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不能者だけどモテたいから勇者になります  作者: 落果聖
不能な俺と有能な妹と無能な女神
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 台所からはネージュの歌声が聞こえる。よく知らない曲だが妙にテンションが高い。

 本当は俺が夕飯を作るつもりだったのだが、ネージュが一切譲らなかった。泊めさせてもらうのに何もしないのは申し訳ないって事らしい。

 別に気にしなくても良いのにね、一泊なんだし! 一泊なんだし!!

 そう言うわけで、俺は自室でベットに横たわっていた。隣でロリスは座って本を読みながら、ネージュの今後について話し合っている。

 相手が女神様だろうと我が家の家計が大変な事実に変わりなし。大体女神様をもてなすのに我が家は不相応だ。と言うのがロリスの主張だ。

「我が家の家計がボルドーさんに支えられている事実は兄さんの方がご存じですね?」

 何度目かの問答。

「それは後で考えるとして、とりあえず今日は泊めるよ」

 これは下心無し。部屋は余っているし特に問題無い。

「……では、私がリビングで寝ますので、ネージュさんを私の部屋に」

「部屋余ってるだろ」

「兄さんには棺で寝てもらいます」

「それ殺しているよね!?」

「冗談です。でも、ネージュさんを私の部屋に、私は兄さんと一緒に寝ます」

「あのなぁ……」

「パパとママの寝室を知らない誰かに使われたく無いのです」

 俺はその答えの代わりにロリスの頭をなでた。

 死んでしまった事実は変えられない。だからといってそれをずっと引きずりながら生きていく訳にもいかない。

「兄さんはずるいです」

「ごはんできたよ~」


 目の前には夕飯だったものが広がっていた。

「初めてにしてこの完成度、まさにあたしってば女神だよね!」

 何でこの女神こんなに自信満々なの? と言うか初めてってどういうことだよ!? 普通ここはとって美味しい料理が出てきて、居候が一人ぐらい増えてもいいかな。とっても料理上手だし! みたいな話になるんじゃねえの!? この駄女神!

「ほめて!」

 褒めるっていつからデコピンしてくださいって単語になったんだろ? 最近の若者言葉についていけません。

 焦げてるか、油べたべたか、半生だったり、明らかに隠し味が全面に出てそうな匂いだったり、それを料理と呼ぶのは料理を侮辱しているように思えたので、元が何の料理だったかの推測をするのは止めておく。

 と言うか一部は本当に出来ないレベルで炭になってるんだけど!

 そう言うわけでデコピンした。

「どうしてぇ!?」

 ネージュはおでこをさすりながら、俺に訴えかける。

 なおデコピンと言っても、別に強くやった訳ではありません。ほんと、全然強くないから、赤くなってるように見えるのもネージュの演技だから、ネージュったら演技力だけは本当に女神クラスだよね。

「兄さんさっさとこの女神を家から追い出しましょう。我が家の家計に一食分のダメージを与えたのは重罪です。神様だって許してくれます」

「あたしか~み~さ~ま~!」

 ネージュは必死に手を上げて主張している。当てられるのを待ってる小学生みたいだ。

「しょうがない。残り物でも食べるか」

「じゃあウエハースを食べよう!」

「どんだけウエハースあるんだよ!?」

「私、夕飯要らないです」

 それだけ言うとロリスはリビングから去って行った。




 風呂ではアイディアを思いつきやすい場所らしいのだが、入浴中の俺は天啓的なアイディアを全く思いつけなかった。考えてみればネージュが天恵そのものだな。

 さてネージュの今後どうした物か。とりあえず女神なのは解ったけど、女神だからと言って家に居候させるのとはまた別問題な訳で。

「大変そーだね」

「あぁ本当だよ」

 と思わず返事をしてしまったが、まず声がしてはいけない事実に気づいた。

「何でいるんだよ?」

「一緒にお風呂へ入れば仲が良くなるってルブルちゃんが前に言ってた!」

 いや、それ以上に聞かなければいけないことがある

「何で風呂入るのに服着てるんだよ!!!」

 ネージュは不思議な質感の服を着ていた。胸の部分に"ネージュ"と書いてある。

 そこは全裸だろ!、 男の劣情を返してもらいたい!

「この時代だとまだないのかな? スクール水着って言うんだよ。学校で泳ぐときに着る服なんだー。これはルブルちゃんおすすめ衣装。かわいいでしょ?」

「可愛いから、さっさと上がってくれ」

「お背中を流すまでが入浴イベントだよ!」

「お背中から血を流すまでがの間違えでは無いですか?」

 ロリスがいつの間にか脱衣所に居た。

 いつものように無表情で俺を見つめる。でも解る。長年一緒に居るから……じゃなくてこの状況は普通怒る。

「うるさいと思っていたら何をやっているんですか。変態」

「何って聞いてるのにすでに有罪認定してるよねその呼び方」

「変態と言われて、自分だと思ってしまう程度の自覚症状があったのですね。一応ネージュさんの可能性もあるです、これは今後の育成方法に補正が必要です」

 ロリスはため息をつくと、ネージュの腕を引っ張っていった。

「この家では私がルールです。法も世間も兄さんの下半身も関係ありません。我が家では男女での入浴行為は禁止られています」

「じゃあロリスちゃん一緒に入ろうよ」

「却下です、入浴は一人でするものです、その衣服も使用禁止です」

「でもオーシュだって喜んでるよ?」

「……却下です」

 獲物を狙う肉食獣みたいにロリスが睨んでくる。俺は愛想笑いを浮かべる。

「やれやれ、ネージュさんお風呂から出てください。でないと、兄さんがこの世から出て行く事になりますよ」

「は~い」

 二人が風呂場から消えるとようやく静寂が訪れた。

 ……今日は早く寝ようか

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