8/ダンジョン1
「二人は馬鹿なの? それともアホなの?」
「両方を混ぜてじっくりコトコト煮込んだ代物だと思うぉ」
朝食のピークが終わった頃、ようやく起きてきたカルナとヤルに今朝の騒動を話すと半眼で睨まれた。
「そうは言うがなカルナ、こいつと一緒に会話してると段々とテンションが上がってくるんだぜ」
「ふっ……当然だな」
「……言っとくが、筋肉見てテンション上がってるわけじゃねぇかんな」
「……!?」
「そうだ、さっきコイツと一緒にダンジョン攻略行かないかって話をしてたんだが、カルナどうだ? 都合つくか?」
そんな馬鹿な、とばかりに瞳を見開くヌイーオを無視して問いかける。
カルナはコーヒーを美味そうに飲みながら、ゆっくりと首を縦に振った。
「んく……ふう。問題ないよ。ダンジョン攻略は久々だし、鍛錬に丁度いい」
「俺ら二人で入ると完全に自殺以外の何物でもねえからなー……うっし! ヤル、ヌイーオ、今日はよろしく頼むな」
「おっおっおっ、まあ二人ともしっかりサポートしてやるから、大船に乗ったつもりでいるといいぉ!」
親指を立てて笑いかけると、ヤルは腹をぶるん、と震わせながら立ち上がりフフン、と笑った。ふんすふんす、と荒い鼻息をもらす姿は中々に見事なドヤ顔である。無意識に殴りたくなるくらいに。
「なら、とっとと準備しちまおうぜ。帰りが遅いと女将さんの晩飯食いそびれるからな」
◇
普段の衣服に要所を金属で守った革鎧を纏う。
その過程で武具の調子を確認する。いざという時に剣が刃こぼれていて斬れなかったり、鎧の金具が外れたりしてはたまったものではない。
「うっし、こっちは問題なしと」
満足気に言うと、次は道具袋を開けた。中には松明、携帯食料、飲料兼消毒用の水、薬草などが入っている。
正直、今回は日帰りするつもりなので水と薬草だけでもいい気はする。松明だって剣を両手持ちするため、持つ機会は無いに等しい。
が、そこまでかさ張るモノでもない以上、もしものために入れておくべきだろう。仮に崩落し食料も松明も無しにダンジョンに閉じ込められでもしたら、モンスターの餌か白骨化かアンデッド化するかの未来しか存在しない。
「ニール。そっちは問題ないかい?」
道具のチェックを終えたらしいカルナは、ベッドに腰掛けながら魔導書の最終チェックを行っている。といっても、調整は夜中に行っていたため、本格的なモノではなく流し読みする程度のようだが。
だが、真剣にページをめくり内容を確認する姿はパートナーとして非常に安心できる。己の商売道具に不誠実な者に己の背中を預けることなど、少なくともニールには出来ない。
「ああ、オールオッケーだ」
「そっか。よし、それじゃ行こう」
二人で食堂まで降りると、既に準備を終えていたらしいヌイーオが女将に今回のクエストについて話していた。
「戻るのは夕方ぐらい、遅くてもメシのオーダーが出来るくらいには帰るつもりだ。もし帰ってこなかったら」
「分かってるわ。その時は捜索クエスト出したげる」
「おう、頼んだぜ」
これで安心だ、と笑い親指を立てるヌイーオ。
……先程の会話は、別段彼が臆病なワケではない。
大抵のクエストはこうやって宿の主人なりギルド職員になりにおおよその帰還時間を伝えた後に向かうモノなのだ。モンスターと戦わない依頼などでは行わない場合も多いが、ダンジョン探索では必須のやり取りなのである。
崩落か、全滅か、どちらにしろ冒険者が帰還できない状況に陥っていることが分かるため、すぐに調査クエストが発行するのだ。
