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不能者だけどモテたいから勇者になります  作者: 落果聖
不能な俺と有能な妹と無能な女神
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 バイトが休みなので、今日はネージュの日常生活品の買い足しや町の散策をすることになった。

 二人で!

 デートですか? いいえ、罰ゲームです。

 いやさぁ、昨日のメイド服(ネージュに言わせればじゃぱにーずメイド服)を着て町中に行くと言うんだから本当に困るよ、目のやり場に……だったら良いんだけど、困るのは俺の目線じゃなくて他の人の目線だよ。

 とにかく目立つ、超目立つ、何なら待ち合わせ場所にだってできるさ。すぐに待ち合わせ定番の場所になる、ロリスを賭けても良い。

 そう言うわけで、他者から奇異の目で見られまくった。

 日常困らないようにって事なので、衣料品、食料品、魔法用具に、貸本屋、ついでに劇場(金が無いから見ないけど)なんかをぐるっと見て回る。

 ようするに人が多い場所ばっかり巡ると言うことだ。

「お前恥ずかしくないのかよ…」

 今もちらちらと見られている。

「写メも無し、ネットも無し、文化的にメイドがギリギリ有り、むしろ今しかないよ!」

「しゃめ?」 

 ネージュの口からはよくわからない単語が頻出する。ネージュが居る女神達(?)の世界だとあって当然の物らしいが、それについて詳しく聞こうとするとネージュは口をつぐむ。

 だったら最初から言わないでくれよ……

「んで、本当に何も要らないんだな」

「うん。大体あるからね」

「そこまでそろえているなら、パジャマぐらい持ってきてくれよ」

 あと、出来れば住むところも。

「いつも裸だし」

「着てください!」

「オーシュも裸で寝てみてよ。すっごく快眠だよ」

「寝ないよ……」

「先代の勇者も裸で寝てたよ!」

「絶対に嘘だ! っとさてついた」

 日がそろそろ落ちる時間帯だが、噴水前の広場は人々が行き交っている。

 一カ所だけ人が立ち止まっている場所があった。アイスクリームを売っている露店だ。『ここのアイスクリーム屋が非常に美味しいので是非是非食べるべきです』とロリスのお墨付きでもある

「アイスか~美味しいよね~」

「ここのは特に美味しいらしいから買ってくる。そこで待っていて」

「私、ストロベリーねストロベリ~」

「無かったら適当に選んでおくからな。その辺で座って待っててくれ」




 並ぶこと十五分ほど、ストロベリーとチョコレートを一つずつ購入して戻ると、ネージが絡まれていた。ナンパか何かだろうか? そりゃめっちゃ目立つ格好をしているからナンパの一つや二つぐらいされてもおかしくないか。

 だが、近づいて行くにつれて微妙に様子が違う。まず絡んでいるのは青い髪の女の子だし、絡んでいる対象もどちらかと言えば衣服だ。

 ネージュが元気よく俺に手を振ってくる。その様子でどういう状況なのか理解したのか青い髪の女の子は足早に去って行った。

「あの子は?」

「服が可愛いからよく見せてーだって」

 確かに、じゃぱにーずメイド服可愛いけどさ。だからといって話しかける勇気、普通はねえよ。

 俺はネージュにストロベリーを渡して隣に座った。

「出来ればもっと暑い時に食べたかったなぁ。そだそだ。温度上げればいいんだよね」

「天候を手軽に変えるなよ」

 まるで、お茶を入れるぐらい手軽に言いやがったぞ。

 しかも部屋の掃除も出来ないようなメイドだからな、世界を片手間で滅亡させそうだ。

「でも女神だし、女神アピールを適度にしておきたいなーって 」

 そう言いながらネージュは一口ペロっと舐めた。

「ほんとだ。ここの美味しいね」

 俺も一口食べる。なめらかな舌触りや凝縮された濃厚な甘みがかなり旨い。並ぶだけの価値は確かにあるな。

「チョコ一口ちょうだい」

 俺は自分のチョコアイスをネージュに差し出すとぺろり。

「じゃあ私の」

 とネージュに差し出された辺りで、これって間接キスじゃね? と気づいた。違う間接ぺろりだからもっと上位だ、エロエロだ。

 まぁ、これぐらい、余裕だから、俺だって年相応の恋愛経験ぐらいあるからさ、間接キスぐらい、何度もやってきたし、間接ぺろりだって、余裕、だ。

「どしたの?」

 すみませんでした、めっちゃ緊張してます。

「何をしているですか?」

 いつの間にかロリスが俺たちを見下ろしていた。

 渡りに船だ!

「ネージュに町を案内してたんだよ。それで今休憩中でアイス中だ。ロリスの分は買ってなかったから俺の食べかけで良ければあげよう。待ってるなら買ってくるけど、味は何がどうする?」

 と、言いつつロリスの手に俺のチョコアイスを握らせる。これで回避成功、世が世なら策士と褒め称えられた事だろうけど、誰も褒めてくれないから自画自賛。

「いらない」

 ロリスは俺の手ごと払ってチョコアイスを地面にたたきつけた。

「ロリス?」

「呼ばないでください!」

 ロリスは後ろに振り返る。俺が止めようと手を出したが届かなかった。

 ある程度距離が開いてしまうと、ロリスは魔法を使い脚力を強化して走り去って行った。

「ロリスちゃんどうし―――ってこれ間接キスだ! ちがう! これはノーカンだもん! 味見はノーカン!」

 気づくの遅えよ……

「……ここから自力で家まで帰れるか? ロリスを連れ戻してくる」

 ネージュが頷くのを見てから、俺は走り始めた。



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