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不能者だけどモテたいから勇者になります  作者: 落果聖
不能な俺と有能な妹と無能な女神
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 かったるさで目が覚めると、ロリスが俺の顔をのぞき込んでいた、どうやら馬乗りしているらしい。

「これは一体どういうことでしょうか?」

 ロリスが強引に首をねじ曲げると、そこにはネージュが眠っていた。

 自然に目が覚めていたら宇宙だったのに……

「兄さんには私がいます。一人で眠れないほどお子様なのでしたら私を呼べばいいのです。ネージュさんが女神様であったとしてもお母様である可能性は無いのです。血縁関係的に私の半分はママです。私に言えば良いのです。試しに甘えてみてもいいのです」

 心配されてる?

 ここは罵倒に次ぐ罵倒じゃないの?

 罵倒される物だと思っていたからむしろ不安に思ってしまう。優しくしないでくれむしろ罵倒してくれ! 

「おはようございます」

 目をこすりながらネージュは上体をゆっくりと起こした。

「二人とも仲良しだね~」

「ネージュさんが寝る部屋はこの部屋ではありませんと昨日言いましたね」

「……おかしいなぁ。オーシュを起こしてヒロインポイントを稼ごうとしたのは覚えてるんだけど」

 絶賛駄々下がり中ですよねそのポイント。

「寝たんですね」

「みたい」

 恥ずかしそうに笑いながらネージュは笑って部屋から出て行こうと――

「ネージュさん、その服は?」

「似合う? ふふん。女神様ってば何でも似合っちゃうんだよね~」

「それ、ママの……」

「ロリスの言いたいことも解るけど、ネージュに入りそうな服がそれしか無かったんだ」

 なお、寝るのに全く適さない服をネージュは大量に所持していた。……絶対にルブルとネージュだけは信仰しない。

「解りました」




 いつものようにバイトを終えて帰宅すると、玄関でネージュが待っていた。

「お帰りなさいませご主人様」

 なぜかメイドコスだった。

「なんでご主人様?」

「メイドだよ!? 様付け無くしたら、メイドの本質がそこなわれちゃうじゃん! 絶対にメイドとしてそこは譲らないよ!」

 スカートの裾をもってくるっと回る。

「メイドである以上回転も、どう? どう!?」

「お前メイドの前に女神だろ? その回転ポーズもルブルが言ってたんだろ」

「これはフレム姉さん」

 ……どうなってるのこの女神姉妹?

 駄女神がさらに一回転するのを無視してリビングに行くと、散らかっていた。散らかるほど家に物があった事に驚き…っていうか謎の物体多いな。これネージュの私物か。

「時代のニーズを先取りして、ご主人様に仕事をさせるメイドになってみました。ただ単に仕事をするよりも可愛さを上げるだなんて、さすが知恵の女神でメイドだよね!」

 ドヤ顔!