調査の結果、崩落ならばすぐさま報告。後に土木作業員と共に力仕事を行うクエストが発行される。
そして全滅だった場合――死体の状況の確認を行ったのち、ダンジョン内をくまなく探索し死亡の原因を探し排除するのだ。
ニールたちも何度かそういった依頼を受け、これまでに二度ほど冒険者の亡骸と対面した。
無残に切り裂かれた腹部、剛力によって叩き潰された頭部――思い返すと冷や冷やとしたモノが背中を駆け巡る。
死を覚悟していないワケではないが、何も成していない状態で死んでしまうのは、やはり怖い。
「うっし……お! ニール、カルナ、こっちだろ、こっち」
女将と話し終えたヌイーオがこちらに気づき、手招きする。
その姿は今朝見たラフな格好ではなく、分厚い金属で造られた板金鎧を纏っていた。武器は分厚い大剣を背負い、道具袋の類は持っていない。一応、鎧の下にいくつか仕込んであるようだが、それだけのはずだ。
「おまたせ。ごめんね、女将さんの説明してもらっちゃって」
「気にすんな、俺の準備なんて武具の最終確認くらいだから、準備の時間はお前らよか短いからな」
駆け寄るカルナに対し笑いかけたヌイーオは、両手を後頭部に組んで壁に寄りかかる。椅子に座らないのは、前に板金鎧来たまま座って破壊してしまったためだろう。
あの時の女将さん怖かったよなぁ……とニールが体を震わせる。調理器具だけで完全装備のヌイーオがボコボコにされていく情景は未だに忘れられない。
「壁ぶち抜いたりすんなよ。そんなことしたら、あの悪夢より半端無いお仕置きされるぞ」
「コラ。椅子はともかく、さすがに壁は壊れないわよ。ウチはそんな安普請じゃないわよ」
あのくらいで壊れてたら家はもうとっくに更地よ、と言いながら笑う。普通の旅人に比べ武装の分、重くなるのが冒険者なのだから。
「おっおっ、みんなお待たせ。待ったかぉー?」
けどアンタ無意味に体重かけるの止めなさいよ痛むのよ店が、という女将の声を遮るように、ヤルの声が食堂内に響き渡った。
たるんだ腹を覆う革鎧に、丸く大きい体型には似合わない細身の短剣を腰に差している。背中には大きめのリュックを背負っている。
その姿を見た最近この町に来たらしい冒険者が「え? あの体型で冒険者?」と言いたげな目で見てくるが、そんな視線知らぬとばかりに堂々とニールたちの元へと駆け寄る。
「ううん、大丈夫。僕らも今来たところさ」
「……カルナ君、その返答は止めときなさい」
デート前の恋人同士の会話みたいで気持ち悪いのよ、と女将が顔を顰めながら言う。
「はい?」
もっとも、本人はなぜそんなことを言われたのか理解できていないようなのだが。
周りからは、ああそういう事か、とか。
なんでこんなところにホモがいるんですかねぇ、とか。
あのデブは絵面的に美しくないわ、とか。
そんな会話がそこかしこから聞こえてくるけれど、ニールとヌイーオは全力で聞かなかったことにしておいた。自分たちも今朝似たような境遇だったことなど、知る由もない。
「よ、よし! じゃあとっとと行こうぜ! あんま遅くなると女将さんが先走って調査クエスト出しちまうかもしれないし!」
「そうだな! 常識的な判断だな! 行くぞお前ら!」
「何をそんな焦ってるのさ二人とも……」
「よく分からんけど、遅くなって酒が飲めないのは嫌だお! 皆でダンジョンへ全速前進だお!」
ドン! と机を叩いて自己主張するヤルに女将の視線が突き刺さるが、分かってて無視してるのかもしくは鈍いのか、ひゃっほーい! と叫びながら駆け出した。
(……俺やカルナよか年上なのに、全然そう見えないよなぁ)
