿とかの内装みたいだった。俺も教科書の写真をチラッと見ただけだからなんとなくしかわからない。
しかしいたるところに金の装飾とかあるしすごいな……ついつい見とれてしまうほどだ。
「着いたぞ」
俺は兵士の声で気づき、前を向く。
そこに見えたのはあの研究所のときのような網のような頑丈そうな扉。まるでここだけ周りの感じとは違い、異質な感じだった。
兵士の指が青く光ったと思うとパスワードのような物を書き込む。するとその扉はゆっくりと上へ開いていく。
「よし……行くぞ」
その扉を進むと、厚い壁を通って行く。そして今度は青いクリスタルのような感じの扉が見える。
周りには別の兵士が二人いる。
「おい、ここは部外者は立ち入り禁止だぞ?」
「いや俺が許可した。それにこいつは似たような年頃の妹がいた。あいつを手懐けるだろうと思ってな」
「なるほどな……」
なんかこの人達勝手に納得してるけど……何するの俺?
すると中から轟音が聞こえる。俺の額に一筋の嫌な汗が流れる。
「チッまた駄目か、これで20人目だぞ」
すると青い扉が開く。中からは白い煙と一緒に兵士が倒れるように出てきた。
「おい、大丈夫か?」
「駄目だ、気を失ってる」
死んでないのか、よかった。俺はホッと安心したようにする。
しかし中では一体なにが起きてるんだ? 何か焦げ臭いし……焼いてるのか?
「よし、お前の出番だ」
「は!? 何も聞かされてないんだけど!?」
「いいから黙ってこれ持って行け!」
手に渡されたのは透明な袋。中にはパンやミルクだろうか? 食べ物が色々入っている。これで何をしろと?
そして扉が開くと押されるように俺は中に放り込まれた。俺はそのままバランスを崩して床に倒れる。
あの野郎共……消してやろうか?
「また来たんだ……懲りないねー」
俺は声がしたほうを見ながら、腰をさすりながら立ち上がる。
視界に映ったのは、金髪のツインテールで、ブレザーのような赤い制服を着た少女。顔は幼さがまだ残ったような感じだ。
いやまさか……この子……
「ん? 兵士じゃない……誰?」
その少女の右手に見えたのは黒い痕、紛れもない……あれは――――天の痕だ。
「まさかお前……5番目の神の子?」
「なんで兵士でもない、あなたが5番目だって知ってるの?」
少女はうつむくと「そう……」と呟く。その声の感じは悲しそうで、寂しそうで。なにより憎しみを強く感じた。
「どいつもこいつも……私のことを道具としか見てない……! あなたもあの兵士達みたいに……」
少女は俺を憎んだような目で睨むと、その小さな身体に真っ赤な炎を纏う。
まるで全てを焼き尽くすかのような炎。しかしそれは美しく神の炎のようなかんじの煌きだった。
「あなたも――丸焦げになっちゃえ!!」
俺に襲い掛かるその赤い業火。そしてその部屋中はその業火によって埋め尽くされた。