 別にメイドじゃなくても俺の仕事増やしてるよね? この女神。

「さぁ存分に褒めよ! 崇めよ! 信仰せよ! 幸せになる壺を買うのだ!」

 やれやれ困ったメイドちゃんにはご褒美デコピンを上げないとね

「はぅ!」

 痛そうな声をだしていますが、我が社は専門家の指示を受けた安全なデコピンを使用しております。

「兄さんどうしてこのめが……メイドを家から突き出さないのですか?」

 いつの間にか帰ってきていたロリスが俺の横を素通りしてテーブルに着いた。やっぱりこいつ女神じゃないよね。

「例えどんなダメ女神であろうとも、俺が魔法をもらった事実は変わらないだろ」

 手から水を作り出す。。

 固有魔法しか使えていないけど、使えると使えないとでは雲泥の差だ。少なくとも差別対象では無い。

「これで学校に行けるかもしれない」

「でもプレクス学園に通えるかどうかまでは解らないです」

「良いんだよ。普通の学校で」

「よくないです」

「どうして?」

「そうだよ! よくないよ! 勇者になるんだよ! せっかくだからプレクス学園で魔法の勉強してよ」

「あぁ、うん、そんな設定あったね」

 俺の中だとすでに勇者(笑)って感じだ。女神が率先して駄メイドになったんだし、勇者も勇者(笑)で問題無い。

「兄さんを勇者にしたいだけでしたら、別に一緒に生活する必要は無いです」

「オーシュを立派な勇者にするのが私の仕事なの!」

「ロリス、そんなにネージュに意地悪しなくても良いだろ……」

 例えどんなにダメであっても女神である事には変わりない。信仰心が高い訳では無いけれど、さすがに女神が家に泊めて欲しいと言ったら、一週間ぐらい泊めるぐらいの器の広さはあるさ。

 あれ? どんどん浸食されているような。

「……しょうがありません当面の合間同居を許可しますが、私にだって条件があります」

 ロリスはネージュに耳打ちをする。

「いいよーそれぐらいなら、むしろ最初からする気だったよー」

 ネージュはロリスに抱きついた。愛玩動物でも愛でてるみたいだ。

「よろしくねロリスちゃん」

「抱きしめないでください」

「寸歩寸法♪」

 今の密談で仲良くなれた……と思うことにした。




 誰にだって運命から逃げ出したくなる瞬間がある。

 それが今だ。

「どうでしょう?」

 ロリスが来ているのはネージュが昨日着ていたすくーるみずぎと言う奴だ。

 何着持ってるんだろう?

 と言うか密談内容それなの?

 頭抱えたくなるけど、ここでのロリスへの返答次第で非常に不味くなりそうな直感だけはある。

 いつもはノック無しで部屋に入ってくるロリスがノックして入って来たし、今も妙にそわそわしている。服を見せに来ているはずなのに、手を握りしめたり、内股気味だったりで、緊張しているように見える。

 可愛いと言ってあげるべきなのだろうが、褒め方を間違えると罵詈雑言コースは確定だ。

 あぁ、でも罵詈雑言分が足りない気がする。

「どうでしょう? お好きですよね? スクール水着」

「ちょっと回ってみて」

 ロリスはぎくしゃくと油を差していない機械みたいにその場で一回りしてくれた。

 ……あんまり好みじゃ無いかな。足がよく見えるのは良いんだけど、むしろすばらしいぐらいだけど、服そのもののデザインは俺の性癖とは違う。

「可愛いよ」

 とはいえ、俺の妹が可愛いと言う事実そのものは普遍だ。衣装なんかよりもその表情の方がよっぽど可愛い! 所詮衣服なんて、女の子を飾りための装飾に過ぎない。

「そう…ですか」

 ロリスが視線をそらした。嬉しいと言うか恥ずかしいんだろう。

「ロリスちゃんコレも着てよコレも!」

 ネージュが扉をバンっと大きな音を立てて走り込んできた。

「ふぉおおおお!!」

 思わず叫んでしまった。

 フリルがふりっふり、スカートはギリギリ、色気は抜群、谷間がバッチリ!

 走ることによっておっぱいが自在に動き、今にも服からこぼれ出しそうだ。

勇者とかどうでもいい! 俺はこのおっぱいがこぼれないように抑える人間になりたいんだ!

 ……メイド服っぽいんだけど、色がピンクだし、スカートパンツ見えそうなレベルで短いし、こんな物が世の中に存在していいのでしょうか?   

 女神様は一体何の女神なのでしょうか? 女神様はおっぱいなの? イエスおっぱい!?

「ネージュさん来てください」

「ん、なになに?」

 ネージュが開いたときよりも大きな音を立ててドアが閉められる。

 その後に、ロリスも同じ服を着てきたんだけど衝撃が足りなかった。

 おっぱいアドバンテージはどんなに可愛く着飾ってもしょうがないからね。別の方向に目指すべき。

 言ったら本当に殺されそうだから言わなかったけど。


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