良くも悪くも子供のような人だよな、と苦笑しながらニールたちはヤルの背中を追う。
「おっと」
扉から出た瞬間、宿へと駆け込もうとしていた男の肩がぶつかる。
黒を基調としたスーツに同色のマント。頭部には羽飾りのついた帽子をかぶり、胸には剣を掲げる乙女の絵が刻まれた金のバッヂが輝いている。冒険者ギルド職員の制服だ。
「……! すまない、急いでいた!」
男はそれだけ言うと、すっ転びかねない勢いで女将の元へと向かっていく。息を切らすその姿に、女将が苦笑しながら水の用意をしているのが見えた。
「なんか緊急クエストでもあったのかな」
「しくったな、ダンジョン攻略申請する前なら受けたってのに」
「ま、こういう日もあるだろ、常識的に考えてな。それよか急ぐぞ、ヤルに追いつけなくなる」
それもそうだな、と後ろ髪を引かれる思いを断ち切り、ヤルを追った。
◇
そのダンジョンはナルキから西に少し進み、ストック大森林に沿うように北に進んだ場所にある山の麓にあった。
そこは坑道のように見えた。山から土を繰り抜き、壁や天上を木々で補強してあり、人の手が加わったのが一目でわかる。
だが人の気配など皆無で、逆にモンスターの気配は気が弱い者なら吐いてしまうほどに濃厚だ。
「おっおっ、んじゃあ皆、漏れが無いように一部屋一部屋潰して行くおー」
右手に地図、左手にランタンを持ったヤルがピクニックにでも行くような気楽な声を上げた。
……そう、地図だ。マッピング途中という様子もなく、全て書き記された地図だ。このダンジョンは既に制覇されている。
いや、制覇という言葉すらふさわしくない。ここは、元々魔物が暮らしやすいように建造された、人造のモンスターの巣なのである。
己の住処として森や洞窟を改築し、あらゆる生き物の侵入を拒むモンスターが造りし要塞――それがダンジョンである。
昔はこの大陸にも山ほど存在し、それを制覇する腕自慢を『冒険者』と呼んだ。
しかし、モンスターの繁殖能力は高く、ダンジョンをいくら潰しても数匹の生き残りが逃げ出し、繁殖し、新たなダンジョンを造り出してしまう。
新たに造られたダンジョンもすぐに発見できればいい。しかし、もし気づかぬまま放置してしまえばダンジョン内で大量繁殖し、ダンジョン付近で餌を賄えなくなったモンスターが人里に向かう。
その対策として生み出されたのが、この人工ダンジョンである。
予め森や洞窟などの一部をモンスターが過ごしやすい地形に作り変え、その地形を完璧にマッピングしておく。自分たちの巣にしようと侵入してきたモンスターも、元から過ごしやすいのであれば大幅な改築をする理由もない。
結果、ダンジョンがどういう構造なのか、またどの位置に寝床があるのかなどを予測した状態で攻略できるのだ。
また、近場に人工ダンジョンが存在するのなら、モンスターもわざわざ苦労して一からダンジョンを造る必要がない。そのため、知らない所で大量繁殖している、ということは滅多に起こらない。これにより、モンスターの群れが人里を襲うということは滅多に起こらなくなった。
そして現在。この有用性が認められ、未開拓エリアの多いストック大森林を除きあらゆる場所にこの人工ダンジョンが建造されている。
それでも、巣を持たず大陸中を駆けまわるモンスターによる被害はあるのだが、村一つを滅ぼすような被害は皆無といっていいだろう。
(便利なのは分かるけどな、うん)
なんというか、ワクワクしないよなぁコレ。とニールは溜息を吐いた。
モンスターで死ぬ人間が減るのはいいことだし、モンスターと戦いやすいのもいいことだ。
