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影と光  作者: ナツ
1/1

光の前置き

久々の長編です。

 春になった。

私にとって17回目の春は、これまでと同じように、同じ場所を毎日行き来する、蛇行運転の車のごとくゆったりと、そしていつの間にか訪れた。

でも、こんな毎日が、私は好きだった。

何でもないような毎日、何かある毎日、そのすべてが私の愛おしい時間であり、人生だ。


私の名前は渡瀬光わたせひかり。地元のごく普通の公立の高校に通う、ごく普通の女子高生だ。

ちなみに、誕生日は4月1日という、ウソみたいな日だ(とはいえ、365分の1の確率であるため、そこまで嘘みたいじゃない、という真面目ツッコミを喰らったこともある)。


二年になったが、この一年、特筆すべきことは何もなかった。

いつも同じように授業を受け、いつものように家に帰り、いつものようにバイトに出て、いつものようにまた帰宅し、就寝する。

家で勉強することはめったにない、というか皆無であるため、あまり成績は良くない。

そうそう、好きな食べ物はアイスクリーム。某有名「ちょっとお高めなアイス」を、週末に食べるのが私の楽しみの一つだ。


このような、楽しいとも、つまらないとも取れる、ありふれた日常、嗜好を、私は気に入っている。

私自身、ありふれた人間の一人だと自覚しているし、むしろありふれていることも個性の一つではないかとも思う。まあ、言ってしまえばポジティブなのだが。

友達もクラス内、クラス外にそこそこいるし、バイトの関係上、上級生、そして下級生の知り合いも多い。自覚はないが、ムードメーカーなんだとか。そうなのかな。


ここまで、つらつらとくだらないことを言ってきたが、私がどんな人間か・・・わかるわけがないと思う。

文字に書き起こせば、数行で終わる短い自己紹介。声に出してみれば、数十秒、もしくは数分の短い自己紹介。こんなもので、人となりを分かるわけがないのだ。いや、わかるわけがなかったのだ。

今、私はそれを実感・・・痛感と呼ぶべきだろうか。している。

こんなふうに悩んだのは初めてだ。こんなに、心が痛んだのは久しぶりだ。

道で倒れていた猫を、泣きながら見つめていた思い出と・・・近い、なにか。

先日の出来事を、私は忘れることはないだろう。あんなに、悲しそうな眼をした人を、私は見たことがなかった。それだけじゃない、私とこんなにも境遇の違う人も。


話が前後して申し訳ないが、私は日常が好きだと先ほど言った。

でも、それと相反する考えだが、非日常にもあこがれがあったのだ。ファンタジー小説に登場する主人公のように、波乱に満ちた人生。いや、むしろサブキャラクターでもよかった。私は、そんな「世界」にあこがれを持っていたのだから。

波のある生活、一筋縄ではいかない人生、山あり谷あり・・・

このような言葉のすべてが私にとっては魅力的だったのだ。


そんな前置きはともかくとして、私がこんなふうに、ガラにもなくシリアスなことを考えているのにはわけがある。まあ、30分前まではこんなことは考えようとも思っていなかったのだが。

それはそれとして、実際に30分前の出来事を見ていただいた方が早いだろう。思い出したくもない、とまで言えば大げさだが…私にとってはあまり気持ちのいいものではなかった。


大切な友達が、恫喝されていたようなものだからだ。






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