だが、英雄譚の勇者や剣士たちが攻略したダンジョンに比べると非常に見劣りする。ニールは初めてこの仕組みを知った時、感心するのと同時にすごくガッカリしたものだ。
「こら」
胸の中の不満。それを目ざとく見つけたらしいカルナが、魔導書ででニールの頭部をはたく。
「物語の大冒険と比べたらショボすぎるけど、危険は危険なんだ。気を引き締めていこうよ」
「っと、そうだな。悪い」
パンッ、と頬を叩き気合を入れなおす。
モンスターとの戦いが危険なのは過去も今も同じだ。全力で戦って敗北するなら諦めもつくが、腑抜けた気持ちで殺されては死んでも死に切れない。
「よし、隊列は前と同じ。常識的に、慎重に、だ」
言ってヌイーオはダンジョンに足を踏み入れた。その後ろをヤル、カルナ、ニールの順番で進む。
ニールが前列に出ないのは、挟撃された時の保険だ。カルナとヤルは接近戦が得意な方ではないので、下手を打てばそのまま蹂躙される可能性がある。
闇に沈んだダンジョンをランタンで照らしながら、ゆっくり、ゆっくりと歩く。
気配が強い。獰猛な獣の視線が鎧を貫いて体を抉る。体を貫かれ溢れ出るのは血液にあらずどす黒い恐怖だ。どく、どく、と心臓の鳴る音と共に吹き出し、思考を縛る。
(かつての冒険者に比べたら、ずっとずっと楽な道のりなんだけどな)
剣を振るって戦うのなら恐怖など感じないのだが、いつ、どこからモンスターが襲ってくるか分からない現状には恐怖を抱いてしまう。
情けない話だよな――と溜息を吐いた。
「……みんな、止まるお」
ヤルが立ち止まり、耳を澄ます。足音のなくなったダンジョンは無音に近く、ニールが耳を済ましても自分の呼吸の音くらいしか聞こえない。
だが、ヤルはなにかを感じ取ったのか、腰の短剣をゆっくりと抜き、小声でつぶやく。
「正面から三匹、姿は狼みたいな獣だお」
ヤルの言葉に頷き、ニールとヌイーオが抜剣し、カルナが魔導書を開く。
「――来るお! ヌイーオ!」
「任されただろ!」
ヌイーオが踏み込むのと、三匹のモンスターが飛び出してくるのは同時だった。
飛び出してきたモンスターは、雨に濡れた野犬のように見えた。しかし、よく観察すると体毛がない。
むき出しの黒い肌。そこに無数に存在する毛穴に似た穴から粘液を排出し体を包んでいる。ウェット・ウルフと呼ばれる化物狼だ。
「オオ――ラァ!」
獣めいた咆哮を上げたヌイーオは、大剣を力任せに薙いだ。轟! という大気を砕く音が鳴り響いた。しかしウェット・ウルフたちはその大振りな攻撃を見切り、背後に跳び回避する。
攻撃は失敗。
だが、それでいい。
今の攻撃でヌイーオの腕力を相手に知らしめることができた。お前らを一撃で砕く男がここにいるぞ、と宣言したのだ。
「ゴプッ――ゴボボボボ!」
体内の水に空気を混ぜ、それらを全て吐き出しながら行われる咆哮は、傍から聞けば溺れた人間が必死に息継ぎをしているようにも聞こえる。
だからこそ、ニールはこのモンスターと洞窟で遭遇したことに安堵した。川辺などで遭遇すれば、溺れている同業者かどうか近づくまで判断ができないからだ。
「ヤル! 後ろからは来てないな!?」
「大丈夫、問題ないお!」
了解! と応えながら疾走。
右肩から背負うように剣を持ち上げ――一気に踏み込む!
「人心獣化流――餓狼喰らい!」
矢の速度でウェット・ウルフに飛び込み、袈裟懸けに刃を振り下ろす。
斬! と。狼が獲物を喰らうような鋭さで突き刺さった刀身は、ぬらりとした皮膚を断ち、骨を砕き、臓腑を潰し――そして両断する!
「はっはー! まず一匹!」
返り血を浴び笑いながら即座に方向転換。地面に靴跡を刻みながら勢いを殺し、剣を中段に構えた。
仲間を一太刀で屠られたことにより優先順位を変更したのか、ウェット・ウルフたちの視線がニールに集中する。
「我が望むは雷光の矢。雷鳴よりも疾く駆け抜け、我が敵を穿て!」
その瞬間を狙い打つように雷鳴が鳴り響く。
カルナの掌からほとばしった閃光は矢の速度で宙を駆け、ウェット・ウルフの口内に叩きこまれた。
「――!」
電流は湿った体を巡り、焼きつくす。火を防ぎ水を吸収する粘液も、雷が相手では逆効果だ。黒い肌を更に黒く焼かれ、絶命する。
「ゴボボ――ボボッ!」
残された一匹は利口だった。
自分ではこの人間たちには勝てないと判断し、逃走を選んだのだ。
その判断は正しい。他のモンスターと合流し、数で叩けばニールたちを倒せる。確かに、その通りだろう。
――逃げられれば、の話だが。
「逃がしゃしない――だろ!」
叫ぶと、ヌイーオは懐から石を取り出した。何の変哲もない、ただの石ころだ。
それを力いっぱい握り締めると思い切り振りかぶり、背を向けるウェット・ウルフに投擲した。
ただの投石攻撃だ。
けれども、鍛え上げた肉体が、丸太めいた太さの腕が、ただの投石攻撃を別次元の遠隔攻撃に昇華させる。
轟! という音と共に宙を走る石が惨めに逃走するウェット・ウルフの尻に追いつき――ぐじゃ、という肉が潰れる音が鳴った。
「ゴブボォ!」
突然の激痛にすっ転ぶウェット・ウルフに、ヌイーオはゆっくり、ゆっくりと歩み寄り――己の大剣を振り下ろした。ドゴン! という音と共にウェット・ウルフを砕き、地面にヒビが入る。
割れた水風船の如く粘液と血液をぶちまけるウェット・ウルフを見て、ヌイーオはよし、と頷いた。
「一丁あがり、だな。やっぱニールやカルナが居ると楽だな、ヤルと二人だともうちょい手こずってたろ」
「ホントだおねー。自分が前線に出なくていいから、索敵に気をくばれるし」
言って二人は笑った。
だが、それはこっちのセリフでもあるぞ、とニールは思う。
ヌイーオが敵の注意を引きつけてくれるのは勿論だが、ダンジョン探索ではヤルの存在は非常にありがたい。
ヤルは戦闘は今一歩であるものの、感覚が非常に鋭いのだ。五感は言うまでもなく、第六感めいた勘も並外れている。
実際、今回の戦いもヤルが居なければウェット・ウルフたちに奇襲され、負けずとも怪我の一つや二つはしていたかもしれない。
「助かるのはこっちも同じさ、ありがとう二人とも」
同じことを考えていたのか、カルナが微笑む。
それに対し、ヌイーオは少し照れたように頭を掻き、ヤルは非常に苛立つドヤ顔で応えた。
「まーあ! それほどでもぉー! あるんだけどおー! おっおっおっ!」
うぜえの三文字がニールの頭を横切った。
カルナの表情も若干引きつり、ニールと同様の感情を抱いていることが分かる。
そんなニールたちを苦笑しながら眺めていたヌイーオは、未だドヤ顔で高笑いをしているヤルの背中を力いっぱい叩いた。
カルナは「おおおうっ!?」という奇声を上げて倒れ込もうとするヤルを助ける――ことはせず、ランタンをヤルの手から奪う。
「転んで壊れるようなモノではないと思うけどね、念のため」
「ランタンよりもヤルの心配をして欲しいお……」
「安心して。頭の心配なら常日頃からしてあげてるからさ」
「上等だイケメン、その綺麗な顔ボッコボコにしてやんよ……!」
「ヤルの場合は顔云々よりも痩せる努力をだね……っていうかさ、冒険者なんて体使いまくる仕事してるのに、なんでそのお腹引っ込まないのさ」
むしろなんで皆はやせるんだおー! と嘆くヤルを指さして笑うカルナ。オイ、お前ダンジョンに入る前に俺に言った言葉覚えてるのか、とニールはツッコミたくなったがやめておく。
「カルナ、もういいからとっとと進むぞ。この調子で無駄話してっとメシ食いそびれる」
「しまった! ヤル、索敵頼むよ!」
「オッケーだお! とっとと帰って酒飲むおー!」
カルナはすぐさまランタンをヤルに渡し、ヤルはヤルで右腕をぶんぶん振り回しやる気をアピールする。
お前ら本当に仲良いな、と思いながらニールたちは探索を再開